あらすじ
短篇の一つ一つにちりばめられた恐怖、幻想、怪奇、ユーモア、機智……数多くの奇妙な味の短篇を発表している鬼才ダールが、賭博に打ちこむ人間たちの心の恐ろしさと、人間の想像力の奇怪さをテーマに描いた珠玉の掌篇十五篇を収めた代表的短篇集。一九五三年度アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作!
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Posted by ブクログ
15編の作品を収録した短編集。
絶妙な語り口と独特のオチの数々。それだけに内容がちょっと分かりにくいものもあるものの、それすらもこの短編集の魅力として映るような気がします。
最初の3編はいずれも傑作揃いなので、そこでハマれば他の独特のオチの短編も、「こういう作家性なんだなあ」と自然に受け入れられるのではないか、と思います。
その最初の3編はワインの銘柄当ての賭けの様子を描いた「味」
思いがけず夫を殺してしまった妻が証拠隠滅を図る「おとなしい兇器」
ライターで連続10回火をつけることができれば高級車を手に入れられる、しかし失敗すれば指を一本失う、という賭けの顛末を描く「南から来た男」の3編。
「味」はオチの書き方が絶妙! 単純に書けばそれまでの話なのですが、結末を微妙にぼやけさせて書くことで独特の”味”のある短編になっています。
「おとなしい兇器」も今となってはトリックは見覚えのあるものかもしれませんが、そこに至った時のブラックな書きっぷりが見事の一言に尽きます。思わずにやりとしてしまいました。
「南から来た男」もラストの一行が印象的。どんでん返しの衝撃というものではなく、例えるなら気づかぬうちにスッと自分の背後に何かが忍び寄っていた、という感覚のような感じです。淡々としながらも、想像すればするほど恐怖や狂気が感じられるオチです。
比較的分かりやすかった短編としては、「南から来た男」と同じくスッと忍び寄る怖さが印象的な「皮膚」。自動で文学を描く機械の発明を描いたブラックユーモア系の「偉大なる自動文章製造機」も好きです。
そしてオチの不可解さが印象的な短編も多いです。「海の中へ」「毒」「音響捕獲器」など、面白いのかどうか正直よく分からないのですが、なんだか忘れられない短編が多かったです。これもまた”奇妙な味”の短編集の最高峰とされるこの作品の魅力なのかな、と思います。
Posted by ブクログ
ブラックユーモアの真骨頂。
15篇ある短編の登場人物たちは中々の残酷さを持っているのだけれど、多分、誰もかれもがあなた(読者)に似ている。
誰もが持っている残酷さを、ふくらまし粉でふくらませたのが、各主人公なんだろう。
Posted by ブクログ
ダールの作品で、マチルダを読んで時に、すごく面白いと思った反面、
少し危うさも感じた。この本を子供に読ませてよいのだろうかと。
しかし、ダールの自伝を読んだときに、その心配は消えた。
ダールの自伝を読んだとき、ジブリの紅の豚を思い出した。
ダールの作品は、暗いところや、斜めに構えたところがあるが、
人間の温かさや、奥の深さが共通していることに気がついた。
大人向けの本も出しているというので手に取ったのがこの本である。
ますます、ダールが好きになり、翻訳ものは、ほぼ全部読ませていただいた。
時間があるときに、順に書評を書いていきたい。
Posted by ブクログ
どの作品もちょっと皮肉な味わいがあって、おもしろい。
そこから人間という存在のおかしみだったり、滑稽な姿だったり、ある種の恐ろしさが立ち上がっている様が心に響く。
個人的には『海の中へ』がお気に入り。
Posted by ブクログ
さすが、ダールは本棚に入れている人も多いですね。「海の中へ」の結末その後が気になる!「わが愛しき妻よ、鳩よ」に出てくるのがスネープさん。ハリー・ポッターを想像してしまいました。
Posted by ブクログ
その夜、ある家の晩餐の席で一つの賭けがなされた。美食家を自認する客の一人が、食卓に出た珍しい葡萄酒の銘柄を判定できると言いだしたのだ。賭け金はなんと邸宅と当主の令嬢――絶大な自信を持つ当主はその賭けに同意したが……幻想とユーモアと恐怖をちりばめた奇妙な味の短篇を得意とする鬼才ダールが、賭博に打ちこむ人間の心の恐ろしさと人間の想像力の恐ろしさをテーマに描いた珠玉の15篇を収める代表的短篇集。
(05/02/21)
Posted by ブクログ
もう廃盤となってる旧訳版。
絶妙な語り口でぐいぐいと読ませてしまう。
オチもどうなるのか意外と読めなかったりして、引き込み方が非常に巧い。
シニカルが効いている奇妙な味。
人間の弱さ醜さ恐ろしさをユーモラスに描いた逸品。
傑作と言われる冒頭の3編から始まり、「韋駄天のフォックスリイ」の心痛みながらも笑えるオチ、「告別」の苦笑いしてしまう復讐劇、子供の頃の妄想は世界共通でドキドキした「お願い」など、ゾクゾクする短編で出来上がっている。
誤訳、悪訳が所々にあり読みづらい部分もあるものの、充分に良いと思う。
なにせ40年以上前の古い出版なので、新訳版も読んでみたい。
チャーリーとチョコレート工場の作者とは知らなかった!
