奈倉有里のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
創元社のこの特集はとても分かりやすく、これは斎藤真理子さんに続いて2冊目だ。翻訳を趣味としてやっているので、どうやったら良い翻訳ができるのか、考えるヒントになればと思って手に取った。しかし翻訳者になろうというのは最後の話で、他言語、文化をどのように自分ごととして学ぶのかから入って行くので、逆に本書を読むことで一番確かな意思を持ち、学んで行くコツを得ることができる。語学を学ぶと言うことは、どちらかと言うと外堀から固めて行く方が楽しいし、長続きするのだ。著者の言う良い翻訳者とは「良い詐欺師」になることということも腑に落ちる。実際に翻訳にかかる前に10回以上原作を読む、それから本の詩想を捉えてから実
-
Posted by ブクログ
戦争が起きている今だからこそ読みたいエッセイだった。ロシアに留学した経験があり、翻訳者で文学者でもある作者が感じていること、そして文学や言葉の力について書かれていた。
詩の世界の奥行きを楽しむとともに、時代を越えて読み継がれる詩の力を感じた。詩は少ない言葉で表現するからこそ、読み手の世界や感覚に委ねられる。戦争をうたった詩、雪をうたった詩、夏や海、渡り鳥など、たくさんの詩が挙げられていて興味深かった。
戦争や原発についても考えさせられる。今はまだ読み終わった段階で、受け止めきれていないところもあるので、詳しく言語化できないけれど、読んで良かったと思う。
いくつかの章を授業で扱いたい。高校生 -
-
Posted by ブクログ
あまりに素敵なものごとの捉え方に口角があがる。
ロシアの詩をはじめとする文学を挟みながら、奈倉さんがこれまで見てきたものや感じてきたことについて書かれているエッセイ、なのですが、
普通のエッセイとはまた違った読み心地。
普通に生活してたらロシアの詩に触れる機会なんてないし、詩に関連するような奈倉さん自身のエピソードを交えて紹介されているので心にも残りやすい。
ただ単に自分で翻訳された詩を読んでいたとしても、ここまで色んな景色は見られなかっただろうなと思う。
好きな話はいくつもあるけれど、
「猫背の翼」が特に素敵。
猫背の痛みが、好きな物(本)を追ってきた証だという、これまた素敵な捉え方で -
Posted by ブクログ
ネタバレよかった!この2人が姉弟という事への興味で読み始めたが、成人してだいぶ経ってからこんなに深い話をする機会はふつうの家ではあまりないのではないか。長い時間をかけて何回も対談をしたものを編集の人がまとめたとの事。
3つのパートに分かれていて、特にパート3ではまさに今、ロシアやウクライナの人々がどんな状況に置かれているのか、他人事ではない、関心を持ち続けて、考えることを手放してはいけないと、2人ともが話している。国民が賢くなるのを嫌がるのはどこの国でも同じなんだと。翻訳家としてロシアの学者の言葉を伝えたいとか、作家が政治的な発言をしてもいいんだ。自分の作品を誤読されたくない、など切実な話も出てきて、 -
Posted by ブクログ
たいへん面白かったです。注目のロシア文学者の姉と「同志少女よ、敵を撃て」の作家の弟。まさかの姉弟ですが、この本の対談で必然的な関係性も分かります。普段からこんな知的な会話をしているのでしょうか。
翻訳するときに「これを読むことが平和につながるかどうか」と考える姉。読書するときに「自分はこれを好きでもいいんだって思えるのはすごく大事」と考える弟。その2人を育てた放任主義のジブリ映画「耳をすませば」のような家庭。
今、話題の三宅香帆さんの新書「なぜ働いていると〜」の元ネタもありました。映画「花束みたいな恋をした」のくだり。三宅さんも奈倉有里さん大好きと言っていたので、ここから大ヒットのヒント