あらすじ
華族に生まれ陸軍中将の妻となった顕子は、退屈な生活に惓んでいた。アメリカ大使館主催の舞踏会で、ある人物を捜す顕子の前に現れたのは―(「舞踏会の夜」)。
ドイツの映画撮影所、仮面舞踏会、疾走する特急車内。帝国陸軍内に極秘裏に設立された異能のスパイ組織“D機関”が世界で繰り広げる諜報戦。
ロンドンでの密室殺人を舞台にした特別書き下ろし「パンドラ」収録。
スパイ・ミステリの金字塔「ジョーカー・ゲーム」シリーズ!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「ジョーカー・ゲーム」シリーズ第4作。
<日本帝国陸軍内に結城中佐によってスパイ養成機関--通称“D機関”--が秘密裏に設立された>。
シリーズのほぼ全ての作品に登場するこの文言を些かくどく感じていたが、本書収録の「ワルキューレ」ではこの文言が終盤に覿面の効果を齎す。シリーズの読者が何度も言われなくても解っていると軽視し、読み飛ばすことで<D機関>の由来が“見えなく”なる仕掛けに心底びっくりした。
Posted by ブクログ
ハマり始めて読んだが、ジョーカーシリーズでラストワルツが一番好きかもしれない。
割と登場人物が死んでしまったり、戦時中の話なので暗い雰囲気がどうしても出てしまうが、恋愛チックな要素が入ると少し救われる気持ちになる。
新書版を読んだ後にアニメ表紙の小説版を借りたら、パンドラが収録されていてラッキーだった。
あまりD機関の影が見えない話だったけど…
Posted by ブクログ
スパイは疑われたら終わり。どこに現れるだろうかと注意深く読んでるつもりなのに気づくと終わってしまっている話ばかりで、これこそD機関が育てたスパイの仕事なんだなぁと思わされる。あっという間な一冊。
Posted by ブクログ
D機関か活躍するスパイミステリーの短編集、1作目から変わらないところが良い。
ワクワク感は1作目からすれば優しくなってしまうが、いろんな切り口かあって楽しかった。個人的には「舞踏会の夜」が良かった、読み手を誘導し、うまく騙されつつ、それでも受け入れてしまう。結城中佐がやっぱりカッコイイ。
これが今のところの最新刊と思うと次が無いのが寂しい。まだまだ読みたい!
Posted by ブクログ
D機関の4作目。今作はスケールが大きくなり、よりエンターテインメント性が強くなっています。また、背景の描写も深く、登場人物に感情移入ができ楽しく読むことができた。
Posted by ブクログ
4巻に渡るD機関シリーズが、日本の上層部の腐敗と日独をめぐる不穏な気配を色濃くして終わり、その先の戦争や国際情勢での惨禍を想起させるのは秀逸。
ただのかっこいいスパイたちの物語ではなく、歴史の見えないけれども存在したかもしれない側面を描きたかったのだろうと感じた。
Posted by ブクログ
80年も前の第二次世界大戦頃の世界を暗躍するスパイ組織の話しではあるのに、なぜか今まさに現代の話であるかのように感じる。歴史は繰り返すのか?!
もちろんフィクションではあるけれど、『今』を切り取る鋭いストーリーに引き込まれた。どうか世界が平和に向かいますように…3.2
Posted by ブクログ
ワルキューレとアジア・エクスプレスの二つの物語はメディアの本質を語ってくれる。まず前者では、ナチスドイツが実際に用いたプロパガンダを取り上げている。具体的な手法を知りたい人は『わが闘争』(角川文庫)や『ヒトラー演説』(中公新書)などを読むといいが、この話を読むと、人は無意識のうちに報道側の思想に染まること、人が音楽と映像によって理性を失ってしまう恐ろしさがわかる。
後者の話に関して、本編のp296とp299で情報の扱いに対する苦労が描写されている。この話で鍵となる伝書鳩は、諜報活動が盛んであった当時、欧州において意外な活躍をしたとある。電信通信による傍受を防ぐために、あえて古典的なやり方で情報を伝えるのである。しかし、日本軍はこのような情勢を見ずに伝書鳩を過去の遺物と見なして切り捨てた。このように、たとえスパイたちが命がけで情報を収集したとしても、その情報を利用する者が有効に活用できなければ徒労に帰すのだ。
Posted by ブクログ
戦時中の時代のスパイ短編集です。
登場するスパイたちはクールで殺伐としていますが、その活躍の舞台は、舞踏会の夜のように華やかさを感じさせたり、アジア・エクスプレスのように旅情を感じさせたりして、なかなかニクい演出です。
舞踏会の夜のスパイはズルいなあ。あれはコロッといってしまいそうだ。
Posted by ブクログ
D機関にしてはなんだかちょっと優しかったり、詰めが甘かったりして、違和感があった。
それはそういうことでしたか!
