井上雅彦のレビュー一覧
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ネタバレ――
さてこうして本棚にひとつ闇色の背表紙が加わったわけですが、その一点はじわじわと拡がりやがて本棚全体を覆い隠す――って、そもそも「本棚」とか「書庫」ってのもホラーちっくな響きがありますな。なんか生まれないかなうちの本棚からも。
引っ越して納戸が出来たので本棚作ったんだけど、思ったより持ってる本少なかった。もっと沢山読みたいですなぁ。今年はがんばろ。
SF、ホラー、ミステリというなんとかトライアングルから抜け出せずに死んでいくんだと思う。はふう。
1997年から刊行されているダーク・ホラー・アンソロジー。そのシリーズ50巻のという記念すべき一冊を、本をテーマにして編むあたり、本の怖さというものをひしひしと感じるのでした。
本は本の創り手を増殖させてゆく、と序文にもあるけれど、作者の意図からも外れて自己増殖していくとも云える本はある種もう、生きてると云えるんじゃなかろうか。
全体的に百物語ちっくというか、語られる物語の端を捉えて次の物語が語られる…って雰囲気があるのも、そういうホラーの自己増殖感が出てて良かったです。にしても新旧問わずの名だたる作家が語り継ぐ百物語、なんて贅沢なんでしょう。
特に印象に残ったものをいくつか。
柴田勝家『書骸』
戦国武将みたいな名前の作家ランキング1位。御本人もネタにしてるというか由来がそうなんだからいいよね…? Wikipediaに大真面目に「この項目では、織田信長の部下について説明しています。現代のSF作家については「柴田勝家 (作家)」をご覧ください。」って書いてあるのまじで笑える。
圧巻の不気味さと着想。中盤からなんとなくラストの展開は読めてくるものの、解っていても怖い道をじわじわと進んでいって最後の角を曲がる感じはホラーの真骨頂でもある。その道程を語り口と豊かな筆でこうも読ませてくれるとなるともうお手上げである。ああ怖い! ってー開放感はなんなんでしょうね。
真藤順丈『ブックマン――ありえざる奇書の年代記』
岸辺露伴によるバトロワ系ホラー(笑 そもそも岸辺露伴が設定的にズルすぎるんだよね…みんななんとなく心の隅で思い描いているものをあんなに魅力的に形にされては。
緻密な文章と設定力と、広い世界観が読ませる。日常的な描写から物語内の物語にひと息にスライドする技量も見事。その上でミステリ的な展開もあって、とても楽しめました。
朝松健『外法経』
朝松健の〈室町ゴシック〉と銘打たれていますが、こういうの読みたかった! これは良い。
やはり怪異と云えば中世日本の不穏さが光る。大人の一休さん譚。たまらん。
ほんとに読み応えばっちりですが、ちょっと疲れます。良いホラー見たあとって疲れるのと一緒ね。
以下、澤村伊智『恐』からの引用になるけれど、ホラーというものを端的に表わしていて凄くしっくりきたので、まぁこういう気持ちで読んでください。
“こうしたアンソロジーの解説にありがちな「人間にとって最も恐ろしいものは不可避で未知なる『死』であり、怖い話はその恐怖を予習することで緩和させるための手段」といった趣旨の文章も、したがって三つの点で誤りだと私は考える。死を絶対的恐怖だと定義している点。絶対的恐怖というものがどこかに必ずあると見做している点。そして怖い話に、ビジネス書やノウハウ本のような社会的意義、有用性を見出そうとしている点。”
と、これが巻末の解説からの引用ではない、というのも面白いところ。左様にそれぞれ趣向を凝らされた短編のあつまりなので、きっと気に入る1編があるはず。
こりゃ新しい沼だな…
☆4つけときます。怖いんで。 -
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1番ワクワクしたのは牧野修さんの『ブリーフ提督とイカれた潮干狩り』。最近流行りの異世界ものの設定も、牧野さんにかかればこの仕上がり。これが続編らしいので第1作もチェックしないと。
