奈倉有里のレビュー一覧
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本が登場するという話しが伝わって、興味を覚えていたが、出回り始めたことを知って入手した。入手して眼を通してみて善かったと思う。
「鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々」と題名に在るが、戦禍の中で手近にスケッチブックやノートや鉛筆を持っていて、そこに描いた画と、綴った然程長くない言葉を折り重ねたという本である。
イラストレーター、絵本作家という活動を続けている著者であるが、“侵攻”の勃発でその身を案じていた人達が国外にも在り、韓国の出版関係の方がインスタグラムに出た鉛筆の画を見て接触し、ウクライナで事態が起こってから国外へ出る迄の様子を本にすることになったのだそうだ。日本を含む各国では、そ -
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1970年代末から80年代末にかけて行われたアフガニスタン侵攻の関係者たちによる証言集。奇妙なタイトルは戦死者たちが亜鉛で密封された棺に入れられて帰ってきたのにちなんでいる(密封されているから遺族は遺体と対面できなかった)。この戦争は当初政府が宣伝していたような国際友好では全然なく侵略戦争だった。犠牲者たちは各々にとっての真実を語る。戦闘中の悲惨な体験、息子や娘を亡くした悲しみ、帰国後の偏見への怒り、徒労感、虚無感。ある者はアフガニスタンを忘れたいと言い、ある者は戻りたいという。多種多様な声、声、声。読みながら何度も戦慄し、何度も同情の涙が出た。この部分だけでも優れたドキュメントだが、補足資料
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アフガニスタンから帰還した者たちが語る、現地で遭遇した女性たちのエピソードがいずれも衝撃的なので記しておく。
バグラム近郊で……集落によって、なにか食べさせてほしいと頼んだ。現地では、もしお腹を空かせた人が家に来たら、温かいナンをごちそうしなきゃいけないっていう風習がある。女たちは食卓に案内し、食べ物を出してくれた。でも俺たちが家を去ると、その女たちは子供もろとも村人たちに石や棒を投げつけられ、殺されてしまった。殺されるのをわかっていたのに、俺たちを追い払わなかったんだ。それなのに俺たちは自分たちの習慣を押し通して……帽子も取らずにモスクに入ったりしてた……。(p.67)
初めての手術の患 -
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「赤い十字」に続いて、フィリペンコのデビュー作である本書を読む。
ベラルーシの現実に暗澹たる気持ちになる。
ルカシェンコ大統領の強権による虐殺、統制管理の残虐さは、同じ地球に生きていて申し訳ないと思うほど。
ツィスクの昏睡は民主主義のメタファーだ。ツィスクの目覚めを信じて語り続け励まし続ける祖母の最後の手紙で泣けた。肉親としての愛と、ベラルーシへの愛。
奈倉有里さんの訳もすばらしい。訳者後書きもまた。(これを読めばベラルーシの現状もこの本の読み方も全てわかる)
本屋大賞の「同志少女よ敵を撃て」のおかげで、ウクライナ侵攻の現状や歴史に、関心が移ってきた。奈倉有里さんと逢坂冬馬さんが姉弟だと -
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ネタバレアルツハイマーを患っている91歳のタチヤーナの第二次世界大戦前後の話を、妻を失って越してきた30歳の青年サーシャが聞く話。
後書きで訳者が述べる通り、象徴の使い方や歌謡・赤十字の交信資料の引用が巧みで、ゆっくり読み解いたらもっといろんなものが見えると思う。
赤い十字は、タチヤーナがソ連外務省で翻訳してタイプしていた赤十字とのやりとりであり、タチヤーナの娘アーシャの埋葬地にタチヤーナが立てた錆びた鉄パイプの十字架であり、タチヤーナの出身地ロンドン・友人パーシカの出身地ジェノヴァの印でもあり、タチヤーナが埋葬され「安らかに眠らせてください」と刻まれた御影石の墓石でもある。人間ではどうしようもない苦 -
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逢坂冬馬さんの本が大好きで、そのお姉さんも本を出されていると知り、興味をもち読んでみた。2人の価値観の根底はやはり似ていて、奈倉さんの本も負けないくらいに素敵だった。以下、感想。
文学は、多くの人が生きた証であり、伝えたいメッセージであり、時代、その時の価値観が自ずと反映されている。それを一つ一つ丁寧に紐解きながら、思いを馳たり、自分自身に昇華させたりしている、筆者。
多角的視点と言えば硬い表現になるが、感情や物事の機微に触れる、感じ取る力がすごいし、そんな力を私も読書することでつけていきたいと思った。
ロシアが大好きな筆者だからこそ、ウクライナ戦争に対してのより強い悲しみ、哀愁を感じる