柳広司のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ各話にはそこまで繋がりはなく、結城中佐と「死ぬな、殺すな、とらわれるな。」を戒律として叩き込まれたスパイ養成学校の生徒達の活動の話。
「何かにとらわれて生きることは容易だ。だが、それは自分の目で世界を見る責任を放棄することだ。自分自身であることを放棄することだ
の一文にグッときた。
とらわれないことが容易でないことを思わされたのと、自分の目で世界を見られる人間でありたいと思った。
調べれば答えが見つかったり、何かに追従したり括ったりすることで考えることを放棄しがち現代だけど、その中でも自分自身から出てきた言葉の重みというものを度々痛感させられる。
また自分がブレてしまいそうな時に読み返し -
Posted by ブクログ
テーマは微妙に重いが柳さん特有のエスプリの効いた軽快な語り口は非常に読みやすかった。この物語の登場人物達は一部、思想的に尖った人もいるが政治形態に拘ること無く、人間が人間らしく生きる事を求めており、好感が持てる。ひるがえって、現代の様相を考えてみると体制側も改善を求める側も社会の複雑化に伴い、背後に広がる複雑な利害関係を勘ぐってしまう有様だ。社会の複雑化とそれが可視化されてしまった事で優柔不断な私はモノゴトの白黒を付けることが出来なくなった。
まあ、自分でも何を言っているか分からなくなったが柳さんの世の中に対するスタンスは、年を取って保守的になった老人でも受け入れられるバランスが取れたものだと -
Posted by ブクログ
新聞でいちおしミステリーとして紹介されていたので、柳広司作品を初読み。
時は大正時代。新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。『文章に関する依頼であれば、何でも引き受けます』という変わった看板を掲げる会社『売文社』を舞台に、数々の難事件を解決する4編からなる連作短編集。
登場人物に堺利彦、大杉栄、荒畑寒村など実在の社会主義者が出てくるが、その辺の知識は無くてもキャラクターとして魅力的に描かれているので十分楽しめた。
2話目に暗号解読の話があって普通に読み進めてしまったんだけど、もう少しじっくり解読に取り組めば良かったと後悔。ちゃんと考えれば解読できたかもな〜 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前巻が不穏な〆だったので今巻が「誤算」という章題で始まっていてドキーッとしちゃった。パラダイスもロストしてるし。
しかし不意のアクシデントまで対応してこそプロのスパイである…とのことで、戦争が激化していくなかでも変わらずスパイとして生き続ける者と人間として死ぬ者の差があらわになっていく。
いったいどちらが幸せなんだろうな…みたいなことを考えたりした。幸せを求めるような者はスパイではないのか…己の能力の限界を試す者は人間ではないのか…
すっかりお決まりの口上のように語られるD機関の入試問題は、もはや歌舞伎の見栄のようでヨッ待ってました!という気分になるし、本当にみんなあの試験をクリアしたんだな -
Posted by ブクログ
推理小説としてより反戦小説として満足しました。
殺人事件の犯人やトリックはかなりわかりやすくて少し物足りなかったですが、第二次世界大戦直後の日本における天皇制、原爆投下、戦争の責任の所在に対する様々な立場の人の考えは読み応えがありました。
主人公がニュージーランド人の探偵であることで、日本人たちともアメリカの軍人たちとも違う(無論西洋よりではあるけれど)一歩引いたところから見ているのが独特で良かったと思います。
しかし彼も相棒と同じく戦争で精神的ダメージを負った元軍人であるため、幻想的な悪夢を見ていて、結局この話のどこまでが真実なのかはよくわからないところが面白かったです。
探偵と囚人のバディ -
Posted by ブクログ
時は大正、天皇を弑する計画が立てられたとして社会主義者ら12名が処刑される「幸徳事件」が起き、社会主義者が極悪人扱いされていた頃、主人公がやくざ者に襲われて死にかけていたところを巷で話題の社会主義者が助けるところから物語は始まる。
未だに腫れ物扱いされる社会主義・社会主義者だが、主人公を助けた売文社の社長・堺利彦が掲げる社会主義は、現在の私たちのイメージとは異なっている。
当初は怪訝な態度を取っていた主人公も、彼らと一緒に過ごしていくうちに「彼らがやろうとしている事の方が正しいのではないか」と心を変えていく
私も、社会情勢に応じて本気で社会の変革を目指していた当時の社会主義は悪くないのではない -
Posted by ブクログ
労働環境の改善を工場主に訴えようと、従業員たちの代表に祭り上げられたぼくは、工場主が雇ったヤクザ者たちに半殺しにされて路地に放り込まれた。
倒れていたぼくを発見し、助けてくれたのが堺利彦(さかい としひこ)を代表とする「売文社(ばいぶんしゃ)」の面々だった。
堺は、うちで働けばいいと、二階に住み込みの部屋も与えてくれた。
「売文社」は文章に関することなら一枚五十銭で何でも引き受ける。今度「人生相談、探偵調査」も引き受けたいと堺。
ぼくはそこで、戦争成金と政治家の癒着を暴く場面を見たり、暗号を解いたり、女装させられたり、そして生まれて初めて裁判の傍聴もした。
堺利彦(さかい としひこ)をはじめ