あらすじ
ロシア文学の研究者であり翻訳者である著者が、自身の留学体験や文芸翻訳の実例をふまえながら、他言語に身をゆだねる魅力や迷いや醍醐味について語り届ける。「異文化」の概念を解きほぐしながら、読書体験という魔法を翻訳することの奥深さを読者と一緒に“クエスト方式”で考える。読書の溢れんばかりの喜びに満ちた一冊。(装画:小林マキ)
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Posted by ブクログ
あなたとわたしをつなぐことばの魔法。
「はじめに」を読むと何の本なのかわからなくなって面食らう。読み始めて、ああ、言語学習の本かな、と思う。そしてだんだんと翻訳の話だとわかってくる。著者の読書体験に似たものを自分も持っているし、言語学を学んで翻訳を面白く思っていたこともあるので、楽しく読めた。
本を読む文化というのは、共通するところと違うところを見つけて喜ぶ文化だと思う。本著でも紹介されていたように、生活習慣の細かいところや植物の名前などは何を指す言葉かわかってもどういう意味があるのかわからないこともある。原語で読んだ感覚まで伝えようとするのであれば、翻訳の腕の見せ所となる。子どもの頃に読んだ「りんご酒」もロマンティックな思い出だし、シードルを後から知ったのも(そして飲んだのも)新たな出会いとして嬉しかった。
さまざまな言葉で書かれた本に出会える環境はとても幸せなこと。そして平和なこと。ありがたいこと。これからもたくさんの翻訳に出会いたい。