井上雅彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ15人の作家さんの短編集で、今回は「屍者の凱旋」というテーマ。
今回も背筋さんの名前が入ってる! あ、最近気になってる芦花公園さんも入ってるし、なんやかんや言いながら惹きつけられてる平山夢明さんのお名前もある…
というわけでお迎えしました。
でも「屍者」だからゾンビなんだろうな〜、ホラーは好きだけどゾンビはちょっと苦手だしな〜って、お迎えしときながらしばらく積読。それで、本の整理をしないといけない状況になった最近、ようやく読み出したんだけど。
一つ一つのお話は短いのに、異形コレクションの短編は毎回なんか中身が濃いというか、読んだ後すぐ次のお話に行けない、余韻がすごくて気持ちが落ち着くまで時間がかかるというか…
そんなんで、今回も1話ずつタイトル気になった順に読みました。
印象的だったのは、
織守きょうやさんの「ハネムーン」
最東対地さんの「コール・カダブル」
織守さんのは、THEゾンビっていう感じのが出ては来るんだけど、お話の流れとしては恋愛もの(だと思う)。この二人には幸せになって欲しい… でも多分、悲しい結末にもなりそうな雰囲気が漂っている終わり方にも見えて…切ない。。
最初、先に読んだ芦花公園さんの作品と少し似てるなぁとも感じだけど(主人公がお相手のお世話をするとことか)、それはほんとに最初だけで、2人の関係性は違うし何より結末が全然違った。
芦花公園さんのお話も面白かったんだけど、今回は織守さんの切なさに惹かれました。
(芦花公園さんのは後半急に展開が変わる。そっち行くか〜って複雑な気持ちになったけど、タイトルの意味が分かる人には多分最初から筋が想像つくのかも。私は疎いから分からなくて、それはそれで素直に騙されたし面白かった)
最東さんのは、こういう展開に今まで出会ったことがなくて。でも確かに「屍者」ですよね。
愛する人の死に直面した時私ならどうするかな…とか色々考えもしたし、古くからある宗教が下地なのに近未来を想像させる、こういう未来はあり得ないだろうけど起こりそうな雰囲気も漂わしている、そういうところに惹かれました。
「屍者」の捉え方のバリエーションが作家さんによって様々で、読んで良かったです。
ゾンビ苦手だから…って積読したままにしなくて良かった〜
背筋さんありがとう、背筋さんを選んでくださった井上雅彦さんありがとう(異形コレクションで毎回同じこと言ってる笑) -
Posted by ブクログ
短編集。共通のテーマでかかれている。なぜか日本の高原にあるのに、年越しの夜にオーロラが見えるグランドホテル極(きわみ)。オーロラを見たものは幸福になるという噂がある。そして、とんでもない高級ホテルであること、地図にも載っていない。そんなホテルに登場人物たちはかかわります。多くの者は宿泊者。…こんな設定なので、だいたいホラーめいてます。明るい話が好きな人は向いてません。作者が今をときめくミステリ作家多いので、色々読んでみたい人向け。テーマが整っていて、暗めだけど頭がとっちらかずに読みやすかったです。
北沢陶「蛇のナイフ」
仲の悪い夫婦と子どもで宿泊。子どもが仲良くなったのは人なのか?それとも。
澤村伊智「ネーブルサンシャイン」
できの悪い妹と何でも屋をやっている。今回は一緒にホテルに泊まって欲しい依頼者。
背筋「雑な神隠し」
俺は自分の家に恐ろしくて帰れない。そもそも、なにか忘れているような?
坂崎かおる「ミセス・ベルベディア」
車が好きでホテルで車移動などもやっている俺。ベルベディアには奇妙な依頼があった。
王谷晶「大宴会」
宴会のバイトで働いていた私。この宴会の目的はなに?
久永実木彦「ジェイルハウス・ロック」
ライバルから送り込まれてきた刺客を極が排除する方法はブラックファンタジー。ミニチュアハウスのふわふわした感じが怖い。
柴田勝家「扉をひらいて」
先輩からホテルマンのバイトに誘われた俺は何度も失敗してループから抜け出せない。
宮澤伊織「ホテル・リミナル・アスレチック」
怪異体質の私たちはこのホテルでアスレチックをする羽目になる。
平山夢明「237号室」
戦場にいたはずなのになぜかホテルに避難する。
斜線堂有紀「スウィミングプール」
小説家はスランプになると、このホテルで泳ぐ。
篠たまき「雪まつげ」
このホテルのお湯は特別らしい。私はお湯に向いている体質。
芦花公園「イカボドの栄光」
オーロラをみていると私の前から人が消えていく。
空木春宵「見えざる光の、その先の、」
盲目の主人公は妻が望んだこのホテルに来た。チェンバロの音があるべき場所から聞こえないのはなぜなのか?
