【感想・ネタバレ】シリーズ「あいだで考える」 ことばの白地図を歩く 翻訳と魔法のあいだのレビュー

あらすじ

ロシア文学の研究者であり翻訳者である著者が、自身の留学体験や文芸翻訳の実例をふまえながら、他言語に身をゆだねる魅力や迷いや醍醐味について語り届ける。「異文化」の概念を解きほぐしながら、読書体験という魔法を翻訳することの奥深さを読者と一緒に“クエスト方式”で考える。読書の溢れんばかりの喜びに満ちた一冊。(装画:小林マキ)

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創元社のこの特集はとても分かりやすく、これは斎藤真理子さんに続いて2冊目だ。翻訳を趣味としてやっているので、どうやったら良い翻訳ができるのか、考えるヒントになればと思って手に取った。しかし翻訳者になろうというのは最後の話で、他言語、文化をどのように自分ごととして学ぶのかから入って行くので、逆に本書を読むことで一番確かな意思を持ち、学んで行くコツを得ることができる。語学を学ぶと言うことは、どちらかと言うと外堀から固めて行く方が楽しいし、長続きするのだ。著者の言う良い翻訳者とは「良い詐欺師」になることということも腑に落ちる。実際に翻訳にかかる前に10回以上原作を読む、それから本の詩想を捉えてから実際に訳す時間は短いと言うのもうなづける。楽しく言語を学び、世界の様々な人々と友だちになりたいと言う人にお勧めの本だ。特に、ウクライナ戦争が起き、ロシアを疑心暗鬼の目で見守る今こそ、筆者の専門分野であるロシア文学を読み、草の根の視点で、理解を深めることは、本当に必要とされていると思う。

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2025年09月24日

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翻訳家の翻訳についてのお話。

語学を学ぶポイントについて
P26
これをしている時が心地いいな!
というものを見つけたら、趣味や楽しみのカテゴリーに入れる→ただ楽しむ。
勉強という自覚がない方が身になる。

→これは確かに納得出来た。

P32
留学生時代にルームメイトのマーシャとの会話。
「言葉を学ぶと、子供時代を体験出来るみたいで楽しいね」
と著者が言うと、
マーシャは
「世界にはたくさんの言語があるから、まだまだいくつもの子供時代が体験出来るよね」

こういう発想は無かった。
赤ちゃんでも大人も、言語学習とはまず、一つ一つの音を覚えることから始まる。
自分もそうやって中国語を覚えてきた。
子供のように言語のシャワーを浴び、一つ一つ覚えていく。
それは記憶が朧気だが確かに歩んできた自らの幼少時代を追体験するようで、ワクワクしてくる!


翻訳についてもページを割いて語られている。
P55
文化とはかつて合意の領域であったが、いまや闘争へと変貌した」
のは何故か。
異文化、という概念はそもそもナンセンス。
異、とは人間が恣意的に作り出す線引きでしかない。目の前の様々な文化に疎外意識を持つことなく、知識や技術を磨いていけばいい。

P122
文学作品とこういうもの、こういう点を伝えなねばならぬ。という思い込みを捨てる。

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2024年09月04日

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ロシア文学、ロシア語が大好きな気持ちが溢れ、明るいエネルギーに満ちた本。
現代の世界のニュースには触れず、あくまで魅力的な文化を持つ国として光を当てている。
そんなにひたむきになれるものに出会えるのは幸せであるし、語学の学習は魅力的だと感じさせてくれた。

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2024年06月26日

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クエスト13の翻訳論は、白眉。
まず、原文を何度も読むのだ、と。
それから日本語だ、と。

トルストイが孫と手を繋ぐ方の手が、手袋を外していること。

学習法。効率の良さ(文法書)、効率の悪さ(行き当たりばったり)、理解度チェック(執拗な確認)

