戸谷洋志のレビュー一覧
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ネタバレ他者から承認されようとすることは、「他者から承認されるような自分」になろうとすることで、必然的に頑張ることを強要されてしまう。
SNSで他者から承認を得ようとすると、
①私の生きやすさが他者に依存する
②絶え間ない承認を求めることで、常に不安を喚起する
③承認を求めるほど自分自身を見失う(疎外)
ことにつながる。
SNSネイティブにとって、人間関係の開始はインスタの相互フォローなどを指し、リアルとSNS上の関係性の区別はできない。
自律性は他者に頼らないでいられることで、他律性は他者に頼らないではいられないことである。一般的に自律ばかり求められるが、アイデンティティの形成には他律(他者)も必要 -
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ネタバレ・相手が自由ではない承認行為は自分の承認欲求を満たす事象ではなくなる
・SNSには時間の流れは起こっていない。液晶に表示されたときが閲覧者にとってそれが起こったとき
・投稿は劣化しないが紙で書き残した物理的なものは劣化する
・バズるは時間という概念がないからこそ生まれる現象
・SNSに投稿する際に炎上しないかと気をつけている行為は未来の視点
・ストーリーズは時間という概念がなかったSNSに人生特有の一回性を与えた
・Twitterは建前ではなく本音を表向きは演出できる場
・Twitterは生の声をアピールする道具にも使われる
・リツイートされることで言語ゲームのルールが変わる、それは炎上の要因 -
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「哲学を学ぶ」というとかなりハードルが高いように思えるが、本書はそれを身近な自分ごととして捉えられるようにSNSを題材としているため、具体的なイメージが湧きやすくとっつきやすい。
筆者もまたSNSを利用しているということで、決してそれに否定的ではなく、寧ろ新しい思考の場として歓迎しているように思える。よく言われているSNSの問題点を無視するわけではなく、問題点の本質はどこにあるのか、そしてどう変わっていくのかを考えることを求めている。
個人的には「第2章 SNSにはどんな時間が流れているのか?」が、興味深かったが難解だった。頭をフル回転させないとうまく飲み込むことができなかったし、まだ喉に突っ -
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ウクライナ戦争であらためて核兵器の脅威への恐怖が蘇るなか、哲学者が核兵器、そして原子力技術をどう考えたかという観点でまとめた本。
でてくる哲学者は、ハイデガー、ヤスパース、アンダース、アーレント、ヨナス、デリダ、デュピュイと豪華。
なにか人間の力を超えたところにある原子力というもの。単純に反原子力といっていればいいわけでもない。哲学者ならではの見解、別の言い方をすると、形而上学的な議論が展開される。
だが、そうした極端な議論を通じて、自分の思考が大きく揺さぶられる感じがした。
原子力が人間の意思というものを超えて、独自の進化をとげていくものであることが実感できた。
そして核兵器は、憎 -
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スマートなデバイス、サービスが生み出すスマートなシステム、スマートな社会。スマートさがもたらす悪の可能性を探求する本。
そこで登場するのが、アイヒマンというわけで、アーレントの議論を軸にしながら展開していく哲学的な技術・社会論、という感じかな?
