一番心に残ったのは「卒塔婆小町」。天才的な小説家の男が、編集者に恋をし、彼女の為だけに小説を書き、捧げる。と、こうして書くと何の変哲もない話だが、登場人物達の、確かな存在感・愛の重量。誰に感情移入して読めばいいのか。誰に感情移入しても、苦しくて押しつぶされてしまいそうになる。どうしてここまで狂おしい感情を表現できるのか。最後まで揺ぎ無い「美しさ」を貫き通す作者の文章力にも圧倒される。読み終わった後、心にずしりと「何か」が残るはずです。純度の高い「愛」の本質とは、透き通るものでもなく、こんなにも重いものだったのか、と気付かされました。