奈倉有里のレビュー一覧

  • ロシア文学の教室

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    「自分がふだん暮らしている世界とはまったく違う、はるか遠くに感じられるものごとにじかに触れるためには、いったいどうしたらいいのでしょう。この授業では、あなたという読者を主体とし、ロシア文学を素材として体験することによって、社会とは、愛とはなにかを考えます。」
    (シラバスより)
    本書は“ロシア文学”を学ぶ“教室”で、主人公のユーラ達が本を読むことで考えたり体験する話。
    目次だけでも若者世代への簡潔な読書案内になっているのも素晴らしいが、本の世界が一瞬で現実になる演出(それも本の中だけど)も素晴らしい。
    人生経験を積んだ世代ならではの発見もきっとあるはず。豆知識や覚えておきたい名台詞もあり紹介され

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    2024年06月20日
  • シリーズ「あいだで考える」 ことばの白地図を歩く 翻訳と魔法のあいだ

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    クエスト13の翻訳論は、白眉。
    まず、原文を何度も読むのだ、と。
    それから日本語だ、と。

    トルストイが孫と手を繋ぐ方の手が、手袋を外していること。

    学習法。効率の良さ(文法書)、効率の悪さ(行き当たりばったり)、理解度チェック(執拗な確認)

    言葉を、学ぶことは子供時代を体験するという側面もある。

    占いを毎日見てみる。

    使い捨てカイロはロシアでは役に立たない。

    翻訳は読書体験を再現すること。

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    2024年06月08日
  • ロシア文学の教室

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    例えば、知人の前で本を手にしていて「何の本?」とでも尋ねられた時、「ロシア文学の関係の本で、これから読み始めようとしている」とでも応じたとする。こういう場合、十中八九は「多分…手にしないような種類の本だと思う」という反応が在ると思う。
    実は、偶々ながら例示したような出来事が実際に在った本書である。新書で377頁と、少し厚めな感じがする一冊だ。が、読み易く、その厚さが気にならない。
    雑誌連載を基礎に整理したということであるらしい本書だ。特段にその連載記事に触れた経過は無く、「ロシア文学を説く」ということに漠然と興味を覚えて手にした。そして「意表を突かれた」と思えるような叙述方式に少し引き込まれた

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    2024年06月07日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    課題のために読み始めたが、美しい文章と遠いロシアの地で作者に起こった様々な出来事に魅了されてあっという間に読み終わってしまった。

    特に文学大学での日々の回想録において、作者が講義や多様な文学作品に没頭する描写が印象的だった。そして、自分はこんなに文学研究にのめり込めないので羨ましくなった。

    何かに夢中になることとロシア文学の素晴らしさを再認識させられると共に、混乱を極めるロシア周辺の情勢と、昨今の文学軽視の風潮に思いを馳せた。

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    2024年06月07日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    珠玉。地を穿つような学びは人間の奥底に通じている。無力のようで、実は深く大きな力として。アントーノフ先生への思いは限りなく尊く、胸を打つが、これは現実なのだと思い直しすと、粛然とせざるを得ない。

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    2024年05月31日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    3月に青木理「時代の叛逆者たち」で逢坂冬馬の姉だと知り、4月にネットの古本屋で見つけた「世界臨時増刊」でエカテリーナ・シュリマンのウクライナ戦争に関する講義を読んだ。奈倉有里の翻訳である。
    そして本書。ロシア語、ロシア文学に興味を持ちロシアに渡って文学大学で学んだ日々を友人や教師との交流などを交えて教えてくれる。
    学ぶ姿勢の深さにまず驚かされた。深いから到達点も高い。彼女がこの先もおおいに発信してくれることを願っている。楽しみな人だ。楽しみな姉弟だ。

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    2024年05月29日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    とても楽しく、感動もあり、文学を愛す著者の渾身の一冊なのだろうと、共感もありました。魂のこもった文学にまた出会いたいです。

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    2024年04月27日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    最近全然聞かなくなってしまった、高橋源一郎の飛ぶラジオで紹介された作者。ゲストで出演もされていた。それを聞いて以来読みたいと思いつつ一年くらいがすぎてしまって、やっと読んだ一冊。
    作者がロシアに留学し、語学学校を経て、ゴーリキー文学大学で過ごした日々を綴ったエッセイ集だ。
    作者は私と同じ82年生まれ。こんなにも言語・文学を探究し、愛し、体感した作者に一種の感動を覚えた。
    素晴らしい先生や友人たちとの出会いを、自身の文学的な力にすることができたのは、紛れもなく、作者のあくなき探究心と好奇心と努力だ。
    作者が愛したロシア文学とそこに住むさまざまな国から来た友人や同級生たち。敬愛する先生との出会いと

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    2024年03月30日
  • 文学キョーダイ!!

