柳広司のレビュー一覧
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柳広司さん著「ジョーカーゲーム」
初めて読む著者の作品。吉川英治文学新人賞と日本推理協会賞のW受賞作品。
観てはいないがアニメ化もされているとの事。
作品は帝国陸軍に組織されたスパイ養成機関「D機関」で繰り広げられる連作短編集。表紙の椅子に座った方が魔王こと結城中佐なのだろう、彼が組織し集めた精鋭達の物語が繰り広げられている。
非常に面白かった。自分にはスパイ物の作品というよりミステリー作品としての方が強い印象をうけた。
頭脳と能力とが研ぎ澄まされた精鋭達が作品内で躍動している。各編で主人公は変わるのだが結城中佐が主軸にいるため各編に統一性と一貫性が生まれていてとても読みやすい短編集だった -
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柳広司は、岩波書店の「機関誌」である『岩波』のレギュラーとしてエッセイを寄せている。それらのエッセイで激越な表現で示される彼のスタンスや内容には全く共感できないのだが、彼の小説は、敬意を払って読んでいる。ヒューマニズムと社会の束縛の桎梏に苦しむ心理を描くのがとても印象的。また、とてもクリアで平明な文体でありながら、登場人物の思考や感情がビビッドに立ち上がってくる。感銘を受ける現代日本の作家の一人だ。
本作では、小林多喜二や三木清が、語り手の視野の中に登場する。
現代の学校教育で、昭和前期の現代史をきちんと教わることは、ほぼ無い。よって、平均的な日本人は、自覚的に学ぼうとしない限り、治安維持法や -
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『ジョーカー・ゲーム』に続くD機関シリーズの二作目
(って、こんなシリーズ名がついているのかは知らないけれどなんとなくで書いてしまった……)
D機関という存在の特殊性ゆえに、どうしてもどんでん返しが当たり前のお話になってしまうのだけど、どんでん返しが当たり前になったうえでそこから更にどう楽しませるか、というのが徹底されていて面白かったです
この作品の話ではなく、例えば本の帯に「最後の一行まで油断できない」的な宣伝文句があるとちょっと構えて読んでしまうんですけど、『ダブル・ジョーカー』からはそんな紹介をされたとしてもそれでもなお楽しませてやるぞ!ってなもう一歩先を見据えた心意気を感じました
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ネタバレ〈ガラパゴス諸島連続殺人事件〉を名探偵ダーウィンが解決!?的な話です。
ただ単にトリックを推理するだけではなく〈進化論〉が絡んでくるのが面白いところです。
「わたしたちはこの世界について、まだ何一つ知らないのですよ」
某人気陰陽師(京●堂)を思い出してしまいました…。
「もしかするとわたしたちはすでに世界を変えてしまったのかもしれないのです…」
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コペルニクスの地動説、ニュートンの万有引力の法則、そしてダーウィンの進化論。
神や宗教が絶対だった時代に、世界の価値観を一変させた人たちの苦悩は計り知れないものがあります。
南海の孤島を舞台に描かれた好ミステリーでした。
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ジョーカーゲーム第3弾。
今回も厳しい訓練をくぐり抜けたエリートプロスパイの暗躍を堪能します。
短編5編、体力的にも武術的にも優れた彼らですが、心理戦、思考の読み合い多めという感じ。
「誤算」
フランスのレジスタンスに近づき、思わず能力発揮。同志へのお誘いも受けてしまう優秀な潜入。
「失楽園」
シンガポール、ラッフルズホテル。ターゲットの心理を思うままに方向づける、印象が残らないバーテンダー。
「追跡」
これは、凝ってる。結城中佐の過去を追う、英国特派員兼スパイ。これこそ、結城のルーツと手に入れた情報は、20年以上前から、自分の出自を準備していた罠だった。結城中佐の勝利。
「暗号名ケルベロス」 -
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ジョーカーゲームシリーズ第2弾。
結城中佐率いるスパイ組織“D機関”プライド高いスパイ達が暗躍する短編6編。こちらは、対スパイ戦の作品が多いですね。
「ダブルジョーカー」
新たな陸軍諜報機関“風機関”を一蹴する結城中佐。
「蝿の王」
亡き兄の遺志を継ぎ、ソ連のスパイとなった軍医を暴く。
「仏印作戦」
D機関を騙る詐欺集団の罠にハマる電信係を助け出す。
「柩」
不慮の列車事故で命を落とすD機関のスパイ。最期にまで任務の隠蔽を遂行する。これに若き日の結城中佐のお姿あり。
「ブラックバード」
任務遂行の為、現地で結婚までして完璧な活動をしていたD機関のスパイ。協力者であった腹違いの兄の病死により、ア