奈倉有里のレビュー一覧

  • 亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版

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    「戦争は女の顔をしていない」の著者であるスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ氏の著書『亜鉛の少年たち』を読みました。

    1979年から1989年までの約9年間行われた、ソ連によるアフガニスタンへの軍事派兵。

    この本は、アフガン侵攻に派兵されて帰還した兵士や看護師、そして彼・彼女らを送り出した母親たちの証言をもとにした「ドキュメンタリー小説」でした。

    前線に送られ戦死した10代の少年たちの遺体は、密閉されて遺族も開けることが許されない「亜鉛の棺」に入れられて戻ってきたという。
    そして、帰還することができた少年たちは、戦場での生活で心が凍りついてしまい、まるで金属のようになっていることがある、

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    2022年11月27日
  • 理不尽ゲーム

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    独裁者に支配されるベラルーシで実際に起きていることが、昏睡状態の孫に語り掛けるばあちゃんや友人の話で割と淡々と描かれます。抵抗しては潰されることを繰り返すようで、閉塞感と絶望感を覚えました。一度狂った独裁者を産んでしまった国は、国民を丸ごと理不尽な渦に巻き込んでしまうことをロシアやベラルーシから感じました。
    一方、孫の回復を諦めないばあちゃんの本当の愛情にも胸が締め付けられるようで、手紙のシーンは涙なしには読めません。
    訳者の言うように、読み終えたらまた読み直したくなりました。すごい価値のある一冊です。

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    2022年11月07日
  • 戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々

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    ある朝突然破壊された日常、未来。
    家と地下を往復する生活。
    戦禍から逃れるため着の身着のままで乗り込む列車。
    家族との別離。戦地に残った家族親類への絶えない心配。
    鉛筆で描かれたそれが、まさに現在進行中の出来事という事に改めて震撼する。

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    2022年10月08日
  • 理不尽ゲーム

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    ネタバレ

    ロシアに隣接しているベラルーシという国のある若者の物語。
    10年間、脳死状態でいて生き返ったという特殊な内容もさることながらこの国で興っている事を厳しい批判の眼で伝え、発信するという穏やかではない現代の体制を書いている。

    自国では発刊出来ない内容であるとともに、
    世界的にみてもこのようなことは氷山の一角なのかもしれないと思わせてくれる。
    また、読んでみたい。

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    2022年10月07日
  • 戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々

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    本が登場するという話しが伝わって、興味を覚えていたが、出回り始めたことを知って入手した。入手して眼を通してみて善かったと思う。
    「鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々」と題名に在るが、戦禍の中で手近にスケッチブックやノートや鉛筆を持っていて、そこに描いた画と、綴った然程長くない言葉を折り重ねたという本である。
    イラストレーター、絵本作家という活動を続けている著者であるが、“侵攻”の勃発でその身を案じていた人達が国外にも在り、韓国の出版関係の方がインスタグラムに出た鉛筆の画を見て接触し、ウクライナで事態が起こってから国外へ出る迄の様子を本にすることになったのだそうだ。日本を含む各国では、そ

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    2022年10月04日
  • 亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版

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    今、このタイミングで読んで良かった。新訳で付け加えられた裁判の記録が、戦争の真の悲劇をさらにえぐるように訴えてくる。

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    2022年09月27日
  • 亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版

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    1970年代末から80年代末にかけて行われたアフガニスタン侵攻の関係者たちによる証言集。奇妙なタイトルは戦死者たちが亜鉛で密封された棺に入れられて帰ってきたのにちなんでいる(密封されているから遺族は遺体と対面できなかった)。この戦争は当初政府が宣伝していたような国際友好では全然なく侵略戦争だった。犠牲者たちは各々にとっての真実を語る。戦闘中の悲惨な体験、息子や娘を亡くした悲しみ、帰国後の偏見への怒り、徒労感、虚無感。ある者はアフガニスタンを忘れたいと言い、ある者は戻りたいという。多種多様な声、声、声。読みながら何度も戦慄し、何度も同情の涙が出た。この部分だけでも優れたドキュメントだが、補足資料

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    2022年08月23日
  • 亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版

