韓国、男子――その困難さの感情史

韓国、男子――その困難さの感情史

「男」は理不尽な観念だ。ジェンダー間の格差・分断・差別の歴史の中で、男性は「男」であるがゆえに抑圧する主体だった。他方、「男なら…」という期待は、当事者に「失敗と挫折でがんじがらめ」の内的経験をもたらしてもきた。日本においても然り。だが韓国では、この問題を感情史的アプローチで探究する試みがいち早く登場した。韓国ドラマの男たちが“おんな子どもを守る強い男”の類型を引きずり続けるのはなぜだろう? フェミニズムへの関心の高い国で、なぜ若者がバックラッシュの政策を支持するのか? その背景にある男性性の問題、すなわち「韓国男子」のこじれの源を、本書は近現代史上の事象や流行語を手がかりに辿る。「男子(ナムジャ)」の苦難や煩悶が、非‐男性への抑圧と表裏をなしながら、いかにして社会を構成する人々全体の生きづらさに与ってきたか。朝鮮王朝時代、植民地化、南北分断と軍政、民主化、新自由主義化といった局面に応じて、男性性をめぐる新たな困難と、そこから噴き出る抑圧と暴力の構図が繰り返し出現した。終盤では、兵役が生む軋轢や、オンラインで拡散する苛烈なミソジニーとバックラッシュに揺れる2000年以降の社会の様相を見る。「このような作業が必要な理由は、まず理解するためだ。」今日の韓国の人々の心性を理解するための重要な知見と示唆に溢れた論考であるとともに、日本における同じ問題を合わせ鏡で見るような書だ。

...続きを読む

詳しい情報を見る

閲覧環境

  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

韓国、男子――その困難さの感情史 のユーザーレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    “「男子(ナムジャ)」はつらいよ でもその傍で みんながもっと生きづらいよ” という帯文が端的で秀逸だと思う。女性として日本人として揺さぶられながら複雑な思いで読んだ。男性が自らの男性性について内省して考察してくれるこういう本をもっと読みたい。



    “韓国男子として30代半ばを迎えた自分自身の直面

    0
    2025年02月06日

    Posted by ブクログ

    これは勉強になる。特に女性嫌悪しながらも
    理想の(実在しない)女性を求め、それに当てはまらなければ叩くというやり方を考えるとなんとも言えない気分になる。

    0
    2025年08月26日

    Posted by ブクログ

    現在の韓国におけるフェミニズムと、それに対する男性からのバックラッシュの歴史と現状について述べた本。フェミニズムの立場からの本なので、ある程度のバイアスがかかっていると想像されるが、正直、韓国社会との接点をあまり多く持たない私には、何が真実なのか、判断する術は無い。
    しかし、現代韓国社会の一面として

    0
    2025年07月10日

    Posted by ブクログ

    日本と韓国の男性性を(女性性を)めぐる色々を、似てたり似てなかったりするんすねと考えながら。

    植民地支配や朝鮮戦争、光州事件などに要請され鋳造された「男らしさ」。
    西洋のコピーのコピーとしての家父長制
    兵役が韓国の男性たちに植え付ける闇
    貧困故に家族に依存し、結果的に解体されない不平等な構造

    0
    2025年01月04日

    Posted by ブクログ

    韓国の家父長制、その下で育まれてきた男性性の問題点について、丁寧にわかりやすくまとめられている。批判の一つ一つも極めて鋭く、なるほどと膝を打ったりわが身を省みたりもした。

    ただ批判が先立っていて、考え方を整理していくと一つにまとめられない所も見られる気がした。(例えば能力主義に対する態度; それに

    0
    2025年10月06日

    Posted by ブクログ

    Kカルチャーに興味をもち、違和感も時に感じる中で興味深いジェンダー論。歴史の流れから似ている部分と異なる部分どちらもあるが、誰かを抑圧せずひとりの主体として、他人と連帯して生きていかねばならない我々が向き合い続けなければならない話。対岸ではない。

    0
    2025年07月06日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    歴史を追って韓国の男性性がどう形作られてきたかを概観することができる良著。

    朝鮮王朝時代の両班である士大夫は、官職を出すため、家族をかえりみず、学問に励むことが美徳とされ、学者が武者を見下してきた文化、何もしないため、女性が家計を支え家事労働も全て請け負ってきた、というところで神戸のおじいちゃんと

    0
    2025年05月01日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    男性でこういう考察が出来るのがすごい。ぜひ武田砂鉄さんと日韓男性問題について論じて欲しい…

    家父長制の名残があるところは日本も韓国も似てるなと思っていたけど、背景にある歴史がまったく違うことが本書を通して実感できた。
    巻末の解説にもあるけど、韓国の人たちにとっての兵役や戦争を知ることで、韓国の作品

    0
    2025年04月26日

韓国、男子――その困難さの感情史 の詳細情報

閲覧環境

  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

この本をチェックした人は、こんな本もチェックしています

無料で読める 社会・政治

社会・政治 ランキング

作者のこれもおすすめ

同じジャンルの本を探す