上田早夕里「忘却のグランデセール」
菓子のコンテストで優勝の自信あったのに、負けた男から俺はあるホテルのカフェ部門へ誘われる。
井上雅彦「極のチェックアウトーあるいは、長逗留の危険」
本を起点にしたような時空がねじれる体験、これは幻?モスラとはなんだったのか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2003年6月刊の#26『夏のグランドホテル』以来23年ぶりの「グランドホテル」。今回は都心からそう遠くない山間の瀟洒なホテルでの、年越しの一夜という設定での15編。全般を通じ、怖さや驚きよりもどこか哀感と一抹の救いがふわりと漂っていたような読後感。
特に印象に残った5編。
・ホテルの地下駐車場に客から長年に亘り"預かっている"米国製の'58年型プリムス・ベルベディア。年に一度、大晦日にこの車を動かすことを客から依頼されており、その役を任されたバレーパーキング係のカワサキは、ベルベディアを運転しながら、在りし日の父と、そして母との記憶を蘇らせる―(ミセス・ベルベディア/坂崎かおる)。カーラジオの声と共に蘇る閉ざされていた記憶は苦く、ただ物悲しい。
・競合ホテルから破壊工作の密命を帯びて〈グランドホテル 極〉を訪れた朽名は、ホテルのロビーに飾られた精巧なホテルのミニチュア模型が目に留まる(ジェイルハウス・ロック/久永実木彦)。〈グランドホテル 極〉のセキュリティはこうなっているのか。タイトルが三重の意味を持っているのも面白い。ラストは希望の含むバッドエンド、か。
・スランプに陥った作家の"私"はホテルのプールの水中に折檻を受ける女の姿を幻視する。それをきっかけにスランプからは脱出するが―(スウィミング・プール/斜線堂有紀)。作家がグランドホテルに通う動機は、小説家のみならず他のクリエイティブな職種の人全てに共通する怖さなんだろう、と。
・グランドホテル内の〈珈琲店トルシュ〉で年に一度、大晦日にだけ提供される限定スイーツセット。パティシェ占部からの招待を受けてホテルを訪れた俺は―(忘却のグランデセール/上田早夕里)。グランドホテルの魔法はスイーツにも。主人公が選択したのは永く続く甘さではなく、爽やかさを感じるビターな後味だったのかも。
・〈グランドホテル 極〉に長期滞在していると思しき客の一人語りは、やがて……(極のチェックアウト―あるいは、長逗留の危険/井上雅彦)。これはもう監修者だからこそ可能なお遊びたっぷりの一編。あの悪名高いメニューに言及されているのがウレシイw。文字通り、〈グランドホテル 極〉宿泊のおみやげ。
その他の作品は―
・A girl meets A misterious boy.(蛇のナイフ/北沢陶)
・澤村伊智の一人称作品に油断する勿れ。(ネーブルサンシャイン/澤村伊智)
・オーロラにかけた願い事は叶えられていたわけ、だが。(雑な神隠し/背筋)
・狂宴の主賓はホテルの客やスタッフではなく。(大宴会/王谷晶)
・このホテルに来る“お化け”は二つの意味を持つ。(扉を開いて/柴田勝家)
・霊感0の怪談師と怪異を呼び寄せる同居人コンビが迷い込んだのは。(ホテル・リミナル・アスレチック/宮澤伊織)
・戦地とも地続きの今回のグランドホテル。否、ホテル自体が異界なのか(237号室/平山夢明)
・ホテルに“選ばれた”女は強くなる。(雪まつげ/篠たまき)
・オーロラの下で続けられる告解。(イカボドの栄光/芦花公園)
・己の身体とホテル全体が一つになる感覚。(見えざる光の、その先の、/空木春宵)
……過去の〈グランドホテル〉2冊も再読したくなったのに、手元に無いのが何とも無念。 -
Posted by ブクログ
読みやすいホラー短編で読みやすかった!
