鈴木大介のレビュー一覧
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岡田斗司夫さんの話を聞いて。「最貧困女子」と「貧困と脳」をセットで読んだ。
「最貧困女子」の取材対象が抱えていた不自由が、自分に降りかかった体験記。最貧困女子では取材対象に対してリスペクトはしていたものの、「どうしてこんなことができない?」という気持ちがやはり心のどこかには存在していたという。それが、自身が病気を患って同じ立場になったことで、「最貧困女子」を書いていた時には分からなかった彼女たちの気持ちや状況が身をもってわかった、という内容。
同じく俺も、「どうしてこんなことができない?」という気持ちを、「最貧困女子」で抱いた。そしてその気持ちで「貧困と脳」を読めるから、自分の身にも起こるか -
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『老人喰い』は特殊詐欺に関するノンフィクション…らしいが取材を元にフィクション化されている不思議な本。
この本に登場する特殊詐欺グループのメンバーはほぼ20代の若者。詐欺グループに入るきっかけは様々だが、彼らは「新人研修」で古参メンバーからある洗脳教育を施される。いわく、若者は経済的弱者、詐欺の対象である高齢者は経済的強者。弱者が強者から奪うことに良心の呵責を覚える必要はない。「老人こそ日本のガンだ」云々。
詐欺の対象となるのは資産がある、過去に詐欺被害に遭っている、単身である、親族と疎遠である等の属性の高齢者たち。詐欺メンバーは金を持っている高齢者からのみ奪っていることを免罪符にしているが -
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リアル本にて。
引退後ネット右翼特有のスラングを口にするようになった父親に対して、逝去したあとになぜ父がそのような行動を取るようになったのかを、家族・友人等へのヒアリングをもとに考察したルポ。
政治的な主張に伴う分断を感じる機会が増えている昨今、イデオロギーの異なる家族と家族で居続けるためのヒントのようなものを求めて、この本を手に取った。
本書で紹介している対策自体は、取り立てて真新しいものではないかもしれない。認知バイアスを取り除いた上で、相手をできるだけ具体的に客観的に把握し、差分だけでなく共通点にも注目しよう、ということで、ともすればアンコン研修で説明される内容に近い。ただ、著者ご本人が -
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手にとる前は、親子なのかと思ったが、違った。患者と主治医なのかと思ったが、これも違った。
鈴木大介氏はルポライター、41歳で脳梗塞を発症、高次脳機能障害をもつ。鈴木匡子氏は高次脳機能障害の専門医。ふたりの対談で構成されている。
病巣は右半球、頭頂葉と前頭葉にかけての一帯。顕在化した障害は、作業記憶の低下、注意障害、談話障害、感情障害など。なんといっても本書の読みどころは、当事者のなまの声、いわく言い難い、どうにも表現しようのない、もどかしい障害の状態が表現されている点。しかも、言おうとしていたことがすぐに霧散してゆく。
医者も、研究者も、リハビリのスタッフも、ふつうは概念や外から見た病態から入 -
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「真の弱者は救いたい形をしていない」とはどういう事かの詳細解説みたいな本。
本文にもあったが、知性や精神に重い障害を持つ人と関わった事の無い層には到底信じられない世界だしにわかには受け入れ難い内容だと思う。
知的ボーダーや精神疾患持ちの方と深く関わった事がありそれなりに理解がある方だと自負している私は「分かるー!」の気持ち良さと、あまりの深淵の深さに「ぇえ…」の困惑の連続で感情の交互浴が凄かった。
特に、
『彼女らは本当に、救いようがないほどに、面倒くさくて可愛らしくないのだ』
の部分は、あまりに実感として“理解る(わかる)”ので唸ってしまった。
この本がシンドくて読みきれない方は、「みぃち -
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私は子供の頃から「日本に生まれただけで幸せ」と言われてきた。
それは疑いもなく事実だと思う。
しかしながら、その幸福が誰にでも平等に享受できるものではないのだと、強く全ての日本人に理解してもらいたい。
多くの人がセックスワーク(性風俗や違法の売春まで)を行う人を、「楽して稼ごうとしている」とか「自分を安売りしている」などと忌避するだろう。
たしかに、本書でもそう言った気軽な思いで参入する一般女性も描かれる。
しかし、彼らは「貧困」でさえない。
「貧乏」と「貧困」は異なるのだ。
さらには本書で定義する「最貧困」とは、存在さえ不可視化され、ほぼ全ての日本人が知りもしない、想像もできないほどの、目 -
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ネタバレ【感想】
ホラーだった
高齢者が、駅では案内図を見ずにすぐに人に尋ねたり、IT化についていけないことが不思議であったが、脳機能が低下している人から見た世界を知って納得した
脳機能を低下させてはいけないと強く感じた
【要約】
貧困は個人の努力不足ではなく脳機能の低下によって引き起こされる
加齢による認知機能の低下が仕事や日常生活に与える深刻な影響
①遅刻の常態化②約束を破る③作業の遅延④会話の困難⑤外出への支障
脳機能の低下が与える精神面への悪影響
①感情の抑制喪失や常に不安に襲われる状態②公的支援の申請すら困難になる
脳機能低下の予防にはDHA
脳機能を一度低下させてしまうと元には戻らない -
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「最貧困女子」などのルポを「世代間を連鎖する貧困」という視点などから発表してきた著者が、自身が脳梗塞によって高次脳機能障害となったことにより、脳の機能障害から貧困に陥らざるを得ないという視点から捉え直して、改めて過去の取材を当事者としての観点から再発見し、なぜ「だらしない」「さぼる」ように見えるのか、当事者・支援者・周辺者はどうしたらよいか、などを詳述。
短期記憶の機能低下、注意力の低下、現況の把握力・判断力・事故決定力の喪失など具体的な記述から、これは悲惨な状況であること、「自己責任」ではないことなど認識できた。自分の認識が変わる本。
【目次】
まえがき 最貧困女子から10年
第一章 「なぜ -
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おもしろくて一気に読んだ。
著者の鈴木大介が高次脳機能障害になり、生活に多くの困難を抱えたからこそ、発達障害特性のある妻の大変さに初めて気づく。当事者にならないとわからないこと、見えない景色は確かにある。
著者のえらいところは、定型発達者であった頃の自分が、妻に精神的DVを行ってきたのだと自覚し、反省していること。そして、中途障害者となった今、お互いのできることできないことを理解して、想像力を働かせて、少しずつ家事を協働して、より良いパートナーシップを築けるようになったこと。
片付けられない、未来を考えられない、話が通じないなどなどは、努力が足りないのではなく、本当に不可能に近いということ。こ -
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子供の頃から苦しんだものの正体が鮮明になった気がした。
家族や学校、部活、バイト先、職場で怠け者として扱われ罵られてきた。
家族には「怠け者でーす」という開き直りキャラを演じて、お前は本当にだらしないな!と言われながらも生きてきた。
この本を読みはじめてすぐ涙が出てきた。そうなんだよ、いくら頑張ってもまわりに追い付かないし同じようにできない。頭の中が不安感でいっぱいで目の前の作業を素早く処理できない。何か不利な目に遭うのではといつも苦しくて気が付けば何もしないまま時間が過ぎている。
遅刻しないように出勤して9時間耐えるだけで精一杯。ただそれだけで1日の体力と精神力を使いきり、家に帰れば寝たきり