あらすじ
新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。
文章に関する依頼、何でも引き受けます。
どんな無理難題もペン一本で解決してみせる〝売文社″のもとには、
今日も不思議な依頼が持ち込まれて――。
ある日、暴漢に襲われた“ぼく”を救ってくれた風変りな人々。彼らは「文章に関する依頼であれば、何でも引き受けます」という変わった看板を掲げる会社――その名も「売文社」の人たちだった。さらに社長の堺利彦さんを始め、この会社の人間は皆が皆、世間が極悪人と呼ぶ社会主義者だという。そんな怪しい集団を信じていいのか? 悩む“ぼく”に対して、堺さんはある方法で暴漢を退治してやると持ち掛けるが……。
暗号解読ミッション、人攫いグループの調査……。社に持ち込まれる数々の事件を、「売文社一味」はペンの力で解決する!
世の不条理に知恵とユーモアで立ち向かえ。驚きと感動が詰まった珠玉の推理録!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
大正時代に実在した人物たちを活躍させた、ミステリー。登場した「ぼく」には失礼なことだけれど大変楽しく読み終えた。
四話目の山崎弁護士の話は特に痛快!
こんな裁判ネタならもっともっと読みたい。
時代は暗く、人が人を裁き国が人を押さえつける時代だったとは言え、名もなき人たちはみな、いつも何かと戦っているということに時を超えて感銘してしまう。
Posted by ブクログ
3.8くらい。
「合言葉は“パンとペン”」
売文社にどう流れ着いて、売文社がどう問題を解決するか、その手口を見せる話。
オーディブルに先行した作品のせいか、音で聞くと良さそうな構成となっている。
「へちまの花は皮となるか実となるか」
暗号解読の話。荒畑寒村と大杉栄の紹介がメインでもある。
「乙女主義呼ぶ時なり世なり怪人大作戦」
堺の娘の真柄も史実では活躍した人らしく、なるほどなという感じ。青踏とも関わりがあったのが面白い。
事件とその解決も簡単なものだけど、当時の女性が置かれた状況を端的に示していて良いエピソードだった。
「小さき旗上げ、来たれデモクラシー」
山崎今朝弥という弁護士の紹介。立て板に水でさらさらと弁論を駆使するのが心地よくて面白かった。
前に読んだ「アンブレイカブル」よりも話は軽くて、けれど思想はたっぷり入ってる感じ。
ジョカゲを期待するとがっかりすると思う。ジョカゲよりめちゃくちゃ軽い。視点が10代の何もわからない青年のせいもあると思う。
明治時代の社会主義とはどんな思想でどんな人間がいて、どんな世相だったか知る入門としては良かった。
ちょっと気になったのが、大逆事件で粛清され、大っぴらに活動出来ない雰囲気がありながら、仕事をしつつ、けれど司法の公平性や警察の横暴さが控えめであることを信用している感じに違和感。
第一次世界大戦中であり、大逆事件の処刑が1911年1月で、それから4年後だから、1915年の話か。
治安維持法と普通選挙法の1925年までこんな雰囲気だったのかな、と想像。
Posted by ブクログ
【収録作品】
第一話 合い言葉は〝パンとペン〟
第二話 へちまの花は皮となるか実となるか
第三話 乙女主義呼ぶ時なり世なり怪人大作戦
第四話 小さき旗上げ、来れデモクラシー
ミステリ、という形を借りた、啓蒙書(といってしまうと敬遠する人もいるだろうが……)。
実在の人物をモデルにした物語は苦手なのだが、現代の不穏さを思うと、語れるうちに語っておくべきだ。そして、彼らが受けた不当な扱いを伝えるためには、彼らを描かなければならないわけで、納得である。
社会主義、共産主義というだけで毛嫌いする日本人の多いことに常々疑問を抱いてきたが、昨今では疑問ではすまない思いがある。
書き続けてくれる著者に感謝。