中山可穂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ本とコさんの 本棚から
いずれも 能に着想した短編3篇
三島由紀夫も 同じ作品で創作していたので
とても気になりました。
「弱法師」 よろぼし
〈原作〉
他人の讒言を信じた父・高安通俊は、実子の俊徳丸を家から追放する。
後悔した通俊は、天王寺で施行を行い、我が子の成仏を祈る。
その場に現れた盲目の乞食・弱法師こそ、追い出された俊徳丸であった。
通俊はやがてその正体に気づき、夜更けに父であることを明かし、俊徳丸を高安の里へ連れ帰る。
〈三島由紀夫〉
舞台は家庭裁判所。戦災で我が子・俊徳と離れ離れになった生みの親・高安夫妻と、その俊徳を拾い、15年間育て上げた育ての親・川島夫妻が、子供の将来を選択させようとしている。戦火で視力を失った俊徳が、調停委員と共に現れる。
実子への憧憬、養子への愛憐。
それらをものともしない盲目の少年。
どこへ帰着するのか。舞台によって変化が大きそう。
中山可穂の「弱法師」と読み比べるため、三島の『近代能楽集』のレビューを転載。
三島のラスト、「どうしてだか、誰からも愛されるんだよ」と言いながら、誰も愛さない弱法師の気持ち悪さも良かったけれど。
難病を患う憂いある美少年が、将来ある既婚の担当医を自分に取り込んでいく様は、一段と気持ち悪さがある。
養父のラストの哀願の切なさよ。
「卒塔婆小町」
〈原作〉
高野山の僧が、卒塔婆に腰掛ける乞食の老女と出会う。僧は無礼を戒め、仏法の理を説こうと問答を交わすが、老女は博識で、僧の問いをことごとく退ける。老女の正体は、かつて絶世の美女と謳われた小野小町であった。
やがて老女に、かつて小町に恋慕した深草少将の怨霊が取り憑く。生前、少将は小町から百夜通いを課され、九十九夜まで通いながら、満願を果たせぬまま命を落としていた。取り憑いた少将の霊は、老い衰えた小町に百夜通いを再現させようと迫る。
やがて怨霊は鎮められ、小町は成仏への道を示されて物語は終わる。
〈三島〉
夜の公園で、詩人の青年と老婆が出会い、卒塔婆をめぐって問答を交わす。
老婆は言葉と論理で青年を圧倒する。
やがて青年は、老婆を「美しい」と言えば死ぬ、という奇妙な言霊の条件に絡め取られ、逃れられないまま言葉を発し、死に至る。
中山可穂さんの昨日は、
女性編集者の愛を得るため、若き作家が小説を書き続ける。
その女性編集者の老いた姿を卒塔婆小町と重ねる。
これは、重要なコンテンツが原作とよく重なりながら、現代に生かされていて、とても素敵。
能「浮舟」
浮舟は、薫と匂宮の間で心を揺れ動かし、宇治で入水を図った女性です。
能では、浮舟が失踪した後の宇治が舞台。
旅僧が宇治を訪れると、女が現れ、浮舟の物語を語ります。
やがてその女は浮舟自身の亡霊であることがわかり、薫と匂宮の間で苦しんだこと、宇治川に身を投げようとしたことなどを回想します。
源氏物語の浮舟は、匂宮と薫との愛に悩み苦しむ美しい姫なのだけど、能楽では、あの世へ行ききれず、この世にも戻れない浮舟の魂が、供養によって救われる場面らしい。
三島由紀夫が作品として残しているのは「葵上」。
さて、中山さんの作品は 歴史ある和菓子屋の姉弟と、弟の妻で、姉の恋人だった女性の話。
匂宮と薫を男女として、ジェンダーまで表現した秀作でした。
古典に着想した小説は好きです。
原作との比較も楽しく、創作力に驚きます。
三島由紀夫も書いているとわかっていて、果敢に攻めるところがまた良い。 -
Posted by ブクログ
タンゴに魅せられた男女の、
タンゴのような恋の物語
惚れた男に横領を押し付けられた女
同じ心の傷を持つ母娘
旦那の浮気相手と旅行に行く主婦
猫と殺し屋の男
同性愛の三角関係の末、失踪する作家
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タンゴの名曲を題された物語は
どの話もかなしい
どうしようもなくかなしい
でも、
そのかなしみには、
どこか潔さと深みがある
そんな物語でした。
特に根拠はないのですが
僕はいつの頃からか
全ての感情の根底には、
かなしみがあると想うようになりました。
万葉の「かなし」は
哀し、悲し、愛し・・・。
かなしみを知ることは、
皮肉にも人生を豊かにすることなのかもしれません。
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Posted by ブクログ
ネタバレ疾走感すごかった
疑問だらけ、その曖昧さがいい
塁の
「別れるときは、クーチの前から煙のように消えたい」
っていう刹那主義
28歳で亡くなったことは知ってる上で読み進めたけど、あの終わり方はなに!
