横道誠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「ケアの倫理」「オープンダイアローグ」「当事者研究」
最近のわたしのキーワードが満載された本ですごく面白かったけれども、自分のなかではまだ体系化できてないなと思ったら「体系を構築すると権力志向が生まれてくる」という中井久夫の思想が紹介されていて(p.125)、じゃあもうしばらくこのままあれこれ読んでいくか……となった。
興味を広げてくれるハブのような本で、これのおかげで2年前に録画したままになっていた「100分de名著」の中井久夫特集を一気見したし(「S親和者」がわからなかったので見たけど、中井自身のものと思われるエピソードがめちゃくちゃおもしろかった。本の背表紙を見ていると読んだ内容がすべてしみ出してきて脳内に洪水が起こるので、ぜんぶ小口が見えるようにひっくりかえしてならべていたとか)、『治療文化論』も買った。横道氏の『みんな水の中』もだいぶ前に買ってあって、これも読みたいなと思った。
なんでここまで関心があるのか自分でもわかったようなわからないようななのだけど、30年ぐらい前に河合隼雄を読みまくっていたころは、たぶん自己セラピーで、今は、家族の悩み事に少しでも突破口が開ければなという気持ちなのだと思う。 -
Posted by ブクログ
頭木さんの文章は好きだし、横道さんも注目の書き手なので読んでみた。
大変よかった。
確かにインタビュアーとインタビュイーが固定だと、インタビュアーは(自分は安全地帯にいるのに相手のことに突っ込むのはどうかと思い)遠慮したり忖度したりしてしまう可能性がある。交代で役割を変えることによって、自分も突っ込まれる覚悟を持ってさえいれば、相手にも突っ込めるというわけ。
特によかったのは、発達「障害」なのか?という日頃から抱いていた疑問に答えが出たこと。「発達障害」は行政用語で、障害ではなく「ニューロダイバーシティ」、つまり脳の多様性だという考えが90年代から出てきているらしい。かつては同性愛やトランスジェンダーも精神疾患として治療の対象となっていたが、社会の方が変わった。発達障害という概念も修正される可能性は大いにあるということ。
また、自閉スペクトラム症には男性の方が多いというのも不思議の一つだったが、それは基準が男性中心に作られているからだというのも、なるほどと思った。
頭木さんの、発達障害の人には固有の感じ方考え方がありそれが文化と言えるが、(頭木さんの持病である)潰瘍性大腸炎の文化はないと思う、という言葉に対し、横道さんがある、と答えているのも興味深い。
発達障害の人がドラマに出てくる「天才的能力を持つ発達障害者の女性と理解ある彼くん」にうんざりするとか、病人にも病人を差別する感情があるとか、納得する話も多かった。
頭木さんのタイムスリップものや難病ものに対する怒りにも共感。
新しい知見が得られ、当事者にしか言えないことを聞け、本物の「多様性」や、人間存在そのものについても深い気づきを得ることができた。
お二人とも肝を据えて語った、素晴らしい本。 -
Posted by ブクログ
絵本やマンガも含めた50冊の本のブックリスト
軽いタッチで紹介されてて読みやすかった
○読んでみたいと思った本
・みち 安倍海太 現代日本最高峰の絵本作家
・水街 ユズキカズ 南洋世界の香り
・11人いる! 萩尾望都 心理戦とサスペンス
・夕凪の街 桜の国 こうの史代 原爆後10年
この世界の片隅に、日の鳥
・カラフル 森絵都 魂が自殺未遂した中学生の体に宿る
・アルジャーノンに花束を ダニエルキイス 知能と人間性の本質を問う
・部屋へ! サ道 タナカカツキ 水の澄んだ美しさ
・恥辱 JMクッツァー ノーベル文学賞
○読んだことのある良かった本
・ルックバック 藤本タツキ 京アニメ事件
・コンビニ人間 村田沙耶香
・世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
・すべての白いものたちの ハン・ガン
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文学と哲学の交錯と融合が示される"はじめに"で、早くもわくわくが高まる。
なるほど、オートエスノグラフィーは当事者の確かな違和感から始まるのだということが、よく分かる。
外部からの観察のみによるラベリングだけはもちろん不充分かつ不正確というのは間違いなく、そこに当事者の分析が統合されることで高まる学究的な価値はとても大きいだろう。
病跡学なる分野があることを初めて知り、また、発達障害や精神疾患に関する診断において、白か黒ではないスペクトラムという捉え方が広く敷衍していることも不勉強ながら本書で教えられたが、実情に即した合理的な考えで、非常に良いことだと思った。
私はかねて、理系・文系で人のタイプをざっくり分けたり行動を分析したりすることを甚だナンセンスだと感じているが、本書で言及されているカントやニュートン、ライプニッツといった近代科学の礎を築いた巨人たちの名を見て、またプラトンやアリストテレスが生きた古代に思いを馳せ、人の思弁はそのように峻別できるものではないと、改めて思いを強くする。
時代が下るごとに分業化が進んでしまっているだけで、文学も哲学も物理学も医学も、突き詰めた先の到達点は同じところなのではないか。
この本の真骨頂は、横道誠氏と各人との対談パートにある。
何気なく交わされる彼らの言葉の中に、深い気付きに至る金言がどれだけ溢れていることか。
私も診断こそ受けていないが、きっとASDでありADHDであるだろう、と自認して50年以上生きてきたが、本書を読んで「うーんまだまだ甘いかも…」と変に自信喪失(?)してしまった。
苦言ということでもないが、石原真衣氏との対談で横道氏は"文化人類学はまず難解な議論を先出しし、後から読み物がやってくるという構成が衒学的だ"と批判されているが、「えっ、この本こそ…」と突っ込んでしまったのは私だけだろうか?