言葉を、学ぶことは子供時代を体験するという側面もある

占いを毎日見てみる。

使い捨てカイロはロシアでは役に立たない。

翻訳は読書体験を再現すること。

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2024年06月08日

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 翻訳の極意も興味深かったが、ことばに向き合う姿勢が面白い。
 特に、「ことばの子供時代」が新鮮だった。自分の子に読み聞かせしているとき、自分の中にいる子どもの自分にも読み聞かせている感覚になることがあったが、同じようなことなのか?
 「文化」に枠組みはない。忘れずにいたい。

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2023年11月11日

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ロシア語研究・翻訳家の著者が翻訳について語る。
クエストを提示して、どう解決するかを考える形なのでわかりやすい。
外国語を学ぶことの意味から始まり、翻訳の極意に至るまで。単に言葉を置き換えるだけでない楽しみを伝えてくれる。

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2023年11月07日

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『ことばの白地図を歩く』
ロシア文学の研究者であり翻訳者である筆者が外国語の学び方を小・中学生にも分かるような優しい言葉で指南します。ジュニア向けですが大人で外国語を学びたいと思う方にも発見が多くある本ではないでしょうか。迷信のコラムやロシア語に興味を持ったエピソードが良かったです。

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2023年08月15日

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言語を学ぶ楽しさ、言語を学び続けるためのコツ、学びたい言語圏の文化の理解のしかた…言語を学び翻訳できるように至るまでのルートを分かりやすく楽しく教えてくれる本。
翻訳したい人は参考にこの本を携帯するのもアリだと思う。読みながらわくわくした。

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2025年10月23日

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ネタバレ

あなたとわたしをつなぐことばの魔法。

「はじめに」を読むと何の本なのかわからなくなって面食らう。読み始めて、ああ、言語学習の本かな、と思う。そしてだんだんと翻訳の話だとわかってくる。著者の読書体験に似たものを自分も持っているし、言語学を学んで翻訳を面白く思っていたこともあるので、楽しく読めた。

本を読む文化というのは、共通するところと違うところを見つけて喜ぶ文化だと思う。本著でも紹介されていたように、生活習慣の細かいところや植物の名前などは何を指す言葉かわかってもどういう意味があるのかわからないこともある。原語で読んだ感覚まで伝えようとするのであれば、翻訳の腕の見せ所となる。子どもの頃に読んだ「りんご酒」もロマンティックな思い出だし、シードルを後から知ったのも(そして飲んだのも)新たな出会いとして嬉しかった。

さまざまな言葉で書かれた本に出会える環境はとても幸せなこと。そして平和なこと。ありがたいこと。これからもたくさんの翻訳に出会いたい。

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2025年07月30日

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翻訳者による言葉についてのお話。
翻訳者がどんなことを意識して言葉を考えているか。その頭の中がちょっとわかったような気がする。
彼女との出会いは、「夕暮れに夜明けの歌を」というエッセイであった。言葉を大切にし、丁寧に紡がれた文章が印象的だった。
そして本書も、言葉に真摯に向き合う著者の姿勢に感銘を受けた。
本書もエッセイも、著者の人となりが滲んでいる。
そんな風に思える文章が書ける人はきっと素敵な人なんだろうなと思う。

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2025年04月07日

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10代の頃に読みたかったな(と言っても妖怪あきらめにすぐに負けていたのではないか)。
構成が面白く、イラストも切って飾りたいくらい可愛かった。

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2025年02月17日

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遊び心があって、楽しい本でした♪
するるっと読めながらも、なかなかに感心する部分がありました。
特に4章は、なるほどなぁと唸りました。
何度も何度も読書体験を積み重ね、母語の読者が感じる思いを蓄積させて、日本語が自然に出てくるまで読み重ねる。
「辞書を拡張」していくという考え方。
二葉亭四迷の「詩想」という考え方。
ふむふむ。
あと、外国語の星占いで外国語を学ぶ!
これはぜひともマネしたい!!

最近わりと翻訳本を読む機会が増えてきたんだけども、楽しく読書できていて、なんなら翻訳物(海外作品)いいじゃん!と思えてるのは、ひとえにこういう翻訳家さんの努力の賜物なのだなと、感謝感謝です!

