小山内園子のレビュー一覧
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ネタバレ非情であるべき殺し屋のベテランにしては、爪角は感情の揺れが大きすぎて、そんなんで45年もよくやってこられたねぇ…と訝ってしまうけど、それを差し引いても最後まで引き込まれるように読み切ったのは、爪角が自身の生き方にどんな風にケリをつけるのか見届けたいと強く思わされたから…でしょうか。
ここに描かれている爪角は、甘いし、ゆるいし、迂闊だし、そんなんじゃダメでしょ⁈ってツッコミどころはたくさんあります。が、それが老いの結果ということなのだとしたら、人間とはかくも愛おしいものなのか…と思ってしまいました。ノアール小説でこんな風に思うなんて、とても不思議です。でも、自分に置き換えると、57歳で未経験の -
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ここのところの姑の体調不良を見ているせいか、どうも年を取ることに対して臆病になっている自分がいる。60を越えた自分の顔を鏡で見るたびがっかりするし、鏡よりひどいのは写真に写った自分の姿。がっかりなんてもんじゃないので、なるべく撮らないようにしている。
息子はもう自立しているし、細々やりたいことはあれど、やらなきゃならないこともない。もうこの辺でいいかなあなんて思ってみたりする。こんなことを書くと怒られるかもしれないが、私は、自分の命の最後は自分で決めていいと思っているので。病院でたくさんの管に繋がれて生き延びるなんて絶対やだ。
と思っていたら、この本に出てくる卒寿に近いおばあさんが、
「長~ -
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ネタバレ⭐️3.8
「殺し屋はおばあちゃん」のノワール小説と聞いたら読むしかない。
完璧主義で孤高のヒットマンも歳はとる。高齢期に差し掛かり心身ともにくたびれきっている。けれどもプロとしてのプライドが、主人公爪角(チョガク)を奮い立たせる。
はるか遠い昔日の師匠への思慕、傷ついた主人公を助ける歳若い医師への現在地での淡い想い。殺し屋として封印してきた女としての心の揺れにグッと来る。
ライバルとなるトゥも、愛に飢えてきた殺し屋であり、愛情の裏返しゆえの憎しみ、そして哀しみだった。
殺し屋である前に女性であること、そのヒロインの葛藤をていねいに描く筆者の矜持が見え隠れする、断固とした女性への賛歌である本作 -
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これも『82年生まれ、キム・ジヨン』からの流れで読んだ。同じ作者の短編集なんだけど、どれも読んでて苦しくなるような話が多くて1話読み終えるたびにけっこう疲弊した。なので進むペースは遅くなったけど、そのぶん一つひとつをちゃんと受け止めながら読めた気もする。
苦しさのなかに、ほんの少しの希望が見える話もあって、ただ絶望を突きつけられるだけじゃないのが救いだった。中には連作っぽくつながっている話もあって、小説としての構成も面白い。
フィクションなんだけど、全然他人事に思えなかった。描かれていることの多くが、今も現実に起きていることなんだと思いながら読んでた。社会の側が当たり前のように押しつけてる -
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28の物語を収めたこの短編集では、28人分の女性の人生の一部分がそれぞれ描き出されています。いずれも、韓国の現代社会に生きる女性たちの、きっとリアルな生き様で、国を超えて共感できる部分も少なくありません。
セクハラとたたかう女性、結婚が招く理不尽さにあえぐ女性、労働環境の改善を訴える女性。日常のつらさに直面して、切り開こうと努力する、あるいは受け入れて消化する、彼女たちの問題への対処のスタイルはそれぞれだけれども、芯があってその道行きを応援したいと静かに思う。女だからではなく、人として当たり前のしあわせを掴んで欲しい、と思うから。
最後の一編は小学生の出馬宣言で締めくくられます。どこか背伸び -
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「82年生まれ、キム・ジヨン」からの流れで読んだ。引き続き少なからずショックを受けた。女性たちが日常の中でこんなにも多くの形で打ちのめされながら、それでも何もなかったかのように生きているのかと。事実や例がこれでもかというほど突きつけられて、俺たちは本当に見えていなかったんだなと思い知らされる。
ここで単に「女性すごい」「女性えらい」「女性の皆さんごめんなさい」と言って済ませてはいけないんだろうとも思う。もちろんそういう気持ちが端緒になることはある。でもそれだけではきっと足りないよなあ。
メタ的な視点になるけど、本書を読んでいて引っかかったのは治安のコストに関する記述だった。女性が一人暮らし