【感想・ネタバレ】脳が壊れたのレビュー

あらすじ

41歳の時、突然の脳梗塞に襲われたルポライター。一命は取り留め、見た目は「普通」の人と同じにまで回復した。けれども外からは見えない障害の上に、次々怪現象に見舞われる。トイレの個室に老紳士が出現。会話相手の目が見られない。感情が爆発して何を見ても号泣。一体、脳で何が起きているのか? 持ち前の探求心で、自身の身体を取材して見えてきた意外な事実とは? 前代未聞、深刻なのに笑える感動の闘病記。

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Posted by ブクログ

闘病中闘病記
夫婦間、親との関係まで開示
私には辞書なしでは読めない難しい漢字使えてるのが、高次脳機能障害なんだろな。

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2025年06月05日

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「最貧困女子」を代表作とするルポライターの著者が、40を過ぎた頃に脳梗塞になり、リハビリを通じて、自身の症状が自分が取材対象としてきた若者たちと似ていたことから、様々な仮説を立てつつ、リハビリをしながら自分を見つめ直す闘病記となっている。
発達障害と脳機能障害の類似点を当事者として体感しているのは、医学的な根拠は示していないものの、肌感で正しいと思う。以前読んだ「ケーキの切れない非行少年たち」も、それを示唆していたような気がする。
発達障害を持つ子どもへの教育という観点からしても、この気付きは興味深い。
奥様も発達障害ということだが、愛に溢れており、微笑ましい(苦労も多いので軽々しくは言えないのかもしれないが)。
自分の周囲にも高次脳機能障害者がいて、支援している。
何かあったときの人間関係の構築について著者は言及しているが、まさにそのとおりだと思う。

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2025年05月06日

Posted by ブクログ

言われてみると確かに困っている半ぐれの何パーセントかにリハビリは効きそう。年寄りのリハビリよりもいいかどうかはさておいて。こういうのが書ける言語化能力はともかく素晴らしい。色々と腑に落ちるところが在ったのがそっちかいとは言われそうだけど。 

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2025年03月06日

Posted by ブクログ

脳梗塞になった身内がおり、理解のため読書しました。

医療用語、感覚を用いず脳梗塞と症状をありのまま書いてくれていたので、スルスルと読めました。
脳梗塞になった前中後の心境、ストレス、、、当事者の執筆だからこそリアリティがありスッと理解できました。

私自身、脳梗塞や精神的な疾患の診断はついておりませんが、生きづらさを感じております。
 
目に見えないレベルで大なり小なりの損傷があって生きづらさになってるのかなと自分自身も顧みて読ませていただきました。
脳梗塞の家族、知人がいる方にぜひ読んで欲しいと思いました

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2025年02月17日

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脳出血で後遺症が残り、見た目は普通なのだが内面的にはいろいろな障害が残った状態になった作者の、発症・回復・リハビリの過程と現在の困っていることなどを書いたセルフドキュメンタリー。脳の機能不全という観点では、脳で何か病気があった人ばかりではなく、もともと脳の個性として不全を抱えているような人の行動を理解するための示唆に富んでいる。みんながみんな、自分のように感じられたりするわけではないし、行動できるわけでもない。とても実感を持ってそのことが感じられる。

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2022年12月15日

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倒れた後のこととか、心身の不具合など、本当に細やかに噛み砕いて書いてくださってて、とても参考になりました。
これまで取材であった人たちのうまくいかなさも、比べて書いてある内容も、当事者ならではの視点で、新しく、すごくよかったです。

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2022年11月01日

購入済み

中からの渾身のレポート

ルポライターが生業の著者が脳梗塞になり、自分に現れた様々な症状とその変化を、内側から懸命に記録している。それだけでも十分に興味深いけれど、そこで苦しんだ症状のひとつひとつは、彼が以前取材で出会った、貧困に苦しむ人・情緒障碍者・薬物中毒者等々と同じではないかと気づく。これらの人たちにも脳の器質異常が生じていた可能性が高い。底辺で困難な立場にある人たちの多くに、この種の医療診断や治療・リハビリが有効かもしれないというのは、今まで見たことが無い視点。

