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Posted by ブクログ
読書備忘録992号。
★★★★★。
去年末に出ていた石田さんの準新作です!
流石としか言いようがないっす。
完璧なお仕事小説です。
そして今作、これまでに無かったメッセージ性が若干感じられました。
タイトルは緑十字です。
良く工事現場などに掲げられているあの白地に緑の十字が描かれた旗。
安全衛生の象徴であり、労災防止のシンボルです!
決して悪名高きミドリ十字ではありません!
私も安全靴などでお世話になりましたミドリ安全でもございません!
主人公浜地。アラフィフ。
東京二十三区の戸建てに住む。すごいやんか。
早朝に家を出て、駅のトイレでスーツから作業着に着替える。
そして下り電車に乗り、下総の片田舎に向かう。
ん?あやしい・・・。
このおっさん、東大卒のエリートで三岸地所の積算部長・・・だった。
金曜会主要10社の一員ではございません!
いわゆる大手デベロッパーで、大規模プロジェクトの予算を組む部門のトップやんか。
それが、下総の片田舎に作業着着て?
実は浜地。3ヶ月前に重大事故の責任を取らされて他部門(閑職)に飛ばされた。
それも都合よく責任を取らされたという感じですね。事故概要は割愛しますが、明らかに浜地の責任ではない。建設工事の重大事故を積算部長が?って感じです。
そして浜地は勘違いする。
俺の価値はこんな閑職でくすぶるものではない。
他社から引く手あまたのはずだ!ハイクラス転職サイトに登録して・・・。誰も引いてくれない!
そしてやっとこさ大手ゼネコンの台島建設に職を得る。
職場は「里山レイクタウン建設工事プロジェクト」のプレハブ事務所。
工事プロジェクトの安全衛生管理責任者の位置づけ。
騙されたぁ!ハイクラス転職に騙されたぁ!
いやいや。大手デベロッパーの部長という肩書は何の価値もないよ。浜地さん。笑
工事責任者のジジイ、上田さん。安全より工期が全て!
現場代理人で事務所長の桜井さん。実はあくどい野郎!
浜地の教育担当で"元方安全"の松本さん。ヤンキーのお兄ちゃん。何があっても安全第一!
朝礼開始!
アンプ設置よし!スピーカーよし!
指差呼称「安全手順よいか!ヨシッ!」
挨拶は唯一無二の「ご安全に!」
安全にはお金が掛かる。
三岸の積算部長時代、プロジェクトコスト削減が大命題だった。
数字を削った。
安全対策の数字も削った。
そして安全対策の数字は現場の命に直結していた・・・。
仕事に貴賤はない・・・。と思う。
工事現場を経験して、人々が命を削る本来の建設工事を初めて知る浜地。
物語は、建設現場で常に繰り広げられる工期遵守と安全順守の確執と攻防。そして業者の不正。
その背景にある圧倒的な建設業界の人手不足。
それと並行して、浜地の家庭物語。
三岸地所を辞めたことは家族に言っていない。浜地は仮面通勤を続ける。
息子は父親の背中を追い、優秀な大学を出て建設の仕事につきたいと言う。
息子の追っているのは大手デベロッパーに部長職のイメージ。
本当にそれが建設の仕事の正解なのか?
繰り返しますが、石田さん!ちょっと作風が変わった!
テーマとメッセージを感じる。
まあ、それはさておき。
物語の最後、松本と浜地の会話。
「建設工事の4割は工期が延びるですよ」
「それはそもそも無理な計画だからじゃないでしょうか」
「違うんです。計画が無理なんじゃなくて延びることで喜ぶ人間が4割いるってことです」
工事で生活している人々にとって工期は雇われている期間。それが延びるのは生活の安定に繋がるんです。メーカーの大規模プロジェクトでも全く同じ構図でしたわ・・・。
そして物語の終わり方がその後の想像力を掻き立てる!
Posted by ブクログ
東大卒のエリート浜地が、訳あって転職をし、なんやかんやで、いきなり建設工事現場の安全衛生管理責任者になる。家族には内緒で、駅のトイレでスーツから作業着に着替える毎日……。
未経験の浜地の教育担当になった松本はバカがつくほどの真面目な仕事ぶりで、少しでもルールから外れたことをしている現場スタッフには厳しく指導をし、その度に仕事はストップ、仕事はどんどん遅れていくばかり……。
でも、安全衛生管理責任者とは、安全に事故なく現場が動くように指導するのが仕事なので、松本は何一つ間違っていないのです。でも、いちいちうるさいことを言われるのは腹が立ちますよね。どうしてもイザコザが起きてきます。人間関係がややこしいことになってきます。
でも!松本は正しいのです!