個人的に好きな作品は
●綾川行人の「再生」
テレビでタレントが、「切れ味の良すぎる包丁で自分の指の一部を切り落としてしまって、しばらく経ったらその切り落とした部分が生えてきたんですよ!」って話してたのを思い出した。
人間の再生力の限界ってどこなんやろう?ってこの話を読んでまた思った(^^)不気味なお話です。
●福澤徹三の「五月の陥穽」
窓際族の影の薄いサラリーマンが屋上で昼休憩してて落としそうになったタバコを拾おうとしたらビルとビルの隙間に落ちてしまって、その隙間に挟まってしまってさぁどうしよう!ってお話。
サラリーマンとしても夫としても影が薄い主人公が気の毒でしたが、臨場感あって、しかも実際に起こりそうな話で面白かった! -
Posted by ブクログ
ホラー。短編集。
テーマは屍者。大体はゾンビ。
テーマが好きすぎて、どの作品も面白い。
グロイ作品から緩い雰囲気の作品も。
基本はグロが好みだが、コミカルなホラーも結構好き。
今読むべきホラー作家の顔触れが分かるのもありがたい。
ビジュアル的には上田早夕里「ゾンビはなぜ笑う」、作品の構造的には空木春宵「ESのフラグメンツ」が印象的。
特に好きなのは以下2作品。
久永実木彦「風に吹かれて」
風に吹かれるし死体。どうしたらこんな発想ができるのか…。『わたしたちの怪獣』でも思ったが、この著者のアイディアは凄い。
斜線堂有紀「肉霊芝」
臓器のなる木。相変わらずエグイ世界観、実はいつもより控えめか? -
Posted by ブクログ
異形コレクションアンソロジーLVII
墓地から這い出るもの、闇を彷徨い、群れ集うもの……。多種多様なゾンビが跋扈する世界。
生ける屍を巡る15篇。
ゾンビをテーマにしたアンソロジー。
一言でゾンビと言っても、ホラーからSF、ファンタジー。いわゆる一般的に想像する動く死体というグロテスクなものから、死者との恋や近しい人を亡くした喪失感を描いたもの、ゾンビになった後の自我を描いたもの、ゾンビの存在する世界での人間の醜さを描いたものなど千差万別、15話それぞれの「生きる屍」の物語を楽しめます。
どれも外れなく面白い。
印象的だった話をいくつか紹介。
『ESのフラグメンツ』空木春宵
実験的なページ構成で紡がれるゾンビ(作中ではフラヌーズ)の少女の話。
ゴスロリ姿でふわふわ街を歩く少女の姿は、ゾンビ小説と思えないくらい退廃的で甘美で美しい。ラストシーンもとても好き。
『ゾンビはなぜ笑う』上田早夕里
ゾンビ(作中では異種)になるメカニズム、ゾンビから見た周囲の認知などの描き方が好きです。悲しいけど優しい、どこか幸せな話な気もする。
『肉霊芝』斜線堂有紀
肉の森のグロテスクな描写、都合のいいように改変されていく記憶と歴史に、人間の弱さが見えて好きです。
-
Posted by ブクログ
異形コレクション。「生ける屍者」「ゾンビ」をテーマにしたアンソロジー。
テーマがテーマだけにグロテスクな表現も多いのですが、このアンソロは好みの短篇がたくさん納められているので好きです。
以下印象的だった作品。
久永実木彦「風に吹かれて」
2030年代の未来、死んだ者は腐って朽ちていくのではなく、なぜかふわふわと風船のように浮かぶようになった。墓石に繋がれて色とりどりの衣装を纏った死者たちが空に浮かぶ墓地の墓守を務める男の物語。
グロさも怖さもなく、優しさを感じる物語で一番好きだった。
黒木あるじ「猫に卵を抱かせるな」
死者を復活させる能力を持つ少女マオとその弟を名乗るビョウト。マオの力でイタリアマフィアのドンの死んだ娘を生き返らせるが…
短い中に独特の世界観や意外な結末が盛り込まれていてお見事。長編で読みたいくらい。
斜線堂有紀「肉霊芝」
人間の臓器が実る巨大な肉の森、肉霊芝(にくれいし)人類はそこに実る臓器を使って伝染病やウイルスに打ち勝ってきた。肉霊芝とは一体何なのか、それははるか昔、シュカという一人の姫の時代にさかのぼる。
静かに爆発の時を待っている未知のウイルスを思わせるオチが怖すぎる。
どの作品も面白くて満足です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ今回は乗り物がテーマだ!
