奈倉有里のレビュー一覧
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「自分がふだん暮らしている世界とはまったく違う、はるか遠くに感じられるものごとにじかに触れるためには、いったいどうしたらいいのでしょう。この授業では、あなたという読者を主体とし、ロシア文学を素材として体験することによって、社会とは、愛とはなにかを考えます。」
(シラバスより)
本書は“ロシア文学”を学ぶ“教室”で、主人公のユーラ達が本を読むことで考えたり体験する話。
目次だけでも若者世代への簡潔な読書案内になっているのも素晴らしいが、本の世界が一瞬で現実になる演出(それも本の中だけど)も素晴らしい。
人生経験を積んだ世代ならではの発見もきっとあるはず。豆知識や覚えておきたい名台詞もあり紹介され -
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例えば、知人の前で本を手にしていて「何の本?」とでも尋ねられた時、「ロシア文学の関係の本で、これから読み始めようとしている」とでも応じたとする。こういう場合、十中八九は「多分…手にしないような種類の本だと思う」という反応が在ると思う。
実は、偶々ながら例示したような出来事が実際に在った本書である。新書で377頁と、少し厚めな感じがする一冊だ。が、読み易く、その厚さが気にならない。
雑誌連載を基礎に整理したということであるらしい本書だ。特段にその連載記事に触れた経過は無く、「ロシア文学を説く」ということに漠然と興味を覚えて手にした。そして「意表を突かれた」と思えるような叙述方式に少し引き込まれた -
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最近全然聞かなくなってしまった、高橋源一郎の飛ぶラジオで紹介された作者。ゲストで出演もされていた。それを聞いて以来読みたいと思いつつ一年くらいがすぎてしまって、やっと読んだ一冊。
作者がロシアに留学し、語学学校を経て、ゴーリキー文学大学で過ごした日々を綴ったエッセイ集だ。
作者は私と同じ82年生まれ。こんなにも言語・文学を探究し、愛し、体感した作者に一種の感動を覚えた。
素晴らしい先生や友人たちとの出会いを、自身の文学的な力にすることができたのは、紛れもなく、作者のあくなき探究心と好奇心と努力だ。
作者が愛したロシア文学とそこに住むさまざまな国から来た友人や同級生たち。敬愛する先生との出会いと -
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『ことばの白地図を歩く』。若者向けにゲーム仕立てでおもしろく読みやすいけれど、内容は驚くほど専門的。書いたのはどんな人なんだろう?と気になって経歴をみると紫式部文学賞を受賞した『夕暮れに夜明けの歌を』の著者であり、あの『同志少女』『歌われなかった海賊へ』の逢坂冬馬さんと姉弟だと知り驚いたり納得したり。
「有里先生」と「逢坂さん」。3歳ちがいのおふたりは対談の中でお互いをこのように呼び合い、「文学」「作家という職業」、「戦争や武器」について、専門家同士としてリスペクトしつつ、存分に語り合う。ご両親のエピソードも紹介されるがこれがまた
言葉かけと言い距離感といい、「親の背を見て子は育つ」の諺どおり -
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ロシア、という言葉の先入観から、大国らしい描写もあるのかと思いきや、等身大の感覚で読み進めることができました。肩肘はらず、またリラックスしすぎず。学生時代の話は、想像を沸き立たせる描写がとても新鮮でした。むしろ、今の社会情勢から振り返ると、周囲の人たちとのエピソードが優しくて泣けるような感覚も。私はあまり表現が得意な方ではないですが、多くの文化や人の感性に触れてその感じ方や対処を学ばれたのだな、と感じました。だから紛争中の今が悲しくなります。
素敵な人たちが描かれています。おそらくこの本を通じてしか出会えないです。他の人が描いても異なる描写になるでしょう。 -
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社会人になってから、近くに置いておきたい本の1つ。
アフガンってこんなに悲惨やったんやというのと、よくもこれを出版したなというのが率直な感想。重い内容なのは間違いないのに、どんどんと引き込まれる。情景が鮮やかに浮かび情が湧きながらも、どこかでそれを冷静に落とし込みながら、アフガン帰還兵の証言と裁判に触れることができた。「戦争は女の顔をしていない」とはまた別の衝撃で、これは、本当に今のロシアがやっていることと見事に重なる。アレクシェーヴィチのようなインタビュアー・伝え手になりたい。自分の原点を思い出したような気持ちにもなって。さて、がんばるか。 -
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ネタバレ「同志少女よ、敵を撃て」→「文学キョーダイ!!」からたどり着いた。
ロシアの文学大学留学中をメインとした、エッセイ。当時の様々な背景を持つ人々との交流や文学への愛が大いに綴られている。
恋をする同級生や、ニーチェ本で卒倒する子。おかゆ文化、3人で教会へ行く話等もある。この大学は、日本人は奈倉先生1人。ロシア語で全てコミュニケーションを取り、ロシア語をフランス語に訳す授業もあったらしい。自分なら直ぐに帰国するので、純粋に凄いと思う。
ロシア内部の不穏な空気も描かれている。突然人が消えたり、警察が犯罪を平気で行ってたり。教授が「ロシア語よりウクライナ語より文学的で優れている」と言ったり。歴史で -
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こんなにも没頭して読書し、勉強した留学生活……。
ただただすごい。
……という視点で読んでいたのだけど、終盤、アントーノフ先生との顛末がえがかれるに至って、涙をこらえながら読むことに。
文学への、詩への情熱を媒介に、アントーノフ先生とユリの間には、たしかに愛情が流れていたように思うけれど、それはやはり文学への愛情だったんだろうな。そしてアントーノフ先生を追いつめ、アルコール依存症へと駆り立てたものは、文学者らしい鋭敏な感覚で嗅ぎ取った時代の転換だったのかもしれない。
そうか……クリミア併合は2014年だったのか。ソチ五輪という言葉が出てきてどきっとしたけれど、ウクライナ侵攻も北京五輪の直後 -
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ネタバレ
「同志少女よ、敵を撃て」の作者が男性と聞いて、逢坂先生に興味が湧いた。お姉さんとの対談本。2人がどのような環境で育ち、どのような考えを持っているのか。非常に考えさせられる本だった。
※ ネタバレがあるので、先に「同志少女よ、敵を撃て」を読んでからこの本を読んでください。
◎「ゆっくり見守ってくれる」「さかなクンになればいい」10-13ページ「受け取りかたをサポート」58ページ「大絶賛と大酷評の両極しかないわけじゃなくて、いい作品の
中にも変なところはあるし、評価が低い作品にも思わぬ良さがあるよね」62ページ
親はそれぞれ熱中しているものがあり、出世を促さない。自分の子供が社会に馴染めず