石田夏穂のレビュー一覧
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純文学?なのかな
短編がどれも読みやすく面白い。一番面白かったのは「世紀の善人」。すらすら読めてしまった本だった。また読みたい。
「世紀の善人」
主人公の安井から見たら、会社の同僚(サンゾウ)は全員同じ。自分では何もできない。それなのに安井のことをこき使ったりするなどする。なにか痛快で、また読みたいと思う話だった。
この筆者の会社に対する視点がすごく面白い。会社という組織を俯瞰して見ており、自分では何もできない会社にいる男の人たちを批判している。この主人公のフィルターから見る同僚(サンゾウ)は、群れないと何もできない、いつまでも男尊女卑がこべりついているそんな人間たち。終わり方も良い。また読みたい。
「小人二重面相」
小学6年生にして自分の容姿を見るのが嫌で鏡を見ることができない主人公の話。友達と卒業旅行でディズニーを計画している。けれども、写真を撮ると嫌でも自分の顔を見なければならず行きたくない気持ちになっている。そんな話。
小学6年生にしては考えが大人びすぎていて、そこまで大人びていたら相当頭いい子だろとか変な感情になってしまって入り込めなかった。
「わたしを庇わないで」
デブがデブと言われて、デブであることに対して開き直る話。自虐のワードセンスがよく、テンポ感が面白い。デブになってこれを読むと、デブであることを肯定してしまうような話だった。
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ネタバレ面白すぎて…どこが面白いというのを全然言語化できてないんですけどとにかく面白くて一気読みでした。
展開の仕方と、主人公のちょっと突飛な思考や行動が天才で、本当に面白かったです。特に表題作の「私を庇わないで」が最高でした。
全体的に皮肉のきいた作品で、それぞれの主人公がブラック企業で働き続けて居たり、自分を不細工だと思っていたり、「デブ」と自分を思っているんですが、そのことに対して、吹っ切れているというか、悲観的じゃない。諦めとも違う、そこに至るまでに諦めもあるのかもしれないけど、あんまりマイナスを感じさせない、自分をそのまんま受け止めている感じがあるように私は思えて、そこもいいなと思いました。
だからこその世間のずれや、「デブ」と言わない人の方が差別してる、みたいな感覚とか、ゆがんでひねくれているのがどっちなのか分からなくなる展開で良かったです。
主人公は見下されているんですけど、主人公も自分を見下してくる周りのことを見下してる。見下しあっている。そこにこの作品のユーモアというか、艶があるんじゃないかと感じました。
テーマは重くて暗いのに、ハッピーなことは起こらないのに、何故か明るくスカッとしていて、どこかコントのようでもある雰囲気が漂っていたと思います。
めちゃくちゃ良い小説に出会ったなという気持ちになりました。強烈に面白かった!!!他の作品も絶対読みたいです! -
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何年も前に読んだ本で内容についての記憶が定かではないのだけど、強く残った印象は今なお鮮明である。
私はボディビルディングをする人の気持ちがまるで理解できなかった。
使わない筋肉を人に見せるために過酷なトレーニングするって、私は絶対する気にならない。
けれどこの本のおかげで、少しボディビルディングをする人の気持ちがわかるようになったと思う。
そして、人に見せる試合では、女性は女性らしくあらねばならないという部分にはショックを受けた。
まぁ、見せて評価してもらうんだから、得点が得られやすい努力をするのは仕方ないのかもしれないけれど、筋肉の美しさと、ハイヒールを履いて女性らしさを強調するのは同じくらい大切なのかなぁ。
審査基準を最初に男性目線で設定したからじゃないかなぁ、とか勘繰ってしまう。
動画などを見ると、皆さんきれいにお化粧してるし……。
面白かった。夢中で読んだ。 -
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ネタバレ自分も見た目ではわからない持病を抱えているので、他人に頼れず、己でケアするしかない悶々たる日々に共感するところが多かった。
また、仕事面では、後輩に自分が努力して獲得してきたノウハウを伝授するシーンの葛藤のわかりみが深すぎた。モヤモヤを感じていた理由はこれだ‼︎と、心のうちを明確に言語化してもらって、スッキリすらした。
その分、後半の展開にはもの凄い不条理を感じた。
不寛容イコールケチとは一概に言えないし、実際に女性であることで押し付けられることを「寛容であらねば」と、全部引き受けていたら、主人公は潰れてしまった。
世の中、鈍感で自分勝手な方が幸せに生きていけそうだなとはよく思うのだが、更にその思いが補強されたような…。
せめて主人公はこの後、善行と称した行動が報われてほしい。 -
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体脂肪率が高いため出張禁止になった会社員女性の話
ユカリ 勤続15年会社員 独身 37歳
出張、転勤、赴任の嵐 職場に座って働いたのは通算3年もない
海外出張が生きがいといってもいいくらい出張を愛してる
それなのに社の健診で体脂肪率が三十五パーセントだから、生活習慣病の人、およびその予備軍の人には、海外派遣はさせない、といわる
社の提携しているジムに通い、体脂肪率三十五パーセント以下を目指し、海外出張をもぎ取る決意をする
タイトルの意味!