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    アフガニスタンから帰還した者たちが語る、現地で遭遇した女性たちのエピソードがいずれも衝撃的なので記しておく。

    バグラム近郊で……集落によって、なにか食べさせてほしいと頼んだ。現地では、もしお腹を空かせた人が家に来たら、温かいナンをごちそうしなきゃいけないっていう風習がある。女たちは食卓に案内し、食べ物を出してくれた。でも俺たちが家を去ると、その女たちは子供もろとも村人たちに石や棒を投げつけられ、殺されてしまった。殺されるのをわかっていたのに、俺たちを追い払わなかったんだ。それなのに俺たちは自分たちの習慣を押し通して……帽子も取らずにモスクに入ったりしてた……。(p.67)

    初めての手術の患

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    2022年08月21日
  • 理不尽ゲーム

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    「赤い十字」に続いて、フィリペンコのデビュー作である本書を読む。
    ベラルーシの現実に暗澹たる気持ちになる。
    ルカシェンコ大統領の強権による虐殺、統制管理の残虐さは、同じ地球に生きていて申し訳ないと思うほど。

    ツィスクの昏睡は民主主義のメタファーだ。ツィスクの目覚めを信じて語り続け励まし続ける祖母の最後の手紙で泣けた。肉親としての愛と、ベラルーシへの愛。

    奈倉有里さんの訳もすばらしい。訳者後書きもまた。(これを読めばベラルーシの現状もこの本の読み方も全てわかる)

    本屋大賞の「同志少女よ敵を撃て」のおかげで、ウクライナ侵攻の現状や歴史に、関心が移ってきた。奈倉有里さんと逢坂冬馬さんが姉弟だと

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    2022年08月05日
  • 赤い十字

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    認知症のタチヤーナばあさんが、向かいの部屋に引っ越してきた青年サーシャに自身のこれまでのことを語る。戦時下のソ連で夫は捕虜になって帰らず、当局の粛清に怯えて暮らすうち、突然逮捕されて幼い娘と引き離され収容所に送られる。
    当時のソ連が自国民を粛清し、外から差し伸べられる手を無視し続けたことなどがタチヤーナの語りと電文で伝えられる。淡々としているようだが彼女の国家に対する疑問や怒り、深い悲しみが静かに胸に迫ってきた。
    タチヤーナの認知症は、こうした体験が語られることなく風化していくことの象徴なのか?そしてまた似たようなことが繰り返される。

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    2022年07月05日
  • 赤い十字

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    ネタバレ

    アルツハイマーを患っている91歳のタチヤーナの第二次世界大戦前後の話を、妻を失って越してきた30歳の青年サーシャが聞く話。
    後書きで訳者が述べる通り、象徴の使い方や歌謡・赤十字の交信資料の引用が巧みで、ゆっくり読み解いたらもっといろんなものが見えると思う。
    赤い十字は、タチヤーナがソ連外務省で翻訳してタイプしていた赤十字とのやりとりであり、タチヤーナの娘アーシャの埋葬地にタチヤーナが立てた錆びた鉄パイプの十字架であり、タチヤーナの出身地ロンドン・友人パーシカの出身地ジェノヴァの印でもあり、タチヤーナが埋葬され「安らかに眠らせてください」と刻まれた御影石の墓石でもある。人間ではどうしようもない苦

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    2022年04月19日
  • 理不尽ゲーム

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    読みながら息が詰まる程の閉塞感。最後の訳者あとがきを読んで、冒頭の作者の言葉を読み返し、東京オリンピックでの出来事を思い出す。かの地の実状を描き出し、読み手の心に突き刺さる。文学の力を見せつけられる一冊だった。すごい。

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    2022年02月09日
  • 赤い十字

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    一気に読んだ。とても面白かった。恐らく膨大なアーカイブから着想を得た、粛清のソ連を描いた作品。運命等という軽い言葉では表せない時代。

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    2022年01月25日
  • 理不尽ゲーム

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    この本は小説なのですが、非常にベラルーシの「現在」と関連しているので、「今」読むのがよいと思います。

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    2021年05月28日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    読むほどに胸打たれる素晴らしいエッセイ。

