大岡昇平のレビュー一覧
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下巻に至って、いよいよファブリスとクレリアの純愛か、叔母のサンセヴェリーナ公爵夫人の盲愛・偏愛によるファブリスの不幸か、となります。
貴族ファブリスは恋のつまらないさや当てで、旅芸人の男を殺してしまい、当時(17~18世紀)のイタリア公国は「お手打ち」はおとがめなしなのだが、専制君子の大公の虫の居所によって、ファルネーゼ塔という監獄にいれられてしまったのでした。
美魔女とでもいうのでしょうか、宮廷の男性という男性を惹きつけてやまない貴族の娘のジーナ叔母(サンセヴェリーナ公爵夫人)は政治的手腕も長けていて、おまけにモスカ伯爵というもっと辣腕の大臣を巻き込み、監獄からファブリスを助け出すとい -
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主人公のファブリス・ヴァルセラ・デル・ドンゴは北イタリア・パルム公国、デル・ドンゴ侯爵の二男にして、出生の秘密あり。
時はナポレオンの遠征時代、フランス軍はミラノに入城、疲労困憊している軍中尉ロベールはデル・ドンゴ侯爵夫人の館に宿泊したというところから始まる。
ミラノの郊外コモ湖のほとりグリアンタのデル・ドンゴ侯爵城で、ファブリスは16歳になった。吝嗇な侯爵の父親に冷たくされるのは事情があるからで、ずばりフランスはスタンダールだね。
ともかく夢見がちな少年はナポレオンが再び遠征したと聞くと、イタリアの生家をとび出してワーテルローへはせ参じるのである。戦いの場で世間知らずのおぼっちゃん、ど -
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戦争文学の傑作。
戦争の最中に起きた筆者自身の心情や自分の行動を緻密に分析、客観視している。
本書の特徴は筆者の冷静さである。感情的な言葉で表せられることが多い戦争の事実や心情を彼は冷静に見つめ直し、表現している。
私のような戦争未経験者が戦争に触れるとき、"必ずしも"激しい怒りや悲しみを感じるわけではない。「直接経験していない」ことが常に我々に一定の冷静さを与える。本書における筆者の態度は戦争の悲惨さに対してある程度冷静にならざるおえない私の心情に近く、それが本書を読みやすくしている。激情や悲しみ、怒りを伴わずとも我々は置いてけぼりを食らわなくて済む。 -
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この映画を見ていなければ
この本は 読みきれなかったかも・・・・
裁判の やり取りなどが 多くてちょと難解な 部分もありました。
ノンフィクションのジャンルになるのでしょうか。
だから すいすいとは読めませんでした。
日本では 情報が手に入らず
公判30年を経て 裁判記録が公開されて
やっと入手した資料をもとに 描かれていました。
勿論 国内での 遺族からの資料もあったのですが
裁判の資料は欠くことのできないものです。
映画でも 凄い人だと思いましたが
岡田資中将の 人柄が とても良く描かれていました。
映画では 遺稿の 表現が あったか忘れましたが
巻末には 遺稿も収められていました。
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太平洋戦争後に"戦後派"と呼ばれる作家が登場しました。
その内、一般的に、戦争体験を通して感じたことや、その意味を論じる文学者たちを第一次戦後派と呼び、戦争体験如何に依らず、戦前の文士たちによって培われた小説技巧を昇華させ、新たな手法を取り入れることで優れた小説を生み出していった作家たちを第二次戦時派と呼びます。
大岡昇平氏は、第二次戦時派として真っ先に挙げられる作家だと思います。
本作『俘虜記』は、氏の戦争体験を元に書かれており、小説というよりも体験記に近い内容です。
ただ、他の戦争小説とは異なり、戦争の理不尽の中に置かれた人間の感情吐露などの批判や訴えかけを行っている -
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映画になった明日への遺言の原作ということで読んでみました。名古屋で空襲があったとき、不時着した米兵を処断した罪で戦犯となり、判決により絞首刑となった岡田中将について書かれています。裁判の様子が細かく、そして淡々と描かれています。
戦犯から逃れようとした、罪が軽くなるようにしたという話は聞いたことがありました。しかし、この岡田中将は当時の部下が減刑になるように、すべての責任を自分にというように仕向けながら裁判に挑んでいました。一方で、アメリカ兵のやり方も国際法に対して違反しているということも最後まで強く主張しました。
このような方がいらっしゃったということをこの作品を通して知りました。戦争につ -
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戦争に関する著書は、ノンフィクション、小説問わず数多くある。特に第二次世界大戦(太平洋戦争)に関する本は、星の数ほどあるだろう。その戦争の意義や勝敗の意味、その後の社会に与えた影響を分析する著作も枚挙にいとまがない。では、それらの著作の中で、戦争の最中に敵軍の俘虜となり、虜囚として過ごした日々を克明に著したものがどれほどあるだろう。
戦いの記録は山ほどあり、我々はそれらによって日本も諸外国もいかに苛烈を極めた戦闘を繰り広げてきたかということを程度の差こそあれ知っている。だが、翻ってみると、戦争で捉われの身となった俘虜が収容所でどんな生活を送ったのか、ということについては意外なほど無知である。 -
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◯俘虜の時代の生活を通して、当時の日本社会を風刺、と解説にあるが、俘虜の生活自体が風刺を意図としたフィクションなのかと考えた。
◯しかし、およそフィクションとは思えず、といって著者の実体験を基にした、記憶を思い起こした記録と考えても、想像していた俘虜の生活とは異なるものであることに驚かされた。
◯俘虜になるまでの極限状態と思考は、野火でも見られるように、その客観的な描写により真に迫る。
◯そこから場面が変わって俘虜の生活に入ると、その生活に慣れていくように、徐々に俘虜ということを忘れさせるように、一種モラトリアムな生活が見えてくる。殺されない限りはとにかく野性的に自然に見える。当然ながら、我々 -
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第二次大戦中に 無差別爆撃をした米軍パイロットを捕虜としてでなく、戦犯容疑者として扱ったことの妥当性について、法廷で闘った陸軍中将 岡田資を描いたノンフィクション
著者の命題は「なぜ 組織(東海軍)の名誉と 部下の命を 守るために、不条理な状況下でも 自決せず、冷静に 法廷で闘い抜いたのか」ではないか
命題に対する答えは
岡田資氏が 日蓮宗信者であり 現世の仏性を信じていた点、敗戦国が受ける不条理に立ち向かう正義の心を持っていた点 だと思う
法廷のやりとりは ノンフィクションの方が面白い。先が読めないというか、法廷そのものが生きている感じがする -
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太平洋戦争末期、南方で俘虜となった日本軍兵士たちの歪んだ心理状態をつぶさに書いている。
大岡昇平の著書を読んだことがなかったので、彼の作品の中からこの「俘虜記」を選んでみた。暗号手として任務についていた由である。とにかく大岡氏の学識の豊富さには驚いた。特に外国文学には精通しているようだ。当時一般の兵士で、英語が読め話せるということはかなりのインテリと言っていいだろう。軍隊ではこういう人物が訳の分からない上官からイジメを受けやすいそうだ。俘虜になってからは別だが。
私の叔父は海軍の航空機の整備兵だったと聞いている。あまり詳しいことはわからないが、やはりガダルカナル方面へ向かう途中、米軍