戸谷洋志のレビュー一覧
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まさにこれが私の恐怖と嫌悪の正体なんだ。
だから全体主義や、満員電車を恐れる。
人間は簡単にシステムに飲み込まれて、悪事に鈍感になる。
いともたやすく人間が消費されて、“生産性”のない人間がシステムから排除されていく。
会社に心臓を捧げる上司達、ビジネス書やビジネスメディアの気持ち悪さはまさしくこのスマートシステムそのものの嫌悪感と直結する。彼ら信奉者達は、利益獲得や効率化を最上として、自分が盲目にさせられていることに気づけていない。
そこに空恐ろしさを感じるが、この社会システムから逃れられない恐怖に日々晒されてもいるのだ。
本書の凄いところは、この問題に対して回答を提示できているところだ。
なんか狩猟民族とかになりたいな‥むりか
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ネタバレ未来世代への責任を提唱したハンス・ヨナスを専門に研究している哲学者の著者が書いた「自己責任」についての本。
事例を元に世の中で語られる「自己責任論」を丁寧にひも解きながら、個人の選択が、社会制度やこれまでの慣習、社会的圧力など、さまざまな制約のもとでなされていることを明らかにしている。
起きた問題を「自己責任」の一言で片づけることによって、社会や周囲が負うべき責任が見過ごされていると感じた。見過ごされているというか、社会や周囲の責任を弱い立場である「個人」に転嫁をしている様に見えた。
自己責任から解放された後、「それでも私の責任と言えるものは何か?」という視点をもらえたことは貴重だった。
これまで「自己責任」という社会の枠組みを受入れてきてしまっていたので、悔しさを感じたし、
これが続くと、結果本質的な問題の改善が進まないので、
責任転嫁した側もどんどん脆弱になっていくよなと思った。
自己責任論で責任転嫁する人やコミュニティって無数にある。
そこに当たってしまうのは私の責任の範囲ではない。
そこに当たってしまった時に、このコミュニティに参加し続ける選択をするのか?どう振舞うのか?と言った自分の在り方や言動の部分は、私の責任の範囲だなと思う。
自分が変えられるものと変えられないものを冷静に見極められると良いなと思う。 -
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読むきっかけはCross digで竹下さんとの対談を見て興味を持ったため。
アーレントに限らず古典を読む意義って何があるんだろう?という疑問を持っていたため、あまり古典には手を出さずにいた。
この本を読んだことで、歴史の書物としてではなく今を生きる材料として古典が活かせることを知り、改めて本のすごさを理解するきっかけになった。
この本ではアーレントが世に発表した著名な本であるものの一つ、「人間の条件」を読むにあたって前提となる知識やアーレントの半生についても触れている。
おそらくこの本を読まずに人間の条件を読むことになっていれば(そもそも手に取ることもなかったかもしれない)、挫折だけして何もみのりはなかったと思う。 -
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息子は、私と話をしていて意見が異なっていると知ると嬉々として反論してくる。
はじめのうちはエビデンス(といってもほとんどはSNS上にある意見)に基づいて自分の考えを語っているのだけれど、やがて私の考えの甘さ、私の知識の浅さや古さ、終いには私の性格の歪みについて指摘し始める。
こうなるともはや議論ではなく単なる私の人格への言葉での攻撃なので、もちろん嫌な気持ちになった私は話をするのを止めようとする。
それを息子は反論できないからこその逃げだと言い募り、私を論破できたとする。
毎度、なんと不毛な時間なのだろうと思う。
そんな息子にこそ読んでもらいたい一冊。 -
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ネタバレ「はじめに」に書かれている内容が、とても共感できるもので、哲学の楽しさ、魅力を語ってくれていて、興奮しました。
本論の内容も、大変分かり易い表現で哲学を解説してくれていて、この本1冊で、著者のファンになりました。
ただ、哲学は読んで学ぶだけではダメで、自分で考えないと意味がないという厳しい意見も、繰り返し述べられていました。
どこまで出来るか分かりませんが、哲学を学び続けて、考える楽しみを味わい続けていきたいと感じています。
美学に関しての考え方として、大きく自然美と芸術美の2つがあるという点については、自分も、人は自然に出来上がったものに価値を感じるか、人間が作り上げたものに価値を感じるか、2パターンに分かれるんじゃないかと考えたことがあったので、そこと一致していて面白かったです。
私は、昔は、自然に見事なものが出来上がることに価値を感じる一方で、人工的に作り上げられたものには今ひとつ価値を感じられませんでしたが、今は、人が意思を持ってものを作り上げることにも価値を感じるようになりました。どちらにも素晴らしさがありますね。
以下、印象に残った部分の引用。
「当たり前」を問い直す学問こそ、哲学に他なりません。
