奈倉有里のレビュー一覧
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『夕暮れに夜明けの歌を』がとても良かった奈倉さん。
これの「あいだで考える」シリーズは「10代以上すべての人のための人文書シリーズ」となっているので、中高生が取っつきやすいようルビも振ってあるし、この本はゲームのような形で進むが、「翻訳をしたい」と考えている中高生はレアだろう。旅行で使う日常会話やメールならAIが簡単に作成してくれる。留学や移住を考えていなければ、語学学習の意欲は下がって当然。受験があるから英語はやるけど。翻訳小説を読む中高生も少ない。景気が悪くて、若い人も内向きになっているからで、もちろん若い人の責任ではないが。
だから、文学作品の翻訳をしたい人はそもそも多くない。文学の翻訳 -
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アフガン戦争の真実。ソ連政権の巧みなプロパガンダにより徴兵された少年たちは、亜鉛の棺に入れられて帰還した。母親たちは、その棺を開けることは許されなかった。
アフガン帰還兵、戦没者の母親たちへの多くのインタビューから、戦場で何が起こっていて、人間はどのように破壊されていくのかが明らかにされる。
この著書が広く世界中で読まれているのは、アフガン戦争の真実を暴いた、ということよりも、「戦争」「戦場」の持つ普遍的な悍ましさ、戦争へ駆り立てる権力者の欺瞞もまた普遍的であることを暴いたと言うことだろう。どんな戦争も、ベトナム戦争も、今起こっているウクライナでの戦争も、そしてかつての太平洋戦争も、同 -
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ウクライナ信仰が起きた時、彼女はそこにいた。
画家、絵本作家であり、妻であり、母である作者。
彼女は、自分に起きたこと、家族に起きたこと、今あることを、えんぴつでスケッチして、日記に書いた。
それは今ライブで起きていること。
だから物語としてまとまっている話ではない。
しかし、それはリアルでライブ。
今、彼女はブルガリアに避難してきている。
愛犬と二人の子供と共に。
夫は、ウクライナ国内に残っている(全てのウクライナ男性は、国外に出られない)。
彼女の母親は、ウクライナ国内に残っている(老人、家族は身軽に動けない)。
それを知ること、それを感じることのために、本書を手に取った。 -
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ネタバレロシアからベラルーシのミンスクに引っ越してきたサーシャは同じフロアの91歳の老人・タチアーナの懐古話を聞く羽目になる。最初は嫌々だったものの段々と自ら彼女の人生を聞きに行くようになる。
恵まれていた子供時代、初恋、外務人民委員部での書類処理の仕事、恋愛結婚、そして開戦。
赤十字から送られる捕虜の扱いに関する手紙を処理する仕事の最中にタチアーナは捕虜リストの中に夫の名前を見つけ、彼女は大胆な行動を取る。1945年7月、夫の帰りを待っていた彼女は逮捕され娘を取り上げられた上、収容所へ送られてしまう。
ソ連の人間の尊厳を微塵も大切と思わないお粗末極まりない手段に辟易してしまう。現在の戦争にも通 -
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1979年-1989年のアフガン戦争に派遣され、心と身体に傷を負った帰還兵士(と言っても臨時に徴収された少年が多かったようだ)や、死亡した子どもたちの特に母親から聞き取った内容、見せてもらった日記や手紙などを元にまとめた本である。
傷の覚めやらない内でのものなので、その気持ちや行いに偽りはないだろう。
仲間内でのリンチ、命令に沿わなかった時の仲間への背後からの射撃、上官によるブーツや靴下を舐めさせる等のいじめ、新人工兵に対する地雷突破命令、罪もないアフガニスタン民間人の虐殺、強奪、強姦、これら凡そ人間的ではない日常を紛らわすために、麻薬を吸いウォッカをがぶ飲み、無ければ不凍液に手を出す。
そ -
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ウクライナで戦争に巻き込まれた著者の生々しい絵日記。
鉛筆一本で描かれた殴り書きのような筆致が、すぐそばで爆発が起こり、地下シェルターに逃げる必要のある現実を突きつけてきます。
著者とは職種が違いますが、私も仕事で絵を描きます。
絵を描くことでの心の安定と、戦争下でも営まれる、人々の生活と会話や自分の思いを文字として書き留める記録としての意味合い。
戦争が早く終わり、終わった後にこそ、この本をどの立場の人にも手に取って読んでもらい、戦争がいかに愚かなことであるのか、同じ人間が、民族・言語・宗教・肌の色などで対立することが無意味であるかを学んでほしいと願うばかりです。 -
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2022年2月24日ロシアによるウクライナ侵攻
本書は、ウクライナ北東部のロシア国境にほど近い都市ハルキウ在住のアーティスト、オリガ•グレベンニクさんが、侵攻直後から2週間の自身の体験を綴ったものです。
オリガさんは、ハルキウでの数日の生活の後、ウクライナ西部のリヴィウ、そしてワルシャワ、ソフィアへ、幼い子ども2人と避難していきます。
本書では、オリガさんの当時の日記であり、その時の鉛筆による文章とスケッチがそのまま掲載されています。
その筆跡や文章、絵には直接的には過度に感情を揺さぶるような大げさなものはありません。
(絶望、と書かれた絵にすら、正直なところタイトルと文脈がなければ絶 -
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ベラルーシで何が起こっているのか、少しでも知る手がかりがあるのでは、と思い読んだ。
著者のサーシャ・フィリペンコは国外で暮らしているそうだ。かつて見たドキュメンタリー番組でも、同じように心あるベラルーシの人々は、リトアニアに脱出していた。ルカシェンコ大統領の不正選挙の後、民主化運動へ息を潜め、ルカシェンコ政権のもと、自由な発言は国内ではできない状態だ。もちろん、ロシア連邦の中でも同様だ。
どんな発言が許されないのか。
社会主義の大義に反すること。そして、独裁者の意に背くこと。
この小説でも、アレクシェーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」でも、逢坂冬馬「同志少女よ敵を撃て」でも同様に描か -
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著者と同じ名前の主人公、サーシャは、30歳の青年。ロシアからベラルーシの首都、ミンスクに越してきたばかりだ。
家族に大きな不幸があり、母親が再婚相手と暮らしているこの街に住むことになったのだ。
だが越してきた早々、階の入口ドアに奇妙な赤い十字が描かれているのを見つける。苛立ちながらそれを消すサーシャに、同じ階に住む老婆が話しかけてくる。十字は老婆が描いたもので、アルツハイマーを患っているため、自分の家の目印にするつもりだったのだという。
自分の不幸で手一杯で辟易気味のサーシャに、老婆は強引に身の上話をし始める。
それはソ連の暗部にまつわる、強烈に皮肉な人生の物語だった。
老婆、タチヤーナは、 -