味 ★4
おとなしい兇器 ★4.5
南から来た男 ★3
兵隊 ★2
わがいとしき妻よ、わが鳩よ ★3
海の中へ ★4.5
韋駄天のフォックスリイ ★5
皮膚 ★4
毒 ★3.5
お願い ★3.5
首 ★4.5
音響捕獲器 ★3
告別 ★5
偉大なる自働文章製造業 ★4
クロウドの犬 ★4
Posted by ブクログ
短篇集。収録作品は、味、おとなしい兇器、南から来た男、兵隊、「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」、海の中へ、韋駄天のフォックスリイ、皮膚、毒、お願い、首、音響捕獲機、告別、偉大なる自動文章製造機、クロウドの犬。
短編の醍醐味はキレの良い展開。 この短篇集は、ミステリー要素はあまりないけど、話がどう展開してゆくかワクワクする。 予想外の結末にうならされたり、予想通りの顛末に納得したり。 特に好きな作品は、ワインをあてる賭けをする「味」、なんでもないような賭けが緊張感を募らせる「南から来た男」、時代を先取りし過ぎている「偉大なる自動文章製造機」。 賭けにまつわる題材が多い。 最後の「クロウドの犬」だけは長めの約100ページで、プロットの割に冗長に感じた。
Posted by ブクログ
大人向けダールはブラックユーモアが効いている。本作はあなたの近くにもこんな人がいるかもしれない…人々が登場する短編集。最後の切れ味が抜群。オチがわかってゾッとするようなものも。ただ作品の出来不出来の差は少しあるかも知れない。私の読みが甘いのかオチがイマイチ良く分からないものも。一番良かったのは「南から来た男」。素晴らしい。2012/529
Posted by ブクログ
ヒヤリとする
人生を棒に振るほどアホなことをやってしまう人、そそのかす人達
斧を選ばそうとする執事が怖すぎる
あなたに似た人、っていうタイトルがまたユーモラスですな
Posted by ブクログ
短編の名手ダールの短編集。
凶器トリックでは例題になるほどあまりに有名な「おとなしい兇器」、奇妙な賭けを持ちかける男の話「南から来た男」等々、恐怖、ユーモア、幻想を描いた、これぞまさに「奇妙な味」の詰められた1冊。全15編収録のうち、何作かが賭博に絡めて描かれているが、「賭け」というのものは時折ここまで恐ろしい要素を含むものか、と読後にヒヤリとさせられる。
「奇妙な味」といえば自分はサキとダールを思い浮かべる。モダンホラーとも怪談とも異なる「怖さ」を味わいたいなら、必読かと。
Posted by ブクログ
―SOMEONE LIKE YOU―
ぐいぐい読ませる表現が好きです。
「まるで、とけたバターでうがいしているみたいに」潤いのある声とか。
内容は、血なんて飛び散らないのに恐ろしい。
人間の怖さですね。
それに、書ききらないで、読み手にゆだねてしまうところが良い。
これがより一層恐怖をリアルにするように思います。
面白い短編というのは、長編にできるものを短く押し込めるのだと誰かが言っていましたが、まさにダールはこの手法で面白いものを書いていると感じました。
お勧めは、「おとなしい兇器」「韋駄天のフォックスリイ」「皮膚」「首」「告別」です。
特に、「首」は今までにない種類の緊張感を味わいました。
この作品、英題がNeckなのですが、日本語の首=neck+headな点は、日本語訳ならではの良さだと思います。
Posted by ブクログ
○2010/01/24
皮肉たまんねえ。告別とか。というか全体的に。
読みにくい、伝わりにくい、分かりにくい、とぐだぐだ読みつつも後にに進むにつれて楽しくなってきて、最後の最後にニヤァ、と。こういうのはいいな…性格悪い人というか、こういう話がさらっと書けてしまう人になりたい(笑)
でもやっぱり訳文は読みにくい…これが古いというのもあって。言い回しが曖昧に遠まわしすぎるのがなぁ。忠実に話を伝えようとするから余計に日本語が成立しなくなるってのが悔しい。
翻訳ものを読むたびに、原著で読んでみたいなぁ、どうやって表現されて、それを感じられるのかなぁとすごく思う。
