あらすじ
将来を嘱望されながら、ある事件をきっかけに落ちぶれてしまったピアニスト響子。酒に溺れながら孤独に生きる彼女のもとに、かつて恋人だった透子が戻ってきた。ある日突然、赤ん坊を抱いて。しかし、女同士のカップルと赤ん坊の不思議な関係は、突然の透子の死によって壊れてしまう。希望を失いかけた響子の前に一人の青年が現れた――。切ない愛と新しい家族のかたちを描く、恋愛小説の傑作。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
中山可穂さんの小説は面白い!
登場人物たちの恋愛を繊細な言葉で表現しているのが痺れる。
私は読書感想文を書くことさえ苦手なので、こんなセンスある文章を書ける人になりたいと感じる。
Posted by ブクログ
【本の内容】
将来を嘱望されながら、ある事件をきっかけに落ちぶれてしまったピアニスト響子。
酒に溺れながら孤独に生きる彼女のもとに、かつて恋人だった透子が戻ってきた。
ある日突然、赤ん坊を抱いて。
しかし、女同士のカップルと赤ん坊の不思議な関係は、突然の透子の死によって壊れてしまう。
希望を失いかけた響子の前に一人の青年が現れた―。
切ない愛と新しい家族のかたちを描く、恋愛小説の傑作。
[ 目次 ]
[ POP ]
真赤な血を連想させる毒々しいバラの花束、土を掘って埋めた死んだ猫の骨…この小説にはそんな不吉な表現が山ほど出てくるけれど、でもなぜかシャガールの絵のように、使われる色は濃い原色なのに全体には透き通るような透明感がある。
大人も子どもも残酷さとともに、ガラス細工みたいな繊細で美しく光るものを持っている。
赤でも白でもないロゼのワイン。
あのかわいくて上品なロゼの芳しい色が、すうっと降りてきて物語の終幕を飾る。
カーテンコールは深い宇宙の真空で、一波も打たぬ平静な心で聞きたい。
その想いの純粋さに切ないため息が落ちる。
終わらせるのがもったいない物語だった。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
何度読んでも全編泣き通しで読んでしまう。笑
透子もガリもテルちゃんも梅ばあも、それぞれがどんな考えで生きているかがよくわかる。
梅ばあがいたから、ガリは透子を愛せる。んだ、と思うと
「梅ばあ」かっけー!!!みたいな。
梅ばあ登場シーンは全部泣くわ。笑
どのシーンもなくてはならない。
かといって余分なシーンはない。
「9歳の透子にキスしてあげるね」(うろ覚え…)
梅ばあがタキシード着てきたトコもツボ。
Posted by ブクログ
この人の作品はいつも恐ろしく純度が高い。
愛情も憎しみも、喜びも悲しみも。
真っ直ぐだから故に傷つくことを避けられない3人の
サグラダ・ファミリア(聖家族)。
けれどそこにあるのは
泣きたいくらいの愛しさ。
Posted by ブクログ
中山可穂の本が読みたい!
突然湧いてきた衝動でした。
著者の作品に出会ったのは20代前半。
今よりも多感だった当時の私は、
著者の描く世界観や表現が大好きでした。
再読したかった「マラケシュ心中」と「ケッヘル」は古本のみで。
「マラケシュ心中」は値段がちょっと高くて、
「ケッヘル」は上下巻を今読めるほど心も仕事も余裕あるかと言われると…と思い、レビューを見て未読の本作「サグラダ・ファミリア」を購入しました。
最愛の人を喪った者、残された者。
音楽と酒と性と子どもという生命。
淡々と荒れ狂う姿というか、切実で苦しい感じに、
久しぶりに著者を感じられた気がして嬉しかったです。
不器用だし、自分本位だけど、
それでもぶつかりながら苦しみながら生きていく。
読後も良かったです!