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    きょうだいがいるっていいな、と思いました。
    幼い頃、共通のあたたかな経験と記憶があって。成長とともに違う道を歩み、今、重なり合うところにきている。けれど、少し違っている。

    文学、生き方、政治との付き合い方など、深く、骨太で、興味深い対談でした。

    本とともにある生き方。本によるつながり。
    時代や地域を越えて感じる、普遍的なものの存在。

    本好きの私にとってはたまらない内容でした。

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    2024年03月19日
  • 文学キョーダイ!!

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    『ことばの白地図を歩く』。若者向けにゲーム仕立てでおもしろく読みやすいけれど、内容は驚くほど専門的。書いたのはどんな人なんだろう?と気になって経歴をみると紫式部文学賞を受賞した『夕暮れに夜明けの歌を』の著者であり、あの『同志少女』『歌われなかった海賊へ』の逢坂冬馬さんと姉弟だと知り驚いたり納得したり。
    「有里先生」と「逢坂さん」。3歳ちがいのおふたりは対談の中でお互いをこのように呼び合い、「文学」「作家という職業」、「戦争や武器」について、専門家同士としてリスペクトしつつ、存分に語り合う。ご両親のエピソードも紹介されるがこれがまた
    言葉かけと言い距離感といい、「親の背を見て子は育つ」の諺どおり

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    2024年03月06日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    ロシア、という言葉の先入観から、大国らしい描写もあるのかと思いきや、等身大の感覚で読み進めることができました。肩肘はらず、またリラックスしすぎず。学生時代の話は、想像を沸き立たせる描写がとても新鮮でした。むしろ、今の社会情勢から振り返ると、周囲の人たちとのエピソードが優しくて泣けるような感覚も。私はあまり表現が得意な方ではないですが、多くの文化や人の感性に触れてその感じ方や対処を学ばれたのだな、と感じました。だから紛争中の今が悲しくなります。
    素敵な人たちが描かれています。おそらくこの本を通じてしか出会えないです。他の人が描いても異なる描写になるでしょう。

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    2023年12月24日
  • 亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版

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    社会人になってから、近くに置いておきたい本の1つ。

    アフガンってこんなに悲惨やったんやというのと、よくもこれを出版したなというのが率直な感想。重い内容なのは間違いないのに、どんどんと引き込まれる。情景が鮮やかに浮かび情が湧きながらも、どこかでそれを冷静に落とし込みながら、アフガン帰還兵の証言と裁判に触れることができた。「戦争は女の顔をしていない」とはまた別の衝撃で、これは、本当に今のロシアがやっていることと見事に重なる。アレクシェーヴィチのようなインタビュアー・伝え手になりたい。自分の原点を思い出したような気持ちにもなって。さて、がんばるか。

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    2023年11月30日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    "文字が記号のままでなく人の思考に近づくために、これまで世界中の人々がそれぞれに想像を絶するような困難をくぐり抜けて、いま文学作品と呼ばれている本の数々を生み出してきた。"
    この一文がすごく沁みてくる本。

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    2023年11月26日
  • シリーズ「あいだで考える」 ことばの白地図を歩く 翻訳と魔法のあいだ

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     翻訳の極意も興味深かったが、ことばに向き合う姿勢が面白い。
     特に、「ことばの子供時代」が新鮮だった。自分の子に読み聞かせしているとき、自分の中にいる子どもの自分にも読み聞かせている感覚になることがあったが、同じようなことなのか?
     「文化」に枠組みはない。忘れずにいたい。

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    2023年11月11日
  • シリーズ「あいだで考える」 ことばの白地図を歩く 翻訳と魔法のあいだ

