あらすじ
新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。
文章に関する依頼、何でも引き受けます。
どんな無理難題もペン一本で解決してみせる〝売文社″のもとには、
今日も不思議な依頼が持ち込まれて――。
ある日、暴漢に襲われた“ぼく”を救ってくれた風変りな人々。彼らは「文章に関する依頼であれば、何でも引き受けます」という変わった看板を掲げる会社――その名も「売文社」の人たちだった。さらに社長の堺利彦さんを始め、この会社の人間は皆が皆、世間が極悪人と呼ぶ社会主義者だという。そんな怪しい集団を信じていいのか? 悩む“ぼく”に対して、堺さんはある方法で暴漢を退治してやると持ち掛けるが……。
暗号解読ミッション、人攫いグループの調査……。社に持ち込まれる数々の事件を、「売文社一味」はペンの力で解決する!
世の不条理に知恵とユーモアで立ち向かえ。驚きと感動が詰まった珠玉の推理録!
感情タグBEST3
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語り手の職工さん以外はほぼ実在した人物であることを途中で気づいた。恥ずかしながら、勉強不足で売文社を知らなかったため、ネットで調べつつ読んだ。というより、オーディブルなので聴いた。
ほのぼのした短編集だが、日本の暗黒の時代を背景としている。現在の社会主義者とはイメージが違い、普通の生活をするために戦っていた方達だと思う。
その時代で正義の基準が異なるため、何が正しくて何が間違っているのか、しっかり自分の頭で考えよう。
Posted by ブクログ
堺さん、粋だ。そしてそれを支える存在の1人として登場する山崎さんも、主人公にローマ字を教えてくれた荒畑さんも、みんな粋だ。
ラストシーンの堺さんいわくの「戦争や搾取で金持ちになったとて、ちっとも偉くない」「みんなで富を分かち合い、戦争のない世の中になる方がよほどいい」「そんな社会を実現するためにどうしたらいいのか、私たちには考えることができる」「黙っていたら、金持ち連中にとってますます都合いい世の中になるだけ」「そんな社会が嫌だということは、命懸けの道楽」「死ぬときに「よく生きた」と思えるなら、それは道楽をやりきった人生」ーーとのこと。ほんとそのとおり。戦争や搾取に加担している人、非難しない人たちに聞かせなければいけない言葉だ。
世間に一石を投じたいと思っている出版人、表現者の端くれとしてとして…と思って、たぶんジョーカーゲーム以来、何十年ぶりかで手に取った。読んでよかった!
Posted by ブクログ
第一次大戦に向かう頃の日本の話。
社会主義にかかわる話。
ふつうの小説のつもりで読んでいたけど、
日本史で聞いた名前がチラホラでてきて
おや?っとなった。
ノンフィクションではない
と最後に書かれていたので、
主人公は架空の人物で
時代背景は事実に即したものなのだろう。
最近、第二次大戦の本を読んでいたので
そこに至る日本の流れに興味があったが
明治維新から日清、日露、第一次大戦への
国内の様子が描かれていて勉強になった。
官憲がいた時代、社会主義も危険視されていたが
民主主義もまだまだで
今の世の中からしたら想像できないくらい
恣意的に逮捕されたりしていたんだなと感じた。
Posted by ブクログ
オーディブル先行作品だそうで、
ちょっと読みづらい?と感じたのは、そのせいかも。
明治時代が舞台だけれど、昔の話って感じかしない。
むしろ今の時代への警告を大いにはらんでいると感じた。考えさせられた。
多角的に物事を見ること。
大切だけど難しいなあ。
Posted by ブクログ
大正時代を舞台に、実在したとされるライター集団「売文社」のもとに集まる様々な事件を解決していくミステリ短編集。程よく効いた風刺と語り口の軽快さが小気味の良くサクッと楽しめる一編だった。
Posted by ブクログ
面白かった!
