大岡昇平のレビュー一覧

  • 野火
    娘の学校で推薦図書の一冊になっていた本であるが、あまりに重い。戦争は本当に過酷だ。極度の飢えに襲われた時に、自分や周りの人間がどういうことになるか、あまりに恐ろしい。戦争文学とはどういうものかがわかる一冊である。
  • 花影
    水商売をし、男をてんてんと渡り歩く女の話。死ぬことを生きがいにしている描写に、精神疾患を持つ私としては妙に共感してしまった。また、服毒する前の儀式のような行動にはへんな安寧があって、美しささえあった。これがフィクションなら、「美しい」だけで終わったものの、モデルがいるという解説には少し胸を締め付けら...続きを読む
  • 靴の話 大岡昇平戦争小説集
    「大岡昇平」の戦争小説集『靴の話―大岡昇平戦争小説集』を読みました。

    『野火』に続き「大岡昇平」の戦争小説です。

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    太平洋戦争中、フィリピンの山中でアメリカ兵を目前にした私が「射たなかった」のはなぜだったのか。
    自らの体験を精緻で徹底的な自己検証で追...続きを読む
  • 武蔵野夫人

    話の流れは好きだが、とにかく心理描写が読みづらいの一言。
    この海外文学の手法を文学的に楽しめるか否かは分かれると思うが、まどろっこしさを感じてしまう人は一定数いそう。
  • 俘虜記
    なかなか難解な小説である。泥水を啜り、人肉を食しながら生存した兵士の戦争体験物語を想像するなら、全く見当違いである。
    作者は会社員を経て、京大卒のスタンダールやドストエフスキーの研究者であり、批評家でもあった。
    本作品は、氏の鋭敏な感性で自己の戦争体験を細密に分析した戦争文学である。
    大岡昇平は、昭...続きを読む
  • 野火
    あらかじめ覚悟していたせいか思った程エグさは感じなかった。
    エリートと言うか知的な人間が戦場を見るとこんな感じなのかと妙に感心。
  • レイテ戦記(一)
    レイテ島戦記は「日米の雌雄を決する天王山」と言われたレイテ島での戦いを描いた大岡昇平の小説である。

    レイテ島の戦いに関する日米両国の膨大な資料をもとに、旧日本軍がどう戦い、玉砕していったかが克明に記されている。



  • 中原中也詩集
    詩集初心者、初めに中原中也を選びました。
    正直に言うと難しかった!
    当たり前だけどやっぱり詩だし、抽象的だし、授業みたいに解説してくれる先生もいないし。でも、心に残し続けたいと思った。難しいから匙を投げるんじゃなくて、もっと時間をかけて理解していきたい。
  • 愛について
    “この道はどこへ行くんでしょうか”―。偶然の邂逅から始まる若い男女の愛。その二年後の妻の謎の事故死。現代の市民社会とその風俗の中に、男と女、家庭、“愛の死と再生”のテーマを“連環”する十章で問う。『レイテ戦記』の著者・スタンダリアン大岡昇平の明晰な認識と意志的試みで構築する独創的恋愛小説。
  • 俘虜記
    旺文社文庫版で読んだ。

    自分が期待していたのは、捕虜という特殊な立場に置かれた人間の内面だった。
    この作品は当時の状況を俯瞰的に眺める立場をとっているので自分の期待していたものとは違っていて読むのがしんどかった。地名とか人名がどんどん出てくるのでよく分からなくなってしまった。

    当時の記録として読...続きを読む
  • 靴の話 大岡昇平戦争小説集
    昭和19年、35歳で召集。
    <私は改めて周囲の米兵を観察し始めた>
    捕虜となっても、冷静な姿勢を崩さないことに驚く、「捉まるまで」から。
    表題作「靴の話」は、ゴム底鮫皮の軍靴は脆く、山中の逃避行でダメになる。
    死んだ僚友から靴を奪いそれを履くというもの。
    <こういう脆い靴で兵士に戦うことを強いた国...続きを読む
  • 大岡昇平
    武蔵野夫人、俘虜記など戦争と戦後を描いた有名な
    話。初めて読みました。
    俘虜記は始めて、戦争というか、戦闘やジャングルでの
    逃走をリアルに淡々と描かれてあるような感じをもちました。
  • 靴の話 大岡昇平戦争小説集
    食わず嫌いで読んでいなかった大岡昇平。
    偏見なんだが、軍隊の悪口のオンパレード、何もかも軍のせい、っていうのかと思ってた。
    私の方が偏ってたわけである。

    なんでこうも冷静なのか。
    兵隊になったり、一般人になったりする瞬間が右往左往する「捉まるまで」
    戦争に行くとき、作家の仲間に「経験じゃなく魂を書...続きを読む
  • 俘虜記
    大岡昇平については、私は完全に食わず嫌いをしていた。
    よく見かける、生きて帰った途端、軍はだめだって言い出す人の作品だと思っていたのだ。

    ところがどっこい(死語?)、全然違う。
    戦争、というより日本人ということを突きつけられる。厳しい、との一言。

    今でも俘虜ではないか、という一文がねぇ…言葉もな...続きを読む
  • ながい旅
    「明日への遺言」の原作
    B級戦犯として起訴された岡田資中将の裁判の記録です。
    小説ではなく、レポートです。
    なので、ぶっちゃけ読みにくいです

    この裁判の論点は大きく2つ
    (1)岡田中将が死刑の判決を下した米兵は俘虜なのか戦争犯罪人なのか?
    (2)その判決を下したときのプロセス

    結果、米兵は無差別...続きを読む
  • 靴の話 大岡昇平戦争小説集
    人生は運命によって定められているものではなく、その時の偶然の積み重ねでできているということを大岡昇平から学んだという友人の言葉に興味を持ち読んでみる。短い間短編集が、どれも戦争という大きな幕の中のそれぞれの出来事を書いている。出征から捕虜になるまで、色んな戦争の形がある。渇き、飢え、マラリア、襲撃。...続きを読む
  • 靴の話 大岡昇平戦争小説集
    「野火」で初めて大岡昇平の作品を読み、壮絶な戦争体験の中での兵士の心理状態、とりわけシニシズムを余儀なくされる戦争の不条理が、深く心に刻まれた。
    それと比較するとこの「靴の話」(特に前半)は決して読みやすくはない。しかし本書は、出征前の兵士の心理状態や戦線外での日常生活について知ることができる貴重な...続きを読む
  • 武蔵野夫人
    大岡昇平の作品は実はこれが初めてだったが、意外や意外、すらすら読めた。
    昼ドラのようだが、そうではない。
    登場人物達の距離感が好きだなぁと思った
    のは覚えているが、細部を大分忘れてしまった。
    再読しよう。
  • 俘虜記
    20141227 スラスラは読めない戦争の記録。戦う事には悲惨な現実も伴うという事を知っておいてもらいたい。ゲームとは違う生身の生を理解するために若い人に読み続けてもらいたい。
  • 中原中也
    作品やルックスからは繊細で寡黙なイメージを抱くが、
    中原中也はなかなかめんどくさくて複雑な人間だ。

    文学上の友として喧嘩したり嫉妬しあったりと、
    中原と筆者の関係は常に友好的であったわけではないようだが、
    冷静な分析は非常に説得力がある。
    その一方で、長い年月を経たからこそ感じる、若くして亡くなっ...続きを読む