中山可穂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
隅田川、定家、どっちもよかったけど、なんといっても蝉丸です。本人たちの口から言葉にされない感情が行間から、字間から、印刷のない余白からも伝わってくるようで読み終えるまで本をおけませんでした。
蝉丸くんがあんまりに高潔で純真で、蝉丸から目を逸らした博雅をぶん殴りたくなりました。今すぐ結婚なんか破談しろボケー!って憤りました。できないからこそ、憤りました。やるせなさをあふれるくらいに詰め込んだ小説です。
ラストは「天使の骨」を彷彿とさせる馴染み深いもので、ああきっと会えるんだろうな、とほっとしました。どうか再会できますように。
中山さんの小説、呼吸にも、また紙の本の上で再会したい。あとがきを、何度 -
Posted by ブクログ
ネタバレ中山先生の文体はとても綺麗で読みやすい。
いつもなら、絶対濡れ場が入っていたところを、この短篇集は、そういった描写は一切ない。それでも、心くすぐられるえろさは何なんだろう。
以下の短篇3つが収録されています。
「弱法師」
「卒塔婆小町」
「浮舟」
「浮舟」はとにかく泣いた。
愛する人を譲らなければならなくなった薫子おばさんのやるせなさ。
愛する人との板ばさみの中、自分は幸せだ、という姿勢を、絶対に崩さなかった文音さん。
愛する人を奪ったことで得た幸せに、微かな罪悪感を抱きながらも、愛する人を守るため、健気に生きてきた香丞。
自分の恋心にも似た独占欲を抑えられずに、母と交わした最期のやり取り -
Posted by ブクログ
ネタバレ予想以上に描写過激でした・・・
思いっきり同性愛要素が詰まっている作品で、苦手な人には絶対にすすめられないような内容です。
内容もけして明るくないです。
けれど、破滅的な感じが、とても魅力的でした。引き込まれます。
作者さん自身が同性愛者だと言うこともあってか、心理描写もリアルでよかったです。
特に、最後の部分が心を打たれました。
それまでの描写による苦手とか、そう言う印象がすべて吹き飛ぶくらい、素敵なラストだったと思います。
読んでいて、心が痛むような、切なくなるような、不思議な感じがしました。この人の本を、もっと他にも読んでみたいです。 -
Posted by ブクログ
日本の能をモチーフにした3編の物語。激しい恋心、届かない想いを、絶妙の文章で描いています。
その中でも私は「浮舟」が一番好きです。全てを投げ出してしまうくらいの恋も良いですが、身を引き好きな相手を守る愛というのも、切ないけど美しいと思いました。
単行本が発売した時に一度読んだんですが、文庫本も買ったのにそのままにしていたのを思い出し再読しました。
初めてこの作品を手にした5年前、息を止めていたのかと錯覚するくらい苦しい気持ちで読んだのを思い出しました。
とても苦しくて、先が気になってても一編ずつしか読めなかった。
読者の呼吸まで止めてしまうなんて!!と衝撃を受け、それと同時に今までの作品と -
Posted by ブクログ
ネタバレ素晴しかった。大事に読もうと思ってたのに、一気に読んでしまった。
しばらく、まんじりともせずにいたい気分です。
「サイゴン・タンゴ・カフェ」
読者はひとりでいい。
熱烈な愛情と理解で絶対の肯定をくれて、思わぬ見方を示して意表をついてくれて、冷静な分析に納得させられる。目指すものは同じ高みだと心を沸き立たせ、肌の触れあいで情熱を挑発する恋人。
しかも、容易くは手に入れられない運命の人。
そりゃもう、作家の夢想する理想の恋物語なんだろうなと思う。
お幸せに、と思いつつ、ちょっと後退りたくなっちゃうのも本音です。(部外者は馬に蹴られる前に安全圏に退散すべきだというのは常に真理だ) -
Posted by ブクログ
能のお話を根底にすえた3篇。
「恋とは死に至る病である。」という帯のキャッチに惹かれて購入しましたが、個人的にすごく満足です。
弱法師だけ、知らなかったのですが知らなくても楽しめる、小説として一本ぴん、と通っている印象です。
一番すきなのは「浮舟」、でも同じくらい「卒塔婆小町」も好きです。
卒塔婆小町、有名な深草少将の百夜通いを百本の小説に代えたところが素敵。小町が男を避け続けたのも、ここでは同性愛というリアルで補う。ほんとうにそうだったかも、と考え込んでしまいます。そうやって、比較して読むものじゃないかもしれませんが、、
「浮舟」の、二人の男からの求婚に耐えかねて身投げ、という場面