その時代の、感覚や雰囲気に触れることができるって素晴らしい。今の普通が普通ではなかった時代がある。世の中が変わってきたことを知ることができる。
作家はすごい
Posted by ブクログ
オーディブルで。
聴いていて独特の文体であるように感じたが、慣れると笑えるシーンも多く楽しめた。
歴史的知識がなさすぎて、どこまでがフィクションなのかわからなかった、、、
モデルになった事業体が実際にあったのか?
Posted by ブクログ
目次
・合言葉は”パンとペン”
・へちまの花は皮となるか実となるか
・乙女主義呼ぶ時なり世なり怪人大作戦
・小さき旗上げ、来(きた)れデモクラシー
語り手のぼくは織物工場で働いていたが、工場主が変わり、労働時間が長くなったにもかかわらず賃金が下がったことなど、雇用状況の不満を訴えようとして、逆にお抱えヤクザにぼこぼこにされる。
そこを助けてくれたのが、堺利彦をはじめとする売文社の面々だ。
次の仕事が見つかるまで、売文社で半分居候のようになりながら、世の中のことをいろいろと勉強していく。
世間や政府やマスコミが言うことが無条件で正しいのではなく、自分の目で見て、角度を変えて見直して、本当にそれでいいのかを考える堺利彦や大杉栄たち。
もちろんノンフィクションではないけれど、彼らの業績は史実に沿っている(多分、わりと)。
社会主義者よりももっと危険視されていた民主主義者。
ところが、第一次世界大戦に紛れ込んで利益を得るために日本政府が掲げたのが「デモクラシーを守る戦い」。
これによって日本政府は、民主主義者を弾圧することはできなくなった。建前上は。
息苦しくなっていく世の中で、24時間警察の監視下にあってなお、明るく飄々と生きる彼ら。
”社会主義の本当の担い手は、きみたちだ。(中略)労働者や小作人が主体となって、自分たちが望ましい社会へと変えていくのが本当の意味での社会主義だよ。(中略)僕たちがやっているのは本物の社会主義じゃない、所詮はインテリの道楽だ。(中略)道楽は道楽でも、命懸けの道楽もあるさ」
最後、ぼくは就職が決まって売文社を去るのだが、その後について書かれることがあるかもしれないらしい。
大杉栄のその後は知っているから、読みたいような読みたくないような…。
Posted by ブクログ
大正デモクラシーの時期の堺利彦ら社会主義たちの時代に立ち向かいつつもおおらかに不屈に生きてきたことを描き出した良作。
どんな無理難題の文書依頼もペン一本で解決してみせる実在した堺利彦と「売文社」一味″をめぐる物語。
とかく暗く描かれがち思える題材を
ユーモアたっぷりに描き出し生き生きとした人間として描き出していて楽しめました。
Posted by ブクログ
この作家の書く大正時代からの話はジョーカーゲームを始めほぼ好きな作品ばかりで今回も裁判の話以外楽しく、そして編集長に振り回されながら時代を駆け巡るがごとく自分も一緒にいるような感覚に久々にこの世界に入ったと小学生の時の物語に入り込んでいた読書を思い出す。
最近戦争の話ばかりだったので心が枯渇していたのかも。ジョーカーゲームを再読したくなった。
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ジョーカー・ゲームが非常に面白かった印象の筆者は柳広司さん。今回は、少し時間を遡戦時中の日本が設定、なんでも文章にすることであればおまか絵sを。さて、その中で、いくつかの事件が起きる。そこに巻き込まれた、何も知らない男が主人公となり、ちょっとずつ、その能力を発揮し始める。というストーリーである。
短編型でまとめているが、その細部はまっすに全体の物語の方向性に合う形に変尿していくところが、非常に面白い。
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3.8くらい。
「合言葉は“パンとペン”」
売文社にどう流れ着いて、売文社がどう問題を解決するか、その手口を見せる話。
オーディブルに先行した作品のせいか、音で聞くと良さそうな構成となっている。
