小山内園子のレビュー一覧
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とっっっても良かった…。
日常のなかに混じり込んだ奇譚が、生活の鬱屈さをそっと解いていくような8つの短編集。
ディストピアもののようだけど現実離れしてはいなくて、ちょっと気を緩めたら私たちもこんな世界に迷いこんでしまいそうなリアルさがあった。
あらゆる物事をあきらめざるを得ないN放世代を生きる韓国の若い人たち
辛いことを辛いと感じる心も麻痺してしまった人々に、きちんと悼む気持ちを思い出させてくれる物語ばかりだった。
結末ははっきり記されていないけれど、主人公たちは回復につながる選択をしているなと想像できる、そんなほんのり明るい余韻を感じられた。
「幽霊の心で」がいちばんのお気に入り! -
Posted by ブクログ
それぞれの話の背景には住宅格差、厳しい学歴社会、就職難、ストライキ、デモ参加などが見え、日本社会ではそれほど馴染みがないこれらに「韓国って日本より過酷だな」と呑気に思ってしまうかもしれない。しかし解説にある通り、男女格差は日本の方が遥かに遅れており、危機感を持ちたいところだ。韓国のジェンダーギャップ指数が日本を上回ったのはこの本の女性たちのように声を上げ続ける人がいたからだ。著者がこの本や『82年生まれ、キム・ジヨン』を書いたように、作家たちが世界に発信し続けているからだ。
28人の韓国人女性たちの声が聞こえる。日本人であっても女性ならばきっと誰かに共感し、互いを抱きしめ合いたいと思うだろう -
Posted by ブクログ
ネタバレ家業ひとすじ45年
かつて名を馳せた女殺し屋・爪角の
ノアール小説
どこで勧められた本だったか痛いのは苦手なのに、爪角の人生に魅せられて一気読み
ただのノアール小説に終わらず、人間味溢れる小説になっている
父親を殺されたトゥよりも、爪角に感情移入してしまうのは爪角の人生を追って来たからなのか、、、
リュウとの生活はあまりにも切ない
肉体の老いのみでなく、揺れ動く様になってしまった感情
そんな中繰り広げられる最後の死闘
一緒に生きて来た老犬も無くし
リュウの元に行くまで、これからどんな人生を送るのか、、、、
花火の様な、果物の様なネイルも見てみたかったな
続編も読んでみよう♬
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Posted by ブクログ
最近にない美文かつハードボイルドな文体だった。冒頭で主人公が仕事を終え地下鉄駅から地上に出る際の表現、『地上の輝ける闇を目指し進んでいく』を読んだ瞬間、僕の意識は開高健さんの『輝ける闇』に一瞬飛んで行ったが、それはオマージュでもなんでもなかった…。
そう、65歳の女主人公爪角の仕事とは殺人だ。これが日本人作家による小説だったら嘘くさくて世界観に入り込めないが、翻訳小説だと想像の範疇に入ってくるから不思議だ。女性であることと、年老いて能力の衰えを自覚するに至ったハンディを抱えながら仕事を続けている。年齢を重ねると、運動能力だけでなく感受性にも変化が現れることは同年輩の私も理解できる。端的に -