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Posted by ブクログ
先日読んだピエール・ルメートル『邪悪なる大蛇』と同じく、殺し屋の老婆が主人公。『邪悪なる大蛇』の方は前頭側頭型認知症かと思われる症状の出現により、反社会的行動が加速度的に増していっていたが、こちら『破果』の主人公爪角は歳を重ねたことによって、殺し屋として持つべきでない「情」の溢出を、どうしてもおさえることができないでいる。これが何ともいい。
飼い犬のため家をこまやかに改造し、ターゲットを追わなきゃならない場面ではよろよろのおじいさんについ手を差し伸べずにはいられず、そして治療をしてくれた若き医師に淡い恋心を抱いてしまう…。ハードボイルドな女のこのいじらしさ、けなげさ!最高です。
しかし、何よりの白眉はバイオレンス・アクションシーン!
ただならぬ緊迫感とスピード感、痛覚に直に訴えかけてくるようなヒリヒリした描写、その合間に挟み込まれる引きのアングルで見た時のなんとも言えない滑稽さ泥臭さ、そしてこれらの緩急がもたらす心地いいリズム感…。
もう、著者の筆力にただただ脱帽。
他にも、フェミニズム、エイジズム的観点や生い立ち回想シーンの重厚さなど、語りたくなるポイントは大量にあるが、とにかくさまざまな要素を全部詰め込みまくってがっつり超エンタメに仕上げてきたこのサービス精神の過剰さに、すっかり骨抜きにされてしまいました。
映画化もされたとのことで、日本での封切りが待ち遠しい!
Posted by ブクログ
2026年5月再読
同名ミュージカルの原作ということで手に取りました。(新国立劇場2026年3月7日(土)~22日(日))小説も舞台も韓国発。
読みにくいと感じた方もいたようですが、自分は割と好きな文体でした。
主人公は60代の女殺し屋チョガク。老いにまつわる描写や心情が肌にじわじわ吸い付くような感覚で描かれる。自分も60代を目前に控えているせいか、感覚的にわかる部分がたくさんあった。失われていくことへのもどかしさ、怖さ、焦り、諦め…
いまはもういない、心を寄せた人への想いが昇華できず、ずっと思い出のあの人と心で対話している。しかしそれは自負の脳内が作り出したもの。結局自分と対話している。そんな心理学的側面から読み進めるのも楽しい。
小説ではハッキリ描かれなかったチョガクを狙うトウの心情が、舞台を観てから再読すると、そういう解釈もアリなのか、と思える。舞台を脳内再生しつつ行間を探りながら物語を噛み砕いていくのも味わい深い。小説と舞台の合わせワザで楽しめた。
2026年5月27日
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