一つひとつのスマートなサービスは、便利で、使い始めるとそれなしには生きていけないのだが、全体して、それが人の幸福、社会の幸福につながっているのかは心配な気持ちになる。
著者は、スマートの語源にある痛みといったところを確認しつつ、スマートが目指す一人一人への最適化という概念をロジスティックスの問題と関連づける。で、ロジといえばということで、ユダヤ人 -
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「スマート」という言葉は非常に聞こえの良い言葉であるが、本書では主にネガティブな側面に注目している。テクノロジーの発達により生活は最適化され「スマートな社会」へ進歩すると考えられているが、一方で最適化が悪への加担を引き起こしうるということを認識しなければならない。最適化には暴力性を孕んでいることを本書では「スマートな悪」と呼んでいる。
「スマートな悪」が暴走したらどうなるのか?ここではナチズムとアイヒマンを事例に出しながらその末路を論じている。まさに全体主義は最適化の負の側面であり、アーレントやアンダースによる全体主義の起源の考察は現代においても、とりわけ超スマート社会化おいては通ずる点が少 -
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ネタバレ<目次>
第1章 自分
第2章 恋愛
第3章 時間
第4章 死
第5章 人生
<内容>
文庫書下ろし。学生による出版コンペティション「出版甲子園」での企画が原案(2015年の第11回)。大阪大助教によるもの。先生と助手の女子大生の会話形式で、目次の5つのテーマを、それぞれ3つのJ-POP(計15曲)の歌詞から読み解いていく。セカオワ・RADからいきものがかり・ミスチル・東京事変・AIKO・宇多田ヒカルまで多彩。軽い感じで読み通せるが、言っていることは深い。ニーチェやパスカル、キルケゴールまで出てくるが、そのあたりの扱いは軽い。高校生から大学生を読者層に想定しているのではないか?高校 -
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本書のタイトル「原子力の哲学」とあるように、代表的な哲学者の原子力に対する哲学を書籍である。
筆者は哲学の専門であるが原子力の専門ではない。というか解説されている哲学者も原子力の専門家ではない(哲学の専門家だ!)。
ということを念頭に置いて本書は読むべきである。
筆者の解説は分かりやすいので、登場している哲学者の論旨は理解することができる。この部分は本書の良いところである。
一方で、哲学者の原子力の哲学のほうであるが、哲学者よろしく難解な表現を使用して読者を混乱させてわかったようでわからない論法である。というか、原子力という言葉は原子爆弾と原子力発電で全く違うだろう。
哲学者さん、ここは間違 -
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ネタバレ個人的に哲学は近寄りがたい&自分には縁のない学問だと思っていたが、非常に身近なJ-POPの歌詞から哲学を考えていくスタイルは自分に合っていた。
非常にはっとさせられたのは、宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」の考察で出てきた「共同性の暴力」である。いくら恋人同士だとしても、「私」と「他人」の関係性からは抜け出せないし、恋人の他社性を否定することは暴力的なことであるとのことだったが、過去の恋人とうまくいかなかったのはコレだわ…と大反省した(笑)
ちなみに私の場合は、恋人なんだから私が考えていること分かるよね?と期待しては勝手に落ち込む、ということを繰り返し、もういい!別れる!みたいな感じのパタ -
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先生と麻衣さんの対談形式で、Jポップの歌詞を引用しながら、哲学のテーマである「自分」「恋愛」「時間」「死」「人生」について考えていくという本。各テーマについて3つの小テーマを考えるので、全部で15曲が引用されています。
Jポップは90年代後半の頃から好きで聴いていましたが、どっちかというとメロディーにばかり意識がいってしまって、歌詞にはほとんど注意を払っていませんでした。こうして改めて歌詞について考える機会があると、存外深い意味をもったものなんだなと気づかされました。特に、一番最後に出てくる、いきものがかりのYELLはすごいですね。
肝心の哲学について言うと、まあ正直ふわふわした理解しか得られ -
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ネタバレ【きっかけ】
本屋で見つけた。中高生には難しいか。
【内容】取り上げられた歌と歌手と哲学者
①ミスチル『名もなき詩』カント
②ゲスの極み『私以外私じゃないの』フィヒテ
③乃木坂46『君の名は希望』ヘーゲル
④AI『STORY』ブーバー
⑤西野カナ『会いたくて会いたくて』メルロ・ポンティ
⑥宇多田ヒカル『誰かの願いが叶うころ』レヴィナス
⑦バンプ『天体観測』ベルクソン
⑧Aiko『キラキラ』ヴェーユ
⑨東京事変『閃光少女』バタイユ
⑩ラッド『おしゃかしゃま』キルケゴール
⑪浜崎あゆみ『dearest』ハイデガー
⑫ワンオク『a new one for all,All for the new o