いや〜裏切りませんな!
いや裏切るんですけどね。
Posted by ブクログ
D機関シリーズは、安定の面白さ。
こんなに優秀な人間が揃っているのに、そこから得られた情報が、必ずしも有効利用されているわけではない。この言い訳が前作あたりから目立つようになってきたけど、これを免罪符にして、ずっと続けていけると思うけど。タイトルからして心配だけど、次作ってもう発表されているのかな?
Posted by ブクログ
例えば「特急アジア号」の描写がよく書き込まれていたり、独ソ不可侵条約で平沼内閣が総辞職したエピソードなどのあまり知られていない(知らないのは僕だけかもしれんが)歴史的事実が書かれていたりするのが、とてもその当時のことをリアルに感じることができて勉強にもなるのが、読んでいてワクワクする。柳広司作品をもっと読みたいと思う所以である。
Posted by ブクログ
ワルキューレ
逸見五郎
映画『二人のスパイ』で日本のスパイ、ゼン・トーゴーを演じる。
クルト・フィッシャー
映画『二人のスパイ』でドイツ陸軍から派遣された若きスパイ、シュテファンを演じる。
ミツコ
トーゴーの婚約者。
雪村幸一
新作映画のお披露目会の招待客。逸見にサインをもらう。日本大使館の内装を請け負っている。
キャシィ・サンダース
逸見がハリウッドの撮影所近くにあるバーで知り合った女優志望の若い女。
マルタ・ハウマン
逸見がドイツで親しくなった若い女優。
ヨーゼフ・ゲッベルス
ナチス宣伝大臣。
レニ・リーフェンシュタール
ヨーゼフの愛人とも噂されるナチスお抱えの映画人。
フィリップ・ランゲ
映画監督。
舞踏会の夜
加賀美顕子
戸部山千代子
男爵夫人。旧姓は大崎。顕子とは学習院女子部時代から二十数年来の付き合い。
五條直孝
顕子の実父。旧清華侯爵家当主。
伴
運転手。
マコ
顕子がダンスホールで仲良くなった。
ミスタ・ネモ
顕子が愚連隊に追われているところを助けた。
グルー
駐日アメリカ大使。
アリス
グルーの妻。
エルシー
グルーの娘。
オット
駐日ドイツ大使。
インデルリ
駐日イタリア大使。
アンリ
駐日フランス大使。
加賀美正臣
陸軍大佐。顕子の父親が勝手に決めてきた婚約相手。
桐生友哉
軽井沢の秘密倶楽部で出会った美青年。
パンドラ
ヴィンター
警部。
ホプキンス
巡査部長。
ジョン・ラーキン
外務省勤めの下級官吏。
フレドリクス・オグデン
ロンドン市内で貿易省を営む。
サー・ウィリアムス
専門は英国国内のスパイの摘発。
アジア・エクスプレス
瀬戸礼二
大東亜文化協会満州支部事務員。
アントン・モロゾフ
在満ソ連領事館に勤務する二等書記官。
結城
中佐。かつて日本帝国陸軍の伝説的なスパイだったと噂される。陸軍秘密諜報員養成所、通称“D機関”を設立。
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「ジョーカー・ゲーム」シリーズの再読。序盤ではこの話のどこにD機関が関係するんだろうと不思議に思う短編ばかりなのに、気づけばどこにでもスパイは潜んでいる。再読でも先が読めない展開で面白かった。
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柳広司得意のスパイ組織D機関のシリーズ4冊目。
D機関のスパイが諜報戦で活躍する。
日本のみならず、ドイツの映画撮影所、ロンドン、満州など時代背景も含めて面白い。
少し飽きてきた自分を認識しているが面白いのは間違いないです。