Posted by ブクログ
チャーリーとチョコレート工場の作者R.ダールのショートショート集。
原題「SOMEONE LIKE YOU」
「この人に賭けるものは何も残ってない」というセリフと衝撃のラスト(【南から来た男】)
30年近く前、米ドラマで観た映像は少年時代の脳裏にこびりつくほどショックだった。
奇妙な話がお好きならお勧めです。
Posted by ブクログ
「チョコレート工場の秘密」で知ったロアルド・ダール。児童文学の作家だと思っていましたが、たまたまこの本を見かけタイトルに引かれて購入。
結末にちょっとぞっとしますが、なんともいえない奇妙な世界が面白かったです。
Posted by ブクログ
大人になって、作者が「チョコレート工場の秘密」のロアルド・ダールと知り、びっくりした。そして彼の孫はモデルのソフィー・ダールだって…。これまでの人生で、3回もこの作者の意外性にびっくりした。
Posted by ブクログ
ミステリ文庫ではあるものの、この本に収められている短編はいずれもミステリーではないよなぁ、という印象。
面白い作品もそうでもない作品も入り混じってますが、共通するのが「確かにこういう人、身近にいるかもしれない」という人物が取り上げられていること。特に冒頭の『味』で登場するワインの産地をあてる美食家や、『海の中へ』で賭けに勝つために海に飛び込む男なんかは、ほかの小説でも出てきそうです。
Posted by ブクログ
異色、奇妙な味、とよくよく表現される名作ぞろいの短篇集。
『味』のおかしさといったらないのです。
新訳も出ているのでそちらも読んでみたい。
この時代の女性の台詞は本当にこう、なんていうか「あら、あなた、それってなんですの」的な、実のないからっぽな物言いばかりでついつい笑ってしまいます。
Posted by ブクログ
わー結構ブラックだなーと思いながら読み進め、最後の短編が「クロウドの犬」。
犬が可哀想な目にあうんじゃないかと思って気が気ではありませんでした。
まあ予想よりもマシでしたが……。
Posted by ブクログ
ずいぶん前に読みかけたまま放っておいたので、前半部分はほぼ内容を忘れてしまった。
それでも、最初の3編(「味」「おとなしい兇器」「南から来た男」)はその饒舌な語り口とともに、なんとなくその内容を覚えている。特に「南から来た男」はその上手さに舌を巻き、なんとまぁ恐ろしい話だろう、と思うと同時になぜだか愉快になった記憶がある。
対して、中盤あたりに収録されている話はどうにも印象が薄く、語り口だけで引っ張っていたような気がする。
ダールの語りは上手い。しかしそれはいわゆる、淡々とした、いろいろなものをそぎ落としたタイプの上手さではないと、私は思う。
どちらかというと、ダールは「饒舌」に、「掻き立てる」ように書く作家という印象だ。「でしょう?」「まったくねぇ」「そうなんですよ」と身振り手振りを加えながら、的確に相槌を打ってくるイメージ。
だからといってわずらわしい感じはしないのだが、中盤ではどうもその「語り」だけで引っ張りすぎたような気がして、やや強引な印象ばかりが残っている。
この本を訳された田村さんの解説で、ダールを評した都築道夫さんの文章の引用がある。その中で都築さんは、ダールについて「アメリカ人にしては珍しくフェミニストではない」と書いている。
これに私は大いに「確かに」と思った。ダールの女性の書き方はは、なるほど辛辣なのだ。『オズワイルド叔父さん』などを読んでもそう思った。
都築さんはそれに対して「ダールという作家を女性はどう思うか、ちょっとうかがってみたいような気がする」と言われている。
私個人で言わせてもらうと、ダールはかなり好きな作家だ。クセがあって、いかがわしげで、それでいて鋭い。饒舌なのに油断も隙もない。この本も、タイトルからして皮肉たっぷりである。
で、私はダールのそういうところが好きなのである。笑。
Posted by ブクログ
高校時、近隣大学英文学科の先生による訪問授業の教材が「おとなしい兇器」だった。単語1つ1つに隠されたもう1つの意味に感激、即購入。どこか狂ったような世界観と膨大な量に辟易して手放してしまったが、再読したいなぁ。
