石田夏穂のレビュー一覧
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「何となく筋トレを始めてみた」から、声をかけられて本格的に大会を目指して鍛えてステージに立つ話。
その過程で、評価される側に立つことで見えてくる周りの価値観に、主人公の葛藤を通して考えさせられた。
ステージに出るからには賞を取りたい一心でトレーニングをして、スキンケアをして、髪のお手入れをして、脱毛もしてひたすら努力をしている姿についつい引き込まれてる。
最後の最後に、周りの評価に疑問を持ち、そのままの自分でステージに立とうと決意をしたところがすごかったし、かっこよかった。
筋トレを通して、自分の思うカッコよさとは何かを考えさせらる本。 -
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ストーリーは面白く、文章量も少ないのであっという間に読み終わった。
組織で働いている人なら誰もが「あるある」と思うような場面や、「いるいる」というようなキャラクターが出てきて面白いのだが、自分にも後藤のような一面や、大島やミエちゃんのような一面があるのかも…と、ブヨヨとさせられる。
以下ハッとさせられた引用。
「後藤はデブが嫌いだった。自分の身体に対するリスペクトに欠けているから。自分の体型なんて、自分の意志で、どうにでもなることなのに。」
「デブは総じて理解が遅い。自分の身体もコントロールできないやつに、ものを人並みのスピードで理解できるわけがないのだ。」 -
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「火曜は脚の日だ」。
筋トレをしているか、もしくは知っている者であれば、きっとこの書き出しにグッと掴まれるだろう。
自分に身近であればあるほど、小説は面白いのかもしれないと思う。無論、小説だからこそ味わえる体験というのもあるのだろうが、主人公に感情移入しやすいというのは、やはり面白さが格別なものになる。
私の入会しているジムもスミスマシンは一台のみ。なので、主人公の気持ちが痛いほどよくわかる。「あーもう!早く使いたいのに!」、私はそう思っても決して声や表情には出さないが、普段思っていることがこうして小説として描かれると、どうにもこそばゆい感情が身体を駆け抜ける。
異色の筋トレ小説という部分 -
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大学生のころ、全国チェーンの大手スポーツクラブでアルバイトをしたことがあります。受付希望で面接に行ったら、シフトの関係か、急な欠員で困っていたのか、真偽のほどは未だにわかりませんが、ジムスタッフとして採用されました。初めは、マシンの使い方から学び、入会したての初心者の方へ案内する日々。長く務めるにつれ、フリーゾーンで毎日のように黙々とトレーニングをするマッチョなおじさまたちと話す機会も多くなったことを懐かしく思い出します。
本書は、そっち、フリーゾーンで黙々とトレーニングをする人が主人公です。
主人公はU野。U野をBB大会(ボディビルの大会)の道へ進むようスカウトするのはO島。パーソナルトレ -
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最近筋トレを始めた私にとっては親近感のあるテーマ。しかし、筋トレ、ボディビルに関心がなくても、何かしら響くものがあると思う。
世の中には様々なステージがあるが、どのステージに立っても女性は容姿でジャッジされて「大変」なのだ。例えそれが容姿とは関係ない仕事や筋肉のステージであっても。女性が周りの視線を気にせず主体的に生きることが、どれほど難しいことか。
ヒリつくようなストイックなトレーニングと「別の生き物」を目指す様が手に取るように伝わってきて、一気読みしてしまった。最後は意外な展開だったが、悲壮感は全くなく、ある種の清々しさで締めくくられている。そう、自分の人生のステージは「自分で演出」するん -
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溶接工を描いた小説という事で興味をもって読んだ。読む前にネットで調べると、ハンダづけとアーク溶接の区別がされていないような解説があり、若干、技術的な正確性に不安のある話かと思ったが、全くの誤解。技術的に正確などころか、所謂、現場や職人の姿が極めてリアルに描かれている。そして、「手に職」をもって生きる「職人の手」をモチーフとしたメタファーが、このハンダから始まっているのだと小説の技巧にも舌を巻く。
あるある話で言うと、やはり現場は安全第一と言いながら、そこを管理する人間によって、消耗品の交換タイミングがいい加減だったり、安全帯の使い方も目が行き届いていなかったりする。八重洲ビルの事故みたいな問 -
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ネタバレ今時のネット社会がテーマの短編集。
七人の若手作家達が書いているのだけど、その中に若手ではないが^^自分の推し作家である杉井さんが入っていたのでそれを目当てに読み出したのだけど他の作家さんのお話も面白かった。
題材的にはVtuber、tiktok、マッチングアプリ、押し活などいかにもなもので、内容的にはミステリあり青春ものありサスペンス調のお話ありとバラエティがあって、なかなか面白かった。
個人的にはtiktok絡みの青春ものが読後感が良くて好き。
杉井さんのお話は「世界でいちばん透き通った物語」の後日談なのだけど改めて霧子さんがホームズで燈真くんがワトソンなのだなと納得した。 -
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ネタバレこの現代に潜むゾクゾク感がたまらない!
SNSはやっぱり恐くて、でもこんなに温かいものだったなんて、今まで知らなかったなぁ。
特に好きな話は、
自分の娘がパパ活?をしている可能性があり、それを止めるべく取る父の行動に鳥肌が止まらない、結城真一郎「ヤリモク」。
YouTubeの配信に熱を注ぐ変人な同級生を裏で支える主人公。果たして彼女たちの行く末はー。佐原ひかり「あなたに見合う神様を」。
PCを使えない上司の指導係になり、不満を募らせる女性。その女性はその腹いせにその上司の管理下にあるタイムカードの数字をいじり、自分の残業時間をいじるというゲームを行っていた。最後の彼女の言動にに思わず胸を打た