#感動する #タメになる

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2022年04月22日

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脳梗塞の後遺症である高次脳機能障害についてここまでうまく言語化しているのはすごい。
医者が読んでも勉強になるんじゃないかってくらい。
認知症や発達障害も脳の機能が一部壊れるので似ているところがある。
認知症について勉強したくて読んだ1冊。

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2022年02月05日

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最近、職場で高次脳機能障害になった人と知り合ったから読んでみた。
体験をこんな風に書けるのすごいなぁ。

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2021年07月17日

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★回復記に感じる「面倒な人」との共通点★漫画「ギャングース」を連載中に読んでいるとき、そういえば原作者が脳梗塞で、というのを見た気がした。40代で脳梗塞を発症し、その後の変化を体験記として記す。自分を対象としたルポで、あえて病気の深刻さを和らげようとしているのだろうが、筆致が柔らかく読みやすい。
 何よりも本書がただの回復記とは違うのは、筆者の専門が貧困で、そのときに出会ったやりとりができない人々の様子に自分を重ねることだろう。著者は赤ん坊に戻ったように感情の抑制が効かなくなる。取材相手のことをコミュ障の面倒くさい人だと思っていたが、自分が同じ状況に陥ってみて、そこには脳の問題もあったのではないかと分析する。発達障害は先天的なものかもしれないが、貧困のなかで育つと発達の凸凹をより悪化させるということなのか。もちろん脳梗塞は場所によって差は大きいだろうが。

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2019年10月06日

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鈴木大介のことは本書を読む前に「普通は入れない場所から、普通は思いつかない切り口で、普通は到達できない深さまで掘り下げて書く人」という印象があった。そういう著者が脳梗塞をサバイブして書いた作品ということで、とてつもなく高い期待を持って読みはじめ、とてつもなく高い満足度で読み終えた。
鈴木大介、ただものではない。
著者の持つ偏執的なこだわりと働きすぎが過去の作品と人物を作り上げ、奥さんを救い、奥さんを苦しめ、本人の脳を破壊し、リハビリをやり抜き、本人の脳を修復し、新たな境地に達した。
いやはや。
しかも、治療の過程で何度も「今までの考え方感じ方は浅かった、分かったようなことを言っていたけど分かっていなかった」ような境地に至るのだ。何度も。鈴木は決して同情をよせられるような社会的な弱者ではない。平坦ではない道のりを本人の才覚と努力でくぐり抜けてきたような、ある種の勝者強者である。
「なぜ罪も咎もない彼が苦しまなければならないのか」というロマンチックな同情の余地はない。それだけに一層、苦しみの独白が読んでいる私の胸をえぐる。
脳は脆い。人は強い。性格は変えられない。人は変われる。
これからの鈴木には、認知症の世界を描いて欲しいなぁ。NHKドキュメンタリー的な描き方ではなく、「あちら側」を見てきた鈴木にしか書けない世界があるような気がする。

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2019年05月30日

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脳梗塞の後遺症としての高次脳機能障害の苦しみを、その当事者が実体験、しかも進行形の体験として書くというとんでもない一冊。

私は鬱なので、頭痛腹痛肋間神経痛から様々な症状が出ているもんで、何かと自分の身体が心配になるんだけど、この本を読んでますます心配になった。

自分が同じような状態になったら誰に頼るのか?頼れるのか?頼っていいのか?

妻ではないな。ただでさえ育児に奔走してくれている妻にさらなる負担はかけられない。それは身をもって知っている。
実の親もないな。高齢だし、父に至ってはすでに軽度の脳梗塞を起こして療養中だ(元気だけど)。そのうえ、著者とは違うが、親に頼るのはそもそも苦手だ。

うわぁ、こりゃ苦しいぞ。

これ、感想じゃないな…

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2019年04月22日

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介護の仕事をしていると、“半側空間無視”というフレーズに接することが多々ある。実際にそういった障害を持っている方がたに接するのだけれど、顕著に障害が出ている場面に出くわすことはなかった。

