鈴木大介のレビュー一覧
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「最貧困女子」を代表作とするルポライターの著者が、40を過ぎた頃に脳梗塞になり、リハビリを通じて、自身の症状が自分が取材対象としてきた若者たちと似ていたことから、様々な仮説を立てつつ、リハビリをしながら自分を見つめ直す闘病記となっている。
発達障害と脳機能障害の類似点を当事者として体感しているのは、医学的な根拠は示していないものの、肌感で正しいと思う。以前読んだ「ケーキの切れない非行少年たち」も、それを示唆していたような気がする。
発達障害を持つ子どもへの教育という観点からしても、この気付きは興味深い。
奥様も発達障害ということだが、愛に溢れており、微笑ましい(苦労も多いので軽々しくは言えない -
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ネタバレえげつない。壮絶な子供時代を生き抜いてきて、さらに負の連鎖が続き、たまたま持ち合わせていた資産である”女”を使って騙し騙しのような生き方をしている。軽度の知的障害で行政に頼れない・頼りたくない理由が本人にあったり(著者の提案する通り、いくら子供を施設に入れて自分と同じ思いをさせたくないとはいえ、自分自身がもう限界のどうしようもない状況まで陥っているのだがら、一旦生活を建て直してからあらためて再会して子供たちに謝罪なり、事情を話せばいいと思うのだが。そこからまた負の連鎖で子供がどうなっていくやら…)
麻酔薬や潤滑剤を使ってまで性行為をし、色んなところで滞納をしてある時飛んだり、女を売って生きるた -
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まえがき
・人は低所得に加えて「三つ無縁」「三つの障害」から貧困に陥ると考えている
「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」「精神障害・発達障害・知的障害」
・世の中には、こうした分類・分析・論証や議論から外れたところで、目も当てられないような貧困の地獄の中でもがいている女性、そして未成年の女性達がいる。セックスワーク(売春や性風俗産業)の中に埋没する「最貧困女子」。それが僕が見てきた最も悲惨な風景だった。
・彼女らは貧困問題の議論から除外されてきたとしか思えないばかりか、常に差別と無理解と糾弾の対象だった。
なぜなら彼女らの貧困、抱えた苦しみや痛みは、「可視化されていない」のだ。
・見えづらい -
購入済み
考えさせられた。
考えさせられました。自堕落に見える彼ら、彼女らの背景にそんなことがあるんだと、それはまたとてつもなく理不尽で悲しいことなのだと。今、50歳後半になってちょっとだけ世の中が分かってきた気がしていましたが、まだまだ至らないことに気が付きました。
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少し前に、「風呂キャンセル界隈」という言葉が話題になった。「あぁ、面倒くさくて入れないとき、あるよね」。そう笑いを持って受け止めた人も多いだろう。しかし、それを笑えない人たちがいる。本気で風呂に入れないのだ。入りたくないわけではない。入らないといけないこともわかっている。でも入れない。どういうことか。
うつ病の兆候としてよく挙げられることのひとつに、入浴の困難がある。健常者でも夜遅くにクタクタになって帰宅し、「もういいや、風呂は明日の朝入ろう」と考えて、そのまま寝てしまう経験はあるだろう。うつ病になると、朝起きた瞬間その状態からスタートする。謎の疲労感と倦怠感。十分に寝ているはずなのに疲れ -
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大切に保護されて過ごすべき子供時代に命に係わる暴力と虐待を受け続け、何も与えられず、適切な教育も受けられず、容姿にも恵まれず、孤独と苦痛を感じている彼女たちは、社会からゴミを見るような目で見られている。
許せん!と、消費期限3分の義憤が沸いてすぐ消えた。恐ろしいことに気が付いたから。
人は見た目が9割というけれど、ただ容姿に恵まれないだけでなく、たくさんの厄介ごとと疫病神に憑りつかれて凄まじい負のオーラを放つ彼女たちは誰もが最悪の第一印象を抱くと思う。そして粗暴なふるまいや極端なルーズさ、品のない言動を目の当たりにし、
おそらく、いや間違いなく、僕はゴミを見る目で彼女たちを見る。
そして -