どうなったんだろう、主人公は白い薔薇の淵まで連れて行って欲しかったというのは2人で破滅したかったということ?
阿片窟で塁に会ってから最後の逢瀬が曖昧だよね
手紙もなくなってるし
実感があったってことは幻ではないはず
白い薔薇って塁への感情とか欲情とか繋がりが蕾になって咲いた花かな
白い薔薇の淵の先にあるのは破滅なのかな
脳髄に白い薔薇を植えたって言ってたもんね
一回本気で別れるってなって、それでまた復縁した時だパッと咲いたんだよね
やっぱり離れられないってなっちゃって
主人公の塁に関する記憶がジャカルタで終わりってことは死んだということもわからないってことだよね
遺体もお葬式もないってことかな
それか生きてるのが塁なんだったらもうその生きてた時の記憶はそれが最後ってことか
小包に猫の毛が入ってたから三鷹の塁のアパートに主人公は自転車を走らせるけど、これって死んでる?生きてる?わからない
地球に戻ってきたいだろうなって冒頭で何度も言ってるってことはお星様になったってこと?
わからない
わからなさを残すのがねらいだったんだろうね
こんなに性と生を感じるのに死を匂わすなんて凄い小説だな -
Posted by ブクログ
中山可穂さんのデビュー作。
美しい装丁写真はヤン・ソーデックの「The Knife」。
単行本も同じ装丁だったとのこと。著者も気に入ってたのだろう。
デビュー作だけあって、非常に熱量が高い小説。
ヒロイン王寺ミチルのなんと魅力的なことか。
気障なセリフ、自堕落な性生活、芝居への初期衝動。
アニメや宝塚の舞台にいるような破滅型のヒロインが、小説の中に生々しく現出する。
若さや小劇場、そしておそらくレズビアンという要素が、王寺ミチルという稀有なヒロインの存在をギリギリ成立させているように思う。
他の登場人物の解像度も高い。全ての登場人物が過不足なく描写されている。
確かな実体はあるけど、描きすぎていないところがミソ。
解説の山本文緒さんも述べている通り、著者が劇団の戯曲も手掛けていたことが影響しているのかもしれない。
次回作が気になって仕方なくなるような、妖しくも鮮烈なデビュー作でした。リアタイで読みたかったな。 -
Posted by ブクログ
中山可穂の本が読みたい!
突然湧いてきた衝動でした。
著者の作品に出会ったのは20代前半。
今よりも多感だった当時の私は、
著者の描く世界観や表現が大好きでした。
再読したかった「マラケシュ心中」と「ケッヘル」は古本のみで。
「マラケシュ心中」は値段がちょっと高くて、
「ケッヘル」は上下巻を今読めるほど心も仕事も余裕あるかと言われると…と思い、レビューを見て未読の本作「サグラダ・ファミリア」を購入しました。
最愛の人を喪った者、残された者。
音楽と酒と性と子どもという生命。
淡々と荒れ狂う姿というか、切実で苦しい感じに、
久しぶりに著者を感じられた気がして嬉しかったです。
不器用だし、自分本位だけど、
それでもぶつかりながら苦しみながら生きていく。
読後も良かったです!
また未読作品も読もうと思います。