また未読作品も読もうと思います。
Posted by ブクログ
なかなか読む機会がなかった著者の代表作の1つ。ご存知の方は今更ではあるが独特(レズビアンを中心とした) の恋愛小説が主流。表現が美しくかつ懐かしさを感じる筆致。話しの展開が急すぎるきらいはあるものの読者をあきさせない物語。
Posted by ブクログ
恋愛小説は苦手だし、ピアニストとジャーナリストとの女性同士の恋愛なんて、どこからとっかかったらよいのやら…。
恋愛パートが苦手なのは、世界はふたりだけのものだから。
あー、はいはい。ようござんしたね。
とか思って、そそそ…と気持ちが後ずさる。
2歳になる桐人を残して透子が死んでから、子ども嫌いな響子が不器用ながらも桐人のことを気にかけるようになり、行方不明になっている桐人の父親の元恋人・母性本能の塊のような照ちゃん(♂)や、面倒見の良い透子の従弟・弘くんと出会い、響子の心が周囲に開かれていく辺りから、響子の心の動きにつれて物語が動き出す。
響子のパトロンである梅ばあ。
金がある時もない時も、芯のある生きざまを貫く。
今は余命いくばくもない状態で入院中であるのに、響子の復活リサイタルの時には真っ赤なバラの花束を贈り、タキシードをビシッと決めて会場に姿を見せる。
弱音を吐かずに、格好いいところだけを見せようとするダンディズム。
死に臨むときも。
私にできない生き方だけど、格好いいなあと思った。
透子の死を理解できない桐人。
理解は出来なくても、母の不在を感じている。
元々癇の強い子が、親戚の間をたらいまわしにされて、言葉にできない不安や寂しさを周囲にぶつけてはもて余され、ある日行方不明になる。
母とよく行っていた公園の隅にある木の根元。大切にしていた昆虫の死骸や、壊れてしまったおもちゃなどを埋めていた場所。そこで桐人は見つかった。
“わたしたちが走りに走って行ってみたとき、果して桐人はその木の根元にうつぶせにもたれかかり、ほとんど木を抱きしめるような格好ですうすうと寝息を立てていた。両手に小石をいっぱい握りしめ、睫毛の先には涙のあとがこびりついていた。”
この部分を読んでいたら、なぜかしら涙が出てきて困った。
小さな桐人が目に見えるようだったから。
職場読書でのこんなトラップは、本当に困るんだよなあ。
Posted by ブクログ
この本はレズが題材だと聞いてちょっと身構えて読んだのですが、そんなことは杞憂でした。恋愛小説でもあり家族の小説でもありました。とても悲しい話なのに、胸が熱くなってあたたかくなりました。梅ばあがコンサート見にくるところでは、思わず涙ぐみました。梅ばあの惜しみない愛が重くてけれどとても幸福なことで、かっこよすぎました。みなしごの桐人くんのおかげで、響子は立ち直ることができ、いい意味で音楽も変わって、そういう変化は悲しいけれど、うれしいことだろうなぁと思いました。中山先生の言葉遣いがとても好きです。あと、名言がたくさん出て、同じく励まされました。
Posted by ブクログ
初のレズビアン小説に挑戦しました。というか、知らずに読んでしまいました(裏表紙見ろよ)。主人公響子がピアニストの自分を取り戻していく話として読んでも良し、熱く切ない恋愛小説として読んでも良し。関係性は変遷しても固く繋がり合える人がいたり、響子のピアノをずっと覚えてくれる人がいたり、新しい家族として加わる人々や、それらをとりまく人々とのやりとりが興味深いです。ビアンの実態??みたいなものが読めて、秘密を覗いたようなドキドキ感がありました。
とてもいい出会いが出来たので、他の本も是非読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
最愛の人と出会い、愛を育み、失い、そして逝ってしまった彼女には、幼い一人息子がいる。その子を巡る周囲との確執。そして、ある青年との新たな出会い・・・──。
愛した人の子供を引き取って育てたいという思いと、周囲の無理解や法律との間で苦悩する主人公。そんな中でぶち当たる、感情だけではどうしようも出来ない育児という現実問題。自分が産んだわけでもない子供の世話。自らの母性というものの欠落の自覚。
生涯独身で過ごすものだと思っていたのに、家族を持つことになるとは。まさか自分が母親(の役目)のようなものをすることになるとは。主人公にとっても考えてもみない結果だったと思います。
けれども、どんな形であれ子供には家庭が必要で、家族に愛されているのだと自覚させてあげなければならないのだと思う。正規の家族ではないかもしれないけれど、彼らならば、きっとそれが出来るのだろうし、下手な親戚なんかよりも、その子をたっぷりと慈しんであげられるはず。
愛だとか恋だとか血のつながりだとか、そういうものだけが家族じゃないのだと、信頼関係という絆で結ばれている家族というのもアリなんだろうと、そう思わされる一冊でした。
Posted by ブクログ
自暴自棄から立ち直っての復活コンサートという流れは感動的だが、直後の大喧嘩に唖然。「余韻ってものがあなたにはわからないの?」ほんとそれ。
他にもそういう流れが多いのは、読者の気持ちを掻き回すにはもってこいのやり口なんだろうけど、私には合わない。性描写の多さや登場人物の放蕩ぶりもちょっと引く。
そういう人達の偽装結婚って結構メジャーなことだと思ってたけどそうでもないのかな。