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2024年12月03日

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言語や翻訳についての話だけではなく、どの章も生き方や価値観を揺さぶるような、掘り下げた内容ばかりだった。中でも文化についての文章にはぐっときた。

” 文化を学ぶということはむしろ反対に、「◯◯人としてのアイデンティティ」をほぐし、解消し、もっと広い地平に踏みだすことなのだ。” p.58

この本に10代で出会える人がうらやましい!

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2024年11月05日

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母国語以外のことばを学ぶとき、どんな心構えで、どんな心意気で臨んでいくといいのかを、楽しく知ることのできる本でした。

「ことばの子ども時代」という表現がおもしろいな、と思いました。ことばへの魅力がぎゅっと詰まった一冊です。

私は翻訳された文章が苦手なので、翻訳された文章に苦手意識を持っていたのですが、本書を読み、翻訳本を読んでみようと思えるようになりました。

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2024年09月05日

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私も中学の頃にベルリンの壁崩壊をテレビで生で見て、ドイツとドイツ語に大興奮し、ドイツ文学を大学で学んだ。が、不真面目過ぎてただただドイツやドイツ語に憧れるだけで人生終わりそう。

奈倉さんに運命の言語を見つけたら、妖怪あきらめに取り憑かれないで向き合ってみて、とこの本で色々熱く丁寧に具体的に指南されたので、ドイツ語の本だけは沢山あるから、まずは引っ張り出してみます。

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2024年06月04日

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 ロシア文学者による翻訳への招待。
ロシア文学中心だが、異文化を学ぶとはどういうことなのか、ということをよく教えてくれる。
 ゲームをプレイするようにして、翻訳論、異文化コミュニケーションの世界へと分け入って行く。
 イーグルトンやサイードへの言及もあり、子ども向けに書かれた書籍ではあるが、大人の自分でも勉強になった。
 ロシア文化・文学の魅力にあふれている。

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2024年03月11日

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ネタバレ

母語ではない言語を学ぶ面白さ、翻訳の醍醐味、ロシアの文化(衣食住や迷信など)について楽しく読める本。
翻訳で大事なことは、母語の読者が味わう読書体験を届けること。異文化の異は人間の意識がつくりだす恣意的な線引きで、異などという考え方は忘れてしまおう。この2つについて書かれたクエスト(章)は特にお気に入り。

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2024年02月25日

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『夕暮れに夜明けの歌を』では、ベランダで静かに詩を朗唱していた著者の姿が印象的だった。本書購入時にもその面影がちらついていたが、いざページを開くや、些かキャラ変していることに気づく。

いきなり飛び込んできたのは「Quest 0(クエスト・ゼロ)」の表題。
「この本をとったってことは、つまりこの本がきみを探していたってことだ。あ、目のまえが白く光りはじめて、光のなかに1枚の紙が浮かんできた」と続く。その白地図をプリントした印刷機が自分に話しかけてきて(驚)、「旅に出て、世界で何が起こっているのかをことばを学びながら知ってきてほしい」と依頼してくる。そこでようやく著者が案内人として登場。印刷機の号令?とともに、「クエスト」が始まる…。

?????
「誰かとの共著なのかな?」と著者名を振り返ったけど、彼女ひとりしか記載がない。上記の謎シナリオに一瞬戸惑っちゃうほど、前作から様相がガラリと変わっていたのだ。
著者の奈倉さんはロシア文学研究者で翻訳家、大学でも教鞭を取られている。本書は彼女のロシア語学習や翻訳活動の経験・そこから編み出された言語観を通して、10代の若者(恐らく本書のターゲット層)に「ことばを学ぶとはどういうことか」「翻訳で分かる世界の見え方」をクエストの間突き詰めていくというスタイルである。

