奥泉光のレビュー一覧

  • 石の来歴 浪漫的な行軍の記録

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    ぐぐぐ…ずぶずぶ…と蟻地獄に落ちるように作品の中へ。這い出たいような、でも引き摺り込まれたいような、不思議な感覚で一気読み。

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    2021年01月05日
  • 夏目漱石、読んじゃえば?

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    夏目漱石読んじゃえば?
    ちょっと変わったタイトルの本書は漱石の10作品を取り上げてそれらにあった読み方を提案している。
    提案というよりも指示に近いか。
    文章の書き方も妙に上からっぽいので何故だろうと思っていたら河出書房の「14歳の世渡り術」というシリーズの中の作品だった。
    中学生向けね。
    とはいえかなり参考になった。
    もう一度視点を変えて漱石さんの作品を読んでみようと思ったし、読書一般に関しても今までと違った読み方が有るなあと思えた。
    特に著者の言う「小説の本質は物語ではなく文章にあるのだ」は映像でなく文字で記される小説の存在意味を表しているのだろう。
    そして「小説は最後まで読まなくても良い」

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    2020年12月20日
  • ビビビ・ビ・バップ

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    これはひどい。ひどくおもしろい。「『吾輩は猫である』殺人事件」と「プラトン学園」が、ぐちゃぐちゃに混ざって全く新しい物語になったというか、久しぶりに筆者の破天荒なSFを読みました。それにしても800ページは長い。ジャズは詳しくないですが、ワクワクしてしまうのが不思議。60年代新宿のシーンはドキドキです。

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    2020年11月30日
  • シューマンの指

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    修人について語るときの、静謐でいて幻想的なレトリックが良い。その中でも、とくに魚を使った比喩が多い気がした。何かが表出するとき、水の中で泳ぐ魚が水面に向かって浮かび上がるイメージを通して表現されている箇所がいくつかあった。本作ではシューマン論に限らず音楽ついて語られることが多いが、作者にとって、音楽と魚の動きには似ていると感じる部分があるのかもしれない。と思った。

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    2020年08月21日
  • 東京自叙伝

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    坦々と江戸時代から現代までの近代史を追いかけ、歴史の分岐点の裏には常に東京そのものである私がいるという偽史もの。偽史好きなこともあり楽しく読めた。
    東京の栄枯盛衰に対応して「私」も隆盛したり盛り下がったりするのがなんだか愛おしい。東京ちゃん、と呼び掛けたくなる。
    著者の批評的な視線として、「なるようになる」という適当さを日本の近代から現代に見出しているのが興味深い。適当という補助線を引いてみると、我が国ってほんとに適当だよなと感じる。コロナウイルスの対応についても政権与党の対応が場当たり的に流されていること、数年前に本作を書いた筆者の慧眼といったところ。
    また東京という都市の象徴にネズミを置い

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    2020年03月20日
  • 鳥類学者のファンタジア

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    ジャズ好きと世界史好きにはおもしろいファンタジー設定。
    最後のチュニジアはイントロが思い浮かぶんだから大した表現だ。

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    2019年04月20日
  • 小説の聖典

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    共に作家の奥泉光さんといとうせいこうさんのとても刺激的な対談集。
    副題に『文学入門』とついているが、これが『入門』なのか?というような高度な(私にとっては)おはなしがつづく。
    でも主に奥泉さんがボケて、いとうさんがつっこむ漫談方式のお陰でクスクス笑いながら読まされてしまう。
    奥泉さんのお子さんの保育園の学芸会の話題(爆笑)からフロイトの‘ユーモアについて’の話題に持っていくおふたりの手腕に酔ってしまい、自分には絶対読みこなせない書物も読みたくなる(笑)
    たぶん百分の一も理解できていないと思うけど、それでも面白かった。
    あと、作家であるいとうさんの口から「誤読してもいい」の言葉が聞けたのもホッと

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    2018年09月13日
  • 虫樹音楽集

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    数年後に再読するであろう自分に伝えたいのは、これは9曲入ったアルバム(ブートレグ含む)を聞くように読め、ということだ。