「へちまの花は皮となるか実となるか」
暗号解読の話。荒畑寒村と大杉栄の紹介がメインでもある。
「乙女主義呼ぶ時なり世なり怪人大作戦」
堺の娘の真柄も史実では活躍した人らしく、なるほどなという感じ。青踏とも関わりがあったのが面白い。
事件とその解決も簡単なものだけど、当時の女性が置かれた状況を端的に示していて良いエピソードだった。
「小さき旗上げ、来たれデモクラシー」
山崎今朝弥という弁護士の紹介。立て板に水でさらさらと弁論を駆使するのが心地よくて面白かった。
前に読んだ「アンブレイカブル」よりも話は軽くて、けれど思想はたっぷり入ってる感じ。
ジョカゲを期待するとがっかりすると思う。ジョカゲよりめちゃくちゃ軽い。視点が10代の何もわからない青年のせいもあると思う。
明治時代の社会主義とはどんな思想でどんな人間がいて、どんな世相だったか知る入門としては良かった。
ちょっと気になったのが、大逆事件で粛清され、大っぴらに活動出来ない雰囲気がありながら、仕事をしつつ、けれど司法の公平性や警察の横暴さが控えめであることを信用している感じに違和感。
第一次世界大戦中であり、大逆事件の処刑が1911年1月で、それから4年後だから、1915年の話か。
治安維持法と普通選挙法の1925年までこんな雰囲気だったのかな、と想像。
Posted by ブクログ
明治を舞台に一つの主義主張を持った人たちが権力に対してペンを取る。大手のA新聞社もまだまだ本来の力を見せていた時代。貧しい青年を通して、権力と民衆の闘争を軽妙に描いた作品だが、自作があれば権力者の横暴と残虐さを描いて、それが今も続いている点を書いて欲しいな。
Posted by ブクログ
テーマは微妙に重いが柳さん特有のエスプリの効いた軽快な語り口は非常に読みやすかった。この物語の登場人物達は一部、思想的に尖った人もいるが政治形態に拘ること無く、人間が人間らしく生きる事を求めており、好感が持てる。ひるがえって、現代の様相を考えてみると体制側も改善を求める側も社会の複雑化に伴い、背後に広がる複雑な利害関係を勘ぐってしまう有様だ。社会の複雑化とそれが可視化されてしまった事で優柔不断な私はモノゴトの白黒を付けることが出来なくなった。
まあ、自分でも何を言っているか分からなくなったが柳さんの世の中に対するスタンスは、年を取って保守的になった老人でも受け入れられるバランスが取れたものだと思う。
Posted by ブクログ
新聞でいちおしミステリーとして紹介されていたので、柳広司作品を初読み。
時は大正時代。新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。『文章に関する依頼であれば、何でも引き受けます』という変わった看板を掲げる会社『売文社』を舞台に、数々の難事件を解決する4編からなる連作短編集。
登場人物に堺利彦、大杉栄、荒畑寒村など実在の社会主義者が出てくるが、その辺の知識は無くてもキャラクターとして魅力的に描かれているので十分楽しめた。
2話目に暗号解読の話があって普通に読み進めてしまったんだけど、もう少しじっくり解読に取り組めば良かったと後悔。ちゃんと考えれば解読できたかもな〜
Posted by ブクログ
SL 2025.4.29-2025.4.30
大正時代の実在の社会主義者たちにまつわるお話。大逆事件後のことなのに当時の実際の雰囲気とはかけ離れているくらい陽気な彼ら。それでも彼らの主義主張は真性のものだし、やはり社会と闘ったのも事実。陰鬱に暗くなることなく当時の社会情勢をうまく描いている。
Posted by ブクログ
暴漢に襲われた主人公が「売文社」の面々に救われたことを機に彼らと関わっていく。堺利彦、大杉栄など日本史を勉強した人なら目を引く人物達が生き生きと自分の行き方を通す姿が読んでいて気持ちが良い。特に、最後の裁判の展開が痛快だった。民主主義の意味が問われる今の時代だからこそ、彼らの考え方に耳を傾けてみる時間も必要かもしれないな、と思った。売文社のメンバーと主人公のこれからの物語にまた出会いたい。
