井上雅彦のレビュー一覧
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ホラー。短編集。
タイトルから恋愛ものを予想していたが、意外とそうでもない。
"ロマンス"には"物語"や"小説"の意味もあるようでした。
苦手な作品もいくつかあったが、好きな作品がメチャクチャに好きで、十分に満足できる内容。
大好きなシリーズなので、復刊はとても嬉しい。
以下、好きな作品。
櫛木理宇「夕鶴の郷」
"異形"と"ロマンス"と"恐怖"。タイトル的に想像していた内容はまさにこれ。
牧野修「馬鹿な奴から死んでいく」
魔術、魔女、アクション。ダークファンタジー的な作品。パンクな雰囲気が心地良い。長編でも読みたい世界観。
図子慧「ぼくの大事な黒いねこ」
バイオSF猫ミステリ。世界観が素晴らしい。結末の意外性も良い。
平山夢明「いつか聴こえなくなる唄」
理不尽SF。本書での個人的ベスト。著者の短編でも「独白するユニバーサル横メルカトル」より好き。
上田早夕里「化石屋少女と夜の影」
考古学SF。妙にノスタルジック。ベタな展開ながら、とても良い物語でした。 -
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ネタバレ――
さてこうして本棚にひとつ闇色の背表紙が加わったわけですが、その一点はじわじわと拡がりやがて本棚全体を覆い隠す――って、そもそも「本棚」とか「書庫」ってのもホラーちっくな響きがありますな。なんか生まれないかなうちの本棚からも。
引っ越して納戸が出来たので本棚作ったんだけど、思ったより持ってる本少なかった。もっと沢山読みたいですなぁ。今年はがんばろ。
SF、ホラー、ミステリというなんとかトライアングルから抜け出せずに死んでいくんだと思う。はふう。
1997年から刊行されているダーク・ホラー・アンソロジー。そのシリーズ50巻のという記念すべき一冊を、本をテーマにして編むあたり、本の怖さというものをひしひしと感じるのでした。
本は本の創り手を増殖させてゆく、と序文にもあるけれど、作者の意図からも外れて自己増殖していくとも云える本はある種もう、生きてると云えるんじゃなかろうか。
全体的に百物語ちっくというか、語られる物語の端を捉えて次の物語が語られる…って雰囲気があるのも、そういうホラーの自己増殖感が出てて良かったです。にしても新旧問わずの名だたる作家が語り継ぐ百物語、なんて贅沢なんでしょう。
特に印象に残ったものをいくつか。
柴田勝家『書骸』
戦国武将みたいな名前の作家ランキング1位。御本人もネタにしてるというか由来がそうなんだからいいよね…? Wikipediaに大真面目に「この項目では、織田信長の部下について説明しています。現代のSF作家については「柴田勝家 (作家)」をご覧ください。」って書いてあるのまじで笑える。
圧巻の不気味さと着想。中盤からなんとなくラストの展開は読めてくるものの、解っていても怖い道をじわじわと進んでいって最後の角を曲がる感じはホラーの真骨頂でもある。その道程を語り口と豊かな筆でこうも読ませてくれるとなるともうお手上げである。ああ怖い! ってー開放感はなんなんでしょうね。
真藤順丈『ブックマン――ありえざる奇書の年代記』
岸辺露伴によるバトロワ系ホラー(笑 そもそも岸辺露伴が設定的にズルすぎるんだよね…みんななんとなく心の隅で思い描いているものをあんなに魅力的に形にされては。
緻密な文章と設定力と、広い世界観が読ませる。日常的な描写から物語内の物語にひと息にスライドする技量も見事。その上でミステリ的な展開もあって、とても楽しめました。
朝松健『外法経』
朝松健の〈室町ゴシック〉と銘打たれていますが、こういうの読みたかった! これは良い。
やはり怪異と云えば中世日本の不穏さが光る。大人の一休さん譚。たまらん。
ほんとに読み応えばっちりですが、ちょっと疲れます。良いホラー見たあとって疲れるのと一緒ね。
以下、澤村伊智『恐』からの引用になるけれど、ホラーというものを端的に表わしていて凄くしっくりきたので、まぁこういう気持ちで読んでください。
“こうしたアンソロジーの解説にありがちな「人間にとって最も恐ろしいものは不可避で未知なる『死』であり、怖い話はその恐怖を予習することで緩和させるための手段」といった趣旨の文章も、したがって三つの点で誤りだと私は考える。死を絶対的恐怖だと定義している点。絶対的恐怖というものがどこかに必ずあると見做している点。そして怖い話に、ビジネス書やノウハウ本のような社会的意義、有用性を見出そうとしている点。”
と、これが巻末の解説からの引用ではない、というのも面白いところ。左様にそれぞれ趣向を凝らされた短編のあつまりなので、きっと気に入る1編があるはず。
こりゃ新しい沼だな…
☆4つけときます。怖いんで。 -
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1番ワクワクしたのは牧野修さんの『ブリーフ提督とイカれた潮干狩り』。最近流行りの異世界ものの設定も、牧野さんにかかればこの仕上がり。これが続編らしいので第1作もチェックしないと。
共感したのは斜線堂有紀さんの『ドッペルイェーガー』。たとえ頭の中でどんなことを考えていようと、相手に見せる顔もまた真実。人間関係で悩んだ時にいつも思うようにしていることなので。
イメージが鮮烈だったのは空木春宵さんの『夜の、光の、その目見の、』。シュメール神話になぞらえて進むストーリ展開が好みドストライク。夜を舞台に現実と幻想が入り混じる。女性の生きにくさについて語られている点も良かった。終わり方は『異形コレクション』にしてはあるまじき(?)爽やかさ。
上田早夕里さんのファンだったので購入したのだけれど、共通のテーマでテイストの違う作品が読めて楽しかった。夜湯船に浸かりながら一話ずつ堪能。気分転換にピッタリの一冊だった。 -
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異形コレクション、今回のテーマは「秘密」。広大にして深遠なテーマなので、バリエーションに期待できます。そもそも怪奇幻想のジャンルには必ずと言っていいほど「秘密」が隠されていそうですよね。
お気に入りは澤村伊智「貍 または怪談という名の作り話」。これ、なかなか気づけませんでしたが。気づいたとたん恐怖は笑いになり、しかしやっぱりとんでもない恐怖に陥ることになります。よりにもよってあれを怪談にしてしまうだなんて……なんと恐ろしいことを。
一番恐ろしいかもしれない作品は斜線堂有紀「死して屍知る者無し」。人間は死後動物に転化するというコミュニティを描いた物語。一見ファンタジックに思えつつ、この恐怖はあまりに現実的で恐ろしいです。しかも普通ならそうでもないのだけれど、その世界でこその「常識」があったゆえに、それが崩れ去ることの恐ろしさといったら!
井上雅彦「夏の吹雪」もなんとも素敵な作品。恐怖よりも美しさがひたすらに印象的です。