共感したのは斜線堂有紀さんの『ドッペルイェーガー』。たとえ頭の中でどんなことを考えていようと、相手に見せる顔もまた真実。人間関係で悩んだ時にいつも思うようにしていることなので。
イメージが鮮烈だったのは空木春宵さんの『夜の、光の、その目見の、』。シュメール神話になぞらえて進むストーリ展開が好みドストライク。夜を舞台に現実と幻想が入り混じる。女性の生きにくさについて語られている点も良かった。終わり方は『異形コレクション』にしてはあるまじき(?)爽やかさ。
上田早夕里さんのファンだったので購入したのだけれど、共通のテーマでテイストの違う作品が読めて楽しかった。夜湯船に浸かりながら一話ずつ堪能。気分転換にピッタリの一冊だった。 -
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異形コレクション、今回のテーマは「秘密」。広大にして深遠なテーマなので、バリエーションに期待できます。そもそも怪奇幻想のジャンルには必ずと言っていいほど「秘密」が隠されていそうですよね。
お気に入りは澤村伊智「貍 または怪談という名の作り話」。これ、なかなか気づけませんでしたが。気づいたとたん恐怖は笑いになり、しかしやっぱりとんでもない恐怖に陥ることになります。よりにもよってあれを怪談にしてしまうだなんて……なんと恐ろしいことを。
一番恐ろしいかもしれない作品は斜線堂有紀「死して屍知る者無し」。人間は死後動物に転化するというコミュニティを描いた物語。一見ファンタジックに思えつつ、この恐怖はあまりに現実的で恐ろしいです。しかも普通ならそうでもないのだけれど、その世界でこその「常識」があったゆえに、それが崩れ去ることの恐ろしさといったら!
井上雅彦「夏の吹雪」もなんとも素敵な作品。恐怖よりも美しさがひたすらに印象的です。 -
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「星新一ショートショート・コンテスト」でデビューし、以後も活躍を続ける作家・井上雅彦監修による、全編書き下ろしのテーマ・ホラーアンソロジーのシリーズ。それが「異形コレクション」。1998年にスタートして以来、2011年の48巻(!)までそのすべてを氏が企画・監修し、総勢200人以上の作家が参加した伝説的なシリーズながら、震災の影響を受け、その後は長く企画を見送られていました。
しかし昨年、9年ぶりに満を持してのシリーズ再開が発表され、49巻目となる『ダーク・ロマンス 異形コレクションXLIX』は、大きな反響とともに迎えられました。
ホラーアンソロジーを謳うものの、その収録作は幻想ファンタジーにSF、伝奇にミステリと常にバラエティ豊か。モードファッション界でトレンドだった「ダーク・ロマンティック」に着想を得たという今回のテーマ――『ダーク・ロマンス』への豪華な執筆陣によるアンサーもまた、いずれ劣らぬ粒ぞろいの作品群です。
ヴィクトリア朝時代イギリス。芸術家の卵たちが暮らす屋敷にやってきた、肖像画を描いて欲しいという黒い面紗(ヴェール)で顔を隠した貴婦人を巡る不穏な昔話(「黒い面紗の」篠田真由美)。“ホラー映画の現場で怪現象が起こる”ホラー映画を撮影する現場。相次ぐトラブルやスタッフの降板により製作は遅れに遅れ、「呪われている」と噂される映画の参加オファーを受けた編集マンは、映像に不可解な影が映り込んでいることに気づく(「禍 または2010年代の恐怖映画」澤村伊智)。草原の民である部族に生まれた少年は、毒草を飲まされ倒れているところを美しく艶やかな謎の青年・ゲンギケイに助けられた。東の国から逃げ延びてきたというゲンギケイは乗馬や狩り、話術にも長け、以来部族に溶け込んでいたが……(「兇帝戦始」伴名錬)。小さく貧しい港町で、異形生物の化石掘りとその加工で生活する紗奈。街の外の世界と学問への憧れを抱く少女は、浜辺で出逢った見知らぬ女性に「あなたのような子を探していたの」と告げられる(「化石屋少女と夜の影」上田早夕里)。
