奈倉有里のレビュー一覧

  • 理不尽ゲーム

    Posted by ブクログ

    独裁者に支配されるベラルーシで実際に起きていることが、昏睡状態の孫に語り掛けるばあちゃんや友人の話で割と淡々と描かれます。抵抗しては潰されることを繰り返すようで、閉塞感と絶望感を覚えました。一度狂った独裁者を産んでしまった国は、国民を丸ごと理不尽な渦に巻き込んでしまうことをロシアやベラルーシから感じました。
    一方、孫の回復を諦めないばあちゃんの本当の愛情にも胸が締め付けられるようで、手紙のシーンは涙なしには読めません。
    訳者の言うように、読み終えたらまた読み直したくなりました。すごい価値のある一冊です。

    0
    2022年11月07日
  • 戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々

    Posted by ブクログ

    ある朝突然破壊された日常、未来。
    家と地下を往復する生活。
    戦禍から逃れるため着の身着のままで乗り込む列車。
    家族との別離。戦地に残った家族親類への絶えない心配。
    鉛筆で描かれたそれが、まさに現在進行中の出来事という事に改めて震撼する。

    0
    2022年10月08日
  • 理不尽ゲーム

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ロシアに隣接しているベラルーシという国のある若者の物語。
    10年間、脳死状態でいて生き返ったという特殊な内容もさることながらこの国で興っている事を厳しい批判の眼で伝え、発信するという穏やかではない現代の体制を書いている。

    自国では発刊出来ない内容であるとともに、
    世界的にみてもこのようなことは氷山の一角なのかもしれないと思わせてくれる。
    また、読んでみたい。

    0
    2022年10月07日
  • 戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々

    Posted by ブクログ

    本が登場するという話しが伝わって、興味を覚えていたが、出回り始めたことを知って入手した。入手して眼を通してみて善かったと思う。
    「鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々」と題名に在るが、戦禍の中で手近にスケッチブックやノートや鉛筆を持っていて、そこに描いた画と、綴った然程長くない言葉を折り重ねたという本である。
    イラストレーター、絵本作家という活動を続けている著者であるが、“侵攻”の勃発でその身を案じていた人達が国外にも在り、韓国の出版関係の方がインスタグラムに出た鉛筆の画を見て接触し、ウクライナで事態が起こってから国外へ出る迄の様子を本にすることになったのだそうだ。日本を含む各国では、そ

    0
    2022年10月04日
  • 亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版

    Posted by ブクログ

    今、このタイミングで読んで良かった。新訳で付け加えられた裁判の記録が、戦争の真の悲劇をさらにえぐるように訴えてくる。

    0
    2022年09月27日
  • 亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版

    Posted by ブクログ

    1970年代末から80年代末にかけて行われたアフガニスタン侵攻の関係者たちによる証言集。奇妙なタイトルは戦死者たちが亜鉛で密封された棺に入れられて帰ってきたのにちなんでいる(密封されているから遺族は遺体と対面できなかった)。この戦争は当初政府が宣伝していたような国際友好では全然なく侵略戦争だった。犠牲者たちは各々にとっての真実を語る。戦闘中の悲惨な体験、息子や娘を亡くした悲しみ、帰国後の偏見への怒り、徒労感、虚無感。ある者はアフガニスタンを忘れたいと言い、ある者は戻りたいという。多種多様な声、声、声。読みながら何度も戦慄し、何度も同情の涙が出た。この部分だけでも優れたドキュメントだが、補足資料

    0
    2022年08月23日
  • 亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版

    Posted by ブクログ

    アフガニスタンから帰還した者たちが語る、現地で遭遇した女性たちのエピソードがいずれも衝撃的なので記しておく。

    バグラム近郊で……集落によって、なにか食べさせてほしいと頼んだ。現地では、もしお腹を空かせた人が家に来たら、温かいナンをごちそうしなきゃいけないっていう風習がある。女たちは食卓に案内し、食べ物を出してくれた。でも俺たちが家を去ると、その女たちは子供もろとも村人たちに石や棒を投げつけられ、殺されてしまった。殺されるのをわかっていたのに、俺たちを追い払わなかったんだ。それなのに俺たちは自分たちの習慣を押し通して……帽子も取らずにモスクに入ったりしてた……。(p.67)

    初めての手術の患

    0
    2022年08月21日
  • 理不尽ゲーム

    Posted by ブクログ

    「赤い十字」に続いて、フィリペンコのデビュー作である本書を読む。
    ベラルーシの現実に暗澹たる気持ちになる。
    ルカシェンコ大統領の強権による虐殺、統制管理の残虐さは、同じ地球に生きていて申し訳ないと思うほど。

    ツィスクの昏睡は民主主義のメタファーだ。ツィスクの目覚めを信じて語り続け励まし続ける祖母の最後の手紙で泣けた。肉親としての愛と、ベラルーシへの愛。

    奈倉有里さんの訳もすばらしい。訳者後書きもまた。(これを読めばベラルーシの現状もこの本の読み方も全てわかる)

    本屋大賞の「同志少女よ敵を撃て」のおかげで、ウクライナ侵攻の現状や歴史に、関心が移ってきた。奈倉有里さんと逢坂冬馬さんが姉弟だと

    0
    2022年08月05日
  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    認知症のタチヤーナばあさんが、向かいの部屋に引っ越してきた青年サーシャに自身のこれまでのことを語る。戦時下のソ連で夫は捕虜になって帰らず、当局の粛清に怯えて暮らすうち、突然逮捕されて幼い娘と引き離され収容所に送られる。
    当時のソ連が自国民を粛清し、外から差し伸べられる手を無視し続けたことなどがタチヤーナの語りと電文で伝えられる。淡々としているようだが彼女の国家に対する疑問や怒り、深い悲しみが静かに胸に迫ってきた。
    タチヤーナの認知症は、こうした体験が語られることなく風化していくことの象徴なのか?そしてまた似たようなことが繰り返される。

