石田夏穂のレビュー一覧
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「女性の身も蓋もない本音」が、遠慮なく、それでいて辛口なユーモアたっぷりに描かれている。
主人公たちは、立派な人間とはいいがたく?、後輩に知識を教えたくないと思い、他人を見た目で判断し、自分のことを一番大切に思う。意地悪で偏屈で。しかし、その本音が隠されることなく語られるからこそ、妙な説得力を持って胸に迫ってくる。
読みながら感じたのは、この作品の背景には、男性が作り上げてきた会社や社会の構造があるということだ。もちろん時代は変わりつつあるが、それでもなお、男性中心の価値観が色濃く残る組織の中で、女性はどのように生きていくのか。その問いが、『ケチる貴方』にも『その周囲、五十八センチ』にも通底し -
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石田夏穂さんの小説は、見事に斜に構えた物語が大変魅力である。
本作の中で「世紀の善人」の''安井の仕事''は、全くもって理不尽でありながらも、視線を合わさず生きぬきながら無神経な男性社員たちを暗く見つめる。
そしてついに反撃に出た安井の行動と結末のカタルシスは、抑圧から自らを解き放つ安井への応援となっていった。
「わたしを庇わないで」のデブという言葉が、デブを庇う人間の裏側の感情を皮肉にも見事に表していく。
アヤノに対してデブを口にしない偽善者との戦いが、読者も意にしない展開が皮肉に溢れて読み手を飽きさせなかった。
人や社会や会社を独自な視点から痛 -
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ネタバレ『 世紀の善人』
めちゃくちゃ笑った!
すばるに掲載されていた2024年に読んだ時も、2024年に読んだ小説の中で一番好きだったけど、単行本で改めて読んだらやっぱり面白かった。1ページのなかで笑っちゃう文章が沢山出てきて、思わず音読したくなった。
本当に、サンゾウ(職場の昭和的なおじさん達)の気持ち悪さについて、ここまで色々な表現で数十ページにわたって面白く書けるのすごいなーと思う。
職場のおじさんが嫌いな女性達に布教したい。
『私を庇わないで』
デブに「デブ」と直接言わないことで、暗にデブと言っている罪についての話。これも面白い。
直接的に「デブ」と言ってくる人を「正直者」や「挑戦者」と書 -
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社の食レポ広報を任される太った主人公が周囲の欺瞞に気づいていく。
3作品どれも面白いけど表題作がずば抜けて面白かったです。面白く、そしてすごかった。
石田夏穂さんの文章、端々に散りばめられた皮肉、自虐、悪意が本当に面白くて、コラム書いたらナンシー関みたいになるのではと思うほどですが、本作はそれに加えて薄い良識やルッキズム批判、ポリコレ的なものをビリビリに引き裂く強烈さがあります。
その昔、小人プロレスが世間の声に押されて消えたのと同じような、良識ある差別者の圧力を受け止める主人公の思考の変遷はすごくささるものがありました。
デブ、ハゲ、チビ、その他容姿コンプレックスを抱える人はぜひ読ん -
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読書備忘録992号。
★★★★★。
去年末に出ていた石田さんの準新作です!
流石としか言いようがないっす。
完璧なお仕事小説です。
そして今作、これまでに無かったメッセージ性が若干感じられました。
タイトルは緑十字です。
良く工事現場などに掲げられているあの白地に緑の十字が描かれた旗。
安全衛生の象徴であり、労災防止のシンボルです!
決して悪名高きミドリ十字ではありません!
私も安全靴などでお世話になりましたミドリ安全でもございません!
主人公浜地。アラフィフ。
東京二十三区の戸建てに住む。すごいやんか。
早朝に家を出て、駅のトイレでスーツから作業着に着替える。
そして下り電車に乗り、下 -
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ネタバレ体脂肪率の高さから出張を止められたキャリアウーマンが奮闘の中で発見をする
石田夏穂さんの面白さが凝縮された1冊。石田夏穂を知らない人は手っ取り早くこれを読むといいと思います。すごく面白いです。
相変わらず文章がまず面白い。北大路公子のエッセイでも読んでるようです。その上で、「アホかいな」と笑ってしまう謎の、しかして意外に世の中にありそうでもあるルールが設定され、苦闘する中で主人公が社会という総体のもたらす暴力的な眼差しにさらされていく。
それを真っ向から対抗したり批判する社会的な方向性(BUTTERとか)ではなく、辟易しつつもいつの間にか自分もそれを取り込んでしまい、有頂天になった -
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どのストーリーにも思わず笑ってしまう場面がある。お仕事小説として、仕事や社会で当たり前とされている価値観が、ほんの少し角度を変えるだけで妙におかしく見えてくる。そのズレをすくう皮肉めいたユーモアが、この作品の魅力だと思った。
なかでもいちばん笑えたのは「未経験の男」だった。筋トレが自己管理や意識の高さの象徴のように語られるなかで、筋トレ未経験の吉川はどこか居心地の悪さを抱えている。けれど彼は正面から反発するのではなく、黙って距離を取ろうとするその姿がまずおかしい。
さらにおかしいのは、筋トレ命の森山が、いざという場面で筋肉をまったく役立てられないことだ。結局、役に立つかどうかよりも、「筋 -
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軽妙諧謔な語り口の陰で、ふとした瞬間に、ホモソ価値観のもとで太古から醸成されてきた「毒」がまわる。「ケチる」彼女も、せっせと脂肪吸引に課金する彼女も、その行動原理の根底には、どんなに「コンプライアンス遵守」が叫ばれるようになった世の中であっても尚もうっすらと漂い続ける「毒」に侵されたことでの「中毒」がある。側から見ればすごいヤツらなのだが、かなり理にかなった振る舞いではあるし、それを淡々と軽々と紡ぐ石田さんの筆致にやられる。
筆者は東工大工学部卒らしく、両編ともに建築系?会社の中堅女性社員が主人公だったことにも請け合い。面白かったし好きな文体だった、他の作品も読みたい。 -
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ネタバレこの作者の作品を読むのは初めてだったが、「100分で読める」レーベルとはいえ、文章のテンポの良さが際立っていて、文体も内容も個人的にかなり刺さった。
特に、ユカリが海外志向になったきっかけとして「人びとが人びとに無関心に見えたことに奇妙に慰められた。自分はずっとここにいるべきだとすら感じ、そんな憧憬はいまも変わらない」と語る場面から、この作家とは感覚的に合いそうだと感じた。読んでいて主人公のユカリに共感するところが多く、自分と違う部分についても、それはそれで人としての面白さとして興味深く感じられる。
指輪を盗んでしまう場面から物語が一気に加速していく展開も魅力的だ。まるでジェットコースター