他、菊地秀行や平山夢明に真藤順丈と、ベテランから新鋭まで贅沢な顔ぶれが並ぶ、目眩がするほど絢爛たる、まさに“異形”のショーケース。
昨年は記念すべき50巻となる『蠱惑の本』が、そしてこの6月には早くも51巻『秘密』も刊行されるとのことで、スタイリッシュにリニューアルされた装幀とともに、今後がさらに楽しみなシリーズ。震えて待ちたい。 -
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お伽話のようにメルヘンチック、だけれど少しばかり恐ろしいような気もする「妖精」たち。実際には存在しないはずのそれを視ることができるらしい謎の青年ファーブル君。彼が見ているものはいったい何なのか。そして妖精たちの物語になぞらえて、現実の事件の真実が思いもよらないところから語られる、ファンタジックな要素もある連作ミステリ。
読み始めた雰囲気としては、ファンタジー路線かなと思いましたが。たしかに雰囲気はファンタジーながら、きっちりとミステリ。一見甘やかに見える空想の世界に潜む、鋭いとげのような現実の手掛かりが効いています。幻想的な空気に流されてふわっと読んでいたら、まさかこんなところに真相があったのか! という驚き。事件そのものには超常的要素はまったくないのですが、それでもこのファンタジックな読み心地は何とも心地よくって不思議です。とても美しい一冊でした。 -
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異形コレクションはこれがはじめて。
どれも面白かった。
中でも好きだったのは以下の5つ。
『ルボワットの匣』
一族に伝わる美術工芸品をめぐるモダンホラー。
忌まわしい匣の正体とは…。
『禍 または2010年代の恐怖映画』
ホラー映画の撮影班たちを襲う怪奇現象。
やっぱり澤村伊智のホラーは安定して面白い。
『馬鹿な奴から死んでいく』
SFホラーアクション。
勢いと、爽快なんだか悲惨なんだかなんともいえない気持ちになるしめかたが好き。
『ストライガ』
ユカリとアオイの視点ですすむ、猟奇的な愛の話。
グロテスクで倫理観がなかなかにやばいが、それでも事の真相が好み。
『いつか聴こえなくなる唄』
SFであり、ロマンティックな話。
平山夢明にしてはグロさもたいしてなく、話も純粋にいい話だなぁと、思ったけど…。 -
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収録作
井上雅彦「デモン・ウォーズ」
田中啓文「糞臭の沼」
友成純一「魔物の沼」
菊池秀行「甘い告白」
井上氏作品:本当にパロディ満載で、井上作品の中ではかなり読みやすい物だと感じた。
田中氏作品:「あぁ、田中さんね、やっぱりねぇ…。」となんとも言えない笑いが浮かぶ一作。
前半の良い意味での「胸が悪くなる」感じも印象的だが、
後半のふざけてるような、真面目なような、スピード感のある展開には引きこまれてしまった。
そして、大爆笑。。。w
友成氏作品:もっとも個人的にインパクトのあった作品。
後半はやや失速感もあったけど、前半までの暗黒緋色の世界に魂は翻弄される。
菊池氏作品:スピード感満載の一作。
さっくり読めて、後味も悪くない。
食後の一服という感じでよい締めになりました。 -
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実は(?)本日引越しでした。世の中、やっぱり何でもその道のプロに任せるのが一番!今日は運送屋さんからガス屋さん、はたまたインテリアデザイナーの方まで「引越し」というテーマでお話ができなかなか楽しい一時を過ごせました。クタクタですけどね・・・。なので今日は引越しに関連付けて「都市」をテーマにした一冊を。
