ロアルドダールのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
15編の作品を収録した短編集。
絶妙な語り口と独特のオチの数々。それだけに内容がちょっと分かりにくいものもあるものの、それすらもこの短編集の魅力として映るような気がします。
最初の3編はいずれも傑作揃いなので、そこでハマれば他の独特のオチの短編も、「こういう作家性なんだなあ」と自然に受け入れられるのではないか、と思います。
その最初の3編はワインの銘柄当ての賭けの様子を描いた「味」
思いがけず夫を殺してしまった妻が証拠隠滅を図る「おとなしい兇器」
ライターで連続10回火をつけることができれば高級車を手に入れられる、しかし失敗すれば指を一本失う、という賭けの顛末を描く「南から来た男」の3編。
「味」はオチの書き方が絶妙! 単純に書けばそれまでの話なのですが、結末を微妙にぼやけさせて書くことで独特の”味”のある短編になっています。
「おとなしい兇器」も今となってはトリックは見覚えのあるものかもしれませんが、そこに至った時のブラックな書きっぷりが見事の一言に尽きます。思わずにやりとしてしまいました。
「南から来た男」もラストの一行が印象的。どんでん返しの衝撃というものではなく、例えるなら気づかぬうちにスッと自分の背後に何かが忍び寄っていた、という感覚のような感じです。淡々としながらも、想像すればするほど恐怖や狂気が感じられるオチです。
比較的分かりやすかった短編としては、「南から来た男」と同じくスッと忍び寄る怖さが印象的な「皮膚」。自動で文学を描く機械の発明を描いたブラックユーモア系の「偉大なる自動文章製造機」も好きです。
そしてオチの不可解さが印象的な短編も多いです。「海の中へ」「毒」「音響捕獲器」など、面白いのかどうか正直よく分からないのですが、なんだか忘れられない短編が多かったです。これもまた”奇妙な味”の短編集の最高峰とされるこの作品の魅力なのかな、と思います。 -
Posted by ブクログ
ロアルド・ダールの軽妙さは寝しなに聞く物語の愉しさのような感慨を呼び覚ます。そしてまた星新一のショートショート(そう言えばそんな言葉を最近はめっきり聞かなくなったけれど)を読んでいた頃の愉しさも呼び起こす。一つ読んでしまうと次から次へと幾つも幾つも読まずには居られなくなる愉しさでもある。中毒症状のようなものだ。そんな愉しさにふと耽りそうになる。子供の頃はそんな風にしてただなんとなく楽しんでいたっけな、と。けれど、今は少し警戒感のようなものも同時に頭をもたげる。その愉しさの根源は世の中に対して斜に構えずには居られないシニカルなものの見方と気付いているから。
シニカルなものの見方は中毒のような効果がある。一旦そういう見方に染まってしまうと後戻りはできない。教師の言うこと聞かなくなって学ランの釦をわざと外すようになる。胴着と袴で竹刀を抱えて浜辺を走る青年を理解できなくなる。人間なんてららららららららと歌うことに酔いしれるようになる。果ては盗んだバイクで走り出す(こんな例えばかりだと歳が知れるが)。シニカルな視線は真面目な人のやることをすべからく揶揄する心が生み出す怪物だ。
けれどロアルド・ダールの軽妙さが描き出すのは、シニカルさとは反対の(関係ない話だが、真逆という言葉がどうも好きになれないのは、それを連呼していた人がいまひとつ好きではなかったせいなんだろう)真っ直ぐに信じた道を突き進むような人ばかり。表の顔で追従笑いをしながら心の裏で舌を出すような人は余り出てこない。ドリフターズやコント55号のお笑いが人を馬鹿にした笑いではなかったように、ロアルド・ダールの可笑しみは真面目な人が真面目に働くことによってどうしようもなく引き起こされてしまう悲劇的な喜劇を、少しばかり大袈裟に描いたものなのだと理解する。笑いながら読み進め、ついでに自分自身も笑い飛ばしたくなってくる。そうすると、ぐるっと回って汗臭い胴着を着て面や胴や小手を着けて大声を出しまくっていた自分が、案外好きになる。
でもちょっと待って、と、ロアルド・ダールは言うに違いない。その真面目さがどんな悲劇を生み出しかねないのか、少し考えて欲しい、と。例えば、原理主義は究極の真面目さだとも言えると思うが、最近は何かと批判の対象になりがちだ。けれども本当は主義主張が悪いのではなく、それを他者に強制することが問題な筈だ。ところが人は自分が是とするものを他人にとっても良いものであると考えがち。竹刀を振り回していた頃の自分もそうであったように。そこにロアルド・ダールの目線はあると思う。
そんなことを考えていたら、谷川俊太郎の「真面目な顔つき」を思い出した。真面目なひとが真面目に歩いていたら悲しいし、泣いていたら可笑しいし、謝っていたら腹が立つ。けれど真面目な人は真面目に人を殺す、それは恐ろしい。やっぱり世の中多少シニカルな位でちょうどいいのかも知れないね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレダールの作品で、マチルダを読んで時に、すごく面白いと思った反面、
少し危うさも感じた。この本を子供に読ませてよいのだろうかと。
しかし、ダールの自伝を読んだときに、その心配は消えた。
ダールの自伝を読んだとき、ジブリの紅の豚を思い出した。
ダールの作品は、暗いところや、斜めに構えたところがあるが、
人間の温かさや、奥の深さが共通していることに気がついた。
大人向けの本も出しているというので手に取ったのがこの本である。
ますます、ダールが好きになり、翻訳ものは、ほぼ全部読ませていただいた。
時間があるときに、順に書評を書いていきたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレダールの作品の原点を確認することができました。
「マチルダ」、「チョコレート工場の秘密」、「こちら愉快な窓拭き会社」の3つが、 同じ著者の作品だと知らずに、それぞれ読んでいました。
単独飛行を呼んで、3つの本の共通点に気がつきました。
極限の経験、人間に対する愛情、大人の権威に対する反発。
この3つの視点が、作品ごとに、それぞれほどよく混ざっています。
この本を読んで、ダールの本を安心して子供に勧めることができるようになりました。
ますますダールのファンになってしまいました。
ps.
宮崎アニメの「紅の豚」の題材の一つだといわれているそうです。