あらすじ
女の盛りを過ぎようとしていたホステス葉子は、大学教師松崎との愛人生活に終止符を打ち、古巣の銀座のバーに戻った。無垢なこころを持ちながら、遊戯のように次々と空しい恋愛を繰り返し、やがて睡眠薬自殺を遂げる。その桜花の幻のようにはかない生に捧げられた鎮魂の曲。実在の人物をモデルとして、抑制の効いた筆致によって、純粋なロマネスクの結構に仕立てた現代文学屈指の名作。
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Posted by ブクログ
『花影』の続きを、ラーメン屋で、頼んだ赤味噌ラーメン大盛りが出来上がるまで読んでいたら、まずい、落涙しそうになる。
この小説は、誰にも見られない場所、そう、たとえば、風呂の中だとかで読むべきだった。
体の底深い部分に振動がくる。
反射的に体がビクンと痙攣する。
いかん、いかん。
葉子に似ている女を、具体的に知っているわけではない。
葉子はそれ自体としては存在しない。
葉子はむしろ、男の感覚器を通して描かれているフシがある。
だから、自分の任意の経験が、容易に投影でき、追体験できる。
ラーメン屋で、まざまざと別れた女の背中が見えるのは、つらいことだ。
「はい、赤味噌大盛り」の声に、現実に返る。
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強烈に、はかない小説。
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書かれた当時の女性観に、やや違和感があります。
そこを乗り越えることができれば、味わえます。
いま読むと微妙です。
外国の小説という気分で読む必要がありそうです。
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『武蔵野夫人』は、いま読むと厳しいけれど、
この小説は生き残ったと言えます。
Posted by ブクログ
これはほぼノンフィクションで、葉子のモデルとなった坂本睦子を主人公として話が展開される。
作者の大岡昇平はこの小説になにを託したのか。自らの悔恨か、それとも青山に対する告発か。