戸谷洋志のレビュー一覧
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本書の要点をまとめれば「弱い主体が連帯し、他者を気遣うこと」となる。
新自由主義が蔓延し、人々の心の中までつかんでしまった現代において、そしてその集大成ともいえるトランプ復権が現実になってしまった時代にあって、強さとか責任という高所からのマジックワードを根本から見つめ直さないといけない。そのためには本書が重要な手掛かりになる。
「強い責任」が称揚される社会とは、ナチスドイツにみられるように、実はシステムに好都合で、実は無責任で無思考な、危ない社会だ。だから「弱い責任」へと目を向けるべきだ。
それは、目の前の傷つきやすい他者に対して、守る力を持つ者が引き受ける気遣い(ヨナスの思想)であり、 -
Posted by ブクログ
「親ガチャ」を、与えられる環境だけに限定して語っている。
「親ガチャ」の最も、大きな影響は、主体の全てが、意思の主体が、所与のものであること。
肉体が神経が頭脳が、それらが生み出す思考が、与えられたものであり、主体が自ら選び、論理的には責任を負いうるものではないものと言えることに、充分に配慮していると思えない書き出しに違和感。
デザイナーズベイビー、の説明では、遺伝子操作においては、出生前の意思を認めるが、そうでない場合は偶然、となんの留保もなく語る。
結婚、子供を持つこと、遺伝的形質に無関心な親がいるだろうか。
決定論と責任。
やはり決定論について語り始めた。
ハイデガーの議論を用いて説 -
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SNSを、ひとつ、承認欲求の問題として考えています。
自分が何者か知りたい、自分とは、を断言できる確信を得たい、そんな側面が、SNSにはある、と。
とくに、そこで有害にもなってくる3点として、
依存、不安、疎外。
依存は、自分が満たされるために、外部の行為に依存しているということ。SNSでいいねをもらったり、注目を得たりすることは、フォロワーや他者の選択によるので、自分ではどうしようもない。けれど気にさせるのがSNS。
不安は、絶え間ない、終わりのない、欲求であること。そう、SNSを続ける限り、投稿をし続ける限り、満たされることはない。毎回、気になるし、期待を抱えて使用する。
疎外は、 -
Posted by ブクログ
SNSの使い方(依存しないように生活の中での使い方を考えよう/セキュリティを意識しよう)についての本ではなく、私たちの生活の中にすでに溶け込んでいる(分離して考えることが困難な)SNSという媒体と、それを利用しながら(SNSとともに)生きるとはどういうことか、ということをヘーゲルやハイデガー、アーレントなどの哲学者の思考を組み入れながら分析・考察している本です。
「SNSについて」を主題としている書籍、というよりも現代のわれわれの生き方について改めて哲学適任考えることが主題になっているように思います。その思考のとっかかりとして、SNSを取り上げている、という印象でしょうか。
古典的な哲学書を