Posted by ブクログ
ロアルド・ダールという人は、ティム・バートンが監督した『チャーリーとチョコレート工場の秘密』の原作者なんですねぇ。それを知らずに買ったのがもう10年前くらいだろうね、やっと持ち主に読まれる喜びをこの本は感じているでしょう。
ストーリーの展開も文章も、オリジナリティ溢れさらに王道を行っているような感じ。面白かったです。500pくらいある短編集なんだけど、すらすら読めてしまいましたねぇ。
Posted by ブクログ
【南から来た男】―短篇。
ジャマイカのホテルにて。白いスーツの訛りのある小男と米軍青年の賭け。小男の「キャディラック」と青年の「左手小指」。レフェリーをまかされる主人公の視点で描かれる。緊迫感は味わえるが、痛そうな話は個人的に苦手だ。この小男みたいな人はたくさんいそうである。(2008.12)
Posted by ブクログ
短編集です。
以前同じ作者さんの「チャーリーとチョコレート工場」を紹介しましたが、これは大人向け。
全体に流れる雰囲気は「世にも奇妙な物語」と「古畑任三郎」を足してニで割ったような感じ。
どのお話も、不思議で奇怪な雰囲気が漂っていて、中には背中がぞっとするような怖いものもあります。最後の最後に、「あれっ」「あらっ」という感あり。
ブラックユーモアというのか、この作者さんのセンスってすごいなって思います。
タイトルは「あなたに似た人」だけど、タイトルと同名のお話はありません。
解説によると、「あなたがたの中にも、こういったところがあるんじゃありませんか」と問いかける、つまり、
「あなたがたに似たひとたちの話をあつめた本」ということらしいです。
少しご紹介。
−おとなしい兇器−
夫の帰りを待つ妻。おなかには6ヶ月になる赤ちゃん。
「よりによってこんなときにこんな話を持ち出すのも・・・」といいながら夫が打ち明け話を切り出す。でも最後だからと食事の用意をしたいという妻。
心の中では夫に恨みを抱いている妻は、冷凍肉の塊で夫を一撃する。
警察が駆けつけるが、兇器は見つからない。
そんな警察に妻は夫に出すはずだった料理をふるまう。オーブンで焼いた羊肉。
舌鼓をうつ警官たちは、兇器について語る。
「(兇器は)この家の近くにあるにちがいないのさ」
「ああ、きっと俺たちの目と鼻のさきにあるだろうぜ・・・」
妻は声を殺してクスクス笑い出した。
−皮膚−
有名な画家にその昔刺青をかいてもらった男。
それを自慢したくて見知らぬ男に背中を見せる。
ホテルを経営するというその男は、その刺青は非常に価値があるから、自分のホテルに住んでほしいと言う。
ただ刺青を見せるだけで大金を手にできると思った刺青男はその話にのるのだが・・・。
おそろしい結末が待っています。。
このほかに、「味」「南から来た男」「兵隊」「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」「海の中へ」「韋駄天のフォックスリイ」「毒」「お願い」「首」「音響捕獲機」「告別」「偉大なる自動文章製造機」「クロウドの犬」の15編。
自分にもこんなことがあるかもしれない・・??
Posted by ブクログ
所有しているワインの貯蔵所が自慢の男と、ワインききの美食家の対決『味』。
自分の身体を賭けて、ギャンブルをする『南から来た男』。
高名な画家が若い頃に描いた背中の絵を後生大事に持っている男と、それを買い取ろうとする人間達の『皮膚』。
等々、15の珠玉の短編が納められています。
まあ、随分前に読んだ本なのだけど、ちょっと思い出したので読んでみました。
好きだったんですよ、この本。
ブラックも、ミステリも、ギャンブルもある。
ちょっと変わった物語を読みたい時にうってつけ。
自分を嗤った女に復讐する、自分を捨てた亭主を殴りつける、小説界を乗っ取ってみる、賭けに当たるようにタイミングを作ってみる・・・すべて日常に起こりうる空想。
あなたも私も、この中の誰かに似ていたりしませんか?