奈倉有里のレビュー一覧
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逢坂冬馬さんの本が大好きで、そのお姉さんも本を出されていると知り、興味をもち読んでみた。2人の価値観の根底はやはり似ていて、奈倉さんの本も負けないくらいに素敵だった。以下、感想。
文学は、多くの人が生きた証であり、伝えたいメッセージであり、時代、その時の価値観が自ずと反映されている。それを一つ一つ丁寧に紐解きながら、思いを馳たり、自分自身に昇華させたりしている、筆者。
多角的視点と言えば硬い表現になるが、感情や物事の機微に触れる、感じ取る力がすごいし、そんな力を私も読書することでつけていきたいと思った。
ロシアが大好きな筆者だからこそ、ウクライナ戦争に対してのより強い悲しみ、哀愁を感じる -
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「文学キョーダイ!!」を読んで、逢坂冬馬さんとの姉弟関係やお二人の世界観が面白くて、こちらの本も手に取りました。弟さんとの対談の時のほうが、より、面白さ際立っていたようです(対談なので第三者の舵取り有った故かと)。エッセイだし、200ページくらいだし、ペロッと読めるだろと思っていたら、想像よりかなり深い考察や文学的素養が散りばめられており何度か寝落ち。これは、短時間の電車内で一つずつ読むべき本だった…。
ロシアの文学に携わっている人や詩も良く出てきました。猫と鯨の詩はかなり楽しく読みました。ロシ
ア語だと一文字違いなんですって。マザーグースもそうてすが、原文はとても面白いのに訳すと今一つってい -
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ネタバレ
その国で出会ったすべてがつながって。
ロシアに留学していた日々を綴ったエッセイ。渡航時の不安、出会った人々、文学大学の授業、日常と事件、そこから考えた自分、国、文学、言葉。どうして、と問う事態になっている今だからこそ、ロシアを見つめる。
途中まではふむふむと、米原万里を思い出したりしながら読んでいた。しかしアントーノフ先生の話を一通り終えて、これは壮大なラブレターだと思った。恩師への敬愛と感謝を込めた大きな意味でのラブレター。そう思ってから全体的に見て、やはりこれはラブレターだと思う。ロシアへの、文学への。
歴史には詳しくないけど帝国ロシア、ソ連、ロシア連邦と変わってきた中で、幾度とも -
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神戸のおしゃれな本屋さんで買った。背表紙やタイトルに惹きつけられた。なにか文学の特定のものを探しにいくフィクションかと思っていたが、そうではなかった。ロシアへ留学した日本人の女の人の留学日記だった。ちょっとした時間に読めるコラムのように小気味よく分けられていてた。見出しに詩や文学からの引用が2行ほどあり、その引用になぞらえて、話が展開する。
プロフィールを読むと、ぼくの一年先輩だった。
ここから書くのは、本の内容じゃなくて、この本を読んで思い出したことを書く。
大学で論理学という授業を採った。コンピュータが始まる前に人類が到達していた機械言語の本流のかけらに興味があったのだった。たしか土曜の午 -
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とても素敵なエッセイだった
ロシアとウクライナの戦争が始まり、ロシアの大学にいた作者が、今どんな風にロシアを見ているのか興味を持ったのです
結果、反戦と平和をただ願い
自然と人を愛している、そんな文章に心を打たれました
戦う勇気ではなく、逃げる勇気を持とう
この本を読めば、その意味が深く理解できることと思います
様々な情報が溢れるこの世界で、正しい情報とは何か?その情報の意味を考えることがどれだけ大切なことなのか?表面だけ見てわかったつもりになっていないのか?
