大岡昇平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『花影』の続きを、ラーメン屋で、頼んだ赤味噌ラーメン大盛りが出来上がるまで読んでいたら、まずい、落涙しそうになる。
この小説は、誰にも見られない場所、そう、たとえば、風呂の中だとかで読むべきだった。
体の底深い部分に振動がくる。
反射的に体がビクンと痙攣する。
いかん、いかん。
葉子に似ている女を、具体的に知っているわけではない。
葉子はそれ自体としては存在しない。
葉子はむしろ、男の感覚器を通して描かれているフシがある。
だから、自分の任意の経験が、容易に投影でき、追体験できる。
ラーメン屋で、まざまざと別れた女の背中が見えるのは、つらいことだ。
「はい、赤味噌大盛り」の声に、現実に返る。
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強烈に、はかない小説。
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書かれた当時の女性観に、やや違和感があります。
そこを乗り越えることができれば、味わえます。
いま読むと微妙です。
外国の小説という気分で読む必要がありそうです。
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『武蔵野夫人』は、いま読むと厳しいけれど、
この小説は生き残ったと言えます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短めの小説だが内容には重量感があり戦争について考え直すきっかけになった。冒頭の「私の生命の維持が、私の属し、そのため私が生命を提供している国家から保障される限度は、この六本の芋に尽きていた。」という部分から戦争は他国からの加害だけでなく自国からの加害があったのではないかという視点を持つようになった。戦争文学ということもあり読んでワクワクするような作品ではないが自分自身のためになる作品だと感じた。またこの作品からはキリスト教的宗教観を節々に感じた。主人公が、死んだのちに自分を食べても良いと言った老人をキリストの変身かもしれないと考える場面はキリスト教におけるパンとワインの話を連想した。
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Posted by ブクログ
ネタバレ極限状態で人を殺すことと、人肉を食べること。この両者を隔てるものは何か、どれくらい隔たりがあるのか?という問いには答えが無いように思った。
主人公は何もかもが偶然の連続に過ぎないという冷徹な目を持ちながら、食人という一点ではその冷徹さがぐるりと覆ってしまう極端さを見せる。まるで正常と狂気を反復横跳びしているように。
食糧も物資も乏しいフィリピン戦線において、主人公は偶然の連続でたまたま人を殺して食べずに済んだが、偶然が連続するならばそこには神の意思があるのでは?と思うのは、この極限状態ではそうなるのではないか?むしろそうなる方が正常な心の動きだと感じる。
偶然の連続=野火の連続した目視によって主人公に刷りまこれただろう"戦争"のイメージ。『野火』の二文字を見ると私の脳裏にも本書の情景が蘇る。秀逸な題名だと思う。 -
Posted by ブクログ
大岡昇平が赴いていた戦地に戦友を弔う為に、ミンドロ島に向かう紀行文が、アメリカ軍などの資料を元に実際の当時の戦況を交えて描かれている。
日本軍への怒りが基本的にはあるのだが、戦記をなぞりながら、日本軍がアメリカ軍に与えた攻撃に効果があった際には喜んでいる様子も垣間見えて、一日本兵としての複雑な心境が窺えた。
しかし大岡昇平はちょっとフィリピン人に対して懐疑的すぎている気もする。案内してくれているガードが興味津々に持ち物について尋ねてくると、賄賂の要求かと思い物をあげたり、離れた町に行きたいとお願いしたら小さいバンカーボートを用意されたといい、行く気などなかったのではと落胆する。
しかしフィリピンは今でも主に使用しているのはバンカーボートなのであり、戦後復興もままなっていない当時ではまあそんなものではと思ってしまう。
読みながらGoogle mapsで地図を見ながらサンホセなどを探してみたら、砂糖工場跡地は今「heritage park」として、植樹されたアカシアとwwⅡ時の多少の大砲?などと共に保存されているようで、you tubeには映像もあり感慨深い気持ちになりました。
また、youtubeには米軍が44年にサンホセを撮影している映像がありました。