柳広司のレビュー一覧
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時は大正、天皇を弑する計画が立てられたとして社会主義者ら12名が処刑される「幸徳事件」が起き、社会主義者が極悪人扱いされていた頃、主人公がやくざ者に襲われて死にかけていたところを巷で話題の社会主義者が助けるところから物語は始まる。
未だに腫れ物扱いされる社会主義・社会主義者だが、主人公を助けた売文社の社長・堺利彦が掲げる社会主義は、現在の私たちのイメージとは異なっている。
当初は怪訝な態度を取っていた主人公も、彼らと一緒に過ごしていくうちに「彼らがやろうとしている事の方が正しいのではないか」と心を変えていく
私も、社会情勢に応じて本気で社会の変革を目指していた当時の社会主義は悪くないのではない -
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労働環境の改善を工場主に訴えようと、従業員たちの代表に祭り上げられたぼくは、工場主が雇ったヤクザ者たちに半殺しにされて路地に放り込まれた。
倒れていたぼくを発見し、助けてくれたのが堺利彦(さかい としひこ)を代表とする「売文社(ばいぶんしゃ)」の面々だった。
堺は、うちで働けばいいと、二階に住み込みの部屋も与えてくれた。
「売文社」は文章に関することなら一枚五十銭で何でも引き受ける。今度「人生相談、探偵調査」も引き受けたいと堺。
ぼくはそこで、戦争成金と政治家の癒着を暴く場面を見たり、暗号を解いたり、女装させられたり、そして生まれて初めて裁判の傍聴もした。
堺利彦(さかい としひこ)をはじめ -
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柳広司さん著「ダブルジョーカー」
「ジョーカーゲーム」シリーズの第二弾になる。今回の作品も5篇からなる「D機関」に纏わる連作短編集になるのだが各編が各々独立している為とても読みやすい。
前回読んだ「ジョーカーゲーム」と展開とスタイルは変わらず特に目立った変化を感じる事はなかった。
また5篇分の物語が追加されたという感じでもう少し変化を期待してしまった。
しかし舞台が帝国陸軍内の話であるが為に前作同様、薄暗い影が作品全体にかかっており非常に不穏感漂う作風。諜報という影の部分とその薄暗い作風が絶妙にマッチしていると感じた。
短編集の為、前作でも抱いた感想だが読み応えという点では薄く感じてしま -
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柳広司は、岩波書店の「機関誌」である『岩波』のレギュラーとしてエッセイを寄せている。それらのエッセイで激越な表現で示される彼のスタンスや内容には全く共感できないのだが、彼の小説は、敬意を払って読んでいる。ヒューマニズムと社会の束縛の桎梏に苦しむ心理を描くのがとても印象的。また、とてもクリアで平明な文体でありながら、登場人物の思考や感情がビビッドに立ち上がってくる。感銘を受ける現代日本の作家の一人だ。
本作では、小林多喜二や三木清が、語り手の視野の中に登場する。
現代の学校教育で、昭和前期の現代史をきちんと教わることは、ほぼ無い。よって、平均的な日本人は、自覚的に学ぼうとしない限り、治安維持法や -
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『ジョーカー・ゲーム』に続くD機関シリーズの二作目
(って、こんなシリーズ名がついているのかは知らないけれどなんとなくで書いてしまった……)
D機関という存在の特殊性ゆえに、どうしてもどんでん返しが当たり前のお話になってしまうのだけど、どんでん返しが当たり前になったうえでそこから更にどう楽しませるか、というのが徹底されていて面白かったです
この作品の話ではなく、例えば本の帯に「最後の一行まで油断できない」的な宣伝文句があるとちょっと構えて読んでしまうんですけど、『ダブル・ジョーカー』からはそんな紹介をされたとしてもそれでもなお楽しませてやるぞ!ってなもう一歩先を見据えた心意気を感じました
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ネタバレ〈ガラパゴス諸島連続殺人事件〉を名探偵ダーウィンが解決!?的な話です。
ただ単にトリックを推理するだけではなく〈進化論〉が絡んでくるのが面白いところです。
「わたしたちはこの世界について、まだ何一つ知らないのですよ」
某人気陰陽師(京●堂)を思い出してしまいました…。
「もしかするとわたしたちはすでに世界を変えてしまったのかもしれないのです…」
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コペルニクスの地動説、ニュートンの万有引力の法則、そしてダーウィンの進化論。
神や宗教が絶対だった時代に、世界の価値観を一変させた人たちの苦悩は計り知れないものがあります。
南海の孤島を舞台に描かれた好ミステリーでした。