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それぞれの構成員にドラマがある。必ずしも主役に位置付けられてないストーリーがあるのも面白かった。「殺さない、殺されない」をモットーにするスパイ機関のお話だけあって、血生臭い話はほとんどなし。絶望的だったり悲壮感満載だったりせず、淡々とした文章で専門的な用語とともに語られていくため読後感は爽快です。
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「ジョーカーゲーム」シリーズ4作目。
過去作品とダブらない設定で楽しませてくれました。
けど、強いて言えば、過去作品より緊張感はいくぶん緩んだかも。
Posted by ブクログ
ジョーカーゲーム第4弾。戦況は、日本にとってかなり悪い方向に進んでいる様子。D機関のスパイ達が集めた情報も軍部では、上手く利用されていない状況のようだ。それでも彼らは、与えられた任務を完遂する。
今回は、事件舞台が華やかな感じ。当時の文化がうかがわれる。
「ワルキューレ」
ドイツ映画界を巻き込んだ、ドイツとの危機回避。なんとなく派手目なスパイだなと思っっていたら、海軍のスパイが主人公でした。
「舞踏会の夜」
戦況悪化でこれが最後となるだろう仮面舞踏会。
華族出身で陸軍中将の妻の女性は、自由奔放、夫とは仮面夫婦。長年の想い人との再会を、舞踏会に夢見る、って話かと思ったら、退屈しのぎの愛人とのスパイもどき。のつもりだったのだけど、それさえもD機関の手の内だったのかも。もしかして、結城中佐の若い頃の話なのかな。
「アジアエキスプレス」
満鉄特急の車内で情報売買の予定が、敵国スパイに発覚。まさか、初殺人かと思いきや、見つかったのを見つけてきちんと捕獲。スパイは、手品もできます。
Posted by ブクログ
「D機関」と呼ばれる秘密スパイ組織の短編集。
最初のアジア・エクスプレスがTHEスパイ物語って感じでした。
スパイは目立っちゃダメですよね。なんてことない普通の人がスパイに向いてますもんね。
映画や漫画でイメージが派手な印象だけど、ほんとはそんなんじゃないのが真実。
Posted by ブクログ
題名がラストワルツで、なんらかのロマンスを想像し、その終わりがあるのかと思いつつ読み進めた。
「ワルキューレ」で日本海軍のスパイが準備した拳銃がワルサーP38、銃器には疎いが、これはルパン三世が使っているので知っている。
「舞踏会の夜」では結城と顕子のロマンスを期待した。女性を優しく泳がせ、危険が迫ると先回りしているあたりが、結城がルパン三世と被る。
「アジア・エクスプレス」はこれまでの柳広司氏のスパイもので終始死ぬな、殺すなのポリシーが顕著に表現されている。盗むけど殺さないルパン三世と同じである。
「パンドラ」では密室殺人に目が行きがちだが、相手の得意な領域で凌駕する結城の軌道修正する指導力がスマートである。スマートさはまるで・・・言わないでおく。
ドイツの状況から既に日本の敗戦濃厚は、歴史的にも、日本は掴んでいた。それでも戦争に突入した事で多くの国民が傷つき、亡くなっていった。今の日本は歴史的に変わっているのだろうか?
顕子の言葉に余韻が残る。「それでも人は変わらない。世の中が変わるだけだ。」
Posted by ブクログ
相変わらずのD機関メンバーの超有能っぷりです。
謎解き自体はご都合的ではありますが、この超有能さにおいてなんとか読めてはいる感じです。
超有能は超能力とほぼ同義として捉えるなら、
スパイはエスパーってことになる?