はじめにお断りしておくと、見た目のゆるさとは相反して結構奥深い。奥深いというのは、彼女の言語観や哲学のようなもの…と言うべきか。(まとまっていなくてごめんなさい泣)
例えば原書の翻訳は注釈をつけてもそれが誤情報だったり、読者をストーリーから引き離す危険性がある…というもの。「注釈ついてる!ラッキー!」とすぐ安心するチョロい読者だった自分は愕然。(「今まで読んだ注釈の中に間違いが紛れていた可能性がある…ってコト?」)
原書を母語とする読者と同じ読書体験を日本の読者にしてもらう為、翻訳者は魔術師のように言葉を構築していかねばならない。原文と原文読者の関係性を完全再現しなければならない。
これは翻訳の話だけど、本当の世界の見方・理解の仕方って案外こうなのかも。めちゃ気が遠くなりそうだけど。。

翻訳作業に限らず、ことばにまつわる学習には必ず「妖怪 あきらめ」がついて回る。
著者曰く、目標を定めても気力体力が切れた時や本当に身についているのか不安になった時に出没するとの事。「妖怪 あきらめ」は表紙の果物台の下から飛び出している黒い物体で、恐らくヒトの幼児くらいのサイズはある。

でも個人的には可愛いく思うし、何だかんだでヤツも自分の一部である。頑張ろうとしている時にいちいち出てこられるのは困るけど、クエストが原因で事切れないように見守ってくれていると考えれば良いだけの話だ。
一生懸命な自分の失敗を笑ってはいけないと著者が言うように、クエスト(ことばを学びながら世界を知る)に失敗してもヤツは笑ったりしないだろう。

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2024年02月10日

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翻訳のすすめ。翻訳ってただ単語を訳す作業ではなかったんや。奈倉さんは原書を10回は読み尽くして、好きなフレーズは暗記するほど。音声もあればそれも聞き尽くすとか。そういう作業をしてはじめて翻訳にとりかかるそうだ。

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2024年01月30日

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外国語を読むってどういうこと?それは言葉の白地図を作ることらしい。目的の言語をまず選ぶことで白地図に印が付く。それから色々なクエストをやっていくのだ。その手助けにこの本はなってくれるかも。作者のロシア語を学んでいった経験が表れている。

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2024年01月22日

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ロシアの迷信
鳥が家の中に入るとそのいえの誰かが死ぬ。もし入ってきてしまったらすぐに外に放った上で、その日はその家でない方が良いとも言われていると言う。
鳥が飛んで入ってきても不潔だと言うが、これにはロシア語で朝を意味するバーバチカがおばあちゃんを意味するバブーシカ似ているため、おばあちゃんの例が迎えに来たことを連想するからだと言う説がある。古代ギリシャ語で長であり魂でもある募集型の話が思い浮かぶが、実際飯の中には古代ギリシャ由来のものも多い。
忘れ物をして一旦家に戻るのが不吉というものがある家と外との境界線である色をまたぐことが何か決定的な行為でありその前後混同すると良くないと言う類の名称世界各地にありこの飯もその一つ見られているしかし忘れ物して家に戻れないと言うのも困るのでこれには幾つかその行いをなかったことにする方法が伝えられている。よく聞くのは、鏡に自分の姿を映して舌を出すと言う方法。鏡がない時は自分のことをパパと払って、その肩越しに後に向かって3回PePePeと唾を吐く真似をするのでも良い。あるいは道中の無事を願うおまじないで家消すと言う方法。出発前にみんなで少しの間腰掛けると言うものだが、これには家を出る人の無事を願う効果と、家に残された座敷わらしのような妖怪…もとい精霊であるともボーイに家を任せたぞと頼む効果もあると言われている。一説によるとどもボーイは心配性なので、そうやって行ってきま~すをつけないと家主についていってしまって、家を守るものがいなくなるらしい。なかなかいいやつなのだ。