うわべだけの理解になってはならないとずっと思っているけれど、改めて考えることの大切さを知った本です -
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ネタバレあなたとわたしをつなぐことばの魔法。
「はじめに」を読むと何の本なのかわからなくなって面食らう。読み始めて、ああ、言語学習の本かな、と思う。そしてだんだんと翻訳の話だとわかってくる。著者の読書体験に似たものを自分も持っているし、言語学を学んで翻訳を面白く思っていたこともあるので、楽しく読めた。
本を読む文化というのは、共通するところと違うところを見つけて喜ぶ文化だと思う。本著でも紹介されていたように、生活習慣の細かいところや植物の名前などは何を指す言葉かわかってもどういう意味があるのかわからないこともある。原語で読んだ感覚まで伝えようとするのであれば、翻訳の腕の見せ所となる。子どもの頃に読 -
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ネタバレ文学研究家・翻訳家の姉、小説家の弟。
この2人が姉弟だったなんて、そりゃ高橋源一郎さんも椅子から転げ落ちるだろう。そんな偶然の一致が起きることは滅多にない。しかしこうやって対談を読むと自分も姉妹だからわかるという雰囲気がある。同じような文化を享受しつつ、ほんの数年の差や本人の受け取り方で異なる視点。別の方向に目を向けているのに、共通する意識。面白く読んだ。
本を読むことの強さを感じる。友だちがいなくたって、いろいろなものに縛られていたって、本を読むことで世界は広がり、自分は変わる。自分もそう思っている。だから本を読めるように生きていきたい。大学はある意味計算ずくで卒業してしまったけど、ひた -
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ネタバレ2022年から2024年にかけて、「群像」に連載したエッセイをまとめたもの。戦時だからこそ、源氏物語をロシア語に訳したデリューシナ先生と文学の話をしたり、オンラインゲーム上のチャットでロシアやウクライナやカザフスタンのさまざまな年代の人たちと他愛ない話をしたり、そういう営みが尊いのだと思う。たくさん引用されているロシアの詩や、白秋など日本の詩からもまた、文化すなわち人々の暮らしや日常の気持ちが読み取れる。
子ども時代に帰りたいけれど、子ども時代への切符はないのだという詩もあったけれど、奈倉さんの子ども時代や祖父母のいる新潟県巻町、留学時代の追憶もたくさんあった。住民投票で原発を食い止めた町、巻 -
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え? 奈倉有里さんて、あの逢坂冬馬さんのお姉様! いやいや失礼ながら存じ上げませんでした。そもそも今回の選書は、先日読んだ第1回「生きる本大賞」受賞作『死ぬまで生きる日記』(土門蘭さん)つながりで、本作が第2回生きる本大賞・第76回読売文学賞を受賞しているからでした。
奈倉さんの肩書が、ロシア文学研究者・翻訳者となっており、逢坂さんの本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』や連なる作品も、姉弟が互いに刺激し合い、影響し合ってる?と想像しました。(お二人の対談本『文学キョーダイ!!』も読んでみたい!)
肩書から受ける硬派な印象とは裏腹に、文章が綺麗で穏やかさと誠実さを感じます。あちこちに -
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『夕暮れに夜明けの歌を』が本当に素晴らしかったので読んですぐに注文した本『文化の脱走兵』。奈倉さんの静かで穏やかな筆致はそのままに、2022年から始まったロシアによるウクライナ侵攻の影が落ちるなか、何を見て、何を感じ、何を心のよすがに生きていくか、人間性を失わないためには何を大事にするべきか、奈倉さんだけの言葉で語られる。好きなものや好きなことを大事にすること、それは誰にも脅かされないこと、常に心に脱走兵を住まわせること。
だけど、いくら心に脱走兵を住まわせていても、それが心の中にいるだけではどうにもならなくなってきていることも事実だと思う。このエッセイが書かれてからも、ウクライナ侵攻の先は -
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とても面白かった。
構成がユニークで、こんな文学ガイドってあっただろうか。
ガイドっていうのは軽いか…
大学の講義形式になってるが、教授が一方的に講義するわけではなく…
学生たちが小説の中の登場人物になって体験する…
どの小説も読んだことがなかった。全部読むというところまでは絶対無理だが、せめて「復活」とか「白夜」とか、チェーホフの短編集(何か読んだことがあると思うのだが、挙げられていたものはどれも読んでなかった)とか、せっかくだからこれを機会に読むというところまでいかないといけないのだが。
青空文庫のアプリの中には、もともと読もう思って読めていない「桜の園」と「かもめ」だけが入っている。