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事故で2年間植物状態になっている恋人を見舞い続ける“私”の前に、分身を名乗る幽霊が現れる。自分そっくりな幽霊が一向に姿を消さないため、“私”は仕方なく一緒に暮らし始めるが……(「幽霊の心で」)。人間をクラゲにしてしまう、変種のクラゲが大量発生する。社会に動揺が走るなか、音楽活動をやめた“私”は、自らクラゲになりたがる人をサポートする仕事につき……(「光っていません」)。所属している劇団が行き詰まり、仕方なく役割代行サービスをしている駆け出し俳優の“あたし”。誰かに代わって別れを告げたりニセの恋人になったりしているうち、ある男から、「冬眠の準備を手伝ってほしい」という依頼があり……(「冬眠する男」)。閉塞感に満ちた日常に解放をもたらす、韓国発、8つの奇妙な物語!/【目次】幽霊の心で/光っていません/夏は水の光みたいに/見知らぬ夜に、私たちは/家に帰って寝なくちゃ/冬眠する男/アラスカではないけれど/カーテンコール、延長戦、ファイナルステージ/作家の言葉/解説=倉本さおり
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Posted by ブクログ
大好きな本になった。"閉塞感に満ちた日常に開放をもたらす"というカバーそでに書かれた言葉の通りの、8つの短編集。特に「幽霊の心で」「光っていません」がとても好きです。皆生きるのに必死でリアリティもある。心に重く冷たいものを秘めているけど、ファンタジックで不可思議で、奇妙な出来事を通じて、悲しみと向き合ったりかすかな希望をもらったりして、静かで穏やかな光を感じる終わり方をする。人の心の動く過程を本当に丁寧に優しく描いている。翻訳の表現も、とても綺麗な文章で、ため息が出るほど素敵でした。手元に置いておきたい本。イム・ソヌさんの今後の作品も楽しみです。小山内さんの他の翻訳本も読んでみたいです。
Posted by ブクログ
どの作品も『死』をイメージとして扱うような作品でした。死後の世界とか絶対に生きていたら知ることはない世界のはなしみたいな感じです。いちばんこころに残ったのはタイトルにもなっている『光っていません』と『見知らぬ夜に、私たちは』です。『光っていません』は触るとクラゲになってしまうクラゲが世界に出現したあと安楽死替わりにクラゲになって人間をやめるひとたちのはなしで『見知らぬ夜に、私たちは』は親友だった相手に20年以上ぶりに再会して過去を思い出し未来を取り戻そうとするはなしでした。どちらも言葉が大切にされている作品でまた、何回も読み返したくなるような切ない気持ちになりました。
Posted by ブクログ
“手には触れなかったけど確かにあたたかく、それがあまりにあたたかいから、私は泣くことができた。どこの幽霊が、涙まで流してんのよ。私が言った。幽霊じゃないってば。泣いている最中も、幽霊はそう言った。 しばらくして幽霊は私を抱き寄せたが、それは私が生まれて初めて受け取る、一寸の誤差もない 完璧な理解だった。”(p.23)
“失望が積もれば怒りになり、怒りは結局諦めになるから。それを繰り返さないように、私はいつからか、何も望まなくなった。”(p.20)
“世の中はだんだんおかしくなっていってるのに、自分たちは家でほうれん草を和えて食べる予定でいることが、奇妙に感じられた。
(中略)夕ごはんには、私が和えたほうれん草と、クが作った味噌汁を食べた。何も起きないのは、必ずしも悲しいことばかりじゃないんだな、そう思いながら茶碗を空にした。”(p.43)
Posted by ブクログ
すごく良い本だった。8つの短編集が入っている。
人間をクラゲにする変種のクラゲが大量発生したり、家に帰ると知らない人が木になっていたり、知らないおじさんの冬眠を手伝ったり、死んだ後幽霊になってこの世を去る前の時間が与えられる世界だったり、変わった設定の話が多い。
だけどどの短編も、永遠に続くかと思われる、苦しくて息が詰まるような毎日に、奇妙な変化が訪れて、その変化によって主人公の心が少しだけ前進するような瞬間を描いている。
特に最初の「幽霊の心で」がとても好きだった。
ある日、自分の感情を映す自分とそっくりの幽霊があらわれる話。事故で意識のなくなった恋人に接するうちに、重苦しい毎日に感情の固まった主人公が、幽霊の発現によって、自分の意思や感情を自覚していく様子が、とても鮮やかに描かれている。ちょっと泣いた。
Posted by ブクログ
とっっっても良かった…。
日常のなかに混じり込んだ奇譚が、生活の鬱屈さをそっと解いていくような8つの短編集。
ディストピアもののようだけど現実離れしてはいなくて、ちょっと気を緩めたら私たちもこんな世界に迷いこんでしまいそうなリアルさがあった。
あらゆる物事をあきらめざるを得ないN放世代を生きる韓国の若い人たち
辛いことを辛いと感じる心も麻痺してしまった人々に、きちんと悼む気持ちを思い出させてくれる物語ばかりだった。
結末ははっきり記されていないけれど、主人公たちは回復につながる選択をしているなと想像できる、そんなほんのり明るい余韻を感じられた。
「幽霊の心で」がいちばんのお気に入り!
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