みなさん都市伝説ってご存知ですか?平たく言えば「うわさ」ですが、特に妙に真実味のある奇妙な噂を総称して「都市伝説」と名付けている気がします。良く知られている例として"口さけ女"や"学校の7不思議"なんかがあります。発端はアメリカらしく、まさにそのまま「Urban Legend」。アメリカ発の有名なお話は次の様なものが・・・
ある日、両親がパーティーに出かけ、幼い姉妹二人で一夜を過ごさなければならなかった。姉妹は2段ベッドに寝ており姉が上、妹が下である。両親から「戸締りをしっかりとしなさい」と言われていた姉はその通りに守り、家の窓、ドアすべてに鍵をかけ自分達の部屋へ戻る。妹を寝かそうと思いきや、両親がいないことにはしゃいだ妹はおもちゃを床一面に広げ寝ようとしない。何度も言い聞かせ、ようやく妹をベットに寝かす事ができた。床一面のおもちゃを片づけ、自分も二段ベットの上に上がる。しばらくすると突然姉が「家政婦さんが来た!迎えに行こう!」と言って妹を起こし、外に出ようとする。妹は外に出るなとあれだけ言われたので「嫌だ」と駄々をこねるが、姉は強引に妹を連れて家の外へ飛び出す。そして隣の家まで走り始めた。
隣の家に着き、姉が話したことそれは・・・
「2段ベットと床の間にナイフを持った男が潜んでたんです。妹のおもちゃを片している時、気が付いたんです」。
と、僕が昔仕入れた話はこんなようでした。・・・
ようやく本編、この「都市伝説」をテーマとした9話からなる短編集。口裂け女の話を怪奇的ではなく、ラブロマン的に新たに創作した"わが愛しの口裂け女"。落武者に関する怪談をこれまた別の視点の怖さで描いた"飢えている刀鋩"。学校の怪談の定番を上手く料理した"見るなの本"。死後の不思議な感覚をライトに描いた"名残"、などなど。一瞬「これ都市伝説か?!」と思ってしまうものもありますが、そこは大目に。個人的には、若干苦笑してしまいましたが、ラストシーンが見事な"わが愛しの口裂け女"がお勧め!
KEY WORD>>平成都市伝説
9人の作家が都市伝説をテーマに物語を作成したオムニバス作品。夜のバス停で助けた女性はなぜか大きなマスクをしていた。助けた後も、会う事を重ねていた二人であったが、その女性には不思議な癖があった。その癖を知った主人公は・・・。口裂け女の物語の恐怖を脇に置いて書かれた作品"わが愛しの口裂け女"より。 -
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異形コレクション「グランドホテル極」
今回のテーマは大晦日の夜に宿泊するとオーロラが見えるという噂のあるホテル。過去にも「グランドホテル」「夏のグランドホテル」というテーマの巻も出版されていて、お気に入りの題材のようだ。今回「オーロラ」の設定を持て余してる作家さんもいた印象。このシリーズは分厚いけど短編がたくさん入ってて飽きないし、同じ題材でも様々なお話が読めるので得した気分になれて好きです。
以下お気に入り作品。
背筋「雑な神隠し」
カーテンの影に現れる女の怪異に悩まされる主人公。日記のような形式で過去にさかのぼっていって何があったか判明するという形式が面白かった。
久永実木彦「ジェイルハウス・ロック」
グランドホテルのライバルホテルが刺客を送り込みグランドホテルをつぶそうと画策するが、送り込んだ刺客は誰一人として帰ってこなかった。
これ一番好き。もしかして空を見上げたらさらにその上にもグランドホテルが建ってるのかもしれない。
それにしてもこのシリーズ59冊(現時点での最新作)も出ててすごい。ローマ数字で59はLIXと書くのかと初めて知った。これからもたくさん面白いテーマで続いてほしいシリーズです。