    0
    2022年07月05日
  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    アルツハイマーを患っている91歳のタチヤーナの第二次世界大戦前後の話を、妻を失って越してきた30歳の青年サーシャが聞く話。
    後書きで訳者が述べる通り、象徴の使い方や歌謡・赤十字の交信資料の引用が巧みで、ゆっくり読み解いたらもっといろんなものが見えると思う。
    赤い十字は、タチヤーナがソ連外務省で翻訳してタイプしていた赤十字とのやりとりであり、タチヤーナの娘アーシャの埋葬地にタチヤーナが立てた錆びた鉄パイプの十字架であり、タチヤーナの出身地ロンドン・友人パーシカの出身地ジェノヴァの印でもあり、タチヤーナが埋葬され「安らかに眠らせてください」と刻まれた御影石の墓石でもある。人間ではどうしようもない苦

    0
    2022年04月19日
  • 理不尽ゲーム

    Posted by ブクログ

    読みながら息が詰まる程の閉塞感。最後の訳者あとがきを読んで、冒頭の作者の言葉を読み返し、東京オリンピックでの出来事を思い出す。かの地の実状を描き出し、読み手の心に突き刺さる。文学の力を見せつけられる一冊だった。すごい。

    0
    2022年02月09日
  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    一気に読んだ。とても面白かった。恐らく膨大なアーカイブから着想を得た、粛清のソ連を描いた作品。運命等という軽い言葉では表せない時代。

    0
    2022年01月25日
  • 理不尽ゲーム

    Posted by ブクログ

    この本は小説なのですが、非常にベラルーシの「現在」と関連しているので、「今」読むのがよいと思います。

    0
    2021年05月28日
  • 文化の脱走兵

    Posted by ブクログ

    非暴力という形で反戦を掲げる志し。弱さではなく逃げるが別の強さであること、今この時代に読めて良かったなと思う。権力などの同調圧力からも離れることに繋がるし、「言葉」で戦う姿勢が著者の強さを感じられた。本を読まないと悪い人に利用されてしまうは本当だと思う。

    好きだったのは「体験は誰かと後日共有して初めて体験になる」こと。心の片隅に思っていたことが言語化された気分。どうしてこんなにも言葉にするのが上手なのでしょうか。

    本や文学は決して作用がないわけではない。私もずっと本を読み続けたいと思う。

    0
    2026年04月10日
  • 戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々

    Posted by ブクログ

    2022年に出ていた本、知らなかった。綴られる絵日記の絵にも、言葉にも胸がいっぱいになる。22年からはや数年の月日が過ぎた。人々はどう生きているのか、思いを馳せる。

    …わたしは民族で人を分けない。
    人を定義するのは、民族ではなく行動だからだ。
    多くのロシア人が戦争に反対しているということも知っている。…

    その思いで、母語のロシア語のまま本書を綴ったのも、心打たれる。

    0
    2026年02月01日
  • ロシア文学の教室

    Posted by ブクログ

    学生向けの平易なロシア文学の入門書。生徒や先生の会話で多様な視点から作品が紹介される。

    学生時代に出会いたかった。

    0
    2026年01月09日
  • 文化の脱走兵

    Posted by ブクログ

    ロシア文学には馴染みがないけれど、紹介されている詩がとても面白い。
    奈倉さんの感性とエピソードがユニークで可愛らしく、じんわり心が温まる。

    「猫背の翼」が特に好き。
    猫鯨に私もなりたい。

    戦争や原発のことを考えると心がギュッとなってしまうが、「気づくことは気づかないよりずっといい」という言葉に救われた。
    大きなことはできなくても、好きなものを好きだと言う、考えることをやめない、今いる場所でできることをやる。
    そういう生き方を選択したいと思った。

    0
    2025年12月28日
  • 文学キョーダイ!!

    Posted by ブクログ

    実はお二人の著書をひとつも読んでいないまま、なぜかこの対談にたどり着いた。
    ある種極端な環境で育ったおふたりだからか、世の中をとてもニュートラルに見つめているように感じた。この価値観の人達が書く文章は読んでみたいと思ったので、近々手を出そうと思う。

    0
    2025年12月27日
  • 文化の脱走兵

    Posted by ブクログ

    逢坂冬馬さんの本が大好きで、そのお姉さんも本を出されていると知り、興味をもち読んでみた。2人の価値観の根底はやはり似ていて、奈倉さんの本も負けないくらいに素敵だった。以下、感想。

    文学は、多くの人が生きた証であり、伝えたいメッセージであり、時代、その時の価値観が自ずと反映されている。それを一つ一つ丁寧に紐解きながら、思いを馳たり、自分自身に昇華させたりしている、筆者。

    多角的視点と言えば硬い表現になるが、感情や物事の機微に触れる、感じ取る力がすごいし、そんな力を私も読書することでつけていきたいと思った。

    ロシアが大好きな筆者だからこそ、ウクライナ戦争に対してのより強い悲しみ、哀愁を感じる

    0
    2025年12月14日
  • 文化の脱走兵

    Posted by ブクログ

    作者のひとがらがわかる素晴らしいエッセイ。
    読んでると雪が見たくなり、幼い日の景色を思い出したりする。
    しかし、ノスタルジーの中にも鋭い政治批評や反戦の意思があり、読み応えがある。
    ウクライナ戦争から原発まで、静かに行動する姿は胸を突くものがあった。優しいひとがらは両親や周囲の人が育んだものだろう。引用されている詩にも癒された。

    0
    2025年11月19日