たしかに、哲学は日常生活の邪魔をします。でも私は、だから哲学はなくなってもよい、とは思いません。なぜなら人間は、「当たり前」に疑いを持つと、ついつい「本当はどうなんだろう?」と考え込んでしまう生き物だし、それはめちゃくちゃ楽しいからです。
西洋の哲学の歴史は紀元前にまで遡ります。そんな昔から、どう考えても日常生活の邪魔でしかない哲学がいまだに生き残っているのは、結局、考えることの楽しさが決して色褪せないからです。
哲学は自由でなくてはならない、ということです。「勉強しないといけない!」なんて義務感に駆られて哲学を学ぶのは、ちょっとおかしな話です。哲学は楽しんでこそ価値があります。わくわくするからこそ意味があるのです。
私たちは、つい、偉い哲学者が言ったことをそのまま信じようとしてしまいます。
でも、その言葉そのものには、正直に言ってあまり意味がありません。大事なのはあくまでも考えることなのです。
私が大切だと思うのは、書かれていることに対して問いを連想しながら読むことです。
果たして本当にそうなのか・・・?と、探偵になったつもりで文章を追ってください。
哲学をすることは合理的ではないように見えます。「なんでそんな生産性のないことをしているの?」と、他人から訝しく思われることもあるかも知れません。
でも、みんなと同じ「当たり前」に従って生きることが、私たちにとって幸せであるとは限りません。「当たり前」は、同調圧力となって、私たちから選択肢を奪い、可能性を制限するからです。
哲学は、そうした制限から、私たちを解放します。そこに哲学の最大の価値があるのでしょう。 -
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現在の社会には「自己責任」論が深く根付いている。しかし本来、人は弱く、ひとりでは生きていけない。私たちは誰かに依存し、頼りながら、傷つきやすさを抱えて暮らしている。
それでもなお、他者を頼ることを肯定することには抵抗が残る。だからこそ「甘えるな」「自分が悪い」といった批判的な声は絶えず、助けを求めることが難しくなるのではないかと思う。その結果、生活そのものが成り立たなくなってしまうこともあるのだろう。人は追い詰められるほど孤立し、少しずつつながりが細り、やがて途絶えていく。
自己責任論は、弱さを抱える人だけの問題ではなく、誰もが苦しみから完全には逃れられず、ある瞬間には支えを必要とする側に回る。
本書で著者は、この状況を変えるために、責任をひとりに背負わせるのではなく分散させ、一人ひとりが「弱い責任」を引き受けることが必要だと述べている。弱さを前提にした責任のあり方へ視点を移すことが、孤立を止め、社会を持ちこたえさせる条件になるのだと感じた。 -
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すごい古典入門シリーズ。
「すごい」という煽り文句、100Pという文量。うむ、私のような素人には丁度良い内容であるとお見受けしましたよ。
アーレントは人文・思想書を読んでいると目にする最重要人物の一人。だけれども、その実どのような思想を構築したのかはよく知らなかった。
『人間の条件』のキーワード、労働、仕事、活動それぞれの定義を卑近な例を織り交ぜて解説してくれている。つまり生命維持のための労働至上主義への異議を呈し、かけがえのない個人としての営みである仕事と活動へ重心を移すのことを提案している、という理解。
図らずも同時によんでいた東畑開人『カウンセリングとはなにか』に通ずる理念を感じる。人は生存(生命維持のための労働)を大前提とするのは確かである。しかし、90年代で生活的に豊かになった後人は実存(仕事や活動を通じての自由)の喪失に苦しむ。その心の破局を文学的変化をを通じて改善を図るのがカウンセリングである、と。
本書が述べているように『人間の条件』は具体的な結論を提示するのではなく、疑問を投げかけるにとどまっている。だからこそ、時代を経た現代においてもアーレントを土台とした生きるとは?という命題への挑戦が盛んに行われているのだろう。
アーレントへの超入門として、一緒に本書から始めましょう。 -
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読むか、三大哲学書。
とはいえ、いきなり原本や専門書にあたっても木っ端微塵にされてしまうので、100分de名著の集中講義からスタートしてみた。情報社会の現代で私たちが向き合うべき「真実」「共同体」「不安」という3つの問題をテーマに、カント『純粋理性批判』、ヘーゼル『精神現象学』、ハイデガー『存在と時間』を対話するように読み進めていく。
私たちの身近にある課題と照らし合わせながら進んでいくので、それぞれの内容を紐解きながら、カントやヘーゼル、ハイデガーが様々な問題に対してどのように向き合っていったのかを読み解くことができる。
私たちが生きる現代は、執筆当時の社会環境とはもちろん異なるし社会が抱える問題も違う。それでも彼らが唱えた哲学が現代を生きる私たちに響くのが純粋にすごい。個人的には、ハイデガー『存在と時間』を通して「空気を読む」ことを分析した内容が面白かった。「みんながやっているから」という空気を読むことで、ちょっとずつ責任から逃れている感じがある。でもそれは確かに、不安と向き合っていないということだ。
おそらく、三大哲学書のほんのちょっとしか触れていないとは思いつつも、なんとなく哲学の入口に立てた気がする。少しずつ、この分野の知見が増やしていけるとよい。とても良い入門書だった。