石田夏穂のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ過去十年間、欠陥率の少ないエース溶接工であった伊東は、突如スランプに陥る。かつての自分の中に存在したいつも通りの手順や自信は日に日に失われていく。それでも消えない、溶接工であるという燃え上がる職人魂は、ぼろぼろの伊東を再び現場へと駆り立てて———
伊東は優秀な溶接工である自分にこれでもかというほどに大きなプライドを持っている。それはただ単に火を尊敬しているだけでなく、元請である管理職に対して「お前たちには絶対に火を扱えない」と声を荒げてしまうほどに。そんな彼は、たった一つの失敗によってつけられたヒビから、どんどん亀裂が広がっていくと同時に、自らの実力に疑問を抱くこととなる。それからさらにミス -
Posted by ブクログ
運動不足の解消としてジムに通い始めた会社員の女性が、やがてボディビルの世界に足を踏み入れ、自らの肉体を変えていくことにのめり込んでいく。鍛え上げられていく身体とともに、「なりたい自分」と「求められる自分」の間で揺れ動いていく物語。
トレーニングジムやボディビルという知らない世界を知ることができて純粋に楽しかった。誰しも少なからず持っている変身願望を思い出させる内容だった。漠然と始めた筋トレが競技へと変わり、自らの肉体を作り替えていく過程はとても興味深い。自分がなりたいものと、周囲から求められるもののギャップに葛藤する姿には共感する部分も多かった。
また、自分を追い込むストイックなトレーニー -
Posted by ブクログ
どうしても私みたいな選手は傍流扱いになっちゃうのね 世間はがちがちに鍛えた女性を嫌厭しがちである 「私にも、出来ますかね」これは最早、肯定有きの誘導尋問だった 私は艶めく茹で卵を齧った 目の前のトレーニーの呷るプロテインに心を奪われている このように意識を切断するものを雑念と呼ぶなら 私は日に日に強靭になっていく身体は元より、この真空地帯に淫したのだった 人間が社会的な生き物で有る事の証左だ 私の頭は浮腫んだ脹脛のようにぱんぱんになった 偏に私が新参者だったからだ 皆既日食レベルにピタリと一致する様だった 幸か不幸か、優れた見てくれには、途轍もない力がある。無言のままに、これ程迄雄弁で有得る。
-
Posted by ブクログ
係長としてリース屋で働く傍ら、ボディビルの大会に出場している後藤。いつもよりひとつ落とした階級で出場すると決めた後藤は、減量に苦戦する。ある日、組織に悪影響を与える人材を切り捨てると共に、減量が進むことに気づいた後藤の結末とはーーー
笑いながら楽しめた一方で、真剣にボディメイキングに向き合う後藤に納得させられる部分も多くあった。
後藤は自分と他者の体型を比べ、優劣をつけるボディビルにストイックであるが故に、他者の身体がこれでもかと気になってしまう。人の身体を見て体脂肪率を推定し、太った人を体脂肪と称す。そして、デブは動きが遅い上に、動くたびにブヨヨと音を出す為、組織内で円滑に作業するための邪 -
Posted by ブクログ
ボディビルの大会に出場することになって、
筋トレの沼にはまっていく女性の物語。
私も筋トレ歴は長いのですが、
女性の大会については全く知識がありませんでした。
「筋肉とは関係のない部分も評価の対象となる」
ことが暗黙の前提になっていること。
ここに
男女でのボディビル観というか、
女性へのバイアスというか、
男女問わず客観的な『美』に対する価値観というか…。
「昔の(クラシカルな)美意識」を感じてしまう描写が、
作品のあらゆるところにちりばめられています。
そして、そんな世界に
終盤に行くにつれて、主人公が向き合っていく。
筋トレを始めたきっかけを
「美しくなる」とか「ダイエットをする」な -
Posted by ブクログ
建設現場の安全衛生管理という一般人にはまったく見えない世界を舞台にした職業小説。
もちろんデフォルメはされているのだろうが、多重下請、人手不足、コンプライアンスと作業進捗のコンフリクトなど、建設業界の構造的問題を分からせてくれるリアリティがある。
その構造問題にスパッとメスをしれるのでもなく、モヤっとしたまま後味があまりスッキリしないのもまたリアル。
職人としてのプロフェッショナリズムが描かれるかというとそうでもなく、やっぱり「誰にでもできる仕事」なのかなあ、という印象だけが残る。
フィジカルもメンタルもキツそうではあるが。
池井戸潤的なわかりやすい勧善懲悪が読みたいわけではないけど、作 -
Posted by ブクログ
ネタバレ趣味のボディビルに精を出す主人公の会社生活を主軸に、ボディービルディングにおけるボディメイク(筋肉と体脂肪)と、職場におけるチームメイク(仕事の出来るやつと出来ないやつ)を重ね展開される作品。トレーニングを重ねて体脂肪率を下げていく=怠惰な同僚や気の利かない事務の女性を切ってスリムなチームを目指していくことであり、そこに達成感を覚える主人公の後藤。本番に向けて身体を絞っていく過程で立ちはだかる様々な困難を乗り越えて最終的に臨んだ計量では、逆に階級の下限を下回り失格になるという結末。身体でも組織でも、多少の体脂肪は必要というメタファーか。
帯には「朝井リョウ絶賛」「爆笑と感嘆」の文字が躍り期待さ -
Posted by ブクログ
自分が筋トレをやりだした時に読み始めたから、主人公がストイックに鍛えているのを感じてウキウキ湧き立つような気持ちで読みはじめた。
最初は同じジムのS子の事が気になりストーカーのようにインスタとかを見ていた主人公が、物語が進むに連れ自分を鍛えるということに集中しだすと周りの雑音はどうでもよくなり自分にフォーカスしていくようになり、私もそうなりたいなぁと思った。
あとボディビルの審査基準が女性の場合は女らしさも必要とされるとあるが、その審査基準でさえ医療的な物を利用してクリアしていってもOKだけどやりすぎだったりすると基準違反だとか、曖昧でかつ人それぞれの価値基準である事のモヤっとする気持ちは特に