あらすじ
第二次世界大戦の真実を明らかにする……
500人以上の従軍女性を取材し、その内容から出版を拒否され続けた、ノーベル文学賞受賞作家の主著。『狼と香辛料』小梅けいとによるコミカライズ、第4巻が登場。
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吊橋よりはるかに危険な戦場で若い男女がいて、“恋愛”が発生するのは必然。男子二十歳前後、女子はもっと若くティーンで数分間先に死が迫っている(かもしれない)現場で「生きている証」を求め/甘い話はないが、ことに悲惨なのは「前線から逃げたために、『もうしませんから』と泣きながら叫んでも公開銃殺された大学生」と「映画館にスターリンが臨席しているとわかると満場の拍手が10分間鳴り止まなかった(余所では拍手を止める鐘があったらしい)両親も兄も『粛清』された女の子も熱狂した」忠誠心は絶対。ツァーに代替りして生殺を握る神(のような独裁者)スターリン。レーニンは「親父」と呼ばれたが、彼は熱望してもそう呼ばれなかった。
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第二次世界大戦時のロシアの女性兵士の証言文学を原作とした漫画の第4巻。
恋は戦時中の唯一の個人的な出来事であり誰もが率直には語りたがらなかったという話が特に印象に残っている。女性兵士は戦後、従軍しなかった女性からアバズレをみるような侮蔑にさらされたからだ。
たとえば第20話の元女性射撃兵の証言。戦後、共同住宅に住んでいる女性からこう言われる。「戦地ではたくさんの男と寝たんでしょ?」。
戦場は基本的に男の職場である。男たちは女に飢えている。そんな環境に志願していくのは男漁りをするために違いない。そんな偏見をもとに差別されたのが、義憤に燃えて国に精魂を捧げた元女性兵士たちだ。現在よりも潔癖な恋愛観の時代だったことも中傷に拍車をかけたのかもしれない。
このようなやるせない仕打ちを受けては率直に恋愛について語りたがらないのも当然だろう。障害者のうち高齢の人ほど障害を秘匿したがるのに似ている。ハンデが露見したら露骨に差別されるのをリアルタイムで目撃あるいは経験してきたのだから。元女性兵士たちは大戦後、第二の戦争を戦ってきたのだと言えるだろう。
それでも一緒に戦った男が理解してくれればまだいい。元女性射撃兵は復員してきた司令官と結婚するも、1年経って男の方は不倫相手のもとへ出ていった。「彼女は香水の匂いがするんだ 君は軍靴と巻布の臭いだからな」と言って。それ以来彼女は天涯孤独の身として暮らしている。国のために時間と若さを差し出した彼女にいったい何が残ったというのだろう。
以上のように、本書では国家の統制によって戦争が青春にならざるを得なくなった人々──当人たちは自らの意思で志願したと思っている──の悲哀がそこかしこに散りばめられている。
当局に逮捕された家族の返ってこなかった元看護婦、戦時中の極限状況で落ちた恋が今も焼き付いている元衛生指導員、戦争時の悪夢に毎晩襲われる元斥候。
本来は自分の好きなことや好きな人に自身の時間と情熱を向ける権利があるはずだった人々の、誰一人として同じ話のない、歴史に埋もれて残らなかったかもしれない苦悩の合唱がここにはある。
いくら国家に愛と忠節を示しても、国家は彼女たちに報いてはくれなかった。きっと国家にとっては意味があったのだろう。しかしいったい、彼女たちはなんのために戦っていたのだろうか。読み終わったあとはひたすら沈痛の念が胸を渦巻いた。
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冒頭の過去の日記を読む、そこを考える。
彼女は今、過去をどこで振り返っているのか?
語られる多くの戦争の先に、また戦争があった。絶望はたやすいが、私達はまずこの愚かしい戦いを終わらせなくてはならない。
そこにも多くの顔のない人々がいる。
私は過去に戻ってはならない。
だからこそ、読んでいた胸が痛む。
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戦時中の国が本巻のテーマ?慰安婦的に女性が使われていたなんて。理容師さん、通信士さんのエピソードも感慨深い。
p.26 私たちの歴史を書くためには、あんたみたいな人が何百人も必要よ。私たちの苦しみを全部書いて表すには。私らの数え切れない涙の粒を書き止めるには。
p.130 あの人たちが信じたのは、スターリンでも0人でもなく、共産主義と言う思想です。人間の顔をした社会主義。すべてのものにとっての幸せを一人一人の幸せを。
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4巻目、読み終わりました。
戦地に赴いた女性の恋のお話が多かったです。
キス=結婚とされていた時代に恋のお話は軽々しく口にはできない。
戦争が終わってからも心の中にしまっておいたのだろうと思います。
『生涯の恋なの 後悔してないわ』と語ってくれた女性の戦地妻のストーリーが印象に残りました。
それにしても戦時中に半分は餓死ら半分は戦死した村があったなんて、、、戦争ってなんのためにもならないと実感しました。
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2-4巻をまとめ読み。読みながら思ったのは、これはちょっと、一気に読むには重すぎるな、と。凄いハイレベルで漫画化されていて、かつ絶妙な読み易さに調整されているから何とかなったけど、なかなかの読書体験でした。
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過去の戦争体験を漫画で表現している作品の4巻。ソビエトとナチスドイツの戦争に関わる女性たちの証言から当時を再現している。
現実の世界では戦争状態になっているウクライナとロシアだが、当時は同じ国だったことがわかる。クリミアを併合して以来、力づくでロシアは国土を拡大している。
本作品で伝えたい本質が現実世界で生かされていないと感じてしまう。
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原作を読んでるから、毎回「絵が入るだけでここまで印象がかわるものか」と驚く。今回は人間臭いエピソードが多いな。中には原作で数行というものもあったはず。
巻末には速水螺旋人の説明が入ってるけど、今回はウクライナがらみが多い。ウクライナやロシアの歴史的成り立ちが(速水氏としては)簡単に説明されてるので、読むと面白い。
何より萌えミリが流行り始めたときに、それ系オタクにこの原作を「マスト読め」と勧めたのが彼だしなあ。
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原作は当然ながら、ロシアによるウクライナ侵攻の前に書かれている。しかし、今起きていることを無視して読むことはできない。今巻の最初の方に、ウクライナ人のエピソードが出てくる、そして巻末のコラムも、ウクライナの歴史が書いてある。そして何より、作中に登場する「独裁者」スターリンがプーチン大統領とダブって見えてしょうがない。
重い
女たちの戦争の話。
そして、やはり教育とは恐ろしいと思いました。
晩年になり、語るなかでも
戦争は間違っていなかった
という言葉や思いを感じました。
そのことに、とても苦しく思いました。
Posted by ブクログ
当たり前といえば当たり前だけど、戦場でも男女が居たら普通に恋愛が始まるという話は興味深かった。禁止されててもする人はする。
前巻でも疑問だったけど、戦場帰りの女性がそうじゃない女性から白い目で見られるのはどういうことなのだろう。
Posted by ブクログ
「もし戦争で恋に落ちなかったら私は生き延びられなかったでしょう」
「恋の気持ちが救ってくれていました。私を救ってくれたのは恋です」
「戦争は私の一番いい時期だったの。だってあの時は恋をして幸せだったんですもの」
戦争という凄惨な状況下においても、恋はこれほどの力をもつのかと目を瞠るような証言だった。
著者であるスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが〈人間の生涯と同じ長さの本を書いているのだ〉と綴るほど、誰に聞いても一つとして同じ証言はなく、そしてそのどれもが現実にあったことなのだという事実に打ちのめされる思いがする。