赤川次郎のレビュー一覧
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“何だろう?何かが、幸子の記憶に触れたのだ。
二階に上ると、幸子は、無人の廊下を、見通した。たった今、人がいたのに違いない。気配がある。空気の乱れ、とでもいうべきものが。
「——どこにいるの?」
と、幸子は言った。
自分の声が、びっくりするほど小さく、震えている。——しっかりして!あなたは以前には教師だったのよ!
自分を叱って、ゆっくりと廊下を歩き出したが、
「そうだわ」
呟きと共に、幸子の足は止まった。
教師。教師だったころ。——その記憶に、あれが触れたのだ。
あの甲高い、男の子の笑い声が。”[P.151]
簡素な文章から滲み出る静かな恐怖。
“「久美。——パパだ」
佐田は、久美の部屋の -
Posted by ブクログ
年1冊の爽香シリーズも早24作目。
38歳の秋です。
今年は老舗ホテルの再建という名のもとに、支えて来た貴重な人材の切り捨てが発端。
爽香の周りで起こるいろんなトラブルと相変わらずの人たち。
39歳もいろいろ波乱がありそうな終わり方。ちょっとザックリした作品だった気もするけれど…。
今作は爽香のバタバタよりもホテル再建の方がちょっと印象に残った。
長年の経験というものに企業が値打ちを認めなくなっているんだというくだりと、ただ単に「数字」だけでしか経営を見ない人間の下で、長く働き続けてきた者が誇りと愛着を失っていくところ。
なんとなく自分の働く環境に近いような気がして。ちょっとさみしくなってし