あらすじ
私たちの行動はいま生きている世代に限らず、遠い未来にまで影響を与えることがある。
テクノロジーの発達によってもたらされた行為と結果の大きな時間差は、私たちの社会に倫理的な課題を次々投げかける。
気候変動、放射性廃棄物の処理、生殖細胞へのゲノム編集……。
現在世代は未来世代に対して倫理的な責任があるのならば、この責任をどのように考え、どのように実践したらよいのか。
倫理学の各理論を手掛かりに、専門家任せにせず私たちが自らの考えを形作るための一冊。
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Posted by ブクログ
この本では、「なぜ未来世代に対して責任を負わなければならないのか」という問いに対して、さまざまな倫理理論からの答えが紹介されていて、倫理の多様な考え方を知ることができた。中でも印象に残ったのはロールズの契約説の考え方だった。私たちは生まれてくる時代を選べないのだから、自分がどの時代に生まれても納得できるように資源を残すべきだという、公正さを重視した考え方がとても納得できた。
福島の原発事故については、ハンス・ヨナスの責任原理の考え方が深く関わっていると感じた。津波の予見可能性があったにも関わらず、リスクを軽視して十分な対策を行わなかったことは、未来世代に取り返しのつかない被害を与える可能性がある場合、明らかな責任放棄にあたると思う。目先の経済性やたぶん大丈夫という思い込みで未来を軽んじたことは、ヨナスの言う責任からの逃走だと感じた。
あとがきに書かれていた焼肉のタレのたとえも印象に残った。日常の判断のためには、基本的な知識を調味料のように持っておくことが大切で、それをどう応用するかが自分の倫理になる。たくさんの本を読むことで、自分の判断基準がだんだんできていくのだと改めて気づかされた。