著者は、脳梗塞を発症し、それに伴う後遺症が残ったのだけれど、ルポライターという職業柄、自分自身を取材し、“高次脳機能障害とはこういうことだよ”をわかりやすく読ませてくれる。
今まで接してきた方々は、言葉で発信することはなかったけれど、こんな風に見えたり、感じたりしてきたのだろう。

自分自身を取材するにあたって、リハビリへの熱意が尋常ではなかったようで、その甲斐あって(?)壊れた脳の機能を他の部分で補完できたのだろう。仕事にも復帰し、良い本を書いてくれた。

介護・看護・リハビリに関わる方にはオススメの一冊。

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2019年04月09日

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脳に障害が生じ、そのことで生じる変化が、克明に、かつユーモアを交えて記録されている。
認知症の方、脳梗塞後遺症の方、さらには発達障害の方と関わる方には、かなりオススメできる本だ。

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2019年02月26日

Posted by ブクログ

私の周囲でも脳梗塞という話がちらほら聞こえてくるようになり、さすがに少し気になって手にした一冊。
現役バリバリのルポライターが41歳の時に脳梗塞で倒れ、本書はそのセルフルポだ。
脳が障害を起こすと何が起こるか。とても想像などできないのだが、そこはルポライター。この説明しづらい状況を何とか文字にしようと躍起になる。自分の左側が見られない症状を「全裸の義母」(=見たくないもの、見てはいけないものが自分の左側にある、の意)で表現するあたりは、まさに真骨頂。
などと書くと、単なる明るい闘病記と聞こえるかもしれないが、さにあらず。著者は、高次機能障害で人の顔を正面から見ることができなくなり、感情が暴走し、注意力が散漫になるのだが、これに強い既視感を覚える。それは、これまで自身が取材してきた中で出会った情緒障害者たち、貧困に陥った女子たちがとった行動と同じではないかと。そこで著者は、自分のこれまでの取材の浅さに気づき、同時に脳梗塞を発症するに至った要因は、自身の性格や思想、それに基づく行動にあったと結論する。ここに至って、本書は闘病記の域を超え、人生の再生物語へと昇華した。
そう考えると、第8章以降のかなり個人的な話の記述、特に著者の妻に関するくだりが大きな意味を持ってくる。かなりユニークな人物であることは、この本の前半部分でも垣間見れるが、その理由が同章で明らかになる。彼女は若年期に精神障害を患った経験があるうえ、結婚後に脳腫瘍の摘出手術を経験しているのだ。言ってみれば、彼が取材対象としていて、既視感を覚えた人物たちの先人であり、かつ、脳の病の先人でもあったのだ。脳梗塞で倒れ、リハビリを続ける著者にとって、これほど強いサポーターがいるだろうか。再生物語は始まったばかりだ。

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2018年11月20日

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突然の脳梗塞の後遺症として高次脳機能障害となった取材記者だった筆者。
想像を絶する(不思議さという点で)不自由さを実体験だからこそ、また取材記者だからこそ、しっかりと伝えてくれる。またその脳の損傷による不自然な言動が、不良や貧困をテーマで取材した人たちの不愉快な(理解できない)言動と一致していたという驚きの発見もある。
軽妙な語り口だけれど、内容は重要,深刻で、知らないこと、驚くことの連続だった。一読すべき本です!

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2018年09月24日

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感情を抑えられなくなると何が大変なのか
リハビリは何を目的としているのか
どんなことが出来なくなるのか
具体的に書かれていて とても分かりやすい
病気で見えてきた
人と自分との関係 そして人への感謝
脳が健康な間にしっかり読んでおいてよかったと
思える本でした

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2018年08月03日

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ネタバレ

高次脳機能障害とはどうゆうものなのか。
記者ならではの説明で、こうゆう感じのものというニュアンスの伝わり、想像がつきやすい。
著者作品は最貧困女子を先に読んだのだが、日頃そうゆう界隈を題材に仕事しているだけあって、今回の障害に関しても医者に診断・治療してもらう機会に巡り会えなかった、あるいは一生治らないものとして生きている生きずらい発達障害系の人達について、思いを巡らせると苦しくなった。
また、助けになった妻に関する話がプチ衝撃的で、根っからの、そうゆう人達に惹かれるたちなのだろうかと。しかし、2人の信頼関係を見ると羨ましくもある。

