石田夏穂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
第169回芥川賞候補作。
「我が友スミス」以来、4作目の石田作品。
芥川賞候補作らしく、今までの作品に比してより文学的な印象。
工学部卒の経歴だからか、ガテン系の仕事の描写が微に入り細を穿っている。あまり詳しすぎて読み飛ばしたくなるレベル。
独自のプライドを持つ熟練溶接工の伊東が、自らの強いこだわり故に小さなミスをきっかけにスランプに陥り、拠り所である自負心をも失っていく過程がジリジリとした焦燥と共に描かれる。
鉄の溶ける様、熱量、焦りといった作品の空気感は高村薫の「照柿」を思い出させる。
伊東にしか見えない幻の検査員は彼の内面具現化か。ラストの火傷が治った手が意味するところはちょっとわ