大岡昇平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
第二次世界大戦中にフィリピンで戦い俘虜になった作者が、自身の経験を綴った体験記
大まかな構成としては、俘虜として捕まるまでと捕まった後に大きく分けられ、俯瞰的な視点から、教養に溢れた文体で自身が観た光景とそこから作者が得た解釈を記載してます。私の視点からすると差別的な表現が一部入っているのは気になりましたが、当時としては、これが一般的な感覚だったのでしょう。
ネットで見た情報では、大戦中の日本兵俘虜の死亡率は10%程度と書かれていましたが、とてもそんな過酷な感じはしませんでした。俘虜になった場所で待遇が違ったのか、それとも通訳を行っていた作者が恵まれた場所に移送されたのか分かりませんが、想像 -
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「大岡昇平」の戦争小説集『靴の話―大岡昇平戦争小説集』を読みました。
『野火』に続き「大岡昇平」の戦争小説です。
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太平洋戦争中、フィリピンの山中でアメリカ兵を目前にした私が「射たなかった」のはなぜだったのか。
自らの体験を精緻で徹底的な自己検証で追う『捉まるまで』。
死んだ戦友の靴をはかざるをえない事実を見すえる表題作『靴の話』など6編を収録。
戦争の中での個人とは何か。
戦場における人間の可能性を問う戦争小説集。
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自らの体験が色濃く反映された出征、戦闘、捕虜生活が描かれた作品なので、小説とい -
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大岡昇平については、私は完全に食わず嫌いをしていた。
よく見かける、生きて帰った途端、軍はだめだって言い出す人の作品だと思っていたのだ。
ところがどっこい(死語?)、全然違う。
戦争、というより日本人ということを突きつけられる。厳しい、との一言。
今でも俘虜ではないか、という一文がねぇ…言葉もない。
これいつ書いているかと考えると、この時代、そして軍を経験した人が、ここまで冷静にあの時のことを、厳しい目で書けるってすごいよなぁ。
戦争の残虐さなんじゃない、人間の恐ろしさ。
日常でも見かける人々がいる。
だからこそ、読み進めていてどこか居心地が悪い。私もその中の一人なのだから。
私も俘虜 -
Posted by ブクログ
「明日への遺言」の原作
B級戦犯として起訴された岡田資中将の裁判の記録です。
小説ではなく、レポートです。
なので、ぶっちゃけ読みにくいです
この裁判の論点は大きく2つ
(1)岡田中将が死刑の判決を下した米兵は俘虜なのか戦争犯罪人なのか?
(2)その判決を下したときのプロセス
結果、米兵は無差別爆撃を実施したことを岡田中将はこの裁判で立証します。ってその弁護人がすごいです。
一方、その判決を下したプロセスは略式の軍律会議ということで、岡田中将は死刑判決を受けることになります。
しかしながら、全責任は自分にあることを明言し、部下を死刑判決から救うことになります。
この裁判での岡田中将は堂々 -
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人生は運命によって定められているものではなく、その時の偶然の積み重ねでできているということを大岡昇平から学んだという友人の言葉に興味を持ち読んでみる。短い間短編集が、どれも戦争という大きな幕の中のそれぞれの出来事を書いている。出征から捕虜になるまで、色んな戦争の形がある。渇き、飢え、マラリア、襲撃。戦争というものにシニシズムな視点を持ち、現場の状況や心理に対して非常に冷静な分析力を発揮し、ガリガリと鉛筆で原稿用紙に出来事を刻んでいる様がうかんでくる。これを書くとき、とてもまともじゃいられないのではないかと思うのだが、さめた温度の文章がリアリズムを強く感じさせる。
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Posted by ブクログ
「野火」で初めて大岡昇平の作品を読み、壮絶な戦争体験の中での兵士の心理状態、とりわけシニシズムを余儀なくされる戦争の不条理が、深く心に刻まれた。
それと比較するとこの「靴の話」(特に前半)は決して読みやすくはない。しかし本書は、出征前の兵士の心理状態や戦線外での日常生活について知ることができる貴重な書である。私たちは戦争のことを思うときはつい戦線のことばかり想起するが、敵軍やゲリラとの銃撃はほんの一部であり、兵士たちが専ら苦しんだのはマラリアや渇きであったことから、異国の地へと送られた先でも「生活」があったことを改めて実感させられた。
最終章の「靴の話」は、死者の靴を奪うチャプター。靴の有無が