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以前読んだ「太平洋食堂」とも連なる作品なのか、その時代の社会主義者が集っている作品。
波乱万丈の実在の人物達が一時代でもこんなに楽しげに暮らせてたら、と思います。
「大いに逆さま事件」と名付けられた、幸徳事件。
その時の傷を持ちながらも前に進んで行くのは、現代よりももっと不安定で、生活は自分自身で切り拓く逞しさがあったのでしょう。
最終話の法廷に登場した弁護士は最高です。これだけでスピンオフが欲しいですね。
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シリーズ化できそうな構成
登場する大杉たちをはじめとした活動家たちのその後を多少知っている現代の我々視点から読むと、売文社に満ちている志の下に集まった人たちならではのカラリとした心地よい空気感が、刹那的なきらめきに感じてしまい、複雑だった。
Posted by ブクログ
時は大正、天皇を弑する計画が立てられたとして社会主義者ら12名が処刑される「幸徳事件」が起き、社会主義者が極悪人扱いされていた頃、主人公がやくざ者に襲われて死にかけていたところを巷で話題の社会主義者が助けるところから物語は始まる。
未だに腫れ物扱いされる社会主義・社会主義者だが、主人公を助けた売文社の社長・堺利彦が掲げる社会主義は、現在の私たちのイメージとは異なっている。
当初は怪訝な態度を取っていた主人公も、彼らと一緒に過ごしていくうちに「彼らがやろうとしている事の方が正しいのではないか」と心を変えていく
私も、社会情勢に応じて本気で社会の変革を目指していた当時の社会主義は悪くないのではないか、と本書を読んで思った
話は大正デモクラシーに差し掛かって締め括られる
最後は吉野作造が「民本主義」と訳したデモクラシーの達成・護持に向けて、民衆が自らの意思で立ち向かっていく希望をもたせる描写で感動した
浅学ながら知らなかったのだけど、本書に登場する社会主義者らと彼らの「拠り所」である売文社は実際に当時存在していたらしく、その点も踏まえて読むとまた一味違った感じを覚えるだろう
Posted by ブクログ
大正の初めに社会主義者の集まりで会った売文社の物語。
「太平洋食堂」から続く社会主義者のシリーズとなるのなか。
登場人物は史実の人たちばかりで語りの「ぼく」だけが創作の人物かな。
悲哀もある中でわちゃわちゃとした社会主義者たちの活動が面白いのは大正ロマンでもある。
社会主義者たちのこののちの話はさらに厳しくなっていくので、もしかしたら別の作品で語られるのかもしれない。
大杉栄と伊藤野依の話は村山由佳の『風よ あらしよ』が詳しいです。
Posted by ブクログ
世紀の冤罪事件(と私も思うしこの本の中でもそういう扱い)大逆事件が起こるような暗い暗い時代を、ユーモアたっぷりに面白おかしく書いた作品。
織物工場で真面目に働いていた僕は、仲間に裏切られ、ヤクザものに痛めつけられ路上に放り出される。そこを通りかかり、助けてくれたのが、売文社社長である堺利彦(実在の人物です)とその一味?の面々。社会主義者として官憲に目をつけられながらも、明るく自由に?世の中を変えようとする人々を見るうち、社会主義者に対する印象がどんどん変わっていく。
暗号を解く、卑劣な工場主と結びついた権力者のうらをかく、人買いから女性を守る、など、痛快なシーンも多く、暗い時代の事件を、暗くならずに読み終えられたのは良かった。
Posted by ブクログ
導入が易しく、読みやすい。
パンの会って、宮内悠介さんの著書で読んだな…と気づき、史実も結構入ってることに思い至る。
ただ、不勉強なのでWikipediaとにらめっこで、詳しかったらもっと深く読めるんだろうなと少し残念。
でも、詳しくなくても十分面白い。
最後の裁判での山崎弁護士の答弁のシーンを最も描きたかったのだろうか。
Audibleのほうも是非聞いてみたいなあ。
Posted by ブクログ
