あらすじ
「この車に乗ったら最後,お前の身体は,一から十まで作り変えられる」.師に見出され殺しの道を歩みはじめた彼女は,死と隣り合わせの最終訓練に臨む.人を破壊する術を身につけることは,人として,女としての「普通」の一生を粉々にすること──.伝説の殺し屋誕生を濃密に描き出す,戦慄と陶酔ほとばしる『破果』外伝.
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Posted by ブクログ
これから人殺しの道を歩んでいくチョガクが人を殺める銃で猪を殺しリュウを助けたときに涙を流した最後のシーン。破果で人を殺しながらも惨忍な性格に振り切れていなかった印象だったけど、それは老いたからではなくもともとのチョガクの優しさだったんじゃないかと思わせるラストでした。
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読みにくい。
ぱらぱらと舞う記憶のかけらを集めていくようだった。
インタビューと解説があるのが嬉しかった。
生粋の小説家。社会に左右されない芸術家。
作者の他の作品も読みたい。
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『破果』の爪角の若き日を描く短編。
本は小さくて薄いが、『破果』が出た後で作者が書いたもので、作者はこれ以上爪角の小説を書かないと言っているからこの形の出版は仕方ないかなと思う。ぜひ文庫化するとき『破果』の中に入れて欲しい。
爪角がリュウと山に一カ月ほど籠り、殺人と身を守るノウハウを身につけるという話。(ちなみに名前は出てこない)
爪角のリュウに対する、こう言ったら元も子もないが「恋心」のようなものを、絶妙な感覚で描いており、グッとくる。決して口にすることはなく、相手もわかっていることを感じさせまいとしている。それでも漏れてしまいそうで、でもその寸前で何とか止めるという切なさに。
この文章の妙は、訳者の小山内さんの力もあるのだろうが、本当に素晴らしい。ここで書き出すのは憚られるほどだけど、一つだけ。
「彼は気づくことができない。口を開いたら、声を発したら…口の中でひらめいている蝶に、はばたくことを許してしまったら。彼が知ってはならず、知る必要のない、だが、とうに知られているかもしれない想いが突然あふれ出しそうになる恐怖に、彼女が囚われていることを。それはおそらく、流れ出すとか漏れ出るとかいうおとなしくて行儀のよいやり方ではなくて、荒々しくジグザグに縫い付けてあった部分が引きちぎられ、こじ開けられ、もつれ出るような恰好だろう。そこには拾われることの叶わない言葉が、千切れた蝶の翅のように散乱するだろう。」(p59)
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殺し屋になる修行のため師匠と森に籠る… 傷だらけになりながら、魂のやり取りを力強く描く物語 #破砕
■きっと読みたくなるレビュー
前作『破果』において、女性で高齢ながらも殺し屋として生活していた爪角(チョガク)。時間軸は彼女が殺し屋になる前、若かりし十代の物語で、師匠と二人で山に籠り、厳しく鍛えられるという筋立て。本編自体は80頁の短編のみで、作者のインタビューや深緑野分先生の解説付きです。
前作を読んでない方のために軽く『破果』のあらすじをご説明。
60代の女性殺し屋の爪角(チョガク)は、殺戮の依頼を失敗してしまう。引退を思い至る彼女であったが、様々な人との出会いの中、それでも殺し屋の信条や心得は忘れずにいた。ある日、同じ殺し屋である若い男から、因縁をつけられるようになってしまい… といったお話。
今回のお話自体は短いのですが、これが味わいが深い作品なんですよ。暴力小説でありながら、表現力豊かで純文テイスト。文法的に良い悪いでなく、単語ひとつひとつに粘り気があって、油分が強いんですよね。読ませることよりも、伝えることを優先しているような感じ。んー、わかるかなー。
とにかく最初の3ページほどを読んでいただければ、言いたいことは分かってくれるはず。小説の冒頭なんて説明しがちですが、いきなり『破果』の世界に引きずり込んでくれる珠玉の導入です。
登場人物は二人だけ、まだ弱っちい爪角と殺し屋の師匠。この二人の師弟関係がいいんすよ、メインの読みどころです。滅茶苦茶にも見えるのですが実はそう単純ではなく、特に中盤から終盤にかけて、気の利いた変化でさらに奥行きを感じさせる。どこか羨ましくもありますよね。
小さく短いのに内容が濃い、手元に置いておきたくなるような一冊でした。しっかりと堪能させていただきました!
■ぜっさん推しポイント
殺し屋っていうと、男性ならクールでカッコイイ、女性ならスタイル抜群の美人。脳みその切れ味がよく、運動神経抜群!なーんてのがイメージできるんですが、本シリーズは登場人物たちがボロボロなんすよ。
いつも負けそうでカッコ悪く、殺し屋には馴染まない「人情」にやたら弱いんです。
そしてこの負の表現が濃厚なんですが、その中に生命力だけは眩しく光ってるんすよね。ぜひ魂を感じ取ってください。
Posted by ブクログ
破果を読む前に此方を読んだ。
前日譚とは知らずに読んだのだが
躍動感や緊迫感に溢れ、短い中でも
女スパイの心の内の微妙な変化も
師匠への甘い想いも本人の息遣い
から伝わってくるようだ。
本編は読んでいないが、暗澹たる
未来を本作主人公も読み手も感じられ
最後はせつない。
Posted by ブクログ
同著者の作品『破果』の主人公爪角の、殺し屋としての誕生譚だ。
爪角がいかに訓練されたのか、仕込んでくれた室長との関係性はいかに…。
一か月余りの期間訓練が書かれた短編だが、濃密に描かれている。小説は短く、巻末にインタビュー記事と深緑野分さんの解説も併録されており、本編と併せて『破果』の理解が深まるようになっている。