石田夏穂のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
芥川賞候補作となった一作。
著者自身のキャリアにも通じる建築現場を舞台に、今回は溶接工の世界を描きます。精密な技術描写は文学的に思えました。
しかし本作の興味深さは、単なる職業小説にとどまらない点にあります。溶接という行為は、個々の部材を結合し、やがて巨大な構造物の一部として機能する。その視点は次第に、人と人が結びついて成立する組織や社会そのものへと広がっていくのではと。
高い技術を持つ職人が、自らの技能への確信を失っていく過程は痛々しい。責任感が喪失感へ、そして絶望感へと変質していく姿は あらゆる職能に通じると思います。
一方で、その転換点となる出来事にはやや引っかかりも残りました。 -
Posted by ブクログ
相変わらずの仕事小説。好きだわー石田さんの書く話。表題作含む4編の短編集だけど、どれも面白い。
表題作はスッピンの女子社員を探せという使命を仰せつかったスッピン女子社員の話(笑)。
自分がそもそもスッピンなのに、スッピンと化粧の違いも分からないような上司に犯人を突き止めて報告しなければいけないという変な状況になっている。
私の職場にもスッピンらしき女性は何人もいるが、実は化粧しているのかもしれない。そんなこと確認しても何の意味もないから、いちいち確認なんてしないけど。
しかし、うっすら化粧しているのに「私、化粧してないんですよ~」と嘘をつくのは笑えた。マウントなのか、自己満足なのか。
個人的 -
Posted by ブクログ
2022年第44回野間文芸新人賞と
2023年第40回織田作之助賞
両候補になっています
同時収録の「その周囲、五十八センチ」とともに、女子の悩める体質がテーマとなっています。体質の話だけに リアリティがあるのですが、どこか象徴的にストーリーが落とされていきます。大衆小説と純文学のハーフ、今は、ダブルって言うんでしたっけ?
新陳代謝をケチるのか
感情起伏をケチるのか
労働稼働をケチるのか
果ては人生をケチるのか
これから 楽しみな方です。
小説としては、そんな感じに楽しみましたが、
「ケチる貴方」の中の協力会社の見積からの予算制作には、わかりみがありすぎて、相見積三社必須だったから、大変な -
Posted by ブクログ
筋トレにのめり込む女性会社員がボディビル大会への挑戦する話
U野さんは会社帰りに日々筋トレに励む
筋トレを始めたきっかけは運動不足云々⋯歯切れ悪く答えていたがO島に別の生き物になるといわれ、大会出場⋯
大会に向けて身体を整えていくが、
ボディビル女性に対する"女性らしさ"のという世間の常識に対する違和感を感じてる
筋トレって何!?って思ってたら文中に書いてあった
「筋トレというのは、実に不思議な行為だ。大方誰にも頼まれていないのに、重りを持ち上げたり、引っ張ったり、振り回したり、特定の非日常的な動作を繰り返すのだから。」
ドーピング疑いの15番の筋肉は「ちょっと -
Posted by ブクログ
ネタバレフットブレイク:
職場で裸足でいること、ひとりだけパイプ椅子、などユーモアのあるお話だった。パイプ椅子に土踏まずを押し付けるの、確かに気持ちいい。
未経験の男:
ガリガリの主人公。
日本人男性は女に3キロ痩せろと言うなら、自分が3キロ金肥大すべき。というマッチョと食べないダイエットをしてる女の子もでてきて面白かった。
我らがDNA:
残業警察に追い立てられることでしか残業から逃れられない主体性のなさ、よくわかる〜と同意しかなかった。
さまざまな残業警察が登場する中で、主人公が残業のDNAに振り回せれる様が面白かった。
ノーメイク鑑定士:
表題の話なだけあって一番面白かった。
化粧していな -
Posted by ブクログ
この人の本を読むのは3冊目になるのかな。そうか、1冊ごとに舞台というか、世界というか、業界というか、丸ごとイチから作っていく人なんやね。
この本の業界は溶接のプロが主人公だ。専門用語はよく分からなかったが、分からなくても十分その危険さとか特殊さのようなものは伝わってきた。『プロジェクト ヘイル メアリー』のような感覚。工事現場、建設現場と言っても、建設物や場所、請負業者によって、作業員の人たちのモチベーションが変わるんだなーと、当たり前と言えば当たり前のことに新鮮な発見があった。最寄駅から私の職場までの道すがら、もうずっと長く工事している現場があるのだが、その長さにも理由のあるのが分かった。連 -
Posted by ブクログ
ネタバレひたすら溶接の腕を磨いてきた主人公が挫折に向き合う。
石田夏穂さんはお仕事、それもブルーカラー方面の作品が多いのでしょうか。これはその中でも溶接工を取り扱い、さらにかなり深くその業務を取材しているように思いました。プロの視点で見たらどうなのでしょうか。
技術に絶対の自信、誇りなど全てを賭け、文字どおり命がけで溶接を続けてきた主人公が、それを何とか取り戻すためにもがき苦しむさまが、辛くもあり気高くもあり不器用さも感じ、職人とはなんと厳しい孤高の存在なのか、などといった感情が去来しました。溶接を取り上げていますが、これは多くの「手を動かす仕事」に従事する方々にとって実感できるものなのだろう -
Posted by ブクログ
ネタバレおもしろかった。
黄金比の縁(おうごんひのえん)。
最初はオウゴンヒのフチ?と思ったが、エンだった。読み進めると「縁(エン)」が重要だと分かってくる。
本書はいわゆるお仕事小説であるが、主人公はとある理由から自分の所属する会社を恨みながら勤務しており、復習のために在籍し続けている。
主人公、小野が務めるKエンジニアリングは、化学工場の設計を請け負う大企業である。理系の小野は新卒入社で入り、希望通り花形である「プロセス部」のチームに配属された。エンジニアリングで世界を変えることを夢見ていた。しかし、ある事件により、人事部に飛ばされてしまう。「会社に不利益になる人間はうちの部署には置けない」 -
Posted by ブクログ
珍しい、石田夏穂の短編集。1編ごとのボリュームはコンパクトなのに、どれもきっちり“読ませる”完成度で、4作収録という満足感も大きい。
収められているのはいずれも得意のお仕事小説。ただし、社会の闇を暴くような重たい方向ではなく、「職場でギリギリ起こりそう」な出来事を、独自の視点で切り取る軽やかさが魅力。どの作品もテンポがよく、とにかく読みやすい。そして気づけば、どれが一番か決められないくらい、どれも面白い。
『考えてみれば、人に「化粧をしていますか?」と訊くのは「大便したあと尻を拭きますか?」と訊くのに似ている。』
この一文のインパクト。こういう“ちょっとズレた核心”を突けるのが、この作家