それでも、障害者枠での採用でなければ発達障害のない人間と同じ待遇での採用なので、作業が遅いが故に差が出ても同じ待遇という現実に苛立ちを感じてしまう。(遅い分こなせなかった仕事が回されるから)

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2025年05月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「されど愛しきお妻様」他最近著作を続けて読む機会があり興味を持ち手に取り。
様々な困難のために社会の中で生き難い人たちを取材し本にしてきた著者が、まさに当事者となって体験したことで新たに得た視点が出色。
「そういうことだったのか」を苦心して言語化して何とか周囲に、読者に理解してもらおうとする姿勢に頭が下がります。

はっとさせられることばも散見されました。
「病名をつけなければ身動きがとれない。ゆえに最も見過ごされがちなボーダーラインの障害者には一層支援の手が届きそうにない(趣旨の要約です)」
「大きすぎる感情は言語化できない」「頼れる相手や頼るべき相手と頼りたい相手とは別物」
「一番身近な人が一番頼りたい相手かというとそうでもない」
「してほしいことある?と聞かずに一方的にやってくれることが、ようやく助けての声を絞り出すためのプロセスになる」
言われてみれば確かにと思うことだらけでした。そういうことを言いたかったけどどう表現し誰に伝えていいのかということに迷って結局誰にも何も言えなかったということがあったなと昔を思い出しました。

自分にも障害者の身内がいますが、もしかすると言葉に出来ない様々な思いによって大きく屈託してしまったために行動がうまく出来なくなって一般社会で生き難くなってしまったのかもしれないと思い当たる出来事も多々ありました。
当時はただ「面倒かけやがって」的な怒りしかなかったけれども(自分も若かったし自分の人生だけで精一杯と言い訳かもですが)、辛かったり苦しかったりの経験をし人生をある程度生きてきた今から観ると「あの人は自分の想像を超えた言語化できない程の辛さや苦しさをあの時持っていたのかもしれない」と思い至ることが出来るようになりました。遅きに失しているかもしれませんが、本書は今から寄り添えることはないか考えるきっかけになりました。よくぞ言語化してくれました。
著者にしてみると色々と必死だった(生活を立て直したり、収入を得なくてはということも含め)ということなのかもしれませんが。

それにしても著者のお妻様への愛がハンパない。お妻様も夫様を大切に思っているのがきちんと伝わります。
言葉は荒々しい?時もあるけど気持ちは伝わるんだなぁと、至らないからこそ愛おしいということもあるのかなぁなどと思いました。割れ鍋に綴じ蓋、という言葉を思い浮かべながらお二人のやりとりのパートは読みましたが、お互いがお互いの割れ鍋に綴じ蓋になってるカップルだと思いました。(最高に褒めてます)

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2024年12月02日

Posted by ブクログ

脳梗塞後の高次脳障害、当事者が言語化し類する脳機能の障害、特性がある人の状態を代弁してくれた。完全な理解は難しいが、想像力を働かせてその人がして欲しいことを探りたい。

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2024年11月02日

Posted by ブクログ

高次脳機能障害の当事者研究でここまで詳細な記録ははじめて読みました。
専門職なら必読書としていいのではないかと思えるほどに示唆に富んだ内容でした。

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2023年05月26日

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脳梗塞から高次脳機能障害になったライターの話。

病気の話なので当然ながら重苦しい描写が続くが、ライターだけあって文章がうまく、読みやすかった。

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2021年01月24日

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脳に障害がある状態の時、どう感じてるのか、どうしてほしいのか、たいがいの場合、本人は、伝えられないし、障害のない人は、理解出来ない
鈴木さんのおかげでやっとわかった

