スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのレビュー一覧
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『嘘は言うまい、この道を進んでいけるという自信はなかった。しまいまで行くことができるのか。やめてしまいたい、脇道にはずれてしまいたい、というような迷いや不安の時があったがもうやめられなかった。悪というものにとりつかれてしまっていた。何か理解できるのではと覗き込んでしまったら、それは底なしの淵だったのだ』―『思い出したくない』
世の中がこれまでになくきな臭くなっている中、読んでおかなければならない一冊と思って手に取る。スヴェトラーナ・アレクシェーヴィナはウクライナ人の母とベラルーシ人の父の下に生まれた作家。そんな出自は旧ソビエト連邦時代であれば恐らく「京都生まれの母親と大阪生まれの父の下に生ま -
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これが戦争の、人間のリアル
憎しみが勝ってしまうと人はどこまでも残虐になれるんだなと思ったし、優しさも併せ持っているのが人間なんだと思った
いいとか悪いとかじゃなくて
極限状態ではこうなんだと思う
だから戦争は嫌だ、どんなに腹がたっても会話で解決したいな
戦後、心を閉ざした女性たちの心を開いて会話を引き出した著者はすごい人だと思う
聞くのも辛いと思うし、寄り添い続けるのも難しかったのではないかと思う
国のために戦い
戦争から帰った女性は差別されたり
戦場でも女の子はやっぱり女の子で
かわいく思われたいとか女性らしくありたいと思う気持ち
戦争中でも結婚式やほっこりするような一幕もあ -
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ネタバレまず女性が戦争に行っていた事、そしてそれは看護士などもいたが狙撃兵もいたという事。読んでいてここら辺のところがえっ?どういう事?女性が?と頭がついていかなかった。タイトルを見て戦争って女性にとっては大変な事であり、そういう大変だ云々と言う事が女性の視点で書いてあるのかと思っていたから。私は何も知らなかったんだなと思う。まあ確かに大変な事ではあるのだけどそんな言葉で表現するのはあまりに軽すぎる。
映像化したら目をそらしたくなるであろう場面も。行動も精神も何もかも無茶苦茶になるのが戦争なんだなとあらためて思う。
これを読んで、戦争に行った人が戦争を語らない、固く口を閉ざしてしまって、という理由がや -
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ネタバレ 無料版購入済み
丁寧なマンガ化
この事故の対応でソ連崩壊、早まっただろうと聞いています。消防隊の人たちが消火活動をしなければ、もっと被害が拡大していましたので、そもそもの原子力発電所に無理があります。放射性廃物の管理もできないというのに、原子力ムラは極めて無責任なままです。
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ネタバレ気になったいくつかを書いてみる。
『その人は黙ってしまったわ。顔から微笑みが消えたの。何だか恥ずかしそうなばつが悪いって顔して。もう若くない人だった……その人は分かっていたの、私を送り出す先がどういうところか……』p106
これはチョコレートをカバンいっぱいに詰め込んだ女性の話。軍事委員の人がカバンに何が入っているかを知って、笑えなくなったという部分。戦争を知らない少女たちが戦争に向かっていく話もこれだけではない。
『わたしは思いました、おかあさんは私のことを結婚するには若すぎるけど、戦争には若すぎないって思ったのね、と。私の大好きなおかあさん』p202
結婚に反対されて、早く大人になりた -
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ネタバレ1986年のチェルノブイリの悲劇は1989年のソ連邦の開放、東西ドイツの統合。そしてEUの結成で過去となった。
あのお祭り騒ぎを覚えている一人として、どこの国の人間でも、誰であっても都合の悪い過去とは向き合いたくない、覚えていたくないのだと改めて思った。
特に当事者以外のほとんどの人間は。
魂を搾り出すような叫びに、広島も長崎も、福島ですら忘れている日本人を思う。
あの悲劇の場所が戦場になっている事を考える。
そしてプーチンがいつでも核兵器を使う準備があると言う言葉に、人は愚かでしかいられないのかと考えてしまう。
原作と出会い、コミカライズとなるまで、私は多くのことを忘れていた一人だ -
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社会人になってから、近くに置いておきたい本の1つ。
アフガンってこんなに悲惨やったんやというのと、よくもこれを出版したなというのが率直な感想。重い内容なのは間違いないのに、どんどんと引き込まれる。情景が鮮やかに浮かび情が湧きながらも、どこかでそれを冷静に落とし込みながら、アフガン帰還兵の証言と裁判に触れることができた。「戦争は女の顔をしていない」とはまた別の衝撃で、これは、本当に今のロシアがやっていることと見事に重なる。アレクシェーヴィチのようなインタビュアー・伝え手になりたい。自分の原点を思い出したような気持ちにもなって。さて、がんばるか。 -
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とてもではないが、すぐに読み終えることができる本ではないと思った。いったい、この時代に生まれて、(女として)生きるとはどういうことだったのかということが、無数の人たちの語りによって眼前に突きつけられる。戦争、日常への帰還。戦争に行っていた女性への眼差し。捕虜だった兵士への祖国の仕打ち。無数の個人史が表すのは、戦争の勝利ではなく、戦争に巻き込まれ生きた(死んだ)人たちがいた、という単なる事実であり、だからこそ、「戦争」「国家」「社会体制」「時代」というものへの内省を迫るような、静かな怒りや悲しみ、威厳が一つ一つの語りから感じられた。
「夏になると、今にも戦争が始まるような気がするんだよ。太陽が照 -
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第二次世界大戦でソ連軍に従軍した女性たちの生の声が収録されている。
まず、女性が兵士として戦地に行っていたということに驚いた。彼女たちは、自ら志願して兵役を務めた。
確かに国を守り立ちという気持ちに男女差はないだろう。
けれど、戦後の彼らの処遇は男性とは違ったようだ。
勲章をもらった男性は英雄視され、女性は戦争に行った女と非難される。
読むに堪えない箇所に、何度か読み進めるのを躊躇したが、それは戦争の本来の残酷な姿を真摯に書いているからこそだ。だから多くの人に読まれるべき本だと思う。
夫を戦争で亡くした女性が、帰ってきたら大切にしたのにと語っていたのを読んで、日々感謝して夫を大切にしなければと -
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戦争しても戦争しても、なお戦争を止めないこの人間の世界に訴えかけるものがあります。
描かれているのが独ソ戦ということもあり、現在のウクライナ情勢と重なります。酷な内容ながらも知っておかなければならない、同じ地球での惨状に胸が痛みつつ、ページをめくる手は止まりませんでした。
本書はコミックなので手に取りやすいし、状況や内容がわかりやすかったですしね。
自由がないどころか、殺戮が仕事という戦時下の異常さ。
ショックだったのが、毎月の生理に対して、男性の将校たちはまったく理解がないこと。
彼女たちが歩いた後、経血がポタポタ落ちてしまったあとが残るんです。
下着の用意もしてもらえず、血が乾いた