    本を読み、深く考える。
    素晴らしい師との出会いで
    人生が光り輝いていく喜び。

    学ぶことの喜び、言葉という光が
    人の心に与える希望。

    読みながら、あぁそうなんだ。
    と、読むことの幸せを噛み締めた。

    学ぶことを諦めそうな時は、
    何度も読み返し、
    言葉を身につけることの光を
    自分でも見つけていきたい。

    そして、
    読後もずっと、学ぶこと、本を読むことが
    その人にいかに知性の輝きと美しさを
    与えるのか、その尊さを何度も思う。

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    2026年06月04日
  • 理不尽ゲーム

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    ベラルーシの少年ツィスクは、群衆事故に巻き込まれ、10年間植物状態に陥る。
    祖母の献身的な看護により、奇跡的に目を覚ますが、その世界は、大統領の独裁政治により10年前よりも生きづらい世の中になっていた。
    主人公に次々とふりかかる理不尽な出来事に心が痛む。
    筆によってこの国の悲惨な状況を暴いた作者に拍手を送りたい。

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    2026年05月28日
  • 理不尽ゲーム

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    原作は『かつての息子』
    表題訳を見て一瞬首を傾げてしまったが、なるほど理不尽なことが次々と起こる。独裁国家の現状に衝撃を覚えた。

    ウクライナ戦争が始まった時、隣国ベラルーシに関心を持った。ソ連崩壊(1990年)後、ベラルーシ共和国になり、初代大統領ルカシェンコが現在も権力を握っている。
    「この本はベラルーシの書店には並べられない」と書かれた作者のメッセージを読み、フランク・パヴロフ著『茶色の朝』のような危うい空気を感じた。

    主人公ツィスクは若者の群衆事故に巻き込まれ昏睡状態に陥る。回復を信じる祖母が付き添い10年後、やっと目覚めた彼が見た日常は…。

    リアルな描写に、私自身が事故現場に居合

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    2026年05月27日
  • 背表紙の学校

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    ロシア文学研究者であり、翻訳者である奈倉有里さんのエッセイ。『同志少女よ、敵を撃て』『ブレイクショットの軌跡』でご活躍の逢坂冬馬さんのお姉さんでもあります。

    奈倉さんの思考や文章の温度感が好きです。
    前作『文化の脱走兵』でファンになり、待望の新刊を嬉々として手に入れたものの、なかなか多忙にて後回しに。心に余裕がある時にゆっくり読みたかったので。やっと落ち着いて読めて大満足。

    今回も、奈倉さんの子ども時代の記憶とロシアの素敵な詩がたくさん出てきます。
    どれもが美しく、悲しく、そして強い。

    詩は好きですが、あまり読むのが得意とは言えない私は、奈倉さんの文章を読む事でぼやけていたものが透き通っ

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    2026年05月13日
  • 背表紙の学校

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    この人の書いたものをよんでいるとあ、ロシア文学を読みたくなる。ほとんど読まずにきてしまったことに少し焦る。まだ遅くないから読もうと思う。

    大人の笑顔、本当に大事。子どもが小さい頃は朝から笑顔にさせてもらったものだ。今、笑顔でいられる瞬間をできるだけたくさん作っていきたいなと思う。この
    世の中でも。

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    2026年05月12日
  • 背表紙の学校

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    ゲームを長時間していたら怒られるのに、
    本なら何時間読んでいても怒られなかった子ども時代を思い出す。
    寝る前にかいけつゾロリを夢中で読んでいたら、
    小1にはもう目が悪くなっていた(遺伝大)

    同じ娯楽なのになんでだろう?
    大人になった今でもはっきりとは答えられないけれど。

    ロシア情勢や詩文にまつわる話も多く、
    日本も戦争を見て見ぬ振りできないようになってきたなぁとも思うし、ギリギリまで平和ボケさせて…とも思う。
    どんな時も、言葉を紡ぐ人は消えることはなくて
    その言葉から学べることを無駄にしてはいけない。

    表題の「背表紙の学校」、その次の「普通の市民の市長選」いいなぁと思って読んでいたら、「

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    2026年05月10日