「どうしていい歳をした大人が、『読書感想文』を粉飾したような作品内在解釈にいそしんでいるんでしょう、それが『高級』だという価値観を維持してるんでしょう。」
「ASDがあると凝り性になって、ADHDがあると飽き性の傾向になるんですよね。」
「自分を研究や観察の対象として見つめて、必要があれば他者と共有していいんだという考え方に、すごく大きな扉が開かれた気がしました。」
「最近は認知科学が進んできて、多くの定型発達者でも、疲れたり不調だったりすると、衝動性が増したり、鬱っぽくなったりして、発達障害的なグラデーションの中を生きていることがわかってきました。発達障害者はある部分の特性が強烈に出ているだけで、相対的な違いに過ぎない。」
「分刻みでアポ取って動いている人なんか誰もいない。一時間ぐらい遅刻しても誰も何も言わないし、みんなで車で出かけて三十分走ったころに「忘れ物した!」と言っても、「ああそうか」って平然と取りに帰ってくれる。そういう世界って、楽ですよね。」
「とにかく自分を信用しちゃいけないというのは合言葉ですね。」
「自分は自分を裏切りますからね。体も心も裏切りますからね。」
「子どもの頃の価値観からあまり変わってないんですよね、自閉スペクトラム症(ASD)の「同一性保持」という特性です。
文学にとって、賢くない人たちを描く世界は未開の地で、そこに可能性がいっぱいあると思います。」
「ASD者は身体的にも精神的にも成熟してなお幼児のような印象を与えることが知られている。」 -
Posted by ブクログ
自分の人生を、自分の行動でその結果に影響を与えられているという「ドライブ感」がないと、人生を悲観しやすくなるって部分はその通りだと思った。
前半のインタビューは社会で学生時代から、または社会に出てからうまくいかないエピソードてんこ盛りで読んでいて辛くなった。障害があっても前向きに生きている人のエピソードもあって勇気づけられた。
後半で優生思想・反出生主義についてセッションというか対談形式でインタビューのフォロー的な話が続く。
優生思想・反出生主義を他人に押し付けることはあってはならないことだけど、個人の頭の中で主義思想を考えることは個人の自由。と言っていたのは驚いた。反出生主義を持つこと自体良くないって流れになると思ってた。
その上で、「私が不幸なのは障害のせいで子供を持つとしたら必ず障害が遺伝してその障害のせいで子供も必ず不幸になるから反出生主義です」といったようなネットで過激な言葉に触れるうちに待たされてしまったかもしれない主義思想は本来の自分の主義思想とは違うこともある。私自身もネットで「障がい者はどこでも馴染めず生きていけなくて結局損でどうしようもない」的な強い言葉の意見をいいねしてしまうことがあって、自己攻撃的にSNSを使って居たと思う。生きにくさを全て障害のせいにして被害者ぶるとネットで後ろ向きな居場所ができてしまう。希望を持とう!と前向きになれば全てうまく行くわけではないけど、過剰に自分の属性を卑下する言葉はドライブ感を損なう。自助会などで情報を得ることは大事だけど、ネットで後ろ向きな情報を集めて被害者ぶるのはやめようと思った -
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おもしろかった。発達障害当事者の横道さんと20歳で病気になり、13年ものあいだ闘病していた頭木さんとの往復インタビュー。
インタビューなのでしゃべり言葉ですべて収録されており、心の面、身体の面の不調や唱題を語っていく。ふたりとも全く違う生活をしてきたのに、通じるものがあったり、全く通じず、お互いにそれぞれの文化を教え合う場面もあり、とても楽しく読めた
この世の中は健康体や健常者ばかりではなく、はみ出している人をさらに制度からはじき出さないような社会にしていきたいと思うし、こういう本のような違う分野からの語り合いというのももっと共有されていけばいいと思う -
Posted by ブクログ
本書は、「自閉スペクトラム症の当事者はマンガ、小説、アニメ、映画、テレビドラマ、音楽などから“人の心”を理解しようとしているのではないか?」という仮説をもとに、コミュニケーションが苦手で共感能力が乏しいとされてきた、自閉スペクトラム症者7名へのインタビューをまとめた内容となっている。