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ネタバレ離れて暮らす父と決定的な価値観の違いを感じ、生前は歩み寄れなかった著者の、検証の軌跡。
「ネット右翼」とはなにか改めて文献にあたり、父の生前の言葉や周囲の人の証言を拾い上げていく中で、「自分の中の火事」「アレルゲン」への気づきから、自身の価値観の点検•自己覚知に至る。
親という距離感の個人に対しても、世代や年代といった背景的視点から理解を深めることができるし、価値観の違い=分断ではなく、共通点を見つけて互いに歩み寄ることもできるという気づきがあった。
一見私的な関係性の検証に終始しているようで、思考の整理から他者との関係性を見直すに至った良書であると感じた。
作者にとってはとても苦しい -
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この手の本は大変貴重だと感じます。
国内統計でも性産業に関するデータは基本的にありませんし、データ取得そのものにプライバシー権が及びますので、標本が少なくてもこのようなルポから学ぶことは重要です。
風俗業、とりわけ性産業女性たちそのものにももちろん課題は山積みですし、一定の自己責任は伴うでしょうが、層別に考える良いきっかけになりました。
売れっ子キャバ嬢やav女優、私たちが表層的に判断するのはこのような目立つ方々ですから、お金を持ってる、整形をする、華やかな人たちを前提にしています。
しかし、本書では、もっと身近でミクロな領域について言及しており、これが大多数のセックスワーカーの真理に近いの -
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ネタバレ友人に勧められて読んだ一冊。私的には新書大賞。
本作は「ネット右翼になった父」に拒否反応を抱えながら看取ったルポライターが、父の死後、父は「ネット右翼だったのか?なぜそうなったのか?」を丁寧に紐解いていくそのプロセスが描かれている。
まず最初に一言書くとすると、「これ私じゃん」とめちゃくちゃ思って、共感の嵐だったことが、大きい。
父は存命で、ネット右翼でもなさそうなのだが、まさに「父親とコミュニケーションが取れない、何を話せばいいのかわからないといった問題」に直面している。
その一部は、父親の価値観というものが、私にとって許容できないものである場合、作者と同じく、その皮下に何があるかを紐解く前 -
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他の方も言われる通り、タイトルに反して、文体がカジュアルかつ、優しさに溢れたドタバタ夫婦エッセイだった。読む前は「暗いエッセイなのかもしれない」と覚悟して読み進めたが、期待に反して、優しい気持ちになれてとても良かった。
自分の家族にも「大人の発達障害」を抱えた者がおり、作者が病気になる前に、お妻様に抱いていたようなドロドロとした感情を、現在進行中で抱えたままだったが、
この本を読むことで、身の回りにいるお妻様のような方を、【先ずは理解しようとする】という《人生のコマンド》が自分の中にできた。
環境や時代、文化などの様々な要因が入り組んで障害だと判断されているだけだと気付かされた。家族にも勧め -
Posted by ブクログ
ネタバレここ最近、自分にとって良い本との出会いが続いている。本書もそうだ。私は、いわゆる「ネトウヨ」的な発言を嫌悪している。女性差別、外国人差別、障害者差別など、ありとあらゆる差別を繰り返すこうした人間はクズだと思っている。
なので、本書に関しても、報道等で目にすることが多くなった、実家に帰ってみたら父親が差別的なスラングやヘイト発言をするようになっていた!的なルポルタージュかと思って読み始めたのだが、そんな底の浅い内容ではなかった。
著者の鈴木大介さんは、私と同年代。この中で出てくる時代的なエピソードやカルチャーは、そうそう!と共感できるものばかり。父親を憎悪するに至った過程も、そのひとつとして -
Posted by ブクログ
便宜上、カテゴリ分けをしたが、実際は父と子の物語だと思う。
一定の時代の父と息子にありがちな互いに壁のあるような、胸襟を開いて話すことのない関係性。
その関係性を改善するための指南書でもあると思った。
父がネット右翼になってしまったと感じた著者は、父亡き後その言動を紐解いていく。
その過程が書かれているわけだが、結局のところ分断は両方に原因がある。彼の父に対する拒絶は彼の中にある価値観や思い込みに端を発している部分もあり、彼が勝手に父親の像を作り上げていたのである。
小さいころの親子関係は、子供の自己肯定感に大いに影響するだろう。
彼も子供の頃の厳しい父との関係で屈折した考えを持つようになった