小山内園子のレビュー一覧

  • 破砕

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    『破果』の爪角の若き日を描く短編。
    本は小さくて薄いが、『破果』が出た後で作者が書いたもので、作者はこれ以上爪角の小説を書かないと言っているからこの形の出版は仕方ないかなと思う。ぜひ文庫化するとき『破果』の中に入れて欲しい。
    爪角がリュウと山に一カ月ほど籠り、殺人と身を守るノウハウを身につけるという話。(ちなみに名前は出てこない)
    爪角のリュウに対する、こう言ったら元も子もないが「恋心」のようなものを、絶妙な感覚で描いており、グッとくる。決して口にすることはなく、相手もわかっていることを感じさせまいとしている。それでも漏れてしまいそうで、でもその寸前で何とか止めるという切なさに。
    この文章の妙

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    2024年09月29日
  • 破砕

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    殺し屋になる修行のため師匠と森に籠る… 傷だらけになりながら、魂のやり取りを力強く描く物語 #破砕

    ■きっと読みたくなるレビュー
    前作『破果』において、女性で高齢ながらも殺し屋として生活していた爪角(チョガク)。時間軸は彼女が殺し屋になる前、若かりし十代の物語で、師匠と二人で山に籠り、厳しく鍛えられるという筋立て。本編自体は80頁の短編のみで、作者のインタビューや深緑野分先生の解説付きです。

    前作を読んでない方のために軽く『破果』のあらすじをご説明。

    60代の女性殺し屋の爪角(チョガク)は、殺戮の依頼を失敗してしまう。引退を思い至る彼女であったが、様々な人との出会いの中、それでも殺し屋の

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    2024年08月21日
  • 私たちが記したもの

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    梅の木の下、誤記、家出、ミス・キムは知っている、オーロラの夜、女の子は大きくなって、初恋2020。女性たちの物語。貧富の格差、家父長制、女性差別の中で生き抜く女性たちのお話。(우리가 쓴 것)

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    2024年08月02日
  • 破果

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    ストーリーに引き込まれ、読み終えた時には深夜を回っていた。主人公の職業はこんなに特殊なのに、いつしか自分の姿と重ね合わせ、救いのある結末でありますようにと祈りながらページをめくった。臨場感あふれる筆力とテンポの良さ、それを見事に活かした訳の素晴らしさを評価したい。

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    2024年07月14日
  • 破果

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    年老いた女性殺し屋の話。破果は傷んだ果物と女性の年齢16歳のダブルミーニング。韓国小説はほぼほぼ初めて。エンタメ性と社会性の両面から楽しめた。

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    2024年07月08日
  • 私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない

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    中年の男性が多い職場でモヤモヤすることが増えて買った本。

    答えない選択肢があるということを意識するだけでもだいぶ救われた。

    小さいことでも声をあげていいと思う。

    当たり前に麻痺したくない。

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    2024年06月27日
  • 大仏ホテルの幽霊

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    ネタバレ

    本屋で何気なく目に止まり読んでみただけだったのだが、思いのほか良かった!私的には良作。
    結局誰の話が正しいのか分からないことも面白かったが、「恨(ハン)」にまつわる韓国の有名なおとぎ話や、朝鮮戦争における韓国の歴史等詳しく知らないことが多く、とても興味深かった。

    一番印象的だったのは、パク・ジウンはルェ・イハンをあまりに深く愛しすぎた為に、彼が死んだ後彼なしでも生きていけるように彼など愛していなかったというニセの心を作り出していた、という真相。悲しすぎるし辛すぎるけど、最愛の人を失ったらそういう風に生きることでしか自分の心を守ることが出来ない生き方があることが衝撃的だったし、想像しただけで辛

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    2024年05月02日
  • 耳をすませば

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    みんなからバカにされている不思議な能力のある少年とその両親、衰退していく市場を盛り上げようと画策する店主、テレビ業界で生き残るために必死なディレクター。
    この3人が関わりながら、いろいろな人たちの利己的な欲望があふれかえり、絡みあっていくストーリー。
    人間の嫌なところを淡々とクールに、おもしろく描いていくところが、チョ・ナムジュさんらしくて好きです。

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    2024年04月29日
  • 破果

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    65歳の爪角(チョガク)は、平凡な老女かと思いきや実は45年のキャリアを持つベテランの殺し屋である。
    電車のなかから始まるターゲットを狙った行動を目の当たりにすることから始まる物語。

    だが老いを感じていた矢先にミスを犯し、たまたま秘密を共有することになった医者との出会い以降、少しずつ歯車が狂い始める。

    身体がいうことをきかなくなっただけではなく、心までもがいうことをきかなくなる自分に気づく。
    よろめく老人の姿を追い、手を貸してしまう自分に…。
    ターゲットを苦しめずに殺す方法に…。
    殺し屋になる前の自分を思い出したり、とうの昔に捨てたはずの恋慕に近い感情までもが蘇る。

    そんな爪角に敵意を剥

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    2024年03月18日
  • 私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない

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    韓国のフェミニズムの本。
    友達が卒論書く時に読んでて、気になってたから読んだけど、
    学校で学んでたことが事細かに書かれてて、
    最近女性軽視発言を気にしなくなってた自分がいることに気づいてた。

    人間って最初は疑問に思っても、あまりにもその状態が続くと麻痺して何も感じなくなるんだよな。
    私は私らしく、違和感を得た時は声を上げなきゃ。

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    2023年11月16日
  • 大丈夫な人

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    良かったです。怖かった。
    全体的に人怖な話ですが、話によっては幻想的な怖さがあった。
    個性と才能のある作家さんだと思います。