そんな松本に影響されて変わってゆく浜地……というお話では全くありませんでした!
さすが石田夏穂さん、そんな心温まる物語なんかでは終わらせません。
とにかく思ったのは、お仕事というのは、その立場ごとで正義が違ってくるし、うまく進めようと思ったら人間関係をよくしておくことは大事だし、でも、間違っていこることは間違っているわけだし、大変だということです。
そしてもう一つ、正義なんかとは別に、お金を稼ぐことはとっても大事なことで、それぞれ皆、仕事にしがみつくということです。
お仕事って大変ですよね。皆さん、明日からもお仕事頑張りましょう*(ˊᗜˋ*)و
Posted by ブクログ
かつて建設工事会社の下請会社で働いていた。安全靴と安全帯とヘルメット、軍手を穿いて、早朝暗い小屋の焚火に集まり挨拶をして、今日の仕事の道具を軽トラに積み込むのが毎日の日課だった。
大手デベロッパーの工事現場などに入ったことはない。二階建てのプレハブ事務所なんて贅沢だろう。でも、緑十字の「アンゼン」職責の人が2人以上も居るということが新鮮であった。勿論、私がいたところには、そんな職責はいない。社長か副社長が担っていたのだろう。もっとも、私は仕事に就いたあと、この会社には10以上の労基法違反がある、と数えた時点で「辞めさせてもらいます」と申し入れたのではあるが。
小説なので、安全チームの仕事の全てを描くこと叶わない。「安全」とは主には、会社自体が労基法違反に問われない様に強力な権限で現場管理をするのが仕事である。搬入トラックの一般道に残す泥引き、杭打ち時の保護メガネしていない職人への「管理」、風速計による杭打ち作業入るかどうかの判断などが描かれる。そこに隠される幾つかの「謎」の解明。
そういう工事進捗に関わる仕事も大切なのだろうけど、私がこの本を紐解いたのは、労働者の安全衛生管理がテーマになっていないか、と思ったからである。緑十字は、安全衛生法を守らせなければならない。法律は「雇用者は被雇用者が快適に仕事をするために」「環境を整える義務」「必要」ではない、「義務」があると謳っている。だから、セクハラ、そして近年ではパワハラの「定義」も厚労省がきちんと制定した。アンゼンはそれを踏まえて、会社と労働者の板挟みになるというジレンマがあるはずなのだ。
「緑十字」にもし続編があるとしたら、是非その辺りに切り込んで欲しいと思ったものである。
Posted by ブクログ
石田夏穂さんの書く話は何か淡々としているのにじわじわと面白い。
ゼネコンエリートで数字を扱う部署から転職して工事現場の「安全」と言われる部署で働くおじさんの話。転職のことを家族に話せないまま、朝の5時台に家をでて出勤する。
小さな現場事務所内での人間関係が濃密に描かれている。取材力がすごいのか、リアルにこういう現場で働いていたのかなと思わせられるくらいに細かい描写。知らない世界を見せてくれる作者の本が好きだ。
何となく主人公の顔を、俳優の小手伸也さんを想像しながら読んでいた。顔はず〜っと頭にあるのだが、名前が分からず、色々検索してようやく小手伸也さんの名前がわかった。すっきり。
Posted by ブクログ
石田夏穂さんのお仕事小説に間違いなし
いわゆるホワイトカラーだった主人公が体のいいリストラにあい、同業界のブルーカラーとして働く。
ホワイトカラーの無自覚な見下しが色んなところで感じるけど、机の上の仕事の先は現場にあると文字どおり地に足をつけて日に日に実感していくのがいい。
石田夏穂さんの『この手の太陽』にも繋がる安全と工期とそこに関わる人達の立場とか思惑に、業種を超えて共感したりムカついたり。
『この手の太陽』では安全含めてプロだと思う、という感想を持ったけど今回の主人公は現場の人間としてはまだプロになれていなくて、ホワイトカラー元管理職の中年男性が振り回され意識変容しないといけない自分にグルグルするのが切なくもリアルで良かった
ラスト、あなたも人間でしたか!とキーマンの彼を好きになった
石田夏穂さんは本当に現場にいて、職人さんや現場責任者たちと関わっていたんだろうなぁ
事務だって営業だって同じだけど、工事とか医療ってそれが人の死に直結するところが「個人の問題」と言いきれないところで、それぞれの価値観とぶつかる職業倫理を石田夏穂さんは現場への敬意をもって描き続けてると思う
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