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    ロシア語研究・翻訳家の著者が翻訳について語る。
    クエストを提示して、どう解決するかを考える形なのでわかりやすい。
    外国語を学ぶことの意味から始まり、翻訳の極意に至るまで。単に言葉を置き換えるだけでない楽しみを伝えてくれる。

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    2023年11月07日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    ネタバレ

    「同志少女よ、敵を撃て」→「文学キョーダイ!!」からたどり着いた。
    ロシアの文学大学留学中をメインとした、エッセイ。当時の様々な背景を持つ人々との交流や文学への愛が大いに綴られている。

    恋をする同級生や、ニーチェ本で卒倒する子。おかゆ文化、3人で教会へ行く話等もある。この大学は、日本人は奈倉先生1人。ロシア語で全てコミュニケーションを取り、ロシア語をフランス語に訳す授業もあったらしい。自分なら直ぐに帰国するので、純粋に凄いと思う。

    ロシア内部の不穏な空気も描かれている。突然人が消えたり、警察が犯罪を平気で行ってたり。教授が「ロシア語よりウクライナ語より文学的で優れている」と言ったり。歴史で

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    2023年10月30日
  • 文学キョーダイ!!

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    姉の奈倉有里さんと弟の逢坂冬馬さんの対談で構成されていて、お2人の育った家庭や仕事、戦争についてなど読み応えたっぷり。

    特に「小説」について話されている箇所が、よかった。私が映画について深い感想をもてないのは、ビジュアルからすぐにその状況や意味を察知するのが得意じゃなく、察知しよう考えようとするともう次のシーンにいってたりして、自分のペースではみれず、想像の余地もあまりなくて、っていうのが原因なのかも!
    それに対して小説は読み手がどう受け止めても、想像してもいい、読者にゆだねられてるみたいな、だから好きなのかもしれない。

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    2023年10月29日
  • 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

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    こんなにも没頭して読書し、勉強した留学生活……。
    ただただすごい。

    ……という視点で読んでいたのだけど、終盤、アントーノフ先生との顛末がえがかれるに至って、涙をこらえながら読むことに。
    文学への、詩への情熱を媒介に、アントーノフ先生とユリの間には、たしかに愛情が流れていたように思うけれど、それはやはり文学への愛情だったんだろうな。そしてアントーノフ先生を追いつめ、アルコール依存症へと駆り立てたものは、文学者らしい鋭敏な感覚で嗅ぎ取った時代の転換だったのかもしれない。

    そうか……クリミア併合は2014年だったのか。ソチ五輪という言葉が出てきてどきっとしたけれど、ウクライナ侵攻も北京五輪の直後

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    2023年10月27日
  • 文学キョーダイ!!

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    10月8日(日)に高田馬場芳林堂であった2人でのトーク参加の条件である書籍購入。2人のサインを頂き、帰宅して、速攻で読みました。キョーダイが普段は余り話をしないことと、お互いが何をやっているのか気にもしておらず、成果物のみでお互いを理解しているとか、育った環境やそれぞれ別の道を歩くことになったこととか、興味深く書かれています。
    逢坂冬馬さんの前著『同志少女よ、敵を撃て』の内容とギャップのある平和主義を、思想面からも書かれています。とても興味深かったです。買う価値ありですね。

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    2023年10月19日
  • 文学キョーダイ!!

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    ネタバレ


    「同志少女よ、敵を撃て」の作者が男性と聞いて、逢坂先生に興味が湧いた。お姉さんとの対談本。2人がどのような環境で育ち、どのような考えを持っているのか。非常に考えさせられる本だった。

    ※ ネタバレがあるので、先に「同志少女よ、敵を撃て」を読んでからこの本を読んでください。

    ◎「ゆっくり見守ってくれる」「さかなクンになればいい」10-13ページ「受け取りかたをサポート」58ページ「大絶賛と大酷評の両極しかないわけじゃなくて、いい作品の
    中にも変なところはあるし、評価が低い作品にも思わぬ良さがあるよね」62ページ

    親はそれぞれ熱中しているものがあり、出世を促さない。自分の子供が社会に馴染めず

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    2023年10月14日