読んだ後落ち込むタイプの話が多かった印象がある。
怒ったり、逆に元気が出せるコンディションの時に読むのがよろしいと思います。
・可愛いミミ
ミミかわいい〜〜〜〜〜
一途でいじらしくて凶悪で。どうかネネちゃんと一緒に幸せになってほしい。
・封印
時間をかけてゆっくりと醸成された感情って自分でも理解できない何かになってしまうんだろうな。叔父さんは結局それを解放できなかったけど、主人公は成し遂げられてよかった。地震があろうとなかろうと最早関係ない行動力には叔父さんもご満悦でしょう。
・車の軋る町
妖怪だ〜〜〜〜〜っっ!!!しかもバキバキに理不尽でちょっと笑っちゃうタイプのやつ!やったね!触らぬ神に祟りなしって言ったって、四方八方どこが姫の怒髪天か分からないんじゃどうしようもないじゃない。
・カイアファの行かない地獄
お見事です。もう本当に最悪。宗教オマージュと現代の凶悪犯罪の親和性の高さにいっそ見惚れてしまうな。悔い改めることができない者には落ちる場所さえ与えられないんだ。それはある種、被害者にとっては救いなのかもしれない。
・くるまのうた
子供の頃狂ったように読んでいた眉唾物の怪談本と大好きだった豆腐の移動販売車のラッパの音を思い出して、これが郷愁の念か...としみじみした。好きだったな移動販売車。怖いと思ったことはなかったけど、子供の頃に作中の怪談を読んでいたらビビリ散らかしていただろうな。
・ドンキの駐車場から出られない
愛美の有名怪談全盛定食がよかった。そんな、倍速で映画みるみたいなスピード感で怪異が起きたら怖がる暇なさそう。
・天眼通の夢
今回のテーマで出てくる乗り物の中で特に好きなやつ。自分の子供を回数券扱いする倫理観のなさがとてもいい。そもそも倫理観を邪念と呼称するのが最高だ。頑張れ主人公お前なら先生と幸せになれる。
・電車家族
今回の本の中で一番怖かった。同じ車両にどう対応したらいいか分からない人がいた時の張り詰めた空気感に身に覚えがあるが故に他人事じゃなくて本当に怖かった。
あの狭い空間に知らない人間がぎゅうぎゅうに詰まってるの自体、よく考えたら本当に怖くて、そこに一見絆で結ばれたように見える集団が存在する異物感とその集団ですら実は、という二重構造が効いている。
・車夫と三匹の妖狐
妖怪だ〜〜〜〜〜〜〜!!!!ダークヒーロー的な味わいのあるやつだ!!人の世に紛れて目眩く饗宴が今もどこかで開かれているかもしれない喜びと、人間の愚かさが留まることなく加速していく虚しさが美しく織り込まれている。最後がね、すごくいいですね。
・帰投
今回のテーマで出てくる乗り物の中で特に好きなやつ。
超能力だから腸ですか?おもろ。と思っていられたのも束の間。人間としての運用を想定していませんのでを仔細に見せられると流石に辛い。空に憧れる気持ちをどうしたって捨てられない夏日のことを思うと悔しくなっちゃうな。
それはそれとしてクズ石は何個かまとめてセットで販売しますみたいな運用には正直興奮もしました。最悪だよ。
・真形白縫譚 蜘蛛絲怨道行
共感が先立つせいで読んでいて非常に辛い気持ちになるんだけど、だからこそラストで救われた気分になって、こういう話が今読みたかったんだなと思った。
自分の怨みを自分で晴らして自由に、って走り抜けた結果として姫と土蜘蛛があの会話をしてくれたならもういいよ。
・スイゼンジと一緒
悪人じゃないけどどうしようもないから悪事に加担するしかない心根の優しい終わった男を書いたら世界一の平山夢明が書く悪人じゃないけどどうしようもないから悪事に加担するしからない心根の優しい終わった男の話です。ありがとう。
・男爵を呼ぶ声
犬ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
お前がナンバーワンです。
幽霊馬車ってロマンがあっていいな。お迎えが来るなら幽霊馬車がいい。
・カーラボスに乗って
こういう話大好きなんで大変助かりました。そうそう簡単に改心するなら先ず大量殺人をしないだろ、というのは本人たちも被害者側も当然思ってるよね。カイアファの〜でも触れたけど、死をもって罪を濯ぐことはできないし、それじゃ腹の虫が治まらない被害者遺族がカスどもをどうにかしようとした結果としてああいうタイプの永遠を与える結末は確かに必定なのかもしれない。ゴロウたちはきっと考えるのをやめることもできないんだろうし。
・キャラセルは誘う
永遠にメリーゴーランドに乗っていたいという気持ちがあるのでそわそわしてしまった。
サナトリウムという場所が想像させる寂しさと、建築物そのものが放つ怪しさ、秘密の気配が物語をひどく魅力的にしていて、私も地下に行きたいんですが、とキャラセルちゃんに縋りたくなった。
・スーパーエクスプレス・イリュージョン
倦み疲れた爺と結果として爺の残りの人生全て奪って死んだ女の物語を、観客席で結果だけ見せられるもどかしさと気持ちよさったら、癖になっちゃいそう。
隠遁生活するジジイが好きなんですよね。