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2019年03月09日

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若くして高次脳障害になった著者のリハビリによる回復の記録は貴重なのではないか。粘土の中からおはじきを取り出すリハビリがいかに難しかったか、両手に荷物を持ってしまうと他のことができなくなってしまうことのはがゆさ、リハビリは感動の連続、やがて著者はこれまでの取材対象者が脳を壊していたことに気づく。老人だけではなく若い人にも作業療法士による脳のケアを、こんなこと当事者にしかなかなか気づけない。
「音楽で泣ける感受性を失ったらどうしよう?」と心配していた著者だが、レディガガのBorn This Wayを聞いただけでボロボロと涙が出るようになり、妻との関係も自分の性格も前とは変り、「脳梗塞になって良かったと思えるほどの(以前の自分の考え方の)欠落に気付いた」とまで言う。
「高次脳障害者には助けが必要か聞かずに助けてほしい。”大丈夫?”と聞けば彼らは“大丈夫”と答えてしまう。」著者の友人夫妻は心配して敢えてアポイントなしで自宅に来てくれ、本当に助けになったという。

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2019年01月27日

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脳梗塞を起こしたジャーナリストによる、高次脳による後遺症をはじめとする体験を文字にしたもの。後遺症がいかに苦しいか、どのように感じているか、当事者の感覚を上手く言語化している。後遺症の症状が、以前に取材をした相手の発達障害や鬱病をはじめとする精神疾患・障害と似ており、それら当事者の感覚を代弁しているといえる。参考になった。
「原因が脳梗塞だろうと何(精神障害など)だろうと、結果として「脳が壊れた」状態になっているならば、出てくる障害や当事者感覚には多くの共通性や類似性があるようなのです」p9
「鈴木君さあ、リハビリってのはさあ、あの、なんつうか、そうそう、駄菓子屋のくじ引きなんだよね。駄菓子屋にあるだろ、壁に引っかかってるくじの束が。あれ、これかな?これじゃねーだろ、こっちかな?ってかんじで、あちこち手当たり次第に力を入れてみて、指動かそうとしてるのに足が動いたり顔が引きつったりするでしょ。そんで駄目でも片っ端から試してみて、それでも全部はずれくじで、その挙げ句に「ようやく動いたあー」っていうのが、アタリくじ。で、いっぺん当たったら、そのアタリくじを何度も引いて、場所をおぼえちゃって、一発でアタリ引けるようになるっつうのが、リハビリなわけ。分かる?」p54
「本当に、所詮人間なんて、電気信号で動く高精度の機械に他ならない。手を開こうとすると、おしっこが出そうになるなんていうのは、断線や短絡箇所のある自動車のハーネスに通電テストをしているような感覚だ。ヘッドライトの配線に通電しようとしたら、やだもーブレーキランプが光っちゃった、のような」p56
「ボールもまともに投げられないくせに生意気な発言をする子供は、あっという間にイジメの対象になってしまう」p78
「(貧困者)役所に提出する所得証明などの書類の説明や、書き込みが必要な申請物などの説明を始めると、高確率で気絶するような勢いで寝るのだ。公的な書類などを用意しても、5行読めればいい方で、音読してあげてもさっぱり頭に入っていかないようなのだ(著者も後遺症で同じ体験をしている)」p79
「ふらつく足で病院内の売店に向かい、レジで小銭を出そうとすれば、目のピントが合わずに小銭は二重に見え、指は思うように動かずで、遅遅として狙った数の小銭を出せない。小銭を手に持ち続けるための集中力すら維持できず、一枚二枚と硬貨が手から零れ落ちる。それだけならまだしも、数枚の小銭を数えると、何枚まで数えたのか分からなくなってしまう。そんな僕をイライラした顔で見ているレジのおばちゃんの気配に、心の中は苛立ちとパニックの暴風雨が吹き荒れる」p80
「(青年の貧困者)彼ら彼女らに必要なのは、いち早く生産の現場に戻そうとする就業支援ではなく、医療的なケアなのではないか。それも精神科領域ではなく、僕の受けているようなリハビリテーション医療なのではないか」p82
「これほどに優れた人材(リハビリ)が医師の指示下でなければ動けず、退院してもすでに生産に寄与しない高齢者のためにそのスキルが浪費されているのは、いかがなものか。これは若者や子供の貧困が広まる中、高齢者ばかりが優遇される老尊若卑な現代日本の縮図ではないでしょうか」p84
「1時間も歩くと、ポケットの中も小学生男子になった。夜のうちに敷地の街灯に飛来したであろうノコギリクワガタの死体。ちょっとつぶれたコクワガタの死体。分厚いガラスの破片。ビー玉大。ビー玉小には見事なビードロ模様。盛夏の早朝、こんな収穫物をブロック塀の上に並べる僕を、出勤してきた病院職員たちは奇異の目で見ていく。ふふふ、大人め、この楽しさ、この好奇心にあふれた視野、貴様らの健常な脳みそではわかるまいよ。ビバ、選ばれし小学生脳。なるほど楽しい」p96
「(妻の言葉)入院生活に入った夫を見て率直な感想は「人間は脳が壊れるとこんなにも退化するのか」です」p224