仮説をもとに、さまざまな生い立ちを抱える当事者7人に、自身も当事者である著者が共感を込めてインタビュー。かれらが夢中になったマンガ、小説、アニメ、映画、テレビドラマ、ポップミュージックは、どのようなものだったのか。「当事者の生活史」と「昭和・平成・令和のサブカル変遷史」が見える一冊だ。
個人の生活史、なかでもカルチャー面をつまびらかにすることは、そのなかでなにに夢中になったか、またハマらなかったものはどんなものかを聞くことであり、それはつまりなにに心を打たれ、何が心に響かなかったかを読者に知らせる作業である。
インタビュイーの人たちは私よりも世代が上の人たちが多く、名前だけ知っている作品が多かったけれど、何がその人にとって魅力的だったのか、という点については自分も好きな作品に出会ったときと同じような思いを抱いたことも多かった。
この本のによかったところはインタビュイーを投げっぱなしにしないところである。
著者の横道氏も ASD かつ ADHD の当事者である。インタビューのなかで受け取った内容をマコト A とマコト B という2人を用意して、対話形式で横道氏自身にも通じること、通じないことを踏まえて深掘りしていくという、いわば交通整理をしながらも、スペクトラムという言葉が表すように人によっていろいろあるのだと知らせてくれる。
あなたはあなた、私は私、こういうすっきりとした割り切りというか他者と自分をセパレートにするという考えにするりと着地をしていく。
それが私にはとても心地よかった。
インタビューのなかで当事者たちがいかにいろいろなことを思い、考え、人の心を理解しようと実践しているかを見れば、ASD に「人の心がない」なんてとてもじゃないが言えないだろう。だからこそ横道氏は「心のない人」という一見ぎょっとするような言葉をタイトルに持ってきたのではないだろうか。
本書のなかでマコト A が言っていた「数が多いか少ないかで、正常か異常かが決まってくるからね。そのことはもっと議論されても良いよね。」という言葉がすべてで、結局、いまこの社会のなかで多いか少ないかで異常ではないと判断されている。
単なる数の多寡で異常だとか正常だとか何様かと思う。裏を返せば、いま異常である側の数が多い社会(正確にはそれがよしとされる社会)では、いま正常の側にいる人たちが異常になっていくということでもある。
時代や社会や産業構造によってころころと変わる尺度で、異常だとか正常だとかで他人を測ること自体があまり意味のないようなことだと思えてくる。 -
Posted by ブクログ
精神科医とグループワークをする人の交換日記形式の書物。具体的で読みやすかった。グループワークする人は宗教2世で、今もアルコールをばっさばっさと飲む「経験者」だから、話が綺麗事じゃなくて実にリアルである。
人間誰でも条件が揃えば依存的になる。他人事ではない。推し活も立派な依存だと思う!
生活に支障が出るほどの依存が病気と呼ばれるのであって、何かに執着するのは趣味の範囲なのかなと思う。程度の問題。
【内容から学んだこと】
・アディクションの本質は孤立にある。なぜ続けてしまうかというともっと元凶にある原因から本人が逃げなければ生命の危機に関わるから。マインドを一時逃避させるために何か別のものに頼る。その方法は過食、アルコール、薬物、セックス、自傷行為など。
そこから脱出するには、0 100でいきなり0にするのではなく、安全な方法で摂取を続けて、患者自体が辞めたいと思うことが辞められるきっかけになる。
・グループ療法のアノニマス系は、依存する先を神様にすることによって、健全に依存先を転換するやり方を使う。宗教2世など宗教で悩んだ人にはアノニマス系は苦しいものになる。別の手段が必要。
・回復するには、仲間作りが大事。(支援者、同じ境遇の人)
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依存を作る原因
・HALTの状態がアディクションを生み出しやすい
Hungry, hungry lonely, tired
・「家族は病気の温床」
人が集まれば感染症の温床となるが、心理的にも密となれば、メンタルヘルス問題の温床となる