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2024年01月21日

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翻訳の心得。クエスト形式で進んでいく読みやすい本。ただ言葉を置き換えるのではなく、背景とか、読んだ時の読書体験とか、それが読者に伝わるように訳す不断の努力を感じた。異文化の反対は自文化であって自国の文化ではなく、文化は国に属するものではなくて国民としてのアイデンティティを確立するものではむしろない、というのが印象に残った。本という文化において、異国の人ともむしろ友達になれる。純粋な文化、というのは存在しない。
あとは、「マーシャにサラファンを着せる」という『大尉の娘』の訳について。サラファンは農民の着物で、貴族の格好をしていると強奪の対象になるからあえて農民の着物を着せるという父親の判断なのだけど、それが自然と分かるようにシンプルに訳すにはどうしたらいいか、という話もよかった。サラファンは晴れ着で死装束だという訳註がついたこともあるというが、それは全く解釈違いで、権威ある翻訳のそうした間違いは影響大だなと思った。

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2023年09月24日

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大切なのは体験をどのように作れるか(一緒に作っていけるか)、素直な感覚をベースに考え試行錯誤すること

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2023年08月07日

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「文化というものはそもそも、自国/他国(異国)という線引きにはなじまない。(中略)文化を学ぶことはむしろ反対に、「〇〇人としてのアイデンティティ」をほぐし、解消し、もっと広い地平に踏みだすことなのだ。」

本書は4章からなるゲーム攻略本仕立てとなっており、上に記したのは第2章「文化のえらびかた」にあり思わずメモしたところ。そのほか章ごとのコラムがあり、巻末の作品案内にはQRコードも付いていて便利。世界は広くて複雑で、だからこそ仲間を探して歩き続けないと。10代以上すべての人のための「あいだで考える」シリーズ。


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2023年07月30日

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『夕暮れに夜明けの歌を』がとても良かった奈倉さん。
これの「あいだで考える」シリーズは「10代以上すべての人のための人文書シリーズ」となっているので、中高生が取っつきやすいようルビも振ってあるし、この本はゲームのような形で進むが、「翻訳をしたい」と考えている中高生はレアだろう。旅行で使う日常会話やメールならAIが簡単に作成してくれる。留学や移住を考えていなければ、語学学習の意欲は下がって当然。受験があるから英語はやるけど。翻訳小説を読む中高生も少ない。景気が悪くて、若い人も内向きになっているからで、もちろん若い人の責任ではないが。
だから、文学作品の翻訳をしたい人はそもそも多くない。文学の翻訳をするにあたっての心構えを体験から語るこの本が、じゃああまり意味がないかというと、そんなことは決してなく、これから翻訳家にならない私もいろいろ考えてさせられた。文学に興味のある人、つまり文学という「文化」を選んだ人にとってはとても意義深い。
この「文化」論は特に面白かった。
「原文に忠実な翻訳」についても。

翻訳するにあたって、原文を10から30回読む、というのには頭が下がる。これほどの時間と労力と熱意で翻訳しているのか、と。翻訳された作品を多くても二三回しか読まない私のような読者とじゃ理解は雲泥の差だ。それでも私のような読者のために「原文を母語とする読者が原文を読んだときの読書体験」にギリギリまで近づけたものを作り出してくれる。感謝しかない。

一つ難を言えば、一般的な中学生には少し難しいところも多いので、ゲーム仕立てでなくても良かったのではないか。ゲーム仕立てだから読めるってほど軽い本ではないと思う。
イラストも良かった。

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2023年07月29日

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ロシア文学の研究者であり翻訳者である著者が、自身の留学体験や文芸翻訳の実例をふまえながら、他言語に身をゆだねる魅力や迷いや醍醐味について語り届ける。「異文化」の概念を解きほぐしながら、読書体験という魔法を翻訳することの奥深さを、読者と一緒に“クエスト方式”で考える。
著者は、ロシアに留学していたことから「異」文化の違いが大変だったのではないかと聞かれることが多く、そのたびに「異」文化という言葉に戸惑うという。「文化とは人と人が共通の様式を用いて理解しあうこと」で、人はみな「自分の背負う文化を選ぶ権利」がある。だから、「文化」の枠組みは場所で(ましてや国籍や民族で)決まるものではない」とし、「異」文化との対義語に「自国」の文化を持ち出すのは、違うものを排除するようだという。悪気なく自分も線を引いてしまっていないか、ハッと気づかされた。