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2018年10月23日

Posted by ブクログ

【文章】
 とても読み易い
【ハマり】
 ★★★★・
【共感度】
 ★★・・・
【気付き】
 ★★★★★

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2018年07月28日

Posted by ブクログ

熱量が高すぎ&脱線が多くところどころ置いてけぼりにされたが、高次脳機能障害の症状について事細かに綴られていて、苦しむ人たちの心のうちが少し理解できたように思う。最後の方であった、当人にたいして周りは助けが必要かどうか訊ねるのではなく、ただ無言で手を差し伸べてほしい、という著者の願いは、忘れないようにしたい。

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2025年05月25日

Posted by ブクログ

突然の脳梗塞。命は取り留めたが、外からは見えない障害。当事者が語る。

高次脳機能障害とは、脳卒中などで脳の一部を損傷し、思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能の一部に障害が起きた状態をいう。著者は、発話や行為に一部不自由が生じたようだが、これが周りからは分かりにくい。例えば、半側空間無視なんて知らなかったが、どちらか左右の空間を認知出来ず、極端に言えば左半分もしくは右半分の空間がなくなってしまっている状態。著者は、片側に何か嫌なものがいる感覚と語る。

脳梗塞後には、感情のコントロールができなくなる「感情失禁」になる事も。穏やかだった人が急に怒り出すなど。著者もこの状態に時々陥る。

大変な事だが、本職ライター。面白おかしく、読みやすく。何よりほのぼのとした気持ちになるのは文面からも伝わる夫婦仲、奥様愛。発達障害で日常生活も一見無茶苦茶に見える奥さん。でも、そこをお互いのできる事で補い合う魅力的な夫婦。

脳梗塞後のリアルとそれを抱えながらの仲睦まじき?夫婦生活。本著の魅力は大きくこの二点。他人事ではないです。どちらも。

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2024年04月07日

Posted by ブクログ

養老チョイスから。文筆家が脳障害の当事者になる。性状や程度によっては、復帰困難のレベルまでダメージを受けた可能性もあろうけど、著者はそれは回避できた。もちろんリハビリの成果も多々あろうけど、運の要素もかなり大きい。さておき、内容は何といっても、当事者がどうやって能力を回復させていくのか、その詳細が分かりやすく書かれていること。あと本筋からは外れるけど、本書の最後らへんでチラッと登場する父親が、かのネトウヨ新書で語り直された訳ですね。なるほど。

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2023年07月24日

Posted by ブクログ

★★★
今月7冊目
ルポライターが41歳で脳梗塞に。
かなり回復するも見た目ではわからない高次脳機能障害に悩む。
が、優しくなれて7割は病気になって良かったと、、

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2021年10月30日

Posted by ブクログ

ルポライターの著者が41歳で脳梗塞を発症し、治療からリハビリの過程で体験したことを当事者感覚で綴っている。不自由で不思議な体の感覚や、コントロールできない感情などをうまく言語化しており、プロのジャーナリストの凄さも同時に感じる。最後に、人の縁は具体的な資産だと主張していおり、周囲にいる人の当事者への接し方についても教えてくれている。

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2020年10月26日

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