カート・ヴォネガットのレビュー一覧

  • ガラパゴスの箱舟

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     人間は自然界の頂点に君臨する。一応、そう考えられている。その根拠はいろいろあるが、ひとつには脳の大きさが挙げられるだろう。生物は進化するにつれて、しだいに脳が大きくなっていった。脳が大きければ大きいほど賢いことは、観察からある程度わかる。たとえば、犬はお手や伏せを覚えるので、ウサギよりも賢そうだ。チンパンジーは簡単な記号も扱えるので、犬よりももっと賢い。脳の大きさと知能に一定の関係があるとすると、脳の大きさが最大であるヒトは、生物の中でもっとも賢いことになる。
     だが、もっとよく観察してみると、小さな脳の持ち主たちもなかなか凄いことをやっている。ファーブル昆虫記で有名なスカラベは、ヒツジや馬

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    2025年02月12日
  • 猫のゆりかご

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    装丁が見えなくされたままに、この本を偶然ーボコノン教的に言うのであれば"定められたとおり"ー手に取ったわけだけれど、これまた素敵なものに出会えた。

    荒廃的であるのに、ず一っと痛快。
    なんなら終末が近づけは近づくほど笑えてくる。

    「本書には真実はいっさいない。<フォーマ(無害な非真実)〉を生きるよるべとしなさい。」

    このことばに救われた。
    いつだってカルチャーは孤独でいさせてくれる、
    孤独を受け入れてくれる。
    この本はそんなカルチャーのすべてだった。

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    2025年02月02日
  • 猫のゆりかご

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    一つひとつのフレーズを、時間をかけてゆっくり読み解くのが楽しい本。疲れるけど、たまに浸りたくなる世界観だった。現実逃避しているように思えながら、実は現実の問題と真っ向から対峙しているような不思議な感覚。SFに興味を持つきっかけになった話!

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    2025年02月12日
  • 猫のゆりかご

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    ネタバレ

    序文
    本書には真実はいっさいない。
    「〈フォーマ(無害な非真実)〉を生きるよるべとしなさい。それはあなたを、勇敢で、親切で、健康で、幸福な人間にする」
    ー『ボコノンの書』第一の書第五節

    p32
    "実験だよ"

    p34
    人間は父の専門ではなかったからです。

    "今や科学は罪を知った"
    "罪とは何だ?"

    p37
    「これは私事です。たんなる恋愛事件です。ぼくは後悔してはいません。何が起ころうと、それはぼくとズィンカとのことで、みなさんには関係ありません」

    p88
    「おかしな旅の誘いは、神の授けるダンス・レッスンである」

    p157
     

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    2024年08月31日
  • 猫のゆりかご

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    人間の本質が詰まった一作。バカバカしさもありながら、あまりに鋭い政治と宗教への洞察もありながら、最終的には人間への愛しさで胸が一杯になった。

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    2023年12月16日
  • 猫のゆりかご

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    スローターハウス5は読んだことあったけど面白くなくて苦手意識を持ってたけどこれは普通に面白いし好きだった

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    2023年04月27日
  • 猫のゆりかご

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    ネタバレ

    好きだ〜〜
    ボコノン教の宇宙からの視点が皮肉が効きまくってて最高だったな

    私が好きなのは戦闘機が墜落して宮殿が壊れてアイス・ナインで世界が凍結するシーンです

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    2023年03月15日
  • 読者に憐れみを

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     カート・ヴォネガットによる「書くことについて」の本。冒頭の7つのアドバイスだけでも十分読む価値があるが、570ページ相当の本文は校正から、生活、稼ぐことについてまで、小説家としての人生への示唆は多岐にわたって網羅されている。がんばったら3日で読めた。

     個人的な関心事は「この本で語られるアドバイスが、近代以降の日本の私小説にも当てはまるだろうか」という部分なのだが、私小説を書くことのコアに「目的を持つこと」「誰か他者にも伝えるべき情報であること」という要素があるのであれば、日本のシーンにも十分援用が可能であると判断する。

     座右の書として置いておくにはちとぶ厚すぎると思うが、いちど、自分

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    2022年08月15日
  • はい、チーズ

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    全編すごく面白い。落語のようなテンポの良さ、それぞれのオチの意外さ、ハッピーエンドもバッドエンドもありつつどこか優しさに満ちた雰囲気も全てがよかった。
    特に小さな水の一滴がかなり良い、まさかの大逆転にニヤリとした。

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    2022年01月13日
  • スラップスティック

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    狂気や暴力を描いた前作とは打って変わって、落ち着いた作品になっている。相変わらずまえがきが素晴らしく、設定は少しSF風味。物語は題名ほどのドタバタ劇ではないが、その意味は読めばわかる。作者は奇形児でもなければ大統領でもないはずだが、どのあたりが自伝要素だったのだろう。ヴォネガットの中ではかなり好きな作品で、特に双子のキャラクターが良かった。決して明るい話ではないが、なんとも言えない著者の優しさが伝わってくる良作。