    初出とは順番がシャッフルされている。
    結果、フィクション風→ルポタージュ風→フィクション風→……、と多少なりとも意味や作為を読み取れるようになっている。

    また読み進めるほどに、
    ・化石の宇宙飛来説、宇宙樹、虫の声を代弁
    ・暴力の予感(「変身」の最初の文「気がかりな夢」)
    ・音楽、変態性欲、崇高への眼差し、変態=人間からの断絶(宇宙へメッセージを放つために、宇宙樹に文字を掘る→肉体に傷をつける、とパラレル)
    とモチーフは過去の奥泉作品と通じていく。

    さらに小説の構成として

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    2018年09月05日
  • グランド・ミステリー

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    「グランドミステリー」は、僕がはじめて読んだ奥泉作品だ。相当前に読んだもので、ストーリー云々はまるで記憶になかったが、時間を迷宮的に超越した、軍艦とベニスと加多瀬と志津子の物語、というふうに記憶していた。
    実に何年振りか(何十年ぶり?)かの再読だったが、記憶していた以上に辛辣な日本、日本人への批評的文学だったように思えた。ただしそこは奥泉さんなので、あくまでもエンターテイメント要素が前面に押し出され、むしろそちら方面に傾きすぎて重心が散らばってしまっているところが本作の弱点でもあるように感じた。夕鶴事件の真相、と銘打たれてスタートした物語だが、結局のところその真相などはたいした真相ではなく、手

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    2018年07月25日
  • 小説の聖典

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    小説家の頭の中ってこうなってるのか〜。ただ物語を作っていくだけではなく、文体や自分が何かに影響を受けているかどうかまで、意識したり受け入れたり戸惑ったり。とっても興味深い。
    いとうさんファンとしては、彼が小説を書けない時期に、何に悩んでいたのか、そしてそれをどう乗り越えたのか、の一端を垣間見たようで、嬉しくなる。これまでのインタビューや何かで、チラッと話していたのを読んでもよく分からなかったから。奥泉さんの存在は大きかったんだろうな。

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    2018年06月17日
  • 漱石漫談

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    めちゃくちゃ面白い!
    漱石のやっちゃった文章に対するツッコミに、
    何度も噴き出してしまった。
    特に、こころと坊ちゃんは笑える。

    こんなふうに小説を読み、語り合えるのは
    さぞかし幸せだろう。

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    2018年03月24日
  • 男性作家が選ぶ太宰治

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    女性作家が選んだものとはまた違う感覚の作品も多く、未読作品が多かったのでとても楽しめた。餐応夫人がすき。この作家さんはこういう作品を選ぶんだなぁ…って部分でも楽しめてなんだかお得。

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    2018年03月16日
  • 東京自叙伝

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    奥泉光『東京自叙伝』は東京での事件外観である。

    江戸末期から、現代に至るまで、東京で発生する怪しげな事件はすべて私が起こしたあるいは私が関与したのである。

    私とは、どこからが私かそれはわからないが、ある時から自分が「私」であると認識するのだ。つまり、ある時からは自分は「私」ではなくなり、別の人物が「私」になる。

    ある時は柿崎幸衛門の養子、柿崎幸緒であり、ある時は陸軍参謀になる榊春彦、そしてある時は放火犯の戸部みどりなのである。それぞれの人物はそれぞれ当人としての人生を全うしているが、その一部期間が「わたしなのである。」。しかもその人物が「私」になるきっかけはいつも二つある。一つは大量に発

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    2018年01月03日
  • 黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2

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    たらちね国際大学准教授にして、文芸部顧問の桑潟幸一。
    ヴァルネラビリティ高めの彼が巻き込まれる珍事件を、文芸部の面々が解決する、というミステリ。
    シリーズ三作目とのことだが、実は私には本作が初めて。
    でも、ちゃんとついていける。

    「スタイリッシュな生活」とくるが、首になることを恐れ、汲々と生活を切り詰めるクワコー先生には、これほどの皮肉な言葉はない。
    食費を浮かせるために水路でザリガニを取り、独り生えしている紫蘇を見つけ歓喜するクワコー先生、だんだん生活力を高めつつあるようで。