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2024年12月10日

Posted by ブクログ

言語の習得や翻訳の極意をRPG風に描いてくれてる。
作者の文学に対する真摯な姿が胸を打つ。
巻末のブックガイドもいい。

巻末記載の
『戦禍に社会学者はなにができるか』
エカテリーナ・シュリマン著
奈倉有里訳・解説
岩波書店編集部note
これは一読の価値あり。一読といわず、何度も。

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2024年10月24日

Posted by ブクログ

誰かの感想で興味を持って読みたい本棚に入れたと思うんだけど、語学学習の本だとは思ってなかった。ロシア語って事で、米原万里さんの「不実な美女か貞淑な醜女か」を思い出しましたが、同時通訳者と翻訳家では立場が違うし、少女時代をロシア語学校で過ごした米原さんと、日本でロシア語学習を始めた奈倉さんもまた立場が違いますね。ただ、母国語以外を学ぶことで、母国語以外の考え方・感じ方に触れる事が出来る、今いる世界を多角的に理解するための鏡の様な物だと考えているので、他言語を扱える方のお話は楽しいです。
英語は中学からずっと、大学でドイツ語やって、卒後にちょっとNHKの語学講座見たりして、息子が大学でスペイン語を選択したのでラジオの語学講座を聞き始めて、全部モノにならずに中途半端だけど、何度でもふうん、へええ、と思えるからお得なのかな。

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2024年05月11日

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いま暮らしている国で話すのとは別の
どこか違う国のことばを学ぶ。
その楽しさと、さらに先にある
そこに生きる人々とのコミュニケーション。

作者が小さな頃
ロシア語にひかれた理由は
寒い国に憧れていたからですって。
とっかかりはなんでも。

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2023年08月01日

Posted by ブクログ

奈倉有里さんの新刊。同時に、創元社が企画する「10代以上すべての人のための人文書シリーズ」~あいだで考える刊行の一刊でもある。

遠くて近い、近くて遠いロシア。
子供のころはただ、「怖い国、人種」と言うような感覚で見ていた。
歳をとり、時間が出来てくると、世界の中に占めるスラブ民族が培ってきた文化、芸術、そのほか生活に根差した諸々に興味が出てきた。
手始めに始めたのが Eテレのロシア語講座~があえなく、瓦解。
折からのロシアによるウクライナ侵攻でフェイドアウト。
録画していたストックも見る樹、聞く気が失せ削除した。

時を同じくして関心が募ったスヴェトラーナ、フィリペンコの作品群、片っ端から読み、奈倉さんを知る。
10代で読む~個人的に言えば12,3歳のころ、春の曙時?むくむく湧いてくる知的好奇心、そして学業に物足らなさを感じ、理系?文系?あるいは学際的なジャンル?乱読乱聴時間である。
内容は分かりやすく、紐をたどるように次の場面が展開していく仕組み・・1日もあれば読める。そして指針も用意されており 愉しい。

神西さんの名前が懐かしく、その誤訳?も紹介されていたが・・明治大正昭和、まして世界中がネットで一瞬につながる現時点で(あの時)を語れないのは自明の理。よくぞ、先人はここまで歩んできたと感嘆するばかり。ツルゲーネフ、プーシキンはいまいち肌が合わなかったが、語学講座で番組内紹介でいろいろ教えられた料理,エセーニンは脳裏に焼き付いている・・出来れば彼の子興味にも足を踏み入れたかった。

奈倉さんは文字を通しての【間をつなぐ】職人・・してみると音楽、料理、手工業・・みな同類の匂いがした。

米倉さんの夭逝が哀しい。

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2023年06月30日

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