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    2021年04月04日
  • 猫のゆりかご

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    ネタバレ

    甚だ奇っ怪な小説。

    まえがき

    「本書には真実はいっさいない。」「〈フォーマ〉を生きるよるべとしなさい。それはあなたを (略) 幸福な人間にする。」(p4)
    ※フォーマ=無害な非真実

    これがこの物語を端的に表している。

    ジョークやユーモアが私たちを豊かにしてくれる。


    中身は荒唐無稽の極み。
    「世界が終末をむかえた日」について、謎の宗教・ボコノン教徒の男、自称ジョーナが語る。その述懐が人を食ったような、あまりにもヘン。

    原爆研究者、フォーニクス・ハニカー博士が開発した究極兵器‘アイス・ナイン’を巡り、カリブの小国サン・ロレンゾ共和国を舞台に破茶滅茶が巻き起こる。

    世の中に意味が無い

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    2021年02月08日
  • ガラパゴスの箱舟

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    ヴォネガット のユーモアとウイット、引用文についつい笑いを誘われるが、テーマは人類の進化である。 そこに着くまでに設定した百万年という時の流れは、大きな不安を孕んでいる。巨大化した脳は残酷さに寛容であり、心の痛みを転嫁し、過ちを進化と勘違いした。
    西暦1986年、ヴォネガットの描く巨大脳を持つようになった人類の性が、本能に導かれて到達した環境といえば、反抗する隙もない、人間性という言葉の影もない、独自に進化を遂げた世界だった。どこか今に通じる現代世界の姿がかいま見える。煉りに煉られた物語で、その緻密さ巧みさは面白い、登場人物の狂気までも気の利いたジョーク交じりで進行していく。人々の狂ってい

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    2019年12月26日
  • 猫のゆりかご

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    カート・ヴォネガット・ジュニアは、スローターハウス5以下、沢山の本を出版しているが、彼の作品として一番最初に読んだこの本が強烈な印象を残している。ハインラインやハーバートのSFとは全く違っているが、カルト的な魅力に溢れた作品だと思う。映画界の「2001年宇宙の旅」や「天井桟敷の人々」、「ドクトルジバゴ」のように、読書士としては必読書の1冊だと思う。

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    2018年12月11日
  • バゴンボの嗅ぎタバコ入れ

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    「貧しくてゆたかな町」に喝采、ブラヴォー!
    初カート・ヴォネガットである。一編一編が一筋縄でいかず読むのに時間がかかった。高校のマーチングバンドの指揮者ものはとびとびに数編入っていて、そんな構成もおもしろかった。

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    2018年11月01日
  • 人みな眠りて

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    シニカルな表現に、ブラックなオチを予想するのに、物語は全部とても優しい。
    憤り悲しむのは、人が持つ優しさ、純粋さ、繊細さを愛おしみ信じているからこそなのだろうと思う。
    怒りんぼやニヒリストが実は誰よりモラリストだったりロマンチストだったりするのと同じですね。

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    2018年09月18日
  • はい、チーズ

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    2018年47冊目。

    これまでで一番好きな短編集になった。毎晩一つお話を読むのが楽しみだった。

    特に「セルマに捧げる歌」は至福の23ページ。ユーモア溢れる展開から、音まで聴こえてきそうなクライマックスの盛り上がり、そして「...ジャンッ!!」という感じの完璧な終え方。にやけが止まらなかった。

    ブラックな作品も少なくはないけど、基本的に終え方が本当に優しい。長編『タイタンの幼女』でもそうだったけど、終盤の一言にすっと救われる。

    ヴォネガットの魅力にすっかりはまってしまった。来週から、全4巻の短編全集が発売するということで、絶対に買って読もうと思っている。長編作品も全部読みたい。

    村上春

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    2018年09月15日
  • はい、チーズ

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    帯文を今世紀の作家である円城塔が書いてたりするから、てっきり今の感性が選ぶ傑作選の類だと思ってたら、未発表作品集だった。美味しくいただきました♬

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    2018年08月08日
  • 青ひげ

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    SFを読んだ気はしないがヴォネガットマニアには感動作
    表紙   7点和田 誠
    展開   7点1987年著作
    文章   7点
    内容 731点
    合計 752点

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    2017年03月21日
  • これで駄目なら

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    カート・ヴォネガットの、卒業式での祝辞等の講演集。
    円城塔の翻訳が意外にはまっている+思った以上にあたたかみのある祝辞が多くて驚く。
    「これで駄目なら」はいつか言いたいセリフだ。

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    2016年06月18日
  • 猫のゆりかご

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    仕事できつかった時、この本が救ってくれた。
    今悩んでいることは生きる上で本当に重要なのか?悩んでいることは周り、自分にとって何か本質的に影響を与えているのか?
    そうマインドセットしたら、なんてことないくだらないことだった。
    大人になったら、本質的なことが見えにくくなる。それがただのあやとり(にせもの)だと気付けないのだ。
    子供は猫のゆりかご(あやとり)をいつまでも見つめて、猫なんていないし、ゆりかごもないことに気づく。
    あなたが悩んでいることに、"猫はいますか?ゆりかご、ありますか?"
    そうヴォネガットに語りかけられた気がした。

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    2016年05月23日