無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
第169回芥川賞候補作。
鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。
“「人の上に立つ」ことにまるで関心がった。
自分の手を実際に動かさないのなら、それは仕事ではなかった。”
”お前が一番、火を舐めてるんだよ”
”お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。
お前自身が、誰より馬鹿にしているというのに”
腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。
いま文学界が最も注目する才能が放つ異色の職人小説。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
芥川賞候補作となった一作。
著者自身のキャリアにも通じる建築現場を舞台に、今回は溶接工の世界を描きます。精密な技術描写は文学的に思えました。
しかし本作の興味深さは、単なる職業小説にとどまらない点にあります。溶接という行為は、個々の部材を結合し、やがて巨大な構造物の一部として機能する。その視点は次第に、人と人が結びついて成立する組織や社会そのものへと広がっていくのではと。
高い技術を持つ職人が、自らの技能への確信を失っていく過程は痛々しい。責任感が喪失感へ、そして絶望感へと変質していく姿は あらゆる職能に通じると思います。
一方で、その転換点となる出来事にはやや引っかかりも残りました。現実として描くのか、あるいは幻想として描くのか、もう少しどちらかに振り切れていたなら、ラスト4行のほのかな救済が もっと小説の核とみなされたのではないかしら。
タイトルが 孤立しているようだけれど
三島の『鉄と太陽』を連想させるのは考えすぎかな。芥川の『歯車』に赤い輪が不吉な感じで表現されていたけど、接点はないんかな。
職業小説と純文学の接点を探る意欲作として印象に残りました。
Posted by ブクログ
この人の本を読むのは3冊目になるのかな。そうか、1冊ごとに舞台というか、世界というか、業界というか、丸ごとイチから作っていく人なんやね。
この本の業界は溶接のプロが主人公だ。専門用語はよく分からなかったが、分からなくても十分その危険さとか特殊さのようなものは伝わってきた。『プロジェクト ヘイル メアリー』のような感覚。工事現場、建設現場と言っても、建設物や場所、請負業者によって、作業員の人たちのモチベーションが変わるんだなーと、当たり前と言えば当たり前のことに新鮮な発見があった。最寄駅から私の職場までの道すがら、もうずっと長く工事している現場があるのだが、その長さにも理由のあるのが分かった。連休明けからは工事現場への関心具合も変わりそうだ。
それにしても、この本は最初から最後まで、ずーっと心臓がぎゅーっとしたまま、超特急で読み終えた!危険物を取り扱っている描写、危険な現場でさらに危険な行為に及ぶ主人公、集中力の必要な作業中に思考が逸れていく、、、もうっっ!次何が起こるんだろう!馴染みのない業界なだけに、予想がつかず、余計にハラハラした。この石田さんの本はこれからも追い続けよう。
Posted by ブクログ
読書備忘録784号。
★★★★。
石田さん。難解やねん。よ~わからん。
でも読んでまう。
この方の作品で描かれるテーマは毎度めちゃくちゃ狭い。でも底なしのように深い。
スミスマシンの話だったり、新卒採用面談の話だったり、まだ読んでいませんが冷え性の話だったり。
で、本作は溶接。
太陽の表面温度!には全然敵いませんが、高温のバーナーで鉄を溶かし一体にする作業が溶接。
凄い溶接は、一体の金属より強度があるとまで言われている。そして溶接の完成度を確認するためにX線検査をする。完璧な溶接は細い1本の白い線として映る・・・。
そんな溶接作業は高度な技術が必要で、溶接工は建設現場の花形で報酬も高い。
そんな溶接工の話。
建設工事会社カワダ工業の熟練溶接工伊東は溶接一筋20年。こんど40歳になる。
そんな伊東が溶接工事の検査で不合格を出した。そしてスランプに陥る・・・。
太陽を扱うことが出来る万能感。
再び不合格を出してしまうのではないかという不安感。
溶接の仕上がりの為には禁忌である安全確保違反。
目と肺をやられる溶接工の健康不安。
はやく溶接作業に戻らないと技能が落ちる焦りと不安。
伊東の心はぐちゃぐちゃになる。
そして自信を取り戻すために人の仕事を奪って担当することにした溶接工事現場。そして工事日直前に起こした重度の火傷事故。
労災になったら自分は終わる。労災を隠し、火傷を隠し、溶接現場へ。
動かない手。垂れるリンパ液。
そして気づく。火は決して手なづけられるものではない・・・。ぞんざいに扱うと牙をむく・・・。
以上!
で、この結末はなに?どうなったん?何か起きたん?
分かりませんでした!
ちょっと危うい空気が充満している石田小説。大好き。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。