ライトに読める連作短編。実在した組織なのに驚き。社会主義というと構えてしまうけど、理想とすべきことは現代の世の中にも言えることで、時代が変わっても日本って変わってないのかもしれないなぁと思ってしまった。
Posted by ブクログ
新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。
文章に関する依頼、何でも引き受けます。
どんな無理難題もペン一本で解決してみせる〝売文社″のもとには、
今日も不思議な依頼が持ち込まれて――。
面白かったです
Posted by ブクログ
(Ⅰ)《僕たちがやっているのは本物の社会主義じゃない、所詮はインテリの道楽だ》p.225。《命懸けの道楽もあるさ》p.227
(Ⅱ)痛めつけられたうえ職を失った「ぼく」は「売文社」という得体のしれない人びとに救ってもらったがそこは蛇蝎の如き社会主義者たちがたむろする巣窟だった/堺さんから暗号解読してみよと命じられて/売文社に出入りする女性たちが何か企んでいる? 偵察を命じられた「ぼく」はエライ目に遭う…/堺さんが警察に連れて行かれ、頼った弁護士「ハクシャクドノ」はとんでもない変人だった。彼が活躍する法定モノ。
(Ⅲ)「大正デモクラシー」というくらいだからこの時代はもっと自由でおおらかだと思っていましたが、時代背景は意外に重苦しい。でもそんななか売文社に集まる人びとはどこか楽しげで救われます。
■簡単な単語集
【荒畑寒村/あらはた・かんそん】売文社一味。いい人。「ぼく」にローマ字を教えてくれた。
【伊藤野枝/いとう・のえ】売文社に出入りしている女性。
【大杉栄/おおすぎ・さかえ】売文社一味。いくつもの外国語に堪能。誰にも遠慮しない。無政府主義者、無国家主義者。《社会主義なんて、大きらいだ!》p.65。《たとえ無政府主義社会が到来しても、なお反逆者でありつづけるのが本物の無政府主義者だ》p.67。どもりがあるがそれがさらに言葉の力を強めることにつながっている。
【小口みち子/おぐち・みちこ】売文社に出入りしている女性。明るく元気で江戸っ子気質。プロの美容師でもある。
【堺為子/さかい・ためこ】利彦の妻。
【堺利彦/さかい・としひこ】売文社の社長。謎解き好き。《僕たちは二種類のペンを持つ。生活のためのペンと、人助けのためのペンだ。》p.30。《しばらくは猫をかぶってやりすごす――というのも一つの手だ》p.60。
【堺真柄/さかい・まがら】利彦の娘。物語スタート時十二歳。外国の小説の登場人物であるマーガレットから取った名前。リボンが特徴。「ぼく」を救ってくれたがその後成長するにしたがってツンケンされるようになった。
【大逆事件】このお話の五年前に起こった。社会主義者が悪役となったきっかけでもある。売文社の面々は当時獄中にいたのでさすがに罪を被せることができず無事だった。もし外にいたらいっしょに死刑にされていたと思われる。世間で受け取られているのとはまったく逆のことが行われていたということで、ここでは「大いに逆さまの事件」と皮肉られている。
【社会主義者】悪の権化のように嫌われている。
【添田/そえだ】色白の少年。門番(玄関番)。
【添田啞蟬坊/そえだ・あぜんぼう】演歌師。添田少年の父。
【売文社】文を売る会社。文についての依頼はなんでもやる。「ペンを以てパンを求める」という意味でパンとペンが描かれたポンチ絵がトレードマーク。社員全員が社会主義者。
【パウリスタ】売文社御用達のカフェー。本格コーヒーの草分け。
【橋浦時雄/はしうら・ときお】売文社一味。二十四歳。
【橋浦はる子/はしうら・はるこ】時雄の妹。
【檜山/ひやま】売文社の小遣い。五十年輩の人のよさそうなおじさん。
【へちまの花】売文社が出している雑誌。
【メイゾン鴻ノ巣】日本にいち早く欧風文化をもちこんだハイカラな西洋料理店。「パンの会」も開催されていた。売文社女性陣の作戦会議が行われた。
【山崎今朝弥/やまざき・けさや】米国帰りの弁護士。自称「米国伯爵」て「ハクシャクドノ」と呼ばれている。売文社の特約執筆者の一人。真夏に褌一丁の真っ裸で、目鼻がわからないほど真っ黒に日焼けした男。豪快な変人。