最後にわかり痛快だった。そういう意味だったの!?って。
主人公は心の中では相手にチクリ言ったかと思うとその何倍も自分に対して苦言がでてくる。その文章構成がリズム的に思える。
そして体脂肪率を落とすだけの話でなかった。
結婚してる、してない、の社会からの目線に、主人公は嫌気がさしてるのに、いつのまにか自分もそれに乗せられて行動していってしまう。
そして最後にはちゃんとオチがくる。
「冷ややかな悪魔」って、いう例え、ちょっとした驚きもあった。
面白かった。
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Posted by ブクログ
「女性の身も蓋もない本音」が、遠慮なく、それでいて辛口なユーモアたっぷりに描かれている。
主人公たちは、立派な人間とはいいがたく?、後輩に知識を教えたくないと思い、他人を見た目で判断し、自分のことを一番大切に思う。意地悪で偏屈で。しかし、その本音が隠されることなく語られるからこそ、妙な説得力を持って胸に迫ってくる。
読みながら感じたのは、この作品の背景には、男性が作り上げてきた会社や社会の構造があるということだ。もちろん時代は変わりつつあるが、それでもなお、男性中心の価値観が色濃く残る組織の中で、女性はどのように生きていくのか。その問いが、『ケチる貴方』にも『その周囲、五十八センチ』にも通底しているように思えた。 -
Posted by ブクログ
読書備忘録992号。
★★★★★。
去年末に出ていた石田さんの準新作です!
流石としか言いようがないっす。
完璧なお仕事小説です。
そして今作、これまでに無かったメッセージ性が若干感じられました。
タイトルは緑十字です。
良く工事現場などに掲げられているあの白地に緑の十字が描かれた旗。
安全衛生の象徴であり、労災防止のシンボルです!
決して悪名高きミドリ十字ではありません!
私も安全靴などでお世話になりましたミドリ安全でもございません!
主人公浜地。アラフィフ。
東京二十三区の戸建てに住む。すごいやんか。
早朝に家を出て、駅のトイレでスーツから作業着に着替える。
そして下り電車に乗り、下総の片田舎に向かう。
ん?あやしい・・・。
このおっさん、東大卒のエリートで三岸地所の積算部長・・・だった。
金曜会主要10社の一員ではございません!
いわゆる大手デベロッパーで、大規模プロジェクトの予算を組む部門のトップやんか。
それが、下総の片田舎に作業着着て?
実は浜地。3ヶ月前に重大事故の責任を取らされて他部門(閑職)に飛ばされた。
それも都合よく責任を取らされたという感じですね。事故概要は割愛しますが、明らかに浜地の責任ではない。建設工事の重大事故を積算部長が?って感じです。
そして浜地は勘違いする。
俺の価値はこんな閑職でくすぶるものではない。
他社から引く手あまたのはずだ!ハイクラス転職サイトに登録して・・・。誰も引いてくれない!
そしてやっとこさ大手ゼネコンの台島建設に職を得る。
職場は「里山レイクタウン建設工事プロジェクト」のプレハブ事務所。
工事プロジェクトの安全衛生管理責任者の位置づけ。
騙されたぁ!ハイクラス転職に騙されたぁ!
いやいや。大手デベロッパーの部長という肩書は何の価値もないよ。浜地さん。笑
工事責任者のジジイ、上田さん。安全より工期が全て!
現場代理人で事務所長の桜井さん。実はあくどい野郎!
浜地の教育担当で"元方安全"の松本さん。ヤンキーのお兄ちゃん。何があっても安全第一!
朝礼開始!
アンプ設置よし!スピーカーよし!
指差呼称「安全手順よいか!ヨシッ!」
挨拶は唯一無二の「ご安全に!」
安全にはお金が掛かる。
三岸の積算部長時代、プロジェクトコスト削減が大命題だった。
数字を削った。
安全対策の数字も削った。
そして安全対策の数字は現場の命に直結していた・・・。
仕事に貴賤はない・・・。と思う。
工事現場を経験して、人々が命を削る本来の建設工事を初めて知る浜地。
物語は、建設現場で常に繰り広げられる工期遵守と安全順守の確執と攻防。そして業者の不正。
その背景にある圧倒的な建設業界の人手不足。
それと並行して、浜地の家庭物語。
三岸地所を辞めたことは家族に言っていない。浜地は仮面通勤を続ける。
息子は父親の背中を追い、優秀な大学を出て建設の仕事につきたいと言う。
息子の追っているのは大手デベロッパーに部長職のイメージ。
本当にそれが建設の仕事の正解なのか?
繰り返しますが、石田さん!ちょっと作風が変わった!
テーマとメッセージを感じる。
まあ、それはさておき。
物語の最後、松本と浜地の会話。
「建設工事の4割は工期が延びるですよ」
「それはそもそも無理な計画だからじゃないでしょうか」
「違うんです。計画が無理なんじゃなくて延びることで喜ぶ人間が4割いるってことです」
工事で生活している人々にとって工期は雇われている期間。それが延びるのは生活の安定に繋がるんです。メーカーの大規模プロジェクトでも全く同じ構図でしたわ・・・。
そして物語の終わり方がその後の想像力を掻き立てる! -
Posted by ブクログ
ネタバレ体脂肪率の高さから出張を止められたキャリアウーマンが奮闘の中で発見をする
石田夏穂さんの面白さが凝縮された1冊。石田夏穂を知らない人は手っ取り早くこれを読むといいと思います。すごく面白いです。
相変わらず文章がまず面白い。北大路公子のエッセイでも読んでるようです。その上で、「アホかいな」と笑ってしまう謎の、しかして意外に世の中にありそうでもあるルールが設定され、苦闘する中で主人公が社会という総体のもたらす暴力的な眼差しにさらされていく。
それを真っ向から対抗したり批判する社会的な方向性(BUTTERとか)ではなく、辟易しつつもいつの間にか自分もそれを取り込んでしまい、有頂天になった末にうっかりしくじるというこのユーモラスな展開。
こういう話をこの短さでさらっと書けてしまう作者をもう尊敬しちゃいます。本当に面白かった!