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    2023年11月13日
  • 私たちが記したもの

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    「82年生まれキムジヨン」を数年前に読み、同じ作者の本を手に取った。
    キムジヨンの話よりもより多くの世代・異なる時代を生きる女性がフォーカスされていて、それぞれの女性の生きづらさや時代による感覚の差などがありありと描かれている。
    自身に置き換えて捉えてみても、学生時代女性の生きづらさや親との感覚の相違を感じ、声を大にしていたにも関らず、社会人として生きていくうちに少しずつ諦めが生じていくのを感じるとともに、その諦めがまた未来の女性を苦しめてしまうのではないかと奮い立たされる感覚がした。
    また、同時にフェミニスト的考えを大切にしながらも、周りが見えなくなってしまわないように(男性として生きる生き

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    2023年09月25日
  • 女の答えはピッチにある:女子サッカーが私に教えてくれたこと

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    フェミ本として訳者や出版社は出したいのだろうし、作者もそういった意識はあるのだと思うが、そういった括りにしたくない本だと思う。ジェンダーは間違いなくあるし、不自由な思いをしている女性も多いことは理解してるが、新しいものに出会い、のめり込み、喜びを見出し、誰かに伝えたくなる。そういった喜びに満ちた本だと思う。
    例えば、この同じ内容の本が、男性が手芸にハマるという内容出ても、多分面白いものになるのではないか。男性、女性にか変わらず、ジェンダーを含めた様々な問題が新しいことに挑戦すると湧き出してくる。それを乗り越え、少しの喜びを感じ、のめり込む。その様子を見るのは経験者からしたらとても嬉しく面白いも

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    2023年07月30日
  • ペイント

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    人が子供を持たなくなった社会で国の管理下におかれる親のいない子供たち。
    13歳以上のこどもたちが養子となる権利を持つ。国の補助を受けつつ
    親になることを希望する夫婦はこどもを引き取ることができる。
    何度も面接を重ね、彼らを親にするか、選ぶのはこどもたちだ。
    SFめいた話かと思いきや、想像できる近未来のよう。

    施設長をはじめ、こどもたちを管理する大人たちが
    いい人すぎる一方で、親になる面接を望む外の世界の大人たちが
    利己的にうつる。

    親も完璧ではないし、生きていくかぎり100%幸せでリスクゼロの状態なんて
    ない。人間同士だから、その日の気分で衝突することだってある。
    そこに血は関係ないように

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    2023年06月17日
  • ペイント

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    おもしろかった!!でも表紙がちょっと好きじゃない
    思春期真っ只中の私(16さい)にとっては共感できる、すんふんすんって読んでた。親を自分で選べる(ペイントする)って世界線、ありだなって思った
    これは映画化してほしいな〜^_^

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    2023年02月04日
  • 大丈夫な人

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    カン・ファギルの短編集。「湖ー別の人」、「ニコラ幼稚園ー貴い人」、「大丈夫な人」、「虫たち」、「あなたに似た歌」、「部屋」、「雪だるま」、「グル・マリクが記憶していること」、「手」。どれも怖くなる。特に女性の日常はスリラーなのか…。

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    2023年01月29日
  • 失われた賃金を求めて

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    男性である事と女性である事。その違いだけで、賃金をはじめ多くの機会や権利に大きな差が生じている事に改めて衝撃を受けた。

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    2023年01月08日
  • 大丈夫な人

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    短編集9編
    どの物語もそう突飛なことではなくありえることばかりながら、怖さがじわじわと忍び寄ってきて、しかも最後になっても答えのないままに読者は放り出される。そこに至るまでの主人公たちの心理描写が巧みで、彼らとともに不安で不穏で妄想か現実の境もあやふやになって抜け出せない泥沼にいるような気がした。

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    2022年08月31日
  • ペイント

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    作者の後書きにグッときた。
    子育ては突然本番がやってくる。

    子どもが親を選べるなら…
    私がこの世界に立った時、自分に合う完璧な親を探し選ぶだろうかと一度は考えた。そう思い至った時に、私の中には家族との思い出がたくさん浮かんできた。そのどれもが楽しいものばかりではない。家族とは決して最初から今まで完璧ではなかった。時にぶつかり合い、怒り、悲しみ、どうして自分を分かってくれないのかと嫌になることもあった。しかし、そんな家族との時間で自分を知り、相手を知ったことは、他の何者にも変え難い時間と感じた。

    子どもも親も、その立場での自分自身を知るには努力と時間がいる。子どものためにという思いの本質には

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    2022年08月13日
  • 私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない

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    男性である自分が読んだ感想です。
    まず、女性が声を上げることに対する反発に対する作者の大きな怒りを感じ、男性側が内容についてとやかく言ってはいけないとまず感じました。
    文中に何度も出てくる、女性の話を遮り差別をなくす男性像は生々しく、自分も同じことをやっていたなと反省しかありません。
    「なにが差別なのかは自分で決める」、「差別される側の経験を否定されると差別がなかったことにされる」といった言葉は重く、それを受けて自分を含めた男性側が変わらなければ社会が変わっていかないと感じました。
    そう思った男性に対する処方箋も本書の中には用意されています。まずは、女性に教えを乞い、いままで見過ごしていた周囲

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    2022年07月15日