    事件も、殺人のようなシリアスなものではない。
    事件は文芸部員たちがあけすけにくっちゃべるなかで、おもむろに解決す

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    2017年03月25日
  • シューマンの指

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    初奥泉作品。恩田陸の音楽モノを読んだ後ってことで、このタイミングで読んでみることにしました。純文学作家が書いたミステリ、っていう認識で読み始めて、途中までは”いやいや、普通に純文学やん”って思いながら頁を繰ってました。まああながち間違いでなく、実際三分の二くらいまでは、シューマンを軸にした音楽論みたいのが繰り広げられています。残りの三分の一で、指の謎が次第に解き明かされるんだけど、それに関しては『まあそんな感じですか』くらい。最終的には、それなりに楽しめました。

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    2017年02月24日
  • シューマンの指

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    ネタバレ

    おもしろかったー。とりあえず通り一遍にしかシューマン聞いてなかったので、改めて聞こう。
    ラスト近く、かなり耽美~な、てかBLつかジュネ?な展開で、あれま!と驚いたw いや、まあアリですが。
    他の方のレビュー読んだらわりと不評が多いのですな。うーん。音楽については、興味はあってもさっぱり詳しくない私に特に違和感なかったんだけど。ミステリーについては、ぶっちゃけこれまで読んだ中でうなるようなうまいのて、ごくごくめったにしかないからw 別にこれが批判に値するとは思わなんだ。

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    2017年02月05日
  • シューマンの指

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    ネタバレ

    音大をめざす高校生が主人公。
    結局音楽の道に進まなかった現在、過去を振り返って語る。
    昨年の夏に読んだ『船に乗れ!』と同じ構造。

    しかし、目には見えない音楽を目に見えるように、本からは聞こえない音楽を聴こえるように、感覚としてわかるような描写が魅力だった『船に乗れ!』とは違い、楽典の講義を受けているような(受けたことないけど)論理と言葉で音楽を語るこの作品は、読んでいて大変疲れました。

    物語半ばに殺人事件の被害者が突然出現したけれど、だからと言ってミステリに引っ張られることもなく、音楽を軸に結ばれた仲間たちの話は淡々と続く。

    残り50ページから殺人事件の真相を暴くことに筆が向かったように

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    2017年01月17日
  • 鳥類学者のファンタジア

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    簡単に言うと二人の女性(女の子?)が1944年のドイツにタイムスリップして、そこで右も左も分からない中で猫やピアノと格闘しながら宇宙の真理や祖母の秘密を探る話。軽妙、不可思議、神秘的!

    ジャズのCDをゆるくかけながら読むのにふさわしい本だった。勢いがあり弾けて流れるように続くユーモア溢れる文章、がむしゃらに前向きに進むフォギーと佐知子ちゃん、時代も場所も入り乱れて最後には宇宙(!)のエネルギーを集めた音楽の話に進み、不思議で大人ウキウキした感じの気分になれる。
    それにしても、この題名はどういう意味だったのだ?

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    2017年01月03日
  • 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活

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    3流私大准教授のドタバタ自虐コメディ風ミステリ
    「なんか、この話し知ってるぞ!」と途中で気付いた
    前にドラマ化してたんだよね
    主演が佐藤隆太で倉科カナと桜庭ななみが出てたやつ

    教師陣はまともな人間がいない(笑)
    学生も学生でFランの大学生のイメージそのまんま

    太文字になっているところがあって(ありすぎる感もある)
    どこが面白いところかはわかりやすいけど、全てが面白いわけではない

    ま、ライトな読者にはよいのではないでしょうか

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    2016年02月16日
  • シューマンの指

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    ネタバレ

    初奥泉。ミステリィとして読み始めたから、最初は読むのが苦痛でした。。特に魅力的な(?)事件も起きず、全く判らない音楽談義(主にシューマン)が永遠と続き・・とても退屈で、よく挫折しなかったものだ。しかし、徐々にではあるが面白く感じられるようになった。そして最後には『マジかっ!?』と、拍手を送りたい。帯に偽りなし